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研究を共通言語に世界とつながる。中高生の知の交流を生み出す「Global Link」

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アジア太平洋地域を中心とした中高生が、自ら取り組んできた研究を英語で発表し、議論や交流を深める「Global Link(グローバル・リンク)」。2014年のスタート以降、徐々に規模を拡大し、今年2026年のシンガポール大会には、12カ国から430人が参加しました。

研究を共通言語として、世界とつながる機会を創出するこのプロジェクトには、どのような想いが込められているのでしょうか。
今回は、Global Linkの企画・運営に携わる二人のJTB社員に、取り組みが生まれた背景や参加する生徒たちの成長について聞きました。

企画開発プロデュースセンター 企画開発担当課長
及川秀昭

2002年入社。教育機関向けのアカウントセールスを担当後、中国・上海に駐在し、訪日旅行商品の開発や企業・自治体のイベント運営に従事。帰国後は現所属個所でGlobal Linkの企画・運営事務局を担当し、グローバル教育、探究学習、サステナビリティに関するコンテンツ開発に携わる。現在は、BtoB領域のデジタルマーケティングの運用全般を担当。

企画開発プロデュースセンター
太田花菜

2016年JTB入社。北海道事業部で店頭営業や法人営業を経験した後、国際交流センターへ。中高生向け語学研修の手配業務を経て、現在は探究学習に関わるプログラムやソリューションの企画・開発・運営を中心に担当。Global Linkでは、国や地域を越えた知の交流を通じて、生徒一人ひとりの挑戦と成長につながる機会づくりに取り組んでいる。

英語ではなく「研究」が共通言語。中高生が世界とつながる交流の場

シンガポール大会の参加者

――まずは、Global Linkの取り組みについて教えてください。

及川:Global Linkは、「グローバルな知の交流」を通じて、中高生に感動と成長の機会を提供する研究発表の場です。一般社団法人 次世代教育ネットワーキング機構が主催し、企画・運営をJTBが担当しています。

2014年にシンガポールで第1回大会を開いて以降、継続的に開催しています。また、2019年には、場所の広がりも検討し、オーストラリア大会を立ち上げました。
シンガポールでは幅広い分野の研究を扱う一方、オーストラリアでは「環境」をテーマとするなど、それぞれ異なる特色があります。

――大会には、どんな生徒が、どのような形で参加するのですか?

太田:シンガポール大会では、中学1年生から高校3年生までが対象で、大会への参加には、大きく2つのルートがあります。
一つは、国内の連携大会で優秀な発表をした生徒が、推薦や招待を受けて参加するルート。もう一つは、自由にエントリーし、自分の研究をまとめたアブストラクト(要旨)を提出するルートです。

参加者は、少人数の会場で行う口頭発表やポスター発表など、いずれかの形式で研究成果を伝えます。さらに、選考を通過した参加者には、ステージで発表する機会もあります。
シンガポール大会の現地プログラムは3日間。研究成果の発表に加え、参加者同士の交流や、大学の研究室を訪問するスタディツアーなども行っています。

――具体的には、参加者からどのような研究が発表されていますか?

及川:シンガポール大会では、発表分野を3つに分類しています。
物理、化学、生物、数学などを扱う「基礎科学」、医学、情報学、工学などの「応用科学」、経済学、教育学、言語学、心理学などの「人文社会科学」です。
このように、理系分野だけでなく、文系分野まで一緒に扱う大会は、実は珍しいんです。

研究テーマも多彩で、ユニークな着眼点のものも多く、毎回驚かされます。中には、「ゴキブリは右利きなのか」を研究した生徒もいました。ゴキブリを観察して自分なりの分析結果を出し、さらに環境や食べ物など条件を変えたらどうなるのかと、次の研究につなげていました。

太田:今年は「河童」を研究している生徒の発表も興味深かったですね。河童が愛らしく描かれる土地と、恐れられる存在として語り継がれる土地があることに着目して、河川の氾濫など地域の環境との関係を調べていたんです。

研究は、必ずしも大会開催の時点で完了している必要はありません。参加者の中には、「まだ研究の途中」という段階で参加する生徒もいます。
それでも、大会の時点までに自分で考え、調べてきたことを海外の参加者に伝える。そのプロセス自体に意味があると思っています。

及川:大会でのプレゼンテーションは英語で行いますが、英語力を競うことが目的ではありません。あくまで英語はツールであり、共通言語となるのは「研究」です。
自分が取り組んできた研究を海外の参加者に伝え、それをきっかけに交流してもらうことを大切にしています。

――生徒自身の「なぜ?」や「好き」という気持ちが、研究の出発点になっているんですね。

及川:そうですね。生徒一人ひとりの興味や関心がベースにあります。「毎日見ていても、考えていても飽きない」というくらい好きだからこそ、何年も研究を続けられる。
Global Linkへの参加をきっかけに、大学でも研究を続けたり、研究者を目指したりする生徒もいるんです。

頑張っている子たちをもっと輝かせたい。JTBが世界に研究発表の場をつくった理由

シンガポール大会でのステージ発表の様子

――Global Linkは2014年に始まった取り組みだと伺っています。誕生の背景を教えてください。

及川:当時、教育現場では、グローバル教育の機運が高まっていました。JTBは海外研修や留学など、世界に目を向ける機会に関わってきていましたが、そのなかで着目したのが、日々研究に打ち込んでいる生徒たちです。
スポーツには、甲子園や全国大会のように多くの人から注目される舞台があります。
一方で、文化部や研究活動に励む生徒たちにも、同じように努力の成果を発表し、輝ける舞台があっていいのではないか。そんな想いから、研究成果を英語で発表し、海外の同世代と交流できる場としてGlobal Linkが生まれました。

――研究発表の場をつくるうえで、JTBだからこそできることは何でしょうか。

ポスター発表の様子

及川:JTBは、旅行だけでなく、人と人、地域と地域などをつなぎ、新たな交流を生み出す「交流創造事業」に取り組んでいます。
Global Linkも、研究を通じ、国や地域を超えて中高生をつなぐ交流の一つ。海外渡航や研究発表の場の運営を含め、生徒たちの一連の体験を支えられること。
そして、国内外の拠点やこれまで築いてきたパートナーとのネットワークを生かせること。この2つがJTBの強みだと思っています。
更に近年では私たちの想いに賛同する企業からの協力もあり、社会に開かれた学びの場が広がっています。

太田:大会は、全国のJTBの営業担当者はもちろん、海外に拠点を持っているグループ会社など、さまざまな人・部署にも関わってもらいながら運営をしています。
それぞれの強みを持ち寄りながら一つの場をつくっていく。そのつながり自体が、JTBらしさなのかもしれません。

――多くの人が関わる大会だけに、準備にも長い時間がかかりそうですね。

太田:そうですね。運営は大会当日だけで終わるものではなく、ほぼ1年を通して動いています。
夏の大会が終わると、9月には次年度に向けた準備が始まります。会場の確保や大会の内容、審査基準などを検討し、12月ごろから参加者の募集をスタートし、春先までエントリーを受け付け、その後は参加者への事前トレーニングを実施しながら、夏の本番に向けた準備を進めていきます。
コロナ禍はオンライン開催が続きましたが、その後は毎年、現地で開催できています。

募集をかける時期になるたびに「今年はどれくらい参加者が集まるだろうか」と内心はドキドキしているんですよ。

――Global Linkに参加した生徒や先生から寄せられた言葉で、印象に残っているものを教えてください。

2026年度シンガポール大会の受賞者

太田:以前、ある先生から「Global Linkは、生徒たちが“良質な失敗”をできる場だと思う」と言っていただいたことが、とても印象に残っています。
準備してきたけれど、思うように発表できなかった」「英語がうまく通じなかった」というような経験をする生徒もいます。そのときは失敗だと感じても、それをバネに次の成長につなげられる。そんな経験ができることに価値がある、と話してくださいました。

フェアウェルパーティーの様子

私たちは、発表がうまくできなかったとしても、それが「次につながる失敗」として持ち帰ってもらえるよう、参加者をサポートすることを心がけています。

――英語での発表に、不安を感じる生徒もいるのではないでしょうか。大会当日までには、事前トレーニングも行うとのことですが、どのような準備をするのでしょうか。

太田:Global Linkでは、英語力そのものを評価するわけではありませんが、大会前にはオンラインでのトレーニングを用意しています。研究内容を簡潔にまとめたアブストラクトの書き方や研究の深め方、英語でのプレゼンテーション、質疑応答などを学びながら、本番に向けて準備を進めていきます。

及川:ただ、こうした準備を経ても、本番だからこそ経験する難しさもあります。
以前参加したある高校では、生徒たちが数か月にわたって英語を勉強し、自分たちの研究を英語で伝える準備を重ねてきました。想定される質問も100個以上用意して、本番に臨んだんです。
ところが、ステージでの発表を終え質疑応答になった途端、まったく答えられなくなってしまって。審査員が質問を簡単にして聞き直しても言葉が出ず、終了後は悔し涙を流していました。

その日の夜、生徒たちに声をかけたところ、「悔しいけれど、日本に帰ったら、もっと英語を勉強して、必ず自分たちの研究を英語で伝えられるようになります」と話してくれました。
ほんの数時間のうちに、悔しい経験を自分たちの次の目標に変えていたんです。次の課題を見つけ挑む姿勢がとても印象的でしたし、まさに「良質な失敗」だったのではないかと思っています。

大会から「世界の研究コミュニティ」へ。Global Linkが描く未来

――Global Linkは、今後どのような場へと発展していくのでしょうか。

及川:現在のGlobal Linkは、国や地域を超えて中高生が研究成果を発表するための大会です。
この大会を将来的には、学びや交流が続くプラットフォームへ。さらにその先には、参加者同士が大会後もつながり、継続的に学んだり、一緒に研究したりできるコミュニティへと進化させていきたいと考えています。
そこには、中高生だけでなく、大人が加わってもいいと思っています。
企業や自治体など、さまざまな立場の人たちが関わりながら、年間を通して交流や共同研究が生まれる。そんなコミュニティを目指したいです。

太田:大会が終わった後も、OB・OG会で振り返りの機会を設けたり、次年度の参加者向けオリエンテーションで経験談を話してもらったりと、参加者同士の交流が続いています。
最近では、大会をきっかけにSNSでつながり、「大学進学に向けてどうしている?」など、個人的に交流を続けている生徒たちもいると聞いています。
Global Linkで大切にしているのは「グローバルな知の交流」です。単に海外の人と話すだけでなく、「研究」を共通言語に、自分の考えてきたことを相手に「伝えたい」と感じる。
そんな交流が生まれる場であり続けたいと思っています。

文:佐藤有香
写真:大童鉄平
編集:花沢亜衣

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