旅先でこそ、生まれること、つながることがある。~ ワーケーションのススメ ~
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かつて『在宅勤務』に対して、「ちゃんと仕事ができるのか」「成果を上げてくれるのか」と経営者は心配していたものですが、今ではすっかり定着し、そのメリットや必要性を評価する声は大きいのではないでしょうか。それでは皆さん、『ワーケーション』と聞いてどう思われますか?これは『Work(仕事)』と『Vacation(休暇)』を組み合わせた造語で、観光地などで休暇の前後に働くスタイルのことです。
JTBでは、このワーケーションを制度として設け、社員の利用を推奨しています。単に福利厚生の一環ではありません。「交流創造」を事業の軸として掲げる企業として、ワーケーションは有効な施策の一つであると捉えているからです。そして、この制度を積極的に活用するだけでなく、その価値を発信し、可能性を追い求め続けている社員を、今回ご紹介します。
JTB事業改革推進部 事業開発チーム 福田 敦
1991年、JTB入社。法人営業を15年経験し、企画セクションを立ち上げる。その後、現在の部門へ異動し、ワーケーションを実践しながら、新規事業の企画開発に取り組む日々。副業のライターでは風祭哲哉のペンネームで、ブログ、SNS、旅行ガイド、雑誌等のメディアを通じて日本の素晴らしさを伝えている。
気がつけば、旅先で年間120日
―ワーケーションを始めたきっかけは、どんな事でしたか。
福田:私が『ワーケーション』という言葉をはっきりと認識し、興味を持ったのは、2019年にJTBハワイが発表したワーケーションプラン『CAMPING OFFICE HAWAII』を、当時所属していた部署で取り扱うことになったのがきっかけです。コロナ禍前の、まさに『働き方改革』が叫ばれていた頃だったので、メンバーからの「これからは『休み方改革』も大切です、ワーケーションを企業へ提案しましょう!」という提案を受け、自分自身も非常に興味を持ちました。
福田:とはいえ当時は、既にワーケーション制度があったJTB社内でも利用している社員は少なく、制度の存在を知っている者もあまりいなかったのではないかと思います。実は私もその一人でしたが、翌年のコロナ禍で在宅勤務が続き、必ずしも出社しなくてよいことを実感。自分もワーケーションができるのではないかと考え始めました。そこで、緊急事態宣言が一段落した頃、九州で長期休暇を過ごす前後にワーケーションにトライしてみたのが始まりです。
―会社や周囲の反応はいかがでしたか。
福田:現在、別の組織へ異動しましたが、そこのチームでは私も含めメンバー全員がワーケーションを実践しています。例えば実家に帰省した際には、2~3日ではもったいないと、完全休暇日の前後にワーケーションを組み入れて、一週間くらい地元や旅先に滞在しています。最近では、日本各地に存在する事業部や支店でも、滞在先の地域や人と新たな事業の創出に取り組むなど、特徴的なワーケーションを行っている社員が出てきました。
私の平均的な勤務状況は、旅先で月に5日、出社が5日、在宅が10日で、計20日。一方の休暇は、旅先で5日、自宅で5日の計10日です。つまり、月の10日が旅先となります。勤務は旅先では基本8:30から17:00としていて、業務はオンライン会議や企画書類の作成、日々のルーティンワークが中心です。
旅先にて。8:30から17:00はオンライン会議や企画書の作成等のWork
九州でのワーケーション。仕事の後は会食をしたり、ひとりでの街探検をしたり
朝は散歩やジョギング
引き続き九州。休暇の日は企画書のアイディアの妄想等をしながらVacation
休暇の日はレンタルバイクでVacation、仕事の日は企画書の仕上げ ・人事評価面接等のWork
ワーケーションを価値あるものにする意識や視点
―ワーケーションの価値とは、どんな事が考えられますか。
日常からの脱出!北海道の名所(?)にて
福田:個人の仕事におけるワーケーションのメリットとしては、非日常の空間であることで、“メリハリ” と“ひらめき”が生まれることだと考えています。まず“メリハリ”ですが、非日常の空間だからこそオンとオフの切り替えがしやすいと感じます。私の場合、いわゆる「オフ」の過ごし方として、朝は散歩やジョギング、夜は旅先の知人との会食や、ひとりでの街探検、ブログやSNSの発信など、さまざまなことに時間を利用できています。
北海道では引退後のダービー馬ウイニングチケットと出会うこともできた。名馬のそばで仕事も可能。
また、“ひらめき”を生み出すために、私はワーケーションを実施する際、期間を3段階に区切って「仕事⇒休暇⇒仕事」としています。最初の2日くらいで仕事に関する情報を集め、頭へインプットしておきます。そして休暇を楽しみながら何気なく考えごとをしていると、見たことのない景色や人から“ひらめき”を得て、思いがけない発想につながることが少なくありません。最後に休暇明けの2~3日でアイデアを一挙にまとめ上げる。そんなサイクルで仕事をすると成果や効率が上がる実感があります。
福田:そして重要なのが、やはり企業側にとっての導入意義です。ワーケーションは企業の課題解決の手段であり、目的ではありません。社員の「心身の健康」や「発想力・生産性の向上」といった基本価値に留まらず、事業における何らかの成果につなげなければなりません。例えば、休暇の取得が促進されることで離職率の低下や、採用活動への効果も期待できるでしょう。それだけではなく、楽しむだけだったインセンティブ旅行(※)の中にワーケーションを取り入れることで、新たな働き方のきっかけを得る機会にしたり、研修旅行をさらに充実したものに変えたりすることもできると考えています。社員が地域の人々と触れ合うことによって、新たなビジネスのアイデアを得たり、地方創生活動に寄与することもできますし、旅先で社会貢献ができれば、企業のSDGs活動の一つとすることもできるかもしれません。
とはいえワーケーションの導入に、積極的に踏み切れる企業は、まだまだ多くありません。しかし、実際に導入している企業の話を聞くと、皆さん、「思った以上にメリハリをつけて仕事をしている」「新たな知見を得て戻ってきてくれる」と評価されているケースがほとんどです。
(※)報奨旅行、招待旅行等
ワーケーション先での交流が、将来の事業へつながることも
鹿がいた!
福田:そしてもう一つ、ワーケーションの価値や魅力として挙げたいのが、社内では得られない『人脈形成』です。奈良県の月ヶ瀬という場所にあるワーケーション施設を訪れた時の話です。そこでは、都市部から人を呼び込み、地元の人との交流から、地域の新しい形を創っていこうという動きがあります。すでに大手企業の社員などが滞在して地域需要を開拓していたり、ワーケーションをしながら商品開発のミーティングをしたり、さまざまな方法で活用されています。またこの施設には地元のシニアやお子様連れの方なども訪れて来ますので、こうした都市の人々と地域の人々との交流にも期待できるでしょう。私も、あるメーカーが行うプロジェクトを月ヶ瀬で実施してはどうか、と紹介したことがあります。
また先日は、ワーケーション好きな他社の担当者と、「全国どこでも、誰とでも自由に働ける環境をつくり、ワーケーションをもっと一般化することを目指す事業を開発できないか」などという話にもなりました。
ワーケーションは、未来への投資
―ワーケーションがより普及するためのカギは、どんな事が考えられますか。
福田:さらなる働き方改革やダイバーシティの実現、地方創生などの観点から、今後も国を挙げたワーケーション推進の流れが続くと思っています。しかし、個人が長期間ワーケーションを実施し続けるには、金銭的な負担も大きいのが現状です。そこで、企業にワーケーションの価値を知っていただくことで、こうした費用の一部をバックアップしていただければと考えています。例えば、出張先で休暇やワークを実施できるようにする制度(ブレジャー)の導入です。追加の宿泊費は自己負担ですが、交通費は出張費とすることで、個人の負担を軽減することができます。
企業のさまざまな経営課題を解決する力が、ワーケーションには数多くありますので、未来への投資や課題解決のための手段として、活用を強くおすすめします!それと同時に、受け入れる地域側も企業の経営課題解決につながる価値を磨くことで、双方でその効果やメリットを感じていただけるのではないでしょうか。
―今後の展望をお願いします。
福田:『交流創造事業』を事業ドメインとするJTBは、先頭に立ってワーケーションで人流を創り出すべきだと思っています。私もJTBの事業開発の担当として、人々が自由に旅するように働けるサービスや、あるいは企業の課題をワーケーションで解決できるような提案を、これからも創っていきたいと考えています。まずは自らワーケーションを実践しながら、多様な人と知り合い、新しいものに触れ、それを自身の業務に結び付けていければと思います。
一方で、ワーケーションの良さや価値を、もっと世間に伝えて理解を広げていくことも重要だと考えています。実は、個人でブログの運営やトラベルライターもしているので、そこでは旅やワーケーションの楽しさを伝えていきたいなと。ワーケーションをさせたい企業と、やりたい社員が両立しないとムーブメントは生まれないので、これからもワーケーションを通じて、旅の持つチカラや、魅力を発信していきたいと思います。
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