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熱い地域愛をショートドラマに。JTBとケンミンSHOWが進める地域発信の新しいアプローチ

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県民性やご当地あるあるで人気の長寿番組「秘密のケンミンSHOW極」。
この制作を手がける読売テレビと、全国47都道府県にネットワークを持つJTBが2025年5月にタッグを組み、ショー旅 Instagram公式アカウントなどで、SNS限定ショートドラマ「推し活女子のケンミン旅」をスタートさせました。そこには、地域の魅力を新たな形で届けたいというJTBの思いが込められています。

このショートドラマ制作プロジェクトを牽引する読売テレビの野瀬氏と、JTB地域交流チームの嶋田に、取り組みの舞台裏と今後の展望を聞きました。

読売テレビ放送株式会社
ビジネス局 ビジネス企画部 野瀬 慎一

「秘密のケンミンSHOW極」の元チーフプロデューサー。
約5年間番組制作に携わる。2024年より本プロジェクトの仕掛け人として、ショートドラマ企画の全体プロデュースを担当。

JTB ツーリズム事業本部
地域交流チーム 嶋田 幸子

JTBの地域交流チームにて、地域の魅力発掘・発信に従事。
本プロジェクトでは、JTB側の統括担当として、全国の観光開発プロデューサーと連携しながら、取り上げる県の選定やコンテンツ企画を担う。

テレビ番組の資産を、若い世代に届けるために

――まずは、この取り組みが始まったきっかけを教えてください。

野瀬:もともと過去にケンミンSHOWのプロデューサーを5年ほど担当していたのですが、別の番組に異動しまして、2024年1月頃、ケンミンSHOWに戻ってきてチーフプロデューサーを担当することになりました。番組としては長寿番組で幅広い世代に人気があるのですが、テレビのコンテンツをさらに広くリーチさせるにはどうしたらいいかと考えていたんです。

そんなとき、ショートドラマの制作会社さんと「何か一緒にできないか」という話になりました。僕は以前、番組内のミニドラマ「辞令は突然に…」を担当していたのですが、それをアレンジして今の時代に合った形で届けられないかと考えたんです。

――「辞令は突然に…」は、主人公が毎週違う地域に転勤するというコメディドラマでしたね。

野瀬:そうです。各都道府県ならではの文化や風習を、外から訪れた人の驚きという切り口で描いていました。このテイストを若い世代に届ける方法として、まさにショートドラマがもってこいなのでは、と思ったんです。これまでも方言やグルメなどを番組で取り上げてきましたが、それをギュッと凝縮したショートドラマを作って「あなたの住む地域にはこういう魅力があるんですよ」と若い世代に伝えられたらいいなと。

ターゲットやプラットフォームを若い世代向けにするのであれば、主人公も同世代が良い。そこから「東京一郎(※)」の姪っ子ぐらいの年齢で、大学生が各地を旅するストーリーが生まれました。
そしてこの企画を実現するためのパートナーを考えたとき、最初に思い浮かんだのがJTBさんでした。全国に影響力があって、旅のプロでもある。それに、 JTBさんとしてもきっと、地域の魅力を若い世代に届けたい気持ちがあるんじゃないかという予感もあり、相談させていただいたんです。

※ 秘密のケンミンSHOW内で放送されていたドラマ「辞令は突然に」の主人公。東京出身のサラリーマンで、ドラマ内では転勤先で各地のケンミン文化を体験するという設定だった。

嶋田:お声がけいただいたときは本当に嬉しかったです。「ケンミンSHOW」はずっと見ていた番組でしたし、おっしゃるとおり、JTBとしても若い世代へのアプローチは課題でした。

加えて、私たちは「旅行会社」としてのイメージが強いのですが、実際には自治体や事業者の皆さんと一緒に、地域の魅力を掘り起こし、新たなコンテンツをつくる取り組みも行っています。でも、なかなかそれを十分に伝えられる機会がなかった。このプロジェクトを通じて、JTBが地域の皆さんとともに取り組んできた価値づくりを、より多くの方々に届けていきたいと感じました。

地域が主役。あえて控えめにしたJTBの存在感

――お二人の役割分担はどのようになっているのでしょうか。

嶋田:まず「どの地域を取り上げるか」はJTB側で検討します。全国47都道府県に観光開発プロデューサー・営業推進担当者がいますので、それぞれから意向をヒアリングして提案しています。そこから「どのようなストーリーにするか」「具体的にどこで撮影するか」を野瀬さんと一緒に詰めていく感じです。

野瀬:僕は「仕掛け人」という立場で、全体のプロデュースを担っています。ただ、ドラマの内容を決める際には、あまり表に出ないようにしていて。実際にその地域で働いているJTBさんの社員を集めて「ネタ出し会」をやるところからはじめるんです。

嶋田:この「ネタ出し会」がすごく面白いんです。
各地で働くJTB社員は、生粋の地元の人もいれば、転勤で来たばかりの人もいますから、「焼酎の飲み方ってこれが普通なの?」「当たり前じゃないですか、まだ慣れてないんですか?」みたいな会話がリアルに起きて(笑)、まさにケンミンSHOWが打ち合わせの場で行われているような感じで盛り上がるんです。

野瀬:そういう会話のなかでポロッと出てきたりするエピソードが新しいネタにつながることはよくありますよね。地域の方々からしたら当たり前なことでも、はたから見たときに「実は面白いことですよ」というのを発見したい。それをコンテンツとして届けることで、「え、みんなこれでびっくりするの?」と新鮮な驚きにつながります。それもある意味、観光資源なのではないかなと思うんです。

――動画を見ると、JTBが関わっていることがあまり前面に出ていませんね。

嶋田:そこはかなり意識しています。消したくはないけど、ぐっと抑えているという感じです。一応ハッシュタグには「JTB」とついていますが、動画を見ただけではJTBの関与に気づかないかもしれません。主役はあくまで地域と住民の皆さんだからです。
「こんないいところがあるから行ってね」という押し売りではなく、見ている間に「ここ、行ってみたいかも」と自然に思ってもらえるように。そのためにJTBの存在感は、あえて控えめにして、我慢しながらやっています(笑)。

野瀬:だからこそ、コンテンツ制作側としては面白いものを作らないといけないというプレッシャーがあります。ドラマとして見て「面白い」と思えるクオリティでないと、見てもらえませんから。

――最初から今のような体制でスムーズに進行できたのでしょうか。

嶋田:JTBとしても初めての挑戦ということもあり、最初は手探りでした。私自身、今回の取り組みをきっかけにTikTokをインストールしたくらいです。
私たちは「地域の皆さんと一緒に汗をかいているJTBの姿」も知っていただきたいのですが、SNSの世界では、まずコンテンツとして「楽しんでいただく」ことが大前提。役立ちそうな情報を真面目に発信するだけではなく、視聴者が興味を持つ「あるあるネタ」をどう盛り込むかというのがとても重要です。1本目の沖縄編から、そのあたりのバランスをどう考えていけばいいのか、わからない状態でのスタートでした。

野瀬:先ほど嶋田さんも触れていましたが、「JTBがこういうことをやっています」「こういう旅先があります」と直接PRしても、若い世代には届きづらいこともあるんですよね。興味をもった場所に直ぐにSNSで触れる事ができる、世間では旅行離れしているといわれている世代にどうアプローチし、興味を喚起すればいいのか。
そこで重要になるのが「物語」です。ドラマを見て、そこに登場する場所やグルメに興味を持ち、「自分も行ってみたい」と思ってもらう。そんな導線を作ろうという話を最初にしましたよね。

山梨の「硬い桃」が300万回再生。議論を呼ぶネタが“バズる”

――これまでに沖縄、香川、山梨、福島、鹿児島と5つの地域を取り上げています。反響が大きかった企画について教えてください。

野瀬:山梨県でとりあげた、桃については反響が大きかったですね。一般的に「桃は熟して柔らかいのが美味しい」と思われがちですが、山梨の方はリンゴみたいにシャキシャキの硬さで食べるのが美味しいと言うんです。しかも皮付きで。

嶋田:それを動画で紹介したら、コメント欄がすごいことになって(笑)。

野瀬:InstagramやTikTokで合計300万回以上再生されました。「硬い桃なんてありえない」という人と「いや、本当だよ」という人で議論になって。福島も桃の産地なので、福島の方も「うちも硬いまま食べる」と。こうした価値観の違いが生まれるネタは、コメント欄が活性化して盛り上がる傾向があるんです。今回も地域を超えて皆さんに反響をいただけたので、よかったですね。
実はこの撮影、大変だったんですよね。撮影時期が5月末とまだ桃の季節には少し早くて、スタッフ総出でいろいろと探しまわっても、なかなか見つからなかったんです。結局、たまたま駅で見つけた販売所で硬い桃を入手することができ、なんとか撮影できました。

推し活女子のケンミン旅  山梨編より

――鹿児島編も話題になったそうですね。

嶋田:鹿児島編では、桜島が噴火しているシーンがあるんです。主人公が「大丈夫!?」と驚くのに、周りの県民は平然としているという描写で。コメント欄では「本当にこんなことあるの?」「日常茶飯事だよ」というやり取りが生まれていました。

野瀬:鹿児島の方って、火山灰の大変さもあるんですけど、桜島への愛情がすごいんですよ。多くの方が「噴火してないと桜島じゃない」って力説されるんです。こういう地元ならではの感覚を伝えられたのはよかったですね。
ショートドラマだけでなくVlogを取り入れて、一連の旅の行程として見せるようにしたのも鹿児島編が最初でした。桜島に行って、霧島神宮に行って、地元の「A-Zスーパー」に行って…と、旅している感覚で見ていただけるように工夫しています。1本見たら次も見たくなるような構成も意識しましたね。

@showtabi_24_ 1泊2日で行く!鹿児島旅のオススメSPOT! ①黒島神宮 鹿児島県霧島市霧島田口2608−5 ↓ ②黒酢ガーデン壺畑SHOP&RESTAURANT 鹿児島県霧島市福山町福山3075 ↓ ③A-Zはやと 鹿児島県霧島市隼人町真孝3677 ↓ ④仙巌園 鹿児島県鹿児島市吉野町9700−1 ↓ ⑤ウォーターフロントパーク 鹿児島県鹿児島市本港新町5−4 ↓ ⑥黒豚料理 あぢもり 鹿児島県鹿児島市本港新町5−4 【出演】 工藤美桜(@工藤美桜 ) #ケンミンショー #JTB #鹿児島県 #kagoshima #ショー旅 ♬ オリジナル楽曲 - ショー旅

嶋田:もちろんJTBとしてのビジネスにつながるからというのもありますが、それよりも「いいところだな」と地域の良さが伝わることを大切にしています。見ている間に、「ここなんだろう、行ってみたいな」という気持ちにつながればと考えていろいろと試行錯誤しています。
なので、これまでに公開してきた動画やVlogを見ると、毎回少しずつ手法も変わっていて、試行錯誤の歴史が垣間見られると思います。

野瀬:Vlogのほうがショートドラマより自由度が高く、シンプルに紹介するだけでも成立するのが特徴です。
そのなかで、主演の工藤美桜さんのナチュラルな魅力をどう生かし、どう面白くするか、どうやったら視聴者の関心をひけるのかというのは常に考えています。押し売りしすぎず、それでいて地域の魅力はしっかり伝える。そのバランスや温度感は、だんだんつかめてきているように思います。

嶋田:野瀬さんのお話にもあったとおり、地域の「当たり前」を、外の視点で「面白いこと」として発見する。これは私たちのコンテンツ制作の重要な軸です。
一方で、最近では地域側から「こんな魅力があるから出してほしい」という提案もいただけるようになり、そちらをベースに作り上げるというかたちもできてきています。私たちが見つける魅力と、地域が伝えたい魅力。この両方が融合することで、より深みのあるコンテンツが生まれています。

地域が主役、JTBはそのパートナー

――自治体からの反響はいかがですか?

野瀬:数年前から自治体も動画でPRしたいという思いを持っていろいろと取り組んでいらっしゃるんですよね。ただどうしても自治体のホームページに載せるだけではなかなか見てもらえない。その点、このプロジェクトはTikTokやInstagram、YouTubeというプラットフォームで発信できるので、より多くの方にリーチできる取り組みとして評価いただいています。

嶋田:ドラマの内容でいうと、地元の人なら誰でも知っているけど、観光ガイドには載っていない場所を取り上げたりしているんですよね。その土地の日常や、暮らしのなかの魅力も知っていただけるのが見どころでもあるんです。

そういった点から、自治体からは、移住促進の観点からも関心を寄せていただいています。「こんな暮らしができる街なんだ」「この地域にはこんなに良いところがあるんだ」という発信を通して、Uターンや移住につなげられないかというようなお声も届いています。

8,432通の動画が集まった「ケンミンショー旅アワード2025」

――昨年11月には「ケンミンショー旅アワード2025」という一般参加型のコンテストも開催されたそうですが、どのような取り組みだったのでしょうか。

野瀬:私たちが発信するドラマとは別に、地元の方々が「うちの街はこんなところなんだよ」と発信している動画ってたくさんあるんですね。そういった動画を募集し、表彰するコンテストを企画しました。当初は「47都道府県×100本」で4,700本が目標だったのですが、結果として8,432通もの動画が集まりました。
審査は大変でしたけど、皆さんの県民愛がぎゅっと詰まった動画がたくさん集まって。今後はこれを自治体が活用するような動きが出てくると面白いなと思っています。
例えば「みんなでここに応募しよう」という呼びかけが広がれば、特定の地域の魅力がSNS上で一気に流れる、なんてことも起きるかもしれない。

嶋田:私たちも表彰イベントで野瀬さんと一緒に登壇し、JTBとして地域の魅力発信をサポートしていることを紹介させていただきました。地域にはまだまだ知らない魅力が山ほどあって、「次はここに行きたいね」と勉強させてもらえるような動画も多かったです。


47都道府県を回る、その先に

――最後に、今後の目標と、本取り組みによって目指している未来について教えてください。

野瀬:コンテンツ制作を担う我々としては、しっかりした作品を作り続けることが使命です。 将来的には、「この地域のことを知りたければこの動画を見れば分かる」というところまで持っていくこと。そうなったらすごくいいなと思っています。

嶋田:JTBとしては、最終的に47都道府県を回りたいというのが一つの目標です。今は4か月で1県というペースなので、かなり先の話になりますが(笑)。 それから繰り返しになりますが、最近はありがたいことに地元の企業や大学、自治体の方からも一緒にコンテンツを作りたいというお声をいただき、動き始めています。
今後も地域の声を聴きながら、JTBも一緒に地域の魅力を磨き上げ、新しい価値を創造していきたいですね。そして取り組みを続けていくなかで、たくさんの地域の皆様と動画を作り、地域を盛り上げていけたら嬉しいです。

文:大西マリコ
写真:大童鉄平
編集:花沢亜衣

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