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アサヒビールとJTBが共に手を携えて。共創から始まる「つなぐ・つくる・つなげる」

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2022年、とあるプロジェクトの発足を皮切りに、共創を始動させたアサヒビールとJTB。全くの異業種である両社が手を携えたことに「いったい、何をするの?」と疑問符が浮かんだ方もいるのではないでしょうか?

しかし、アサヒビールとJTBの共創は豊かな広がりを見せ、あらゆる地域やシーンで花開こうとしています。今回は、両社の共創を牽引するお二人にインタビューしてみました。

アサヒビール株式会社 企画・支援本部 S&OP企画部 部長 田上 寛隆

2000年にアサヒビール株式会社入社。2010年に本社へ異動。経営企画部、マーケティング企画部、営業企画部を経て2024年春より現職。S&OPとはSales and Operations Planningの略で、販売計画・需要予測と生産・供給計画を統合し、経営目標とのギャップを議論・意思決定に導く計画達成プロセスの推進や、各部門と連携した解決策の実行支援を行っている。趣味は大衆店の食べ歩きとジム後の銭湯通い。

JTB ビジネスソリューション事業本部 第二事業部 営業開発プロデューサー 井上 孝矩

2008年、株式会社JTB九州入社。法人営業を担当し、2011年より地域交流事業に従事。2023年より現職。複数企業の地方創生関連のアドバイザーとしてアサヒビール様をはじめ、企業と地域のマッチング事業、産官学連携を軸にした共創・新規事業を推進している。2024年11月より農林水産省の官民共創・地方応援税制アドバイザーにも就任。趣味は古建築・文化財探訪、温泉地巡り、農林漁業体験。

“コト”と“モノ”のかけ算が切り拓く、新たな可能性

――アサヒビールとJTB、両社の共創はどのように始まったのでしょうか。

井上(JTB):始まりは2022年でしたね。アサヒビールさんと、ニッカウヰスキーさん、青森県弘前市、JTBの官民が連携し、りんご農家の支援を目的とする「ひろさき援農プロジェクト」を発足させたことがきっかけです。

田上(アサヒビール):弘前はりんごの名産地です。アサヒビールのグループであるニッカウヰスキーは弘前に工場を持ち、そこでは国産りんご100%のシードルを製造しています。しかし、肝心のりんごを生産する農家さんの人手が足りず、特に小規模農家の数は減少の一途。こうした課題の解決に向け、何か取り組みができないか。その知見をいただくべく、当時、弊社のRTD※マーケティングの担当者が、JTBさんにお声掛けしたのが始まりでした。

※ 「READY TO DRINK」の略称。ふたを開けてすぐにそのまま飲める飲料。

ひろさき援農プロジェクト実施時のボランティアの方々の様子

井上(JTB):そうですね。プロジェクトの発足後、本格始動したのは2023年のこと。「りんご農家ボランティアツアー」と銘打ち、一般の旅行者の方にりんごの収穫を体験いただきました。ニッカウヰスキー弘前工場で製造された、「ニッカ弘前 生シードル」のお土産を付けさせていただいて。
アサヒビールさんの圧倒的なブランド力を強みに、JTBのドメインであるトラベル・MICE事業を軸に交流創造・地方創生を促す。これが共創の始まりです。

田上(アサヒビール):当然ながら、私たちアサヒビールに旅行の知見はありません。その点、JTBさんは旅行会社の国内最大手。地方創生にも実績がおありです。ゆえに集約やアテンドのみならず、自治体とのネットワークや地域振興のための仕組みや制度に関するノウハウも豊富。そうしたJTBさんと手を携えたなら、お互いの強みを生かし合うのはもちろん、我々にはない新たな知見を学ぶこともできる。当時の担当者も、そこに期待したはずです。

井上(JTB):田上部長のおっしゃった「互いの強みを生かす」ことこそ、共創の在るべき姿ですよね。JTBは形のない“コト”を生業とする一方、アサヒビールさんは「アサヒスーパードライ」をはじめとする商品はもちろん、見学プログラムを実施する蒸溜所や、工場併設のミュージアムも運営されています。そうした商品や施設と我々が強みとする交流創造を掛け合わせたなら、新たな価値と可能性が生まれるはずなんです。

田上(アサヒビール):共創から生まれる新たな可能性に、まずは賭けてみる。この姿勢は2023年3月にアサヒビールの社長に就任した、松山一雄のモットーでもあります。万が一失敗したとしても、意志ある失敗なら称賛する。こうした松山の志も後押しとなり、共創の取り組みを広げるべく、今も試行錯誤の真っ最中で、JTBさんとの取り組みが続いています。

両社のタッグからつながり、広がりゆく、共創の輪

――一度の取り組みに終わらず、広がりを見せる両社の共創。現在の取り組みを教えてください。

ふるさと納税プロジェクトの寄付で実施された、北海道余市町第56回北海ソーラン祭りの花火

井上(JTB):同時並行的に、さまざまなプロジェクトが進行しています。代表例を挙げるなら、アサヒビールさんが地方公共団体に寄付を実施する、総額1億円企業版ふるさと納税プロジェクトです。持続可能な社会の実現に貢献することは、両社共通の重要テーマ。その観点から中長期的な支援を目指し、このプロジェクトは2弾構成となっています。
第1弾は全国各地の祭り・花火の支援を目的に、寄付先となる自治体を公募。第2弾は「食文化の継承」をテーマに、こちらも寄付先の自治体は公募から決定する仕組みです。第2弾はまさに今、取り組みが進んでいる最中ですね。

田上(アサヒビール):寄付先となる自治体を公募し、応募いただいた自治体のなかから支援先を決定する。これは“逆公募”とも呼ばれるスキームですが、ご提案くださったのは井上さんです。“逆公募”の形をとる理由を聞き、なるほど、と膝を打ちましたね。

井上(JTB):地方創生の文脈において、この企業発“逆公募”のスキームは、珍しいパターンといえます。しかし、公募に手を挙げるということは、それだけの強い意思があるということ。その姿勢に、地元のお祭り・花火存続に賭ける強い想いがにじみます。この想いの強さの分だけ、支援元となる企業とのリレーションも深まる。これは交流創造を標榜するJTBとして、強く実感するところです。
そして、支援元と自治体のリレーションが深まったなら、一時的な支援関係にとどまらず、今後の新たな展開(官民連携による共創の輪拡大)にも期待と可能性が拓けます。

田上(アサヒビール):井上さんのご提案をもとに公募を実施し、第1弾の祭り・花火の支援に一区切りがついた今、「おかげで花火を復活させられた」というお声も頂戴しています。こうして芽生えたリレーションによって次なる展開が考えられるようになったのはもちろん、アサヒビールの重要テーマである「人と人とのつながりの創出による持続可能なコミュニティの実現」についても前進したはずです。このプロジェクトにより、地域をつなげる催しが復活したのですから。

――両社の共創により、つながりがさらに広がる。興味深いお話です。

井上(JTB):まさにそうなんです。共創は広がりを生むんです。そのことを象徴しているのが、こちらもアサヒビールさんと共に取り組んでいる、「訪日外国人に向けたナイトタイムエコノミーの創出」です。これは経済と文化、その両面から地域活性を目指すプロジェクト。この夏にはビアガーデンやスナック横丁へのツアーを企画し、訪日外国人の方に“日本の飲み会文化”をご紹介しました。

田上(アサヒビール):「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は訪日外国人の方にも好評です。“日本初の没入型ビールのコンセプトショップ”として銀座に期間限定オープンしていた「SUPER DRY Immersive experience」も、インバウンドの来店が全体の約18%。このコンセプトショップが物語るように、お酒を飲む環境が印象的なら、味わいもより深く残るんですね。となれば、魅力的な環境を開拓するべく、JTBとアサヒビールの枠組みを超えた共創が必要ですし、スナック横丁へのツアーを例にしても、その地場に経済的活況が生まれます。

井上(JTB):複数の企業が意志をもって手を携えれば、新たな可能性が広がる。これはどの企業も考え、重視するところではないでしょうか。というのも、このプロジェクトについて共同リリースを発表したところ、実は60以上の企業・自治体から「我々も参画させてもらえないか?」というお声を頂戴したんです。
そして、お声掛けくださった企業の一つが石川県七尾市、和倉温泉の名旅館、加賀屋さんです。2024年10月から12月、今回のプロジェクトの一環として、実際にアサヒビールさん、加賀屋さん、JTBの3社が共創するナイトタイムショーを開催しています。

10月に実施されたレプラカン歌劇団の公演の様子

田上(アサヒビール):加賀屋さんは能登半島地震の大きな被害を受け、現在は営業停止を余儀なくされていますが、旅館の醍醐味である美しくおいしい食事に、お酒として華を添えるという立場で、卸業者や酒販店を通じ、長年のお付き合いをしてきました。
さらには、加賀屋さんは加賀と能登の伝統を今に伝える老舗です。加賀屋さんとの共創は、加賀屋さんを支援し、伝統を持続可能にすることにもつながります。

井上(JTB):言うまでもなく、加賀屋さんも日本を代表する名旅館であり、そこで宿泊客に夜のエンターテインメント の目玉として提供しているレプラカン歌劇団のショーは国内外多くのお客様から支持を受ける本物のナイトタイムエコノミーコンテンツです。今回の取り組みは復興支援・職域拡大という支援の側面もありますが、単にそれだけではなく、復興中そして復興後をも見据えた共創だと思っています。

加賀屋さんは営業停止中も従業員の職を守るため、出向先の確保をはじめとする取り組みをされており、今回のナイトタイムショーもその一環。加賀屋さんの「レプラカン歌劇団 」と我々のプロジェクトを掛け合わせたなら、国内のお客様はもちろん、インバウンドのお客様もきっとお喜びになる。しかも、レプラカン歌劇団 はインタラクティブなショーを売りにしています。演者と観客が触れ合いながら、生ジョッキ缶をプシュッ! これは間違いなく盛り上がるぞ、と確信しています。

田上(アサヒビール):私たちにお酒の用意はできても、ショーの舞台を手配することには専門外。一方のJTBさんは、その道のプロです。プロが手配する舞台なら、ショーもより映えます。お客様をもてなし、楽しませるプロである加賀屋さんと、その舞台を手配し、お客様をお導きするプロであるJTBさん、そこにお酒のプロであるアサヒビールという、まさに共創です。

井上(JTB):これは私たちJTBとしても同様です。多くの方が行ってみたい目的地や体験したいコンテンツに対してお客様を募り、目的地へお送りするのは私たちの役割ですが、実際に人々を魅了するショーを企画構成し実演したり、多くの方々から愛される本当においしいお酒を作ったりすることはできません。しかし、3社が共創したなら、楽しさもおいしさも膨らみ、より一層、記憶に残るイベントの開催や、交流の場を創出できる。このプロジェクト自体はインバウンド向けに発足したものですが、加賀屋さんのショーは日本にお住まいの方も大歓迎です。ぜひ、ご覧いただきたいですね。

風の時代の今こそ、三方良しのリレーションシップ

――ショーはもちろん、共創のさらなる広がりも楽しみです。では、今後の展望についても教えてください。

田上(アサヒビール):総額1億円企業版ふるさと納税プロジェクトも、訪日外国人に向けたナイトタイムエコノミーの創出も、現在進行形のプロジェクトです。試行錯誤しながら施策を続け、今後もJTBさんと膝を突き合わせながら、明確な勝ち筋を見つけていく。そして、そのなかで海外のお客様に我々の商品を手に取っていただくための方程式が導き出せたなら、今の“プロジェクト”という形態から“事業”へと発展させ、輸出ビジネスにもつなげたいですね。今の段階からすれば、大きな話かもしれませんが、JTBさんとの共創には、それだけの可能性があります。

井上(JTB):ありがとうございます。今、田上部長のおっしゃった輸出という観点は、私たちJTBも大きな可能性を感じているところです。観光業は自動車産業に次ぐ日本の主要かつポテンシャルの高い輸出産業です。より両社の強みを生かした訪日外国人へのアピールが叶えば、クロスバウンド、つまりはお客様が帰国した後にも効果が波及し、それはアサヒビールさんの売上然り、世界各国にネットワークを持つJTBの利益創出にもつながるはずですから。

田上(アサヒビール):井上さんのおっしゃるとおり、目指すところはWin-Win。“風の時代”とも呼ばれる今、何が流行るか予想がつきません。だからこそ、あらゆる企画を立て、実施し、その効果を検証するトライアンドエラーの取り組みがものを言うはずです。これも我々の社長の言葉ですが、重要なのは「早く安く賢く失敗して、そこから学ぶ」。長く培った各々の強みを生かしつつ、スピード感とトレンドに即したアイデアを持ち寄って試行錯誤を重ねた先に、新しい価値やビジネスを生み出せると思っています。

井上(JTB):そのためにもアサヒビールとJTBの枠組みを超えた、さらなる共創の模索を続けていきます。言うなれば、それぞれの強みをつなぎ、それぞれの利益につなげる三方良し。両社の共創を軸に連携の輪を広げ、そこから生まれた知見を未来に生かす。これを実現させることこそが、私たちが価値創造において大切にしている「つなぐ・つくる・つなげる」の体現です。

文:大谷亨子
写真:飯本貴子
編集:花沢亜衣

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