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日本のJTBから世界のJTBへ。MLBとの国際パートナーシップ締結で深めたグローバルビジネスへの確信と期待【後編】

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2024年1月、JTBとメジャーリーグベースボール(以下、MLB)は国際パートナーシップを締結。一見突然にも思えるパートナーシップですが、そこには、長い時間をかけて描き、歩んできたロードマップと未来への確信がありました。

JTBにおけるスポーツビジネスの領域を牽引してきた五十嵐善寿と、スポーツビジネスの最前線で奮闘する鳴尾仁秀が、前後編の2回にわたり、JTBが切り拓いてきた道とスポーツがもたらす可能性への期待を語り合います。
後編では、JTBとMLBの国際パートナーシップ締結の裏側、そしてその先にある「世界のJTB」というビジョンについて聞きました。

Global Sports Business
Development Senior Director
五十嵐 善寿

1993年日本交通公社入社。長年にわたり国際スポーツイベントに従事し、欧州本社勤務を経て、2014年スポーツビジネス推進室長に就任。英国企業との合弁会社を設立後、取締役副社長を経て、現在はロンドンを拠点に新たなグローバルスポーツの事業開発を担当している。

ツーリズム事業本部 スポーツ・エンタテイメント共創部
推進担当部長 鳴尾 仁秀

1998年JTBへ中途入社。入社後関西エリアで法人営業、訪日インバウンド事業を担当。2016年からスポーツビジネスに従事。オリンピック・パラリンピック5大会(リオ、平昌、東京、北京、パリ)の事業企画を担当したのち、2024年からメジャーリーグベースボールの事業企画を担う。

「憧れを超えられる」、感じた矢先に届いた一通のメール

—— スポーツビジネスへの挑戦を続け、JTBは2024年1月にMLBとの国際パートナーシップを締結。協業のきっかけをお聞かせください。

五十嵐:最初のコンタクトは2016年、リオオリンピックが開催された年でした。私もJTBの一員としてオリンピックの観戦者のサポートに赴きましたが、リオデジャネイロへのフライトはニューヨーク経由。途中でマンハッタンにあるMLB本部を訪れたことがきっかけです。役員の方と面会しましたが、率直に「MLBのビジネスパートナーになるには、JTBには何が必要ですか?」と尋ねたことを覚えています。
ほかにもグローバルにビジネスを展開することについて、いろいろな話をしましたが、相手の方はとても親身にアドバイスをくださいました。同時に、当時のMLBとJTBに重なるところを感じたんです。野球はアメリカの国民的スポーツであり、市場規模も大きい。
ただ、世界規模のサッカーと比べると、野球が真にグローバルスポーツとは言いきれない。つまり、MLBはよりグローバルを目指している。そして、私たちJTBも世界に挑戦すべくスポーツビジネスに乗り出した。MLBとの共通点を感じた瞬間でしたね。
その後も折に触れてはMLBの関係者にコンタクトを取り、JTBが公式ホスピタリティプロバイダーを務めた2019年のラグビーワールドカップにも招待しました。
しかし、それまで築いてきたMLBとの関係がいったん途切れてしまった。理由はほかでもない、新型コロナウイルスの流行です。

—— 自由な移動が制限されたコロナ禍。関係構築が難航するなか、何が転機になったのですか。

五十嵐:新型コロナの流行は、JTBのスポーツビジネスにも大きな影響を及ぼしました。国内唯一の公式ホスピタリティプロバイダーとして観客の皆様をお迎えした2019年のラグビーワールドカップ、1年延期にはなったものの“旅行業務およびナショナルホスピタリティサービスパートナー”として大会に貢献した東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会…と順調に歩みを進めていたにもかかわらず、その流れが為す術なく途切れてしまったのですから。

それがある日、MLBから一通のメールが届きました。差出人は2016年に面会した役員の方。メールの文末には「今後のパートナーシップについて話がしたい」とあり、途絶えていた関係が一気に前進したわけです。

JTBのドメインは「交流創造」、だから何でもできる

—— しかし、グローバルな契約だからこその難しさもあったのではないでしょうか。

五十嵐:正直なところ、私に怖さは皆無でした。私たちJTBは以前からMLBにコンタクトを取っており、コロナ禍を乗り越え、相手からラブコールをいただけた。となれば、MLBとJTBは相思相愛。あとは契約内容をどうするのか、ひざを突き合わせるだけです。
もちろん、契約にはマネーが動き、JTBだけが得られるライツ(権利)を勝ち取らなくてはいけません。簡単な仕事ではありませんが、私はスポーツビジネスに関わり始めた1996年から幾度となく、交渉の最前線に立ち合ってきました。そこで莫大なお金が動くことも、膨大な枚数の契約書が必要になることも承知の上。
迷いもためらいもなく、考えるべきはいい条件で契約を結ぶことだけでした。

鳴尾:とはいえ、それは五十嵐さんの経験と突破力があってこそ。私自身、MLBとのビジネスに携わり始めた当初は、あまりに分厚い契約書の束に圧倒されましたから(苦笑)。でも、私には経験がないのだから仕方ない。わからないことは先輩や上司に何でも聞き、不安があれば臆することなく相談しました。そうしてスポーツビジネスやライツビジネスの何たるかを学ぶうちに、次第に自分の経験が生きてきたんです。

スポーツビジネス推進室に配属される以前、私はインバウンド事業を担当していたこともあり、海外とのやり取りは日常茶飯事。規模の差こそあれ、英語、中国語、韓国語といったさまざまな言語で、あらゆる海外企業と契約書を交わしてきました。その経験と今の仕事がリンクし、大型契約の組み立て方、考え方がクリアに見えてきたんです。そのときに感じましたね、JTBは何でもできる会社なんだ、と。
私たちJTBの事業ドメインは交流創造です。旅行を軸に人と地域をつなげることから始まり、人と組織をつなぎ、人と人とをつないできたJTBだからこそ、まるで広告代理店のような仕事もするし、商社のような仕事もする。
正直、旅行会社に就職した自分がMLBとの契約交渉に携わるなんて、思ってもみなかったですよ(笑)。でも、MLBとともに新たなスポーツ観戦のカタチを築き上げることは、まさに交流創造です。

—— 交流創造を事業ドメインとするJTB。スポーツビジネスにおけるJTBらしさとは?

五十嵐:やはり、「感動のそばに、いつも。」という、JTBのブランドスローガンに集約されるのではないでしょうか。旅と同じくらい、スポーツは感動の宝庫です。スポーツをするには得手不得手がありますが、スポーツの話をして嫌な気分になる人はなかなかいないのではないでしょうか。スポーツは気分を明るくさせ、感動へと導いてくれます。JTBは人々の感動を想いながらビジネスができる。すべての社員にこの気持ちはいつまでも持っていてほしいと思っています。

鳴尾:そう、私たちの原動力は、人々を感動させたいという想いなんです。JTBは2025年3月、大谷翔平選手、山本由伸選手、佐々木朗希選手が在籍するロサンゼルス・ドジャースとパートナーシップ契約を結びましたが、JTBが観戦にお連れするお客様は一般の観客よりも早く球場内に入場でき、事前練習がある場合には試合前のトレーニングも見学できます。これはどちらもJTBからドジャースに要望し、実現したサービスです。

いち早く球場内に入れる特別感もトレーニングを見学できる高揚感も、どちらも感動的な体験ですよね。にもかかわらず、私たちの要望にドジャースの関係者は「なぜ、そんなことを望むんだ?」と驚いたんです。
でも、驚いたのは最初だけ。JTBの要望が実際にツアーに組み込まれると、お客様は素振りをする大谷選手に歓声を上げ、大いに喜ばれました。その感動を目の当たりにしたドジャースの関係者は気づいたわけです。
これが日本人、ひいてはベースボールファンのニーズであり、こんなところにも感動の種があったのか、と。

—— 「感動のそばに、いつも。」を念頭に置くJTBの姿勢は世界にも通用する。そのことを感じさせるエピソードですね。

五十嵐:そうですね。MLBも今でこそ、複数の日本企業と国際パートナーシップを結んでいますが、いの一番に私たちにお声掛けくださったのも、彼らが「JTBとともにビジネスがしたい」と思ってくださったからだと信じています。事実、ベースボールだけでなく、ゴルフ界からもサッカー界からも、海外のさまざまな組織からお声掛けをいただいていますが、それでもJTBの現在地は「日本のJTB」に過ぎません。

海外のビジネスパーソンから「日本ならJTB」と思っていただけるのは非常にうれしい。ありがたく、挑戦を続けてきた甲斐があったと思います。
しかし、私たちが目指すのはその先、「世界のJTB」になることです。これはスポーツビジネスに限らず、中長期的には会社全体が目指すべきビジョンです。私は今、ロンドンに居を構えていますが、移住を決めたのも本気で「世界のJTB」を目指すためです。

人々の感動に寄り添う気持ちを胸に、「世界のJTB」へ

—— 「世界のJTB」を目指す。そのためには何が必要だとお考えですか。

鳴尾:実務的な立場からすれば、やはり、契約書との向き合い方ですね。海外は日本とは異なり、契約書文化が深く根付いています。相手からいかに好条件を引き出し、契約に結びつけるのか、これは経験を積むしかありません。
一方で、契約書はあくまで現時点の合意事項を明文化したものです。もちろん、相手や関連組織の権利を尊重し、関連法規を遵守することは大前提ですが、契約書で「NG」とされていない部分には、ビジネスをさらに発展させる新たなチャンスが眠っているとも考えられるんです。
契約書とどう向き合い、どう乗りこなすのか。これがグローバルビジネスの面白さであり、日本から世界を目指す人たちが学ぶべきことだと思いますね。

五十嵐:そして何より、ビジネスパートナーとの共通言語を持つことです。もちろん、語学力も必要です。海外の言語を流暢に話せるに越したことはありません。でも、ビジネス相手との共通の話題や価値観を持つことのほうが、もっとずっと重要です。共通の話題や価値観がお互いの共通言語となり、ちょっとした言葉のつまずきなんて、さらりと乗り越えられます。
その共通言語はスポーツに限らず、何だっていい。何か一つでも「これだけは絶対に負けない」と胸を張って言える得意分野を持てたなら、日本国内はもちろん、海外とのビジネスにも生かすことができます。その上で積極的に人と会い、コミュニケーションを恐れないことです。
齢57、赤いちゃんちゃんこが見えてきた私も、老体に鞭打ちながら海外の社交場に出掛けていますよ(笑)。行くまでは面倒に感じながらも、その先には新たな出会いがあり、そこから新たなビジネスが生まれるんです。日本人はオセロのように角を取ることを好みますが、恐れることなく、人のいる場所の中央に立つ。世界を目指すには、そうしたマインドが必要ではないでしょうか。

—— では、中央に立つマインドを持ちながら、お二人はいかに「世界のJTB」を目指すのでしょうか。

鳴尾:常に学び、経験を積む努力をしながらも今の自分に自信を持ち、進んでいきたいと思います。今はまだ、私たちは「日本のJTB」なのかもしれません。それでも海外のスポーツイベントを視察するたびに「私たちだって負けていない」と思えます。
なかでも2025年3月に日本で開催されたMLBの開幕戦。MLBと国際パートナーシップを結ぶJTBは公式ホスピタリティプログラムとして、一生に一度の思い出に残る特別な観戦体験をご提供しました。これは海外にも絶対に引けを取らない。私の大きな自信になりました。

五十嵐:繰り返しになりますが、だからこそ、一人ひとりが誰にも負けない得意分野を持つことが世界への可能性を切り拓きます。そして、私にとっての誰にも負けない得意分野がスポーツビジネス。ここまで挑戦を続けてきた以上、スポーツの力を通じ、JTBを真のグローバル企業に成長させることが私の夢です。
あまりに大きな夢かもしれません。しかし、私が赴任しているロンドンのメンバーは、私と同じように世界を見据え、世界とのビジネスを望んでいます。JTBの一員として働く仲間のためにも「日本のJTB」にとどまってはいられません。
この展望を夢物語で終わらせないためには、変わらず挑戦し続けること。スポーツは国境を越えた感動を生み出す、世界の共通言語です。そのスポーツの感動に常に寄り添う気持ちを忘れることなく、JTBのスポーツビジネスが「世界のJTB」への道筋を牽引していきます。

文:大谷享子
写真:大童鉄平
編集:花沢亜衣

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