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ラグビーW杯 、直前対談!人々を魅了し、交流と感動を生む、スポーツと旅の共通項

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日本中を沸かせた「ラグビーワールドカップ」日本大会から4年。今年9月には「ラグビーワールドカップ2023」がフランスで開催されます。ラグビーの魅力やワールドカップの楽しみ方、スポーツが持つ力と旅の関係について、元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗氏と社長の山北が語り合いました。

株式会社HiRAKU 廣瀬 俊朗

1981年生まれ。5歳からラグビーを始め、大阪府立北野高校、慶應義塾大学を経て、東芝ブレイブルーパスへ。キャプテンとして日本一を達成した。2007年日本代表として28試合に出場。2012−13の2年間はキャプテンを務めた。現役引退後にMBAを取得。2019年には株式会社HiRAKUを設立し、チーム・組織作り・リーダーシップ論の発信や、スポーツの普及・教育・食・健康・地方創生に重点をおいた多岐にわたるプロジェクトに取り組んでいる。

株式会社JTB 代表取締役社長 山北 栄二郎

人々を惹きつける、ラグビーの魅力

山北:この度は対談企画にご登場くださいましてありがとうございます。9月からいよいよフランスにてラグビーW杯が始まります。大会を目前に控え、あらためてラグビーの魅力などについてお伺いしたいと思います。

廣瀬:お招きいただき、ありがとうございます。山北さんは、ラグビー観戦はされますか。

山北:そうですね。物心ついた頃からラグビー観戦が好きで、試合をよく見ていました。母校の福岡高校も早稲田大学もラグビー強豪校でしたから、平和台や国立、秩父宮のラグビー場にもよく足を運んでいました。ラグビーは、見ている側に勇気を与えるスポーツですよね。身体が大きな相手にもひるまずぶつかり、前進する。互いにリスペクトを持って真剣に向き合う。そして試合が終わればノーサイド。敵も味方もなく健闘をたたえ合う、大好きなスポーツです。

廣瀬:「ノーサイド」には、ラグビーが持つ精神性がよくあらわれていると思います。

2015年、第8回ワールドカップの初戦で、ラグビー日本代表は、それまで二度の優勝を誇っていた南アフリカ代表と戦い、34-32と劇的な逆転勝利を収めました。日本でも話題になったので覚えている方も多いのではないでしょうか。「スポーツ史上最大の番狂わせ」と報じられるほど、世界を驚かせた大金星でした。

勝利後の光景を、今でもよく覚えています。ロスタイムに逆転トライを挙げた瞬間、日本代表の選手たちはみな、歓喜を爆発させました。大きな感動と喜びの中、ふと後ろを振り返ると、負けた南アフリカの選手たちが待っていてくれました。一人だけじゃないですよ。15人全員が、グラウンドに残ってくれていたんです。そして悔しさを押し殺し、笑顔で日本の選手たちに手を差し出し、「おめでとう」と言ってくれた。勝てると思っていた相手に負けた。そんなシチュエーションでも、彼らは僕たちへのリスペクトを忘れなかったのです。こんなスポーツ、なかなかないですよね。ラグビーは素晴らしいと心から思いました。

山北:あのシーンは、本当に感動的でした。あらためて廣瀬さんは、ラグビーの魅力とは何だと思われますか。

廣瀬:一番の魅力は「多様性」でしょうか。プレーする選手は国籍もポジションもさまざまです。チーム内にはさまざまな役割があり、体格が大きな人も小さな人も、足が速い人も遅い人も、性格が豪快な人も慎重な人も、それぞれの個性を活かし活躍できます。たとえばパスが下手ならボールをもらわずにタックルして、仲間のパスの成功確率を高められるようサポートすればいい。ありのままの自分を活かせること、そして同じ目的に向かってチームが一つになれるのが、ラグビーの醍醐味だと思いますね。

山北:たしかにラグビーが「多様性」に満ちているのは、チームメンバーを見てもわかります。代表チームは国も文化も違う、それぞれのルーツを持つ選手で構成されています。そんな多様性あふれるメンバーが「ONE TEAM」で国を背負って戦う姿に、多くの人が感動しました。

ラグビーワールドカップ2023フランス大会をより楽しむために

廣瀬:ラグビーは難しいといわれますが、そう複雑に考える必要はありません。単純にいうと「ボールを持って走り、相手に倒されたら、後ろからきたチームメイトにサポートしてもらってボールをつなぎ、トライを奪うゲーム」です。ボールを持っている人が主人公ですから「ボールを持った人が一番先頭にいる」、そして持って走る競技なので「立っている人しかプレーできない」と決まっています。この大きな決まりのもと、さまざまなルールが設けられていますから、最初は、この二つだけ頭に入れておけば十分です。

また、国によって異なる独自の戦略やスタイルに注目するのも、楽しむコツかもしれません。対戦相手の特徴を予備知識として頭に少し入れておくと、より楽しめるのではないでしょうか。

山北:たしかにお国柄といいますか、代表チームごとに特色がありますよね。

廣瀬:そうなんです。たとえば、前回の優勝国である南アフリカは、戦術がとてもシンプルです。キックでボールを飛ばして、タックルして、モールを組む。スクラムで圧倒する。これを徹底して繰り返します。あまり戦い方を変えません。こちらも戦術はわかっているのですがなかなか止められない、そんなチームです。反対に今回、母国開催となるフランスには気まぐれな印象があります。戦術を変えてきますし、創造性が高く、予想するのが難しいチームです。その分、パフォーマンスの差が激しい面があります。そして日本代表の特徴は、「勇気を持ってしたたかに戦うこと」と「緻密性」。手先が器用なのでどこにパスをするのか、キックをするのかが見破られにくいんですよね。チームの連動性が高いのも武器の一つです。

山北:チームごとにまったくスタイルが違いますね。JTBはフランス大会のオフィシャルトラベルサブエージェントになっていますので、私も今大会はフランスに行き、現地で観戦する予定です。フランス代表は戦術の創造性が高いというお話がありましたが、私もフランスに対して「特別な体験をすること」や非日常を楽しむことが上手な人が多いという印象を持っています。

W杯を楽しむ際も、ただ観戦をするだけではなく、朝からみんなでユニフォームを着て街に繰り出したり、試合を振り返りながら特別なディナーを楽しんだりと、そういう豊かさがある場所なんですね。ですから、私も試合はもちろん、フランスの街なかに身を置いて、現地ならではの雰囲気を味わいたいと思っています。

二人が目指す、理想のリーダーシップ

山北:廣瀬さんは、北野高校時代から全日本までキャプテンとしてチームを引っ張ってこられました。その間、さまざまなご苦労をされたと思います。リーダーとして、とくに大切に考えてこられたこと、意識していたことはありますか。

廣瀬:選手一人ひとりに想いや個性がありますから、どんな想いを持っているのか、どんな強みがあるのかを知りたいと考えていました。ラグビーは、身体をぶつけ合うスポーツです。危険も伴うため、お互いのことが嫌いな状態ではプレーできません。ですから、どう信頼関係をつくっていくかを重視していましたし、まずは僕自身が相手を知り、好きになることを心がけていました。

もう一つ大切にしていたのは組織として何を目指すのか、ということです。日本代表でも、「なんのために勝つのか」について、よくみんなで語り合いました。2015年、南アフリカに勝った日本代表が掲げていたのは「憧れられる存在になろう」です。子どもたちがラグビーをやりたくなるようなプレーをしよう。親御さんが、子どもにラグビーをやらせたいと思うような試合をやろう。それが、僕たちにとっての大義だったんです。

スポーツですから、勝つこともあれば、負けることもあります。個人的には「どう負けるのか」に、自分たちが何を目指しているのかが出やすいと感じています。負けが見えたラスト20分、「もういいや」と手を抜くのか、最後までワンプレーでも自分たちらしいラグビーをしようと歯を食いしばるのか。勝つこと以上に、大事なことがあるんですよね。

山北さんは、会社を率いるリーダーとして、どんなことを大事にされていますか。

山北:「正直である」というのが、私自身のポリシーなんです。
会社をこうしていきたいと発したときに、その想いに嘘があってはいけない、と常々考えています。そのために未来に向けて、どうありたいのかを考えつくすことが必要ですし、考えつくしたら、その想いに向き合って、迷いそうになっても横道にそれずに歩んでいくことが大切です。嘘偽りのない正直な想いだからこそ、共感してくれる人や一緒に動いてくれる人が増えるのではないでしょうか。

そして社員とコミュニケーションをとるときには、「相手をリスペクトし、話に耳を傾けること」を大事にしています。「俺についてこい」と背中を見せるタイプのリーダーシップもありますが、私の場合は、私自身が、相手にどれだけ近づけるかを意識しているんです。何万人という社員がいても、その姿勢を大切にしたい思いは変わりません。

廣瀬:正直であること、誠実であること、相手をリスペクトすること。ラグビーのチームづくりも同じです。やはり根底に安心感があり、「この人と一緒にやりたい」「このチームで戦いたい」という想いがあるからこそ、チームとして力を発揮できるんだと感じます。ただ、「正直でありつづけること」は、ときに勇気を必要としますし、経営者であれば人に言えない苦しみや孤独もあると思います。孤独に立ち向かうタフさは、どのように身につけられたのでしょう。

山北:そうですね。経営者は孤独だと、よく言われますよね。ただ、意外にも私は、あまり孤独を感じていないんです。

もちろん、さまざまな決断をしなければならない役割ではありますが、会社を良くしようと思っている社員がいてくれる限り、孤独ではないと思えます。もしも、一人ですべてを動かそうとか、社員に弱いところを見せられないというふうに捉えていたら、孤独を感じていたかもしれませんね。ただ、私自身は、リーダーが弱い部分を見せてもいいと思っています。人間ですから、誰しも弱い部分がありますし、うまくいかないこともあります。それらを隠していては、心が通い合うコミュニケーションは生まれませんから。

大事なのは、先ほど廣瀬さんがおっしゃってくださった「組織として何を目指すのか」。同じ目的に向かって共に歩んでいく仲間がいれば孤独ではないですし、その仲間と共に理想を現実にしていくことで、リーダーは孤独以上に、大きな喜びを得られるのだと私は思います。

スポーツを通じて知る文化、生まれる出会い

廣瀬:僕はワインが好きなのですが、ワインが有名な国とラグビーが盛んな国は、不思議なことに共通しているんですよ。オーストラリア、ニュージランド、アルゼンチン……。もちろん、フランスも。

山北:私もワインが好きで、以前、南フランスを訪れた時に、ボルドーのワイン畑の中にあるコテージに泊まったことがあります。ブドウの収穫時期に早起きし、南フランスらしい太陽の光を浴びながら、たわわに実ったブドウ畑を散策したのはすばらしい体験でした。散策後はもちろん、ワインとチーズを堪能しました。

廣瀬:最高ですね。想像するだけで、豊かな気分になれます。南フランスはラグビーも盛んで、今回日本戦が開催されるトゥールーズの街には、ラグビーショップがたくさんあります。現地は、大いに盛り上がるでしょうね。

フランスといえば、初めて訪れたのは高校生のときでした。日本代表の試合に出るためにフランスを訪れ、カルチャーショックを受けたことを覚えています。ランチの時間が長すぎたんです(笑)。高校生なんて、いつもおなかがすいているし、早くたくさん食べたいじゃないですか。それなのにレストランに行っても、最初はパンとサラダしか出てこない。選手たちはみな、あっという間に食べてしまうんです。なぜ、メインの料理まで一気に出してくれないのだろうと不思議に思いました。でも、ふとまわりを見わたすと、フランスの人たちは楽しそうにおしゃべりしながら、ゆっくりと食べているんですよね。一体、この時間の長さはなんなんだ!と。

山北:フランスのランチは長いですよね。平日でもたっぷりと2~3時間かけて食べたりしますから。

廣瀬:そうなんですよね。なので、すごく驚きました。でも、こういった文化の違いに触れられるのも、今思えば、海外を訪れるおもしろさなのでしょう。そして、スポーツを通じて生まれる出会いもまた、豊かな人生をつくる財産になっていると感じています。

2012年に日本代表としてフランスに遠征したとき、大切な出会いがありました。ラグビーの試合後に行われるアフターマッチファンクション(試合の主催者や協会関係者、チームスタッフ、選手などが参加するパーティ)でワインの流通に携わるネゴシアン(卸売業者)の方と出会い、今でも交流が続いています。 シェフである弟 がフランスのワイナリーを案内してもらったり、日本とフランスをオンラインでつないで、ワインにまつわるイベントに一緒に出演したり。今回のW杯でも会う約束をしていますが、そういった、何物にも代えがたい絆や、つながりが生まれるのもスポーツの力ですね。

山北:スポーツを通じて海外の文化に触れたり、食を楽しんだり、かけがえのない出会いがあったり。それは旅にも共通していて、スポーツが持つ力、旅の持つすばらしさが凝縮されているお話だと感じます。この機会にぜひ、海外でのスポーツ観戦のおもしろさをより多くの方々に味わっていただきたいですね。

廣瀬:スポーツと旅は、まったく違うジャンルのようで、実はつながっているんですね。JTBでは、以前からスポーツ事業に力を注いでいらっしゃると伺いました。

山北:はい、JTBでは「交流創造事業」を事業ドメインとし、“地球を舞台に「新」交流時代を切り拓く”を経営ビジョンに掲げています。スポーツはまさに、この交流創造を体現するものだと考えています。国籍も年齢も性別も関係なく、あらゆる人々が心を通わせることができますし、スポーツをする人にも、見る人にも、支える人にも感動が生まれる。それは“感動のそばに、いつも。”という私たちのブランドスローガンに通じます。

スポーツは交流や感動体験のど真ん中にある。だからこそ、これまでも、そしてこれからも、スポーツに深く関わる企業でありたいと考えています。

廣瀬:スポーツに関わってきた僕たちにとっても心強く、うれしい言葉です。僕は現役引退後に「HiRAKU」という会社を立ち上げました。社名には“自分らしく生きる価値を、切りひらく”という意味がこめられています。

スポーツを含め、あらゆる人にひらかれた場をつくりたいと考えています。たとえばスタジアムで売られているフードって、から揚げやホットドック、焼きそばなどが多いですよね。それはそれでおいしいのですが、ヴィーガン や健康志向の方が食べられるものが少ないんです。

僕は選手時代から発酵食品に興味を持ち、海外遠征の際には必ず味噌汁を飲んでいたこともあり、昨年はラグビー場でおにぎりと味噌汁を提供するキッチンカーを始めました。今年は甘酒に注目して、甘酒や、砂糖を使わず甘酒の甘みのみでつくるスイーツなども販売しています。

ほかにも、障害を持っている方が安心してスタジアムに遊びにくるためにはどんなサポートが必要なのかを考えたり、ブラインドラグビー や車いすラグビーの体験会を開催したりと、障害の垣根なく、さまざまな人にひらかれたスポーツの場をつくっていくことにも関心があり、動いています。JTBさんとも連携できることがあればうれしいです。

山北:すばらしい取り組みですね。あらゆる人にひらかれた世界をつくっていきたいですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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