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アニメも漫画もゲームも、コンテンツが人と地域をつなぐ

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「推し活」の定着も後押しとなり、右肩上がりの成長を続ける日本のエンタテイメント市場。
JTBグループは、「推し活」という言葉が生まれる以前から、国民的アイドルグループのツアーや演歌のコンサート主催など、多岐にわたるエンタメ事業に深く関わってきました。

インターネットの普及やグローバル化の進展により、エンタメの在り方も次第に変化。その変化を受け、JTBでは2024年、多様化・複雑化するエンタメ市場と地域課題に、より専門的かつ包括的に対応することを目的に「スポーツ・エンタテイメント共創部」を立ち上げました。

JTBはエンタメとどのように関わり、どんなノウハウを蓄積し、変化の時代の今に生かそうとしているのか。
スポーツ・エンタテイメント共創部の河西大輔、枩浦慎一郎に聞きました。

河西 大輔
スポーツ・エンタテイメント共創部 企画・推進チーム
推進担当マネージャー

2002年入社以降、一般企業向け法人営業として、インセンティブ旅行・招待旅行をはじめ、イベント事業やプロモーション事業を幅広く担当。その後、アーティスト周年事業における大型コンサート案件や、国民的アイドルグループの移動・宿泊手配を統括するなど、エンタテイメント領域の大型案件を多数手掛ける。
現在はライブ・エンタメ市場、アニメ・ゲーム市場を中心に、新たな事業創出および顧客価値最大化に取り組む。

枩浦 慎一郎
スポーツ・エンタテイメント共創部 企画・推進チーム
推進担当マネージャー

2003年入社、団体旅行錦支店(現名古屋事業部)配属。一般法人・MICE・自治体営業に携わる。
スポーツ・エンタメイベントの経験を生かし、2024年よりスポーツエンタテイメント共創部所属。JTBグループのエンタメビジネスの推進に従事し、2026年からは政策担当としてスポーツ・エンタメ全般の事業拡大に取り組む。

アニメも漫画もゲームも、コンテンツが人と地域をつなぐ

—— 活況が続くエンタテイメント市場。まずはJTBの視点から、エンタメの現在地についてお聞かせください。

枩浦:私たちJTBとしても、市場の熱量を肌で感じています。
「推し活」というワードが「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたのが2021年。コロナ禍の真っ只中のことでしたよね。自由な行動が制限された反面、皆が皆、自分の好きなコト、好きなモノに没頭し、その巣ごもり需要として「推し活」が定着していった背景があります。

とはいえ、エンタメ市場がさらなる活況を見せ始めたのは、その後です。
コロナ禍の巣ごもりを個々が楽しみながらも、リアルでの接点を求めていたのでしょう。パンデミックが収束を迎えると「これを待ち望んでいた!」とばかりに、多くの人たちがライブやコンサート、フェスやファンミーティングに足を運び、市場規模が一気に拡大したんです。

河西:インターネットやSNSの普及により、誰もがあらゆる情報に触れられる今、エンタメへのニーズは多様化・細分化しています。
例えば、かつては一部の人が熱狂していたアニメや漫画、ゲームといった二次元コンテンツも、幅広い層の「推し活」の対象になっていますよね。二次元のコンテンツはエンタメの大きな構成要素であり、実はライブ市場とコンテンツ市場では、後者のほうが圧倒的に大規模です。

旅行を筆頭にリアルな体験を扱うJTBと、二次元のコンテンツ市場。
あまり接点がないように思われるかもしれませんが、コンテンツの舞台となった土地を訪れる「聖地巡礼」が象徴するように、二次元のコンテンツは、人と地域、さらには外国人旅行者と日本を結びつける強力な架け橋となります。
日本政府がコンテンツ産業を新たな基幹産業と位置づけるのも、その多面的な価値を認識しているからです。

—— 人と地域をつなぐ。旅行を祖業とするJTBの得意分野ですね。

枩浦:JTBグループの事業ドメインは交流創造。人と人をつなぎ、人と地域をつなぎ、リアルな交流接点をつくり出すことが私たちの役割だと思っています。
JTBにエンタメを専門的に取り扱う部署ができたのは2018年ですが、実は「推し活」という言葉が生まれるずっと前から、エンタメとの関わりを持っていました。推し活やエンタメが盛況だから参画したわけではなく、河西さんや私が入社した2000年代初頭なんて、ライブツアー全盛の時代でしたよね。

河西:当時はJ-POPの黄金期。ライブツアーはもちろん、ファンクラブツアーも盛んに開催され、JTBは国民的アイドルグループの、ハワイでのファンクラブツアーの企画・運営等も含め、非常に大型のツアーやイベントにも携わっていました。


さらにそれ以前から、フェスのような取り組みもしていましたね。それは何かというと、演歌のジョイントコンサート。演歌のファンには一人の歌手を長く応援される方が多くいらっしゃいますが、ライフスタイルの変化によって頻繁な遠出が難しくなるケースも見られます。一方、歌手の方は、より大きな会場でファンの皆さんをお迎えしたいと熱望されます。
そこで私たちJTBが大きな会場を手配し、人気の演歌歌手が一堂に会すような公演を主催したんです。

この取り組みは2002年から「にっぽん演歌の夢まつり」として定着し、多くのファンの方に愛されたコンサートとなりました。

—— JTBが演歌のコンサートを主催とは、ちょっと意外です。

枩浦:私も入社当時は驚きましたよ(笑)。しかし、人が集い、人が感動する機会を創出することは、私たちの事業ドメインである交流創造に重なります。

河西:日本三大フェスに数えられる「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にも、2000年の初回開催当時から関わっています。
今は千葉県の蘇我で開催されていますが、以前の会場は茨城県にある国営ひたち海浜公園。最寄り駅から会場までは歩いて1時間30分以上の距離があり、アクセスのしにくさを如何に解消して、来場者に快適にお越しいただけるのかが課題でした。

旅行を祖業とするJTBは、手前みそながら、多くの方が訪れるイベントオペレーションのプロでもあります。日本各地から会場まで、来場者の皆さんをお連れするツアーを企画・運営し、会場が蘇我に移った今も「JTBアクセスバスツアー」として継続されています。
音楽ファンの皆さんと同じように、私たちにとっても「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」は夏の風物詩です。
なぜなら、このフェスは、新入社員にとっての貴重な成長機会だから。
1日に100台・200台と往来するバスの運行サポート役として現地に赴き、真っ黒に日焼けして帰ってくるのがおなじみの光景でした(笑)。過去の事例をたどると、エンタメとJTBの関わりは枚挙にいとまがありません。

枩浦:ただ、エンタメの楽しみ方が変化し、海外を巻き込む活況を見せている現状は、私たちにとっても大きな転換期でもあります。
新たな課題も生まれており、その一例がオーバーツーリズムです。エンタメを起点に人と地域がつながったのにもかかわらず、キャパオーバーに陥っている自治体が少なくありません。
JTBは47都道府県すべてに拠点を持ち、それぞれが地域の魅力を熟知しているからこそ、観光地が抱える課題を改善するための取り組みはもちろん、人と地域をつなぐ新たなコンテンツを発掘していきたいですね。

積み重ねてきたノウハウを礎に新たなコンテンツを発掘

—— オーバーツーリズムという新たな課題と、コンテンツの発掘という新たな可能性。JTBでは今、エンタメとの新しい関わり方を構築しようとしているのですね。

河西:そのとおりです。新たな可能性を具現化する取り組みの一環として、現在JTBでは、エンタメ領域において4つの事業を展開しています。そのひとつが、法人のお客様ごとに最適化したオーダーメイドの移動・手配サービスです。
ライブやコンサート、演劇などの公演を実施するには、数百人規模のスタッフが移動し、ツアーともなれば宿泊の手配も複数回にわたります。これらを主催者側だけで整えるには大きな負担が伴いますが、JTBではこれまで培ってきた知見を生かし、一つひとつの案件に合わせた移動計画を設計。さらに、こうしたニーズに対応するための独自システムも開発しています。

JTBが全ての参加者の移動交通計画を策定し、移動手配を担ったポルノグラフィティの周年での大型ライブイベント開催風景

そしてもうひとつが、ファンの皆さんに向けて提供する参加型の旅行・移動プランです。ファンクラブツアーや、フェス・ライブ会場へのバスツアー、シャトルバスの運行など、当社が企画したプランにご参加いただく形で展開しています。会場の収容人数や安全に移動できる人数を緻密に算出し、最適な動線を設計・管理することで、安心してイベントを楽しんでいただける環境づくりを支えています。
いずれも以前より取り組んできたサービスではありますが、エンタテイメント事業部やスポーツ・エンタテイメント共創部ができたことで、さらに力を入れている事業です。

枩浦:交通手段が整備されていない場所で、会場に向かう人すべてが思い思いの行動をしては、場合によっては人流の停滞が群衆雪崩につながるリスクもあります。そこまでの事態にならないにせよ、ファンの皆さんをスムーズに会場までお連れすることは、遅延のない開演にも、終演後の帰宅難民を防ぐことにもつながります。
イベントをいい思い出としてお持ち帰りいただくためには、前後の移動もとても重要。私たちも公演をともにつくり上げる一員だ、という意識で取り組んでいます。

人気コンテンツと地域が連携。ファンを呼び込み、新たな交流を生み出す仕掛け

河西:これまでの2つが過去からの積み重ねの上に成り立つ事業なら、ここからの2つは目下、可能性を広げていく事業です。
その1つが「聖地巡礼」に代表される「コンテンツツーリズム」です。
アニメも漫画もゲームも、それらのコンテンツは知的財産(IP)であり、世界から熱視線を注がれていますよね。コンテンツの舞台となった場所を体感しようと国内外から多くの人たちが訪れ、それは本来、地域の皆さんにとっても喜ばしいことです。
だからこそ、自治体も「ようこそ」と両手を広げていますが、これがキャパオーバーの状態に陥ってしまっては、門戸を閉じざるを得なくなってしまいます。

枩浦:コンテンツの作者や制作会社は、作品の世界観を守ることを何よりも大事にしています。作品と地域のつながりをより魅力的に打ち出し、訪れる人たちが楽しめることはもちろん、迎え入れる地域の人たちにもメリットを感じてもらうには、どうしたらいいのか。
コンテンツ側も地域側も模索しているところですが、オーバーツーリズムといった観光地の課題解決や地域の魅力を生かしていくことは、まさに私たちJTBが積み上げてきたノウハウを発揮できるところ。つまりはコンテンツと地域の橋渡し役です。

さらにいうと、コンテンツツーリズムは、作品と地域の魅力を融合させた商品開発という可能性も秘めています。地域ごとの魅力を熟知し、長くエンタメと関わり続けてきたJTBなら、それぞれの魅力を掛け合わせ、ファンの方にとって、とっておきのお土産が開発できるのではないか。私たちはそうした可能性も模索しています。

河西:そして、最後の1つが「グローバル事業」です。
2024年にタイのバンコクで開催された「サマーソニック」などのように、海外でのフェスイベントのサポートや日本発着だけではなく、世界各地からのツアーも積極的に企画していくべく取り組みを強化しています。
エンタメのグローバル化は今後もますます進み、日本主催の海外イベントも増加していくはずです。ここでもJTBの知見を生かすべく、さらなるチャレンジを進めています。

—— お二人が関わられた取り組みからぜひ、具体的な事例をお聞かせください。

河西:2023年冬と2024年春の二度にわたって、体験型イベント「鬼滅の刃 湯めぐりの旅」を開催しました。『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』に温泉が登場することから、旅行を楽しみながらアニメ「鬼滅の刃」の世界観に没入してもらおうというものです。

具体的には、複数の温泉地を舞台にコラボ宿泊プラン、日帰り温泉のスタンプラリー、オリジナルグッズの販売のほか、現実世界に仮想世界の音が混ざり合う新感覚の音響体験を楽しめるサービス「Locatone™(ロケトーン)」を活用したコンテンツなどをご用意しました。
各地域の支店がハブとなり、温泉組合や旅館との連携を実現させましたが、これまで温泉地全体でやるような規模感の取り組みはなかったので、アニメのファンからも好評の声をいただきました。強いIPを活用し、この規模感で実現できたのは、我々としても手応えがありましたね。

枩浦:その一方、インターネットの普及がエンタメの多様化・細分化を後押ししたように旅行の選択肢も広がり、旅行会社を介さない、個人旅行を選ぶ人が増えていますよね。
では、私たちが企画するツアーは何を強みとするのか。それは聖地に向かう道中からファンの皆さんが集い、交流が生まれることです。
ツアーの企画には、実際に作品のファンである社員の声や熱量が反映されることもあります。行程も動線も緻密に組み立てるプロの視点と合わせ、ファンとしての視点も忘れない。これはもしかすると、JTBの社風かもしれません。
当事者の視点を忘れることなく地域に根差し、地域の魅力を発信してきた私たちのDNAです。

エンタメが多様化・細分化する今、より多くの選択肢を

—— プロの視点と当事者の視点。双方を持ち合わせながら、JTBのエンタメ事業はどう発展していくのか。改めて、今後の展望をお聞かせください。

枩浦:コンテンツの世界観と地域の魅力、その両方を守るため、訪れるファンの人も迎える地域の人もWin-Winの関係を構築する必要があると感じています。

私たちが所属するスポーツ・エンタテイメント共創部が新設されたのは2024年。エンタメの楽しみ方の変化が顕著に表れ、さらには日本を訪れる外国人旅行者が急速に増えた時期と重なります。
エンタメにも旅行にも新たな潮流が生まれ、定着しようとしている今、人と地域をつなぐためのコンテンツツーリズムには、より一層の力を入れていく方針です。

JTBのコンテンツツーリズムに新たな可能性を拓くには、やはり、新たなコンテンツを自ら発掘することも重要です。コンテンツの魅力を見極めるにも、地域との親和性や相乗効果を見極めるにも、もっともっと目利きの力を磨かなくてはいけないな、と。

河西:そして、私たちはファンの皆さんに向け、それぞれの旅行のスタイルに合わせた多様な選択肢をご提供すべく、新たなイベントのかたちを創出していきます。
その一例がホスピタリティプログラムです。特にスポーツ観戦の領域では、観戦に上質なお食事やエンタメ要素を掛け合わせた、新たな観戦スタイルが広まりつつあります。

ホスピタリティプログラムの需要は高く、海外のフェスではすでに当たり前。
この海外の当たり前を日本にも定着させ、エンタメファンの皆さんに新たな選択肢としてご提供するなど、これからもJTBだからこそできる取り組みを続けていきたいと思います。

文:大谷享子
写真:秋山枝穂
編集:花沢亜衣

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