「楽しかった」では終わらない。社員とお客様が一緒に取り組むサステナブルな体験「JTB地球いきいきプロジェクト」
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近年、世界的に意識が高まっているサステナビリティへの取り組み。100年先も美しい地球を守るべく、日本でも多くの企業が環境や社会の持続可能性を前提とした活動を行うようになりました。
JTBでも「JTB地球いきいきプロジェクト」として、観光地での清掃活動や自然環境の保全活動、歴史や文化の学習体験など、地域の特色を生かしたプログラムを国内外で展開しています。そんな「JTB地球いきいきプロジェクト」について、担当の佐藤美佳子にインタビューを実施。これまでに行われた多彩なプロジェクトから、JTBがサステナビリティに取り組む意義まで話を聞きました。
ブランド・マーケティング・広報チーム ブランド担当 佐藤美佳子
2015年にJTB首都圏へ入社後、一貫して店頭営業を担当。2023年より「JTB地球いきいきプロジェクト」事務局の運営を担当中。プロジェクトの問い合わせ対応や企画のサポートといった窓口業務から、社員のサステナビリティについての理解を深めるための社内報での発信までおこなっている。
JTBだからこそできる、国内外での多様なプログラム
―― 「JTB地球いきいきプロジェクト」について教えてください。
佐藤:「JTB地球いきいきプロジェクト」は、お客様や地域の皆様とJTBグループの社員が一緒になり、元気な未来を創造していく活動です。環境美化や、人と人との交流を通じて、そこに関わる全ての方々とともに「地域を元気に、人を笑顔に」していきたいと考えています。
プロジェクトの発端となったのは、1982年にスタートした「観光地クリーンアップキャンペーン」です。旅行会社として、地域のお客様や観光資源を守るという目的のもとに、当時は観光地の清掃活動を中心に活動していました。その後、2012年のJTB創立100周年を機に「JTB地球いきいきプロジェクト」と名称を改め、現在のような多岐にわたる活動内容となりました。
2012年から昨年までの12年間で、国内外合わせて436件のプログラムを実施し、延べ13,142人のお客様と、7,205人のJTBグループ社員が参加(※1)。活動を通じて、地域の魅力を再発見したり、環境意識を高めたりと、参加者それぞれが学びと気づきを得ています。
※ 1 2023年12月時点
―― 具体的にはどのような活動をされているのでしょうか。
佐藤:海外では、グループ会社のKuoni GTS (Singapore) Pte.Ltd.が地元シンガポールのフードバンクと協力し、寄付された食料を仕分けするボランティア作業を行いました。フードロス削減と貧困支援を目的としたこの活動は、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」というゴールに貢献するものです。
81万7000トンの食料が廃棄され、シンガポール住民の10.4%が過去12か月間に食料不足を経験しているシンガポール(※2021年時)。ボランティアでは寄付された食品の仕分け、棚卸し、梱包作業などを実施しました。長期的には食糧不安の根本原因に取り組むほか、他の人々が同様の取り組みに参加するきっかけにもなります。
国内では、JTB長崎支店が、長崎県の高島で地元の観光事業者と一緒に珊瑚の保護について学び、海岸清掃を行うプログラムを実施しました。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」を貢献目標にした取り組みで、マイクロプラスチックの問題を肌で感じ、自分たちの行動を見直すきっかけにしてもらいたいとの思いが込められています。
子どもたちには、「自分たちが捨てたゴミが海の生き物の命を奪っているかもしれない」と実際に体感することで、翌日から持ち物を変えるなどの行動変容につなげてほしいという思いも。こうした自然保護の取り組みは各地で行われており、日本や世界各地の希少な生態系を守るため、外来種の植物を除去するプログラムなども実施しています。
透明度が高く、34種類の珊瑚が存在する長崎県・高島にて開催。珊瑚保護と保全ツアーについて講話を受講し、珊瑚保全につながる海水浴場の清掃活動を実施。SDGsやエコツーリズムの理解を深めました。参加者は長崎市在住の方が多いものの、高島を訪れたのは初めてという人が多数でした。
また、JTB神奈川西支店では、サステナブルな農業を実践している事業者と協力し、共生の営みを学ぶ体験プログラムも企画しました。田畑での作業体験を通じて食や自然への感謝の気持ちを育んでもらえればと思います。他にも、提携販売九州営業部が実施した、町家でべんがら柿渋塗りをするワークショップなど、地域の歴史や文化に触れるプログラムも数多くあります。
サステナブル農業を広めるべく、人にも地球にもやさしく美味しいオーガニック野菜を作る神奈川県・平塚市の「いかす平塚農場」でのプログラム。"生"の想いやこだわりを聞き、収穫体験や食体験を通して体全体で地球と人との共生を感じられる体験を行いました。
参加者の意識や行動にポジティブな変化を実感
―― これまでに数多くのプログラムを実施してきましたが、参加者の反応はいかがですか。
佐藤:参加いただいた地域の方々やお客様からは、「地元に住んでいても知らなかった取り組みを知ることができた」「このプロジェクトに参加しなければ興味を持たなかった」といった嬉しい声をたくさんいただいています。「楽しかった」「面白かった」という感想だけでなく、プログラムをきっかけに地域の環境問題や文化継承について理解を深め、自発的に行動を変えていきたいという意欲的なコメントが多いのが特徴ですね。
また、参加者の年齢層が非常に幅広いのも特徴のひとつです。小学生から60代以上のシニア層まで、多様な世代の方々が関心を寄せてくださっています。特にハワイで行ったアラワイ運河の水質改善プロジェクトでは、半数以上が地元の小学生で、総勢100名を超えました。子どもたちが楽しみながら地球環境について学び、考えるきっかけになったと思います。1回限りのイベントで終わらせず、未来を担う世代がこうした体験を積み重ねていくことが何より大切だと感じています。
―― さまざまな立場の人が集うことで地域の絆が深まり、またそのつながりが持続可能な地域社会を作っていく土台になっているのですね。JTB社員の方の反応はいかがでしょうか。
佐藤:参加した社員からは、活動後に意識や行動が変わったというコメントが数多く寄せられます。「身近なことから社会貢献できることに気づいた」「もっと地域のことを知りたいと思うようになった」など、サステナビリティや地域共生への意識が高まったことを実感している様子がうかがえます。
プログラムを通して、「マイクロプラスチックを減らすためにレジ袋の使用を控える」「地元の伝統行事に参加するようになった」など、社員一人ひとりが具体的なアクションを起こしている例も少なくありません。美しい自然を未来に残していきたい、地域の文化を守り伝えていきたいという思いを新たにする社員が年々増えている手応えがあります。
特に、プログラムの企画を担当した社員の中には、準備段階と実施後で意識がガラッと変わったという人もいます。机上の計画だけでは気づかなかった地域の魅力や課題が、実際に現場に立つことではっきりと見えてくるのでしょう。自ら体験することの重要性を、社員自身が肌で感じているのだと思います。
―― 社内外でプロジェクトの認知度が高まってきていることが伺えますね。開催プログラムはどのように企画されているのでしょうか。
佐藤:プログラムの企画は、各支店・グループ会社の社員が中心となって進めています。SDGsの17のゴールを念頭に、地域の自然環境や社会課題を見つめ直すところからスタートします。そこで浮かび上がってきた課題意識を、具体的なアクションに落とし込んでいくイメージです。
企画のアイデアは、日頃の仕事を通じて知り合った地域の事業者の方からいただくことも多いです。普段から地に足のついた交流を重ねてこそ、地域の実情に即した企画が生まれるのだと感じています。一方で、社員が個人的な興味関心から団体にアプローチし、ゼロベースで生み出したプログラムもあります。社員発の新しい取り組みが生まれているのは頼もしい限りですね。
―― 佐藤さんご自身は、とくに印象に残っているプログラムはありますか。
佐藤:先ほどお話に出た、社員の興味から企画につながったプログラムは各方面から多くの反響をいただき、印象に残っていますね。エスコート商品販売事業部の社員が、埼玉県秩父市の森で「伐る林業」と「伐らない林業」を複合的に行っている事業者さんにアプローチをした事例です。
杉やヒノキを伐ったところにカエデの木を植樹して、そのカエデの木からメープルシロップなどの商品を作り、それを販売して林業を支える事業に社員が興味をもち、ラブコールをしたことでプログラムが実現しました。
林業の担い手が減っていくなか、新鮮なアプローチで利益を増やして森を守っていく。持続可能な森林への取り組みとしてこのような活動があることを私自身も初めて知りましたし、「JTB地球いきいきプロジェクト」を通して多くの方に知ってもらうきっかけになったことが嬉しかったです。
日本の森の素晴らしさ、大切さ、そしてそれを守ってゆく「循環型林業」の仕組みを学び、実際にその活動の一部に参画(種植え)を行いました。
「小さな一歩を積み重ねて」JTBが目指すサステナビリティ
―― 佐藤さんは2023年から「JTB地球いきいきプロジェクト」事務局の運営を担当されています。1年間携わってみていかがですか。
佐藤:正直なところ、店舗で働いていた頃は環境問題への取り組みと自社の活動が直接結びつくことはなかったのですが、現職に異動してからは「JTBが、サステナビリティの分野でも大きな役割を果たしていけるんだ」と気付いた、非常に学びの多い1年だったと感じています。
参加者に配布している折り紙。国産の竹を使用した紙でできています。
少々大きな話になってしまいますが、JTBではブランド・プロミスのひとつとしてサステナブルな社会の発展に貢献することを掲げています。しかし、普段はなかなか意識することができないなか、本プロジェクトの存在や発信によって、少しずつでも社員たちの意識が高まっていくのを間近に感じました。さらに自分自身も、ペットボトルやストローの使用を控えるなど日常的に意識するように。小さな一歩かもしれませんが、「自分にできることを着実に積み重ねていきたい」と、意識が変わったのが最も大きな変化だったかもしれません。
―― この仕事をしていて、やりがいや喜びを感じる瞬間はどのようなときですか。
佐藤:やりがいとしては、私たちが大切にしている「人をつなぐ、笑顔をつなぐ」を共創活動のひとつとして体現できていることでしょうか。地域に根ざした多様な関係者とのつながりは、JTBの大きな強みだと思います。実際に、本プロジェクトも社内にとどまらず、自治体や地元企業など幅広い分野の方々と協力しています。
参加者の方々から寄せられるアンケートを読むのが何より楽しみです。「参加して本当によかった」「JTBだからこそできた体験ですね」など、JTBを利用されたことがない方でも、プロジェクトを通じてJTBの取り組みを知り、さらにサステナビリティの輪が広がっていることを実感できる瞬間が嬉しいですね。
―― 社内外への発信、周知のための取り組みについてどのようなことをしていますか。
社外に向けては、JTBのコーポレートサイト内のサステナビリティページで情報発信をしています。実施済みのプログラムや今後の予定などを随時アップしていますので、ぜひアクセスしていただければと思います。
一方で社内の理解促進も欠かせません。プロジェクトの存在を知らない社員もまだ多いのが実情です。そこで、Web社内報「J’s Magazine」での連載をしています。各地の事例を具体的に紹介することで、少しでも多くの社員に関心を持ってもらえればと考えています。
―― 本日はありがとうございました!最後に、「地球いきいきプロジェクト」の今後の展望について教えてください。
佐藤:「地球をいきいきさせる」という目的があるので、参加して「ただ楽しかった」で終わるのではなく、行動変容につながるプロジェクトを増やしていきたいです。そのためにも、JTBという枠組みにとらわれず、志を同じくする企業・団体・個人とのコミュニケーションが広がり、より多くの方を巻き込むプロジェクトを目指しています。
昨年ご一緒したパートナーから「今年も協力したい」と声をかけていただいたり、リピーターのお客様が別のプログラムにもエントリーしてくださったり。そうした流れが着実に生まれ始めているので、この輪をもっともっと広めていきたいですね。
写真: 飯本貴子
文: 大西マリコ
編集: 花沢亜衣
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