訪日外国人観光客に選ばれ続けて60年。
「サンライズツアー」はこれからも地域とともに走り続ける。
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2022年10月に新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されてから約1年、日本中で多くの外国人観光客たちの姿が見られるようになりました。今でこそ、さまざまなメディアで「訪日外国人」が取り上げられていますが、JTBでは100年前の設立時から外国人誘致の事業をおこなっており、さらに60年前から「サンライズツアー」というパッケージ旅行を通じて日本の魅力を伝え続けています。
そこで今回はこのサンライズツアーの主要な業務を担う2人に、最近の訪日旅行のトレンドやサンライズツアーの歴史、そして2024年3月に迎える60周年に向けた意気込みを聞いてみました。
JTBグローバルマーケティング&トラベル
エクスペリエンスサプライ部 サプライヤーパートナーシップ課
筒井 康太
2020年のコロナ禍に入社。訪日旅行がストップするなか、バーチャルツアーの企画・造成などを経験。現在はサンライズツアーの看板商品である富士箱根ツアー等の企画・造成を担当するかたわら、60周年事業の推進プロジェクトリーダーとしても奮闘中。休日の楽しみはグルメ探索で、特にオムライスに目がない。
JTBグローバルマーケティング&トラベル
エクスペリエンスサプライ部 レベニュー&オペレーション一課
長岡 佳奈
JTBグループにおいて、さまざまなオペレーション業務を中心に幅広い職務を経験。現在はサンライズの(バスツアーや宿泊・交通等を組み合わせた)長い行程のツアーにおけるオペレーションをメインに担当している。さらにサステナブル・ツーリズム推進プロジェクトにも従事。プライベートでも家庭の生ゴミから作った堆肥でベランダ菜園を楽しむなど、エコへの関心も高い。
時代のニーズに合わせ、進化を遂げてきた60年
―― 訪日外国人客数がコロナ禍前の水準まで回復したとのニュースを耳にするようになりました。業務のなかで、回復してきたという実感はありますか?
筒井:まさに、インバウンド機運の高まりを実感しています。サンライズツアーでは、コロナ禍中から訪日旅行の再開時に向けてさまざまな準備を整えてきました。そのため、規制緩和後にはスピード感をもって発売を再開することができ、今も順調に予約数を伸ばしています。
特に私が担当している富士・箱根エリアでは、地域の観光事業者様から「サンライズツアーを皮切りに、多くの外国人団体客がようやく戻ってきてくれたよ!」と嬉しいお声もいただいています。
長岡:私も担当しているツアーの秋の予約数が、春と比べて倍以上になっているのを見て、インバウンドの勢いを実感しています。あまりの急激な回復ぶりに、私一人で対応するのは、とても無理だと感じ、上長に相談してオペレーションの担当人数を増やしてもらったくらいです。
筒井:商品的なトレンドでいうと、やはりサンライズツアーの看板商品「富士箱根ツアー」は、コロナ禍前同様、不動の人気です。一方、2022年11月に愛知県にオープンした「ジブリパーク」の関連商品は、コロナ禍以降、一躍人気商品となりました。三鷹の森ジブリ美術館を巡るバスツアーも、常に満席の状態が続いています。日本が誇るアニメ文化への注目度の高さを感じますね。
―― そうしたなか、お二人が携わるサンライズツアーも60年の歴史の中でさまざまな進化を遂げてきました。その歴史について簡単に教えてください。
筒井:サンライズツアーのルーツは、東京オリンピックが開催された1964年にさかのぼります。以前から 日本各地で実施されていた外国人向けローカルパッケージツアーを、この年「サンライズツアー」というブランド名で統一化したのがはじまりでした。最初のツアーは東京・日光・箱根・京都・奈良の定番エリアと瀬戸内エリアを10日間で巡る「10-Day Sunrise Tour」だったそうです。
1967年にはアステカの太陽神をモチーフにしたシンボルマークが採用され、世界中に販売網を拡大。1984年には累計販売人員が300万人を突破するなど、事業を順調に拡大させていきます。そして2003年には日本政府による「観光立国宣言」とともに「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が開始され、その後、サンライズツアーでも文化体験系コンテンツを拡充していきました。
2010年代に入ってからは、急増したアジアからのリピーターのお客様に向けた商品ラインナップを強化。昨今ではコロナ禍に伴う入国制限の影響から、約2年間にわたってツアー運行の一時中止を余儀なくされました。正直、禍中においては出口が見えない状況でしたが、アフターコロナにおける新しい人流をどのように作っていくべきか、チーム内で何度も議論し、新たなインバウンドルートの開発に着手。ようやく2022年秋に水際対策が緩和されたことをきっかけに、訪日マーケットが急回復し今に至ります。
―― 特におすすめしたいツアーはありますか?
長岡:全部!といいたいところですが、最近はサステナビリティやアドベンチャーツーリズムへの関心が高まっていますので、ウォーキングやサイクリングなどのアクティビティを組み込んだツアーがおすすめです。なかでも京都の嵯峨野竹林と嵐山を巡るウォーキングツアーや、2024年から新たに企画した、日光東照宮と憾満ヶ淵を、公共交通機関を使って巡る日光ウォーキングツアーなどは特におすすめしたいです。大型バスなどを使わないので、環境に優しい点もポイントです。
日本を存分に楽しんでもらうために、できるかぎりのことを。
―― お二人の仕事についても教えてください。
筒井:私はツアーの企画・造成を担当しているので、まずは「ターゲットとするお客様に、どんな場所でどんな体験をしてもらおうか」というアイデアを出しながら、ツアーのテーマや旅程を作成していきます。すでにマーケットにどのような商品があるかということのリサーチも重要ですね。例えば「東京1日ツアー」は、2022年の訪日個人旅行解禁時、外国人観光客の方たちが参加できる東京のバスツアーがなかったので企画しました。「初めて東京を訪れた方たちが気軽に楽しめるツアー」をコンセプトとし、訪れるスポットは斬新なところではなく、浅草、皇居、築地、東京タワーといった定番の観光名所に決めました。
長岡:私が担当するオペレーション業務というのは、ガイドや交通の手配、宿泊や食事などの調整、お客様へお渡しする旅程表の作成や精算など、ツアーを無事に催行するための一連の業務を指します。単に受けた予約をさばくだけではなく、コールセンターを通じてお客様からいただいた質問や、実際にツアーを案内するガイドや斡旋員の皆さんから受けた報告内容をもとに、お客様により満足していただけるよう日々改善していくことを心掛けています。
―― お二人から見たサンライズツアーの強みは、どんなところにあると思いますか?
筒井:日本中の幅広い地域を訪問地としてカバーしている点は、ひとつの強みかもしれません。サンライズツアーでは、東京と京都・大阪を結ぶゴールデンルートを基軸に、地域への新たな人流を創出する新インバウンドルートの開発を積極的に進めており、2022年には、東京・金沢・京都を巡る「レインボールート🄬」、2023年には、瀬戸内エリアを周遊する「せとうちシーニックビュールート」、福岡、熊本、鹿児島を周遊する「九州オーセンティックルート」を発表しています。今後は各ルートから派生する現地ツアーも作っていく予定で、今まで以上にいろいろな地域を訪問いただけると思います。
長岡:ガイドの質が高い点もサンライズツアーならではの強みです。誰もが有償でガイド業務を行えるように規制が緩和されてからも、サンライズツアーではほとんどのツアーで全国通訳案内士の国家資格をもったガイドが、専門的な知識をもとに日本の歴史や文化をわかりやすく説明しています。
また、参加いただくお客様のご要望に極力お応えできるよう、ツアー開始直前までお申し込みを受け付けている点も特徴です。主要なバスツアーでは、当日の朝5時までお申し込みが可能なので、もしお客様が「明日は天気が良いから参加してみようか」と急に思い立ったとしてもご参加いただけます。
節目だからこそ、感謝の気持ちを胸に新たなチャレンジを
―― 60周年を記念した新しい商品や、ロゴについて教えてください。
筒井:先日、1964年運行開始当初のコースをベースにアレンジした「復刻版周遊ツアー」と、旬の隠れた日本の魅力に出会う「ミステリーツアー」の2つを発売開始しました。
復刻版周遊ツアーは、60年前の行程をベースに、年々外国人から注目が高まっている金沢・白川郷・高山を追加した点、そして瀬戸内エリアでの体験内容を充実させた点がポイントです。
一方、ミステリーツアーは、周年記念に際して何か新しいことに取り組んでみようと企画したもので、「名勝地」や「季節の美」、「旬の体験」といったテーマだけは事前にお伝えするものの、具体的な訪問地は到着するまでわからないのが特徴です。桜や紅葉など、その時季一番の見頃となった花や自然の美しさを五感で楽しんでいただきたいと考えています。さらに訪問地を予想する楽しみや、想定していない場所を訪れることによる新たな発見や驚きも感じてもらえたらと思っています。
長岡:60周年ロゴの「6」の部分は、感動したお客様がとるグッドポーズ(サムズアップ)を用いて、サンライズツアーがお客様やサプライヤーの皆様など、多方面から「いいね」と思われ、愛され続けるようにとの願いを込めました。
「0」の部分は、60年もの長きにわたって、日本を走り続けてきたサンライズツアーの軌跡をタイヤに見立てて表現するとともに、未来に向けて持続可能な社会に貢献していくことへの思いを込めてSDGsの17色を用いています。
―― プロジェクトリーダーとしての率直な思いはいかがでしょうか。
筒井:「訪日インバウンド」という言葉すらまだ一般的でなかった時代から、さまざまな外部環境の変化のなか「サンライズツアー」というブランドが生き残ってきたことは、手前味噌ですが純粋にすごいことだと思います。
そしてこれは、当たり前ですが、JTBだけでは到底成しえなかったことです。これまでの60年を振り返ると、東日本大震災やコロナ禍はじめ、旅行業界、そして私たちにとっても苦難の時期がありました。それらを乗り越え、昭和、平成、令和と60年もの間、事業を継続してこられたのは、参加いただいたお客様はもちろん、各関係者の皆様のご協力があってこそだとひしひしと感じています。この場をお借りして感謝の思いを伝えたいです。そして、ぜひこれからも共に歩んでいただけますよう、今後ともよろしくお願いいたします。
旅行者だけでなく、地域・コミュニティにとっても「価値のあるツアー」になるように
―― サンライズツアーはサステナビリティへの取り組みにも力を入れていますね。
長岡:はい。世界各国でのサステナビリティへの関心の高まりを受けて、社としても、そしてサンライズツアーとしても、業界においていち早くサステナブル・ツーリズムへの取り組みに力を入れてきました。その結果、2022年3月には、サステナブル・ツーリズムの審査を行う世界的な第三者国際認証団体「Travelife」から、最上位の認証である「Travelife Certified」を取得。ツアーブランドとしての取得は、日本初の事例でした。
またSDGs 推進の一環として、2020年4月に「with SDGs challenge!」プロジェクトを発足し、アフターコロナを見据えたオーバーツーリズム対策やサステナブル要素のある商品作りなどを進めています。
具体的には「サンライズツアーがお客様に約束するサステナブル・ツーリズムの取り組みについて」というプロミスを策定し、社内外にビジョンを共有して明文化。次にSDGsの17のゴールの中から優先的に取り組む目標を分類し、「環境への配慮」「文化交流/異文化理解」「社会貢献」の3つに設定しました。
「環境への配慮」という点では、CO2の排出削減につながるウォーキングツアーやサイクリングツアーを積極的にツアーに取り入れ、また、主要バスツアーにはカーボンオフセットの仕組みを導入しました。
「文化交流/異文化理解」では、地域の文化や自然、歴史との触れ合いや学びの機会を提供する世界文化遺産の登録地への訪問ツアーや、地域経済の活性化を目的に地産地消食材を楽しめる食体験を組み込んだツアーの企画に力を入れてきました。
また、ツアー代金の一部を自治体などの社会事業に寄付するツアーなどを企画することで、「社会貢献」へとつながる取り組みを行っています。
ツアーで提供されるランチの一例
筒井:企画担当としては、先ほどお伝えした地域への新たなインバウンドルート開発を通じて、オーバーツーリズム対策や地域経済への貢献も目指しています。まだ知られていない隠れた地域の魅力を世界へ発信し、「旅行者」と「地域・コミュニティ」をつなぐ架け橋になること。サステナビリティの視点から、旅行者だけでなく、地域・コミュニティにとっても「価値のあるツアー」になるような商品づくりを目指すこと。そして、すでに大都市は訪れたことのある訪日リピーターのお客様にも楽しんでいただけるよう、複数の新ルートを段階的に整備しながら、魅力あふれる商品づくりを行うよう心がけています。
長岡:サステナブル・ツーリズムの実現には、旅先への配慮や観光資源の保全など、旅行会社だけは解決できない課題もあります。そこで私たちは訪日外国人のお客様にもご協力いただこうと、「レスポンシブルトラベラー(責任ある旅行者)」を「旅行地の未来をつくる旅人」と定義し、具体的な9つのActions(行動)を提案する推進動画を作り、「責任ある行動」を呼びかけています。
こうした活動を高く評価いただき、2023年の6月には「JATA SDGsアワード」の奨励賞(共創部門)を受賞することができました。コロナ禍中に始めた取り組みが社内外に認知・浸透しているのを実感し、とても嬉しく思います。我々の活動の趣旨をご理解いただき、アンケートなどご協力をいただいた事業パートナーの皆様にも感謝の気持ちでいっぱいです。
60年のバトンを、さらに未来へつないでいく
―― それでは最後に、サンライズツアーの事業を通じてこれから実現したいことなど、お二人の今後の展望についてお聞かせください。
筒井:まずは2024年3月21日の運行開始60周年の記念日に向けて、全力で駆け抜けていきます。そしてそこから先もサンライズツアーのバトンを未来につないでいけるよう、地域や事業パートナーの皆様とさらに連携を強化し、良い商品を生み出していきたいと思います。
また、サンライズツアーでは、これまで開発した3つの新しいインバウンドルートに加え、来年3月までに第4、第5の新ルートとして、北海道ルートと東北ルートの開発を計画しています。これからも日本のさまざまな魅力を、世界中から訪れるお客様に届けていきたいと考えています。
長岡:私たちにとってツアーは毎日のことですが、そのツアーひとつひとつが、ご参加されるお客様にとっては一生に一度となるかもしれない大切なツアーです。そのためまずは日々しっかりとオペレーションすることを徹底し、満足していただけるツアーにしたいです。 そしていずれは、お客様から頂く声などをもとに、新しい商品も作ってみたいです。「アニメやドラマの聖地を海外の熱狂的なファンの皆様と巡るツアー」みたいなことが企画できないかと、今からその思いを巡らせています。
引き続きサンライズツアーがJTBグループのサステナブル・ツーリズムを牽引し、ゆくゆくは観光産業全体におけるサステナブル・ツーリズムの推進にも貢献していけるよう尽力していきたいです。世界中から日本に訪れる外国人観光客と地域との架け橋となり、持続可能な地域づくりに寄与できたらと思います。
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