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「どこへ行くか」より「何をするか」。あなただけの「したい」を叶える海外旅行専門店「StudioJTB」

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2025年4月、新宿アルタ跡地の横に新設されたビルの6階に、JTBの新しい店舗が誕生しました。その名は「StudioJTB」。「どこへ行くか」ではなく「何をしたいか」を軸に旅をプランニングする海外旅行専門店です。

ここでは、王道を外したニッチな要望こそ大歓迎。パッケージにない「あなたのための旅」を届けています。今回はそんなユニークな店舗「StudioJTB」の開店の経緯と、この場所に込める想いを、店長の草苅めぐみと販売担当の関敏行に聞きました。

海外旅行専門店StudioJTB新宿東口 店長 草苅 めぐみ

JTBツーリズムビジネスカレッジ卒業後、店頭営業にて海外旅行担当を中心に販促活動を経験。その後、富裕層事業のロイヤルロード銀座、海外オーダーメイド旅行の営業にてBtoC、BtoCtoBと特殊事業へも携わり、2025年よりツーリズム事業本部 仕入商品事業部のStudioJTBの店長として勤務。

海外旅行専門店StudioJTB新宿東口 販売担当課長 関 敏行

1997年、JTB初の海外航空券専門店に入社後、海外個人旅行専門店や、外商部門でのオーダーメイド旅行の販売など、リテール店舗での販売業務に長年従事。その経験を生かし、2025年より現職。

———2025年4月に新宿にオープンした海外旅行専門店「StudioJTB」。まずは、この店舗の特徴を教えてください。

草苅:「StudioJTB」は「スタジオ」という言葉が示すように、海外旅行への好奇心を刺激するための「情報の発信拠点」としてオープンした、JTBの新しい店舗です。

ここでは、お客様の旅行相談はもちろん、インフルエンサーやタレントを起用したSNS発信やイベントの開催、海外支店から届く最新情報を生かしたオリジナルプランの開発など、お客様の生の声に触れながら「旅の新しい切り口」を発掘しています。

大きな特徴としては「行きたい国」から旅をプランニングするのではなく、「お客様がしたいこと」を軸にサポートさせていただくところ。
一般的なJTBの店舗では、豊富に商品化されたパッケージプランをベースに、お客様のご希望に合った旅をご提案しています。ラインナップの広さや安心感は、長年培ってきたJTBの大きな強みでもあります。

一方で「StudioJTB」は役割が異なり、より“体験”に寄り添う店舗です。StudioJTBスタッフが独自に作成したオリジナルプランのご紹介に加え、お客様のこだわりや叶えたい思いを丁寧に伺いながら、ゼロから一緒に旅を組み立てていく。既存商品だけでは捉えきれないニーズを拾い、未来の旅行づくりを検証する場としての役割を担っているんです。

———具体的にはこれまでどのようなお客様が来店されましたか?

関:例えば「電車の写真を撮りにジャカルタに行きたい」という高校生のお客様がいらっしゃいました。最初は「どうしてジャカルタへ?」と疑問に思ったのですが、かつて日本で走っていた古い国鉄の車両がリサイクルされて今ジャカルタを走っているそうなんです。「絶対にその写真を撮りに行きたいんだ」と、熱い思いを伝えてくれました。

他にも「世界でもめずらしいカブトムシを見にインドネシアに行きたい」という方もいましたね。「なるほど、そういう需要があるのか」と、僕らもお客様から教えてもらうことがたくさんあります。

草苅:お客様の「旅の目的」を叶えるサポートをすることはもちろんですが、そういったお客様からいただいたヒントから、StudioJTBのオリジナル商品をつくり、ゆくゆくは全国のJTBの店舗でも販売できるところまで育てていくことが、私たちのミッションなんです。

そのため、例えばイタリアのブーツの「かかと」部分に当たるプーリア州などの、いわゆる定番の観光地ではない「王道はずし」の旅や、「バル巡り」「アーユルヴェーダ」、あるいは「見ると幸せになれると言われる『ケツァール』という鳥を見にいく」など、「新しい切り口」をテーマとした商品づくりにいろいろと挑戦している最中です。

ミッションは、若い世代の声から「新しい旅の切り口」を見つけること

———とてもユニークですね! なぜこのような特徴を持つ店舗を開設したのか、その経緯を教えていただけますか?

草苅:StudioJTBは、特に若い世代の方々に、海外旅行を身近に感じてもらいたいという想いで開設されました。

コロナ禍や価値観の変化による影響なのか、日本のパスポート所持率は2024年時点でわずか約17%。今後の日本が経済的にも政治的にも孤立した国にならないように、海外経験を持つ若者たちを増やすことが非常に大切だと考えています。
同時に、海外に出て自分とは異なる文化や価値観に触れることは、視野を広げ、自分の可能性を再発見するきっかけにもなります。グローバルな視点を持った若者が増えることで、結果的に日本社会全体の創造力や多様性も高まっていく――そうした好循環を生み出したいという思いもあります。

しかし、SNSやインターネットが普及し、旅行の情報収集や予約のスタイルが大きく変化した現代において、店舗という形態自体が選ばれにくくなっています。これまでJTBの店舗が主に中高年層のお客様にご利用いただいてきたのも、そうした背景が大きいと言えます。
そのため「StudioJTB」はお客様、特に海外旅行から離れてしまっている若い世代の皆さんが求めていることを敏感にキャッチし、少しでも海外に関心を持っていただけるような新しい取り組みをしていく。私たちにとってもチャレンジの場でもあります。

関:また、インターネットで自分で手配するお客様も増えているなかで、改めて「JTBが店舗を持つ意味」を問い直す場所でもあると考えています。

「何泊でどこに行きたい」という基本的な情報だけならネットでも済みますが、「なぜその日なのか」「その旅行のハイライトはどこなのか」、「旅先で誰とどんな時間を過ごしたいのか」など、その裏に隠れたお客様のこだわりや想いは、丁寧にヒアリングしてこそ引き出せるもの。

そのような、お客様との会話から得られた情報があってこそ、それぞれのお客様に合った旅行が提案できます。
一見すると旅行とは関係ない雑談も含めて、「StudioJTB」は他の店舗以上に時間をかけてお伺いすることを大事にしています。

「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」。気軽に立ち寄れる場所を目指して

———オープンから半年が経ちますが、印象的だったことはありますか?

草苅:まずお店のオープンに携わる経験ってそうそうできるものではないですし、しかもマーケティング機能を兼ねた店舗ということで、私も他のメンバーも初めてのことばかりでした。
新しい接客のあり方の実践、カタログ作り、SNS運用、イベントの企画運営まで、ゼロから試行錯誤しているので、ある意味毎日が印象的かもしれないです(笑)。

関:お客様とのやり取りのなかで印象的だったのは、先ほどちらっとお話に出た「めずらしいカブトムシを見に行きたい」とご来店くださった方でしょうか。

インドネシアにそのカブトムシを2匹保護している団体があり、現地の海外支店と連絡を取って順調に準備を進めていました。しかし、前日になって2匹のカブトムシが喧嘩をしてしまい1匹が亡くなり、もう1匹も大きな怪我を負ってしまったと連絡があって...。カブトムシを見にいくことが旅行の目的ですから、それが叶わないと元も子もありません。

そこで、お客様がご到着するまでに新たに別の個体を保護してもらうことになったんです。お客様には新たに保護料をお支払いいただくことにはなってしまいましたが、無事にカブトムシをご覧いただけて本当に良かったです。

草苅:お客様もそれだけ「〇〇したい!」という強い想いを持って、ここに来てくださるんですよね。なかには「やりたいことに十分にお金をかけられるように、飛行機代やホテル代は節約したい」という方もいますから、私たちも既存の枠組みにとらわれず、できるだけ柔軟なご提案をしていきたいと思っています。

———実際にやってみて感じる「手応え」や「大変さ」はいかがですか?

草苅:SNSでの発信の効果が少しずつ出てきたのか、お客様全体の半数弱が20〜30代となり、若い世代への接点が増えている手応えを感じています。

ただ、デパートやショッピングセンターなどのなかにある「インショップ型」ではないうえ、ビルの6階ということもあって、見つけにくい・入りにくいところは課題かなと...。

直近で旅行に行く予定はない方でも、もっと気軽な情報収集の場としてここを活用していただけるように、さまざまな施策にチャレンジしています。

例えば、いま若年層の間でタイの古着が流行っているので、ファッションモデルの方に「StudioJTB」を利用して現地に行っていただき、購入したものをお客さんに披露するイベントを実施しました。他にも、写真の撮り方講座やエジプトのヒエログリフ講座などもあります。

旅行相談に申し込んでいただかなくても、雑誌を読んだり好きなインフルエンサーさんのイベントに参加したり、気軽に来ていただける場所にしたいなと思っています。

関:「行ったら営業されちゃうのかな?」と不安になる方もいると思うので、ここでは「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」とお声がけするようにしているんです。店内もカウンターがなく開放的なので、お店っぽい雰囲気が薄いのも特徴だと思います。

一番の喜びは、お客様の「本当の気持ち」を引き出せたとき

———この仕事で感じる「やりがい」はどのようなところにありますか?

関:やはりお客様の「本当の気持ち」を聞き出せたときが、一番うれしいです。初対面の相手に心の内を話すことはお客様にとってかなりハードルが高いことだと思いますので、少しずつ緊張をほぐしていただけるように、話題の振り方や話し方のトーンを心がけています。

場が和んできたら、僕は必ず「今回の旅のハイライトは何か」をお聞きするようにしていて。例えばご夫婦の場合、どちらか一方の「ハイライト」しか計画に入っていないことに、ご自身たちが気づいていないことがよくあるんです。そういうときは「あなたのハイライトは何ですか?」と、お一方にもハイライトをお伺いし、きちんと双方の希望を汲み取るようにしています。

そうやってお客様同士の間に入ることで、小さくなってしまっていた声を引き出せたときは「やった!」という気持ちになりますね。

———お二人が「StudioJTB」での仕事を通じて今後実現したいことはありますか?

関:僕は入社した当初から海外の個人旅行を対象にした店舗でキャリアをスタートしました。これまで身につけてきたお客様への接し方や提案のノウハウをこの場所で生かしたいと思い、チャレンジ制度で自ら手を挙げて「StudioJTB」の立ち上げメンバーになったんです。

個人旅行の提案には、正解がないところが面白さでもあり、難しさでもあると思っています。今一緒に働いている仲間たちに自分が培ってきた提案方法をできるだけ伝えていきたいですし、「若い世代が今求めていること」をしっかりと汲み取ってJTBの将来性にも繋げていきたいです。

草苅:StudioJTBに来てから、若いお客様の期待に応えられるよう、今どのようなことが流行っているのか、日々チェックするようになりました。もともとSNSを積極的に見るほうではなかったのですが、そこにお客様のニーズがある限り、これからもしっかりと向き合っていきたいなと思っています。

また、私は旅行の専門学校「JTBツーリズムビジネスカレッジ」を卒業したのですが、今カレッジは生徒数が減少傾向にあって、ずっと「いつか母校に貢献したい」と思っていたんです。そのためにも、今まで経験してきた接客や営業だけでなく、今回のような店舗の立ち上げや「StudioJTB」のお客様から得られた知見を生かして、貢献できる幅をもっともっと広げていきたい。

そして何より、こうした取り組みを積み重ねながら、旅行の仕事に就くことの面白さや、海外旅行経験そのものの魅力を未来にしっかり伝えていきたいです。

文:佐藤伶
写真:鍵岡龍門
編集:花沢亜衣

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