知るだけでも大きな一歩!ハワイの未来をつくるために、いまできること
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皆さんはハワイ州観光局が提唱するレスポンシブル・ツーリズムのハワイ版スローガン「Mālama Hawaiʻi(マラマハワイ)」を知っていますか。レスポンシブル・ツーリズムとは「責任ある観光」の意で、旅行者にも持続可能性をより意識してもらおうという考え方のこと。そしてそのレスポンシブル・ツーリズムを、よりハワイらしく実践していくための取り組みが進められています。
十年後も、何百年後もハワイが持つ素晴らしい伝統文化や美しい自然環境を守っていくために、旅行者にできることはたくさんあるといわれています。とはいえ「ハワイに行ってまで、さまざまなことに意識を向けないといけないなんて窮屈そう」と思われる方もいるかもしれません。そこで今回は、イベントでハワイを訪れていたクリエイターのパントビスコ氏にマラマハワイにつながる取り組みに参加いただき、その内容や感じたことついて聞いてみました。
パントビスコ
インスタグラムでの作品投稿が話題となり、現在のフォロワーは約51万人。代表的なシリーズに「犬のぺろち」「LINEシリーズ」などがあり、作品総数は10,000点を超える。JTBとは、2020年に"コロナ疲れ"した人々へのメッセージとしてコラボマンガを作成したことをきっかけに、その後もスペインやタイへ行くオンラインツアーを実施するなど、交流を続けている。
「禁止されていることをしない」だけ、それもマラマハワイ
ハワイに存在するたくさんの固有種について、ノースショアステーブルズのオーナーに説明いただく。
―― パントビスコさんがマラマハワイに触れたきっかけを教えてください。
パントビスコ:もともと私にはハワイで作品の展示をしたいという夢がありまして、それを先日、ホノルルフェスティバル(※)に出展するというかたちで実現してきました。初めての海外展示ということで、ハワイの方に私の作品が受け入れられるかという不安もありましたが、足を止めて見ていただける方が予想以上に多くいらっしゃって、感無量でした。日本からわざわざ来てくれた方もいましたね。
ホノルルフェスティバルにて、パントビスコさん初めての海外展示をおこなった。
その展示に向けた企画を進めるなかで、私が初めて聞いた単語が「マラマハワイ」でした。正直なところ、SDGsのような活動を自分が普段からできているのかどうかの自信はありませんでした。どちらかというと、いつの間にか登場し社会に浸透しつつあるSDGsに関して、「それを守らなきゃダメな人だと思われるかも…」と不安を抱えている人たちに気持ちが近かったと思います。また、難しい話題のようにも思えたので、中途半端な知識のまま発信することは控えていました。
けれどJTBさんが「パントビスコさんの気持ち、わかります。旅行先でまで『SDGs』と言われては、身構えてしまいますよね。でも実はそこまでハードルの高い話ではないんですよ」と言ってくれて、マラマハワイについてもう少し話を聞いてみたいと思いました。
―― 聞いてみたなかで、特に印象に残っていることはありますか?
パントビスコ:マラマハワイの「知ってるだけで価値がある」ということばにハッとさせられました。たとえば「アザラシやウミガメがいたら近づかない」とか、「ハワイで使ってはいけない日焼け止めがある」とか。知っていたら、気を付けるくらいはしますよね。そういう「禁止されていることをしない」というだけでもいいのだと思うと、気持ちが楽になりませんか。人間って、なにか積極的にアクションを起こそうとするとハードルが高くなってしまいますが、これなら私にもできる。これくらいなら、より多くの人に、まずは知ってもらいたいと思うようになりました。
ノースショアの牧場で、未来の海岸線に思いをはせる
かわいいけれど角が立派で一瞬びっくりしてしまうヤギ。餌をやることもできる。
―― 現地ではいくつかマラマハワイに関する取り組みを体験いただきました。
パントビスコ:オプショナルツアーに参加し、ノースショアに新しくできた「ノースショアステーブルズ」に行ってきました。ものすごく広大な敷地で馬とかヤギとかいろんな動物と触れ合ったり、海を見ながらバギーや乗馬などのアクティビティができるんです。そのアクティビティの一つに植樹があって、今回はそれを体験してきました。
砂浜の端に穴を掘って、ポットから出した苗を植えていきます。作業としては簡単ですが、植えているうちになんだか苗に愛着が湧いてきて、数年後にまたこの海岸線を見に来たいなと思っている自分がいました。タイムカプセルに似た感覚かもしれません。
今回はAkiaki(アキアキ)という植物を植える。湿気の多いところに生えて、水を吸い上げて土壌を乾かしてくれる頼もしい植物だ。
ノースショアは少し前に洪水があり、海岸線が大きく侵食されてしまったそうなんですね。それで、その海岸線に草や木を植えることで、回復を目指しているそうです。「わざわざノースショアまで行って植樹?」と思われるかもしれませんが、開放的な場所で他のアクティビティも楽しみながら、ちょっと地球に良いこともできる。私は個人的にも植物が好きですし、いいことづくめでしたよ。案内してくれたオーナーさんの熱意や想いにも触れることができました。
これからもたくさんの人が植樹に参加すると思うので、海岸線がどう変わっていくのかとても楽しみです。次は馬にも乗ってみたいですね。
広大な敷地には、ゆったりした雰囲気が。この牧場では乗馬やバギー(ATV)体験もできる。
セブンブラザーズのハンバーガー。食べ方に困ってしまうほどの大ボリューム!
余談ですが、このあとにハレイワタウンで食べたハンバーガーがとってもおいしかったんです。これぞハワイというようなすごい大きさで、ポテトも日本のとは違った切り方で。テラス席で、カラッとしたハワイの風を感じながら食べたのですが、格別でした。久しぶりの海外旅行だったこともあり、こういうのが旅の醍醐味だなあとも、ひしひしと感じましたね。
ほかにもノースショアはガーリックシュリンプのフードトラックにマツモトシェイブアイスなど、おいしいものもあるし、私が好きな雑貨屋さんもたくさんある。オールドアメリカな雰囲気も良くて、ゆっくりぶらぶらするにはもってこいの街でした。
地元の人も観光客も巻き込んでいく
―― ノースショアをとても楽しまれたようですね!他に体験されたことがあったら教えてください。
パントビスコ:ハワイに行くと、街中をいろいろな会社のシャトルバスが走っていますが、JTBさんのシャトルである「HiBus(ハイバス)」を運営している、Travel Plaza Transportation(以下TPT)さんにお邪魔しました。
「電気バスは3台、すべて絵柄が違うんです。出来上がって子どもたちに見せたときは、本当に喜んでくれました。」(TPT高橋:写真右)
今回はそのHiBusと、電気バスを見せていただいたのですが、電気バスはその名のとおりガソリンを使わず電気で走るバスで、2019年に、TPTさんがハワイで初めて導入したそうです。導入にかかるコストは通常のバスの倍以上(!)。そのため社内の会議は大紛糾したそうですが、最終的には「ハワイという土地で仕事をさせてもらっている以上、これはハワイを守るためにもやるべきだ!」という判断で導入に至ったそうです。
ラッピングにもこだわっていて、地元の小学生が「未来の車」をテーマに描いた絵を使っているんです。夢がありますよね。私もクリエイターとしてさまざまなアートを世に出していますが、やはり子どもの絵からは元気をもらえると思います。それにこうやってバスのラッピングとして取り上げてもらうことで、子どもたちが環境について自然に考えるきっかけにもなるでしょう。
メンテナンス中のピンクの電気バス。電池の大きさ、配線の複雑さにびっくり。
また中も広くて、車椅子が2台運べるのもポイントだと感じました。ワイキキを歩いていると、結構車椅子や、大きなベビーカーの方がいらっしゃるので、大変そうだなと思っていたんです。電気バスは入口もワンタッチでスロープになるので、環境だけではなく人にもやさしい。マラマ(=思いやり)も感じられるバスでした。
「広くていいですね!」(パントビスコさん)「そうなんです、そして電気バスなのでとても静かなんですよ」(TPT高橋)
―― 渡航してみて、現地で何か感じたことがあれば教えてください。
パントビスコ:月並みかもしれませんが、改めてハワイが好きだなと感じました。海はどこまでも青くて、原色の植物たちが生き生きと育っている。観光客の皆さんもウキウキしているし、現地の方にはホテルでもレストランでもお店でも本当に優しくしてもらいました。いままで交流が制限されていたぶん、今回はこれまで以上に、人との交流や、現地での出会いの価値を感じた気がします。JTBさんでは一緒にオンラインツアーもやらせていただき、それはそれで楽しかったのですが、やはり現地に行くというのは何事にも代えがたいと実感しました。
そしてだからこそ、渡航前よりも素直に、やはりこの豊かな自然や文化を、ひとりのハワイ好きな観光客として守っていきたいと思いましたね。
ハンバーガー屋の店員さんも、気さくであたたかい。現地でのさまざまな人との交流も旅を彩ってくれる。
あとは、やはり環境を意識した取り組みが進んでいるなと感じることが多かったです。エコバッグやマイボトルを持っている人が多かったり、ホテルのアメニティが最低限だったり。そしてそれを旅行客として受け入れたり、真似したりするだけでも、少しはハワイの未来に寄与できているのかも、と思いました。些細なことですが。
―― 最後にJTBeingの読者にひとことお願いします。
パントビスコ:私も今まで、レスポンシブル・ツーリズムみたいなものはハードルが高いと思っていましたが、蓋を開けてみるとそんなことはありませんでした。どんな取り組みがハワイにとって良いのか、それを知っているだけでも、一歩前進ですよね。
それと、私が出展したホノルルフェスティバルは「文化交流」がテーマになっていて、これも一つの「マラマハワイ」のかたちだということを現地で聞いたときには、目から鱗でした。ハワイの自然を守ることだけでなく、文化を学ぶことも、ひいてはハワイを思いやることにつながる。そう考えると、「マラマハワイを実践するために!」などとは考えていなくても、旅行者が無意識のうちにやっていることって、おそらく意外とたくさんあるんだろうなとも思いました。
興味を持った方は、まずは知ること、そして周りの知人や友人に伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。この記事で、レスポンシブル・ツーリズムに対する気持ちのハードルを下げてもらえれば、そして改めて現地の素晴らしさをお伝えできていれば、私としてはとても嬉しいです。
この記事を最後まで読まれた皆さんは、もうすでにハワイを大事にできるメンバーの一員なのかもしれません。
―― パントビスコさん、ありがとうございました!
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