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国家行事の裏に「PLM」あり!賓客の来日をサポートする究極の黒子

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毎年、日本には諸外国から多くの賓客が訪れます。テレビや新聞の報道で、歓迎のセレモニーや会談の様子を目にすることも多いのではないでしょうか。
これらの多くの舞台裏を支えているのが、株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル(以下、JTBGMT)の国際会議課です。インバウンドを専門に扱うJTBGMTにおいて、国際的な会議や国家行事などの大型公務案件を支える「PLM(Protocol Logistics Management)」を提供しています。

報道には映らない裏側で、具体的にどのような仕事をしているのか、PLM業務を担当する二人の社員に話を聞きました。

JTBGMT イベント・コンベンション営業部 甲斐 高太郎

1992年のJTB入社以来、国際会議および国内学会の営業を担当。日本開催のほぼすべてのサミットに携わるなかで、PLMを体系化し国際会議課のユニークなソリューションへ進化させた。現在はシニアプロデューサーとして、2030年までの先行案件推進や各案件が円滑に進むよう運営を指揮している。

JTBGMT イベント・コンベンション営業部 国際会議課 浅沼 さやか

2009年入社。営業企画、国際イベント課を経て、2013年より現職。国際会議課のエキスパートとして、首脳級会合や閣僚級会合の輸送接遇統括責任者等の業務を行う。英国ロイヤルファミリーのファン。

賓客の来日を支えるPLMの仕事

――まずPLMとはどのようなサービスでしょうか。

浅沼:PLMは、Protocol (プロトコール/国際儀礼)・Logistics (ロジスティクス/輸送接遇業務)・Management (マネジメント/管理運営)の頭文字をとった造語で、海外から日本に賓客をお迎えする際、国家間の儀礼上のルールに則って、車や宿泊などの提供や空港接遇を行い、かつスムーズに滞在していただけるよう考えて、手配やオペレーションを行うサービスです。

甲斐:プロトコールは「国際儀礼」と訳されますが、この国際儀礼というのは公的な外交の場などで基準とされる国際的なルールのようなものです。外交を円滑に進めるために、それぞれの国を平等に扱い、誰もが納得するものでなければなりません。
会議や行事の主催者によって示すルールが異なる場合もありますので、 我々はその都度確認し、それに準じてPLMの業務を進めていきます。
JTBGMTは2005年からPLM事業の前身をスタートさせ、多くの大型国家的行事に携わってきました。これまでの多くのノウハウや知見、実績が大きな強みだと思っています。

――実際にはどのような流れでPLM業務をされるのでしょうか。

甲斐:まずは、常にアンテナを張って公正な競争入札に備えておくことを心がけています。例えば先進国首脳会議(サミット)でしたら、現在は7か国の持ち回りですから、7年に1回は日本で開催されると推察されます。メディアやネットワークを駆使していかに早く正しい情報を入手するかも重要ですね。

浅沼:JTBはホテルなどの事業者やさまざまな協力会社とも日頃から密に連携を取らせていただいています。そういった方々とのこまめな情報交換は、早く情報を入手するためにもとても大切なんです。そして、受注できた際には主催する省庁や自治体の方々とスキームやオペレーションのフローを相談し、知見や範例を参考にしながらマネジメントしていきます。国際会議においては、協力会社の方々も含めると数百人以上がチームとなって動くこともあります。そのなかで旅行に関するパートの統括を担当しているので、空港や駅、ホテル、車など、すべてが抜かりなく調整できているかを管理します。

誘導棒とネックライトは要人受入れの際のマストアイテム。駐車場などの暗い場所でも安全に車を誘導することができる。

甲斐:例えば、要人の車両ひとつをとっても関係各所と協議のもと、机上での計画からリアルなシミュレーションも行いますし、最適解を模索しながら短時間で準備を進めていかねばなりません。

浅沼:リクエストや変更点もたびたびありますから、主催する省庁の方々と密にコミュニケーションをとって、すぐに現場に伝えることが重要ですね。

甲斐:旅程管理に取り組む期間は、各国の来日から日本を発つまでで、政府専用機やビジネスジェット、一般の商用機で来日されたお客様を、おもてなしの心とルールに則って空港でお迎えするところから始まります。各種手続きのサポートやエスコートを行い、お客様はそこからホテルや会場へあらかじめ準備していた車両で向かいます。ホテルでのチェックイン、別送の荷物などの受け入れの段取りも事前に組んでおき、セキュリティやエレベーターコントロールを含め、全体的にスマートなご案内が求められます。

浅沼:滞在中は会議に参加されるだけでなく、レセプションや視察などいろいろな予定が入っていることも多いので、それぞれの予定に合わせて、スムーズかつ安全に移動できるように各種調整などもしておきます。

日本を発つ日には、ホテルではチェックアウトや荷物の別送などのサポートをします。無事に空港や駅で飛行機や新幹線などに乗車しご出発するまで、万全の態勢でサポートを続けます。

プロトコールに則りながら臨機応変な対応が求められる業務

――業務をするなかで大変なことはありますか。

甲斐:場合によっては先方から移動や宿泊や食事、接遇などに関する細かなリクエストがあります。それらにどう応えていくか。もちろん我々だけで判断できないことも多々ありますので、その都度、主催する省庁や自治体の方々に確認をしながら対応をしていく必要があります。先方の希望と、我々が提供できることのバランスを取りながら、さらにスピーディーな対応も求められますので、ここは結構大変なところです。

浅沼:先方のご都合で来日や出発のスケジュールが早くなったり遅くなったりすることはよくあるので、それに合わせて、短期間で多くの手配変更や手続きをしなければならないシーンは結構あるんですね。
綿密に組まれているスケジュールでも変動はあり得ますし、そもそも国際情勢、政治情勢によって間際にならないと情報が出ないということもありますので、会議本番中だけでなく、前後の数日もかなりの緊張状態が続きます。
我々自身が心身ともに健康で、余裕を持って万事に即応できる状態にしておくことが大切です。

刻々と変化する状況に対応する即応性と判断力、センスが大切

――とても神経を使う仕事のように感じますが、PLMに必要とされる資質はありますか。

甲斐:言葉で表現しようとすると難しいのですが、端的に言うと「センス」が求められる仕事だと思っています。事前にさまざまな事態を想像して綿密に計画をしていても、現場では想定外のことが起こるので、臨機応変に対応しなくてはいけない。ここが大事なんです。イレギュラーが起きたときに、主催者やお客様を最優先に、プロとしてスピード感をもって正確な判断をする。そして全体の流れやその場の状況に応じて、最適な提案をバランスよく提案し、解決の一助を担うことが必要です。こういった判断能力や感覚を磨くのは、やはり経験によるところも大きいかもしれませんね。

浅沼:私はやり切ろうと思う気持ちが大切だと思っています。大変なことも多いですが、とにかくやり切ること。甲斐さんのおっしゃるセンスも、努力でカバーできると思っています。

甲斐:それはそうですね。あと、浅沼さんのように唯一無二の強いメンタルと、打たれ強さも大切です(笑)

――業務を行ううえで、心がけていることはありますか。

甲斐:スピードと正確性と誠実性ですね。PLMは時間との戦いになることも多いですから、一番大事なのはスピードです。最適解か、別解があるかよりもスピード重視で、どんどん進めて、途中でより良い方法が見つかったら、すぐに修正すればいい。最適がわかるまで対応しない方が罪だと思っています。まぁ、正しいか、正しくないかの判断には必ず「責任」が伴うので、そこが難しいところなのですが。

浅沼:そうですね。止めるというのは一番問題が発生しやすいので、とにかくそのときに考えうる正しい判断をして、前に進めるというのは心がけていることです。

甲斐:あとはお客様の要望は一旦全部聞くことです。お客様にはスピードだけでなく「誠実」さも重要ですから、基本的に全部聞く。そのうえでどこまで現実的に対応可能なのかを考える。もちろんできれば100%、できなくても対案は必ず用意して8割以上は応えるように尽力しています。

――お二人がこの仕事を長く続けられている理由や、やりがいを教えてください。

甲斐:最後のお客様を見送ると「今回も美しく終わらせられたかな」というなんとなくの達成感がありますよね。それを30年繰り返してきましたが飽きない(笑)

浅沼:そうですね。協力会社の方々とみんなで拍手して、「お疲れ様でした!」と声を掛け合って。一体感と達成感はすごくある仕事だと思います。それと期間中は本当に大変なことがいろいろあるんですけど、終わって少し経つと「あんなことあったね」って話せるようになって、そしてもう少し時間が経つと「もう1回やりたい」ってなるんですよね(笑)

甲斐:あとは、記憶や記録に残る仕事なので、特に若手社員にはモチベーションにもなると思います。各国の要人に対して案内やおもてなしするというのは、普通に生活をしていたらできない経験なので、人生の大きな糧になるのではないでしょうか。良い刺激になったとの感想を聞くと、ちょっと嬉しく思いますね。

浅沼:そうですね。あと、もちろん大変なことはたくさんあるのですが、当たり前ながら国際会議には絶対に「終わり」があります。絶対に終わると思っていると、プレッシャーがあっても心がちょっと軽くなるというか。また、会議が終われば少し落ち着くので、スケジュールを立てやすく休みが取りやすいのも魅力です。休みを取るとリフレッシュできるので、もう1回頑張ろうと思えますね。

大型公務の裏にあるPLMの仕事を次世代につなげていきたい

――今後の展望があれば教えてください。

浅沼:JTBGMTは長くPLMを提供していますが、協力会社や省庁でも若い世代が活躍するようになり、少しずつやり方が変わってきているところもあります。私たちとしても若い世代を育てつつ、変えなくてはいけないところは一緒に変えていきたいと思っているので、PLMを時代に合わせて良い方向に変えていけるといいなと思っています。

甲斐:私は展望といいますか、志を持ちながら、そして楽しみながらPLMを牽引してくれる人財が出てくることを期待しています。出てくると信じているし、待ちたい。実は10年ほど前に東京で行われた国際機関の総会の関連イベントで「子ども記者」をやっていた子が、そこで国際会議に興味を持って、今年新入社員として入社したんです。本人はもちろん知らなかったのですが、その総会は弊社でサポートしていました。
本人も「日々やりがいがある」と言ってくれていますが、こういうのが非常にうれしいんです。PLMは「黒子」の仕事なので、ある意味非常に地味な仕事でもありますけど、他では決してできない経験を積むことができますし、この専門的な業務遂行があるからこそ国際会議を成功させることができる。
我々は「偉大な裏方」として、仕事を牽引しているというプライドをもって日々精進しています。これからも多くの国際的な会議や国家行事などがありますので、PLMで世界に貢献していきたいです。

写真:大童鉄平
文: 林田順子
編集:花沢亜衣

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