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観光の力で、ふるさとを次の世代へ ~カナダには、未来へとつながる旅がある~ (前編)

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観光の力で、ふるさとを次の世代へ~カナダには、未来へとつながる旅がある~ (前編)

観光業においても、「持続可能性」や「SDGs」への取り組みがますます重要になっています。中でも、国を挙げて「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」による新しい観光を推進しているのがカナダ。その考え方に共感し、JTBではカナダ観光局と「新しいカナダの旅・サステナブルなツーリズムの推進」や「カナダにおける新しいツーリズムの創成と定着」に向けたパートナーシップを2021年に締結しました。

それをきっかけに生まれたツアー 『こころで旅するCANADA~Tsunagari tabi~』には、人々や地域のあいだで「交流、つながり」が芽生えてほしい、という想いが込められています。
今回はカナダ観光局の代表をお招きし、カナダでのさまざまな取り組みを2回にわたってご紹介。前編では「再生型観光」の可能性と、現地の状況についてお聞きします。

カナダ観光局 日本地区代表 半藤 将代

カナダ観光局 日本地区代表 半藤 将代

1999年、カナダ観光局へ入局。23年間でカナダの州および準州を、すべて訪問。自然も人もオープンなカナダを愛し、その魅力を世に広めるために東奔西走されている。カナダのサーモンも愛して止まない。

JTB 海外エスコート部 企画課 グループリーダー 永安 智美

JTB 海外エスコート部 企画課 グループリーダー 永安 智美

2000年、JTBワールドへ入社。以来、ルックJTBの企画一筋、様々な国・方面を担当。
カナダへの渡航歴は10回を超え、多彩な魅力に満ちた同国への熱い想いにあふれる。

観光で、その土地をより良くし、次の世代へ

―― カナダ観光局が掲げられている「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)による新しい観光」について教えてください。

観光の力で、ふるさとを次の世代へ~カナダには、未来へとつながる旅がある~ (前編) 2

半藤:カナダの「再生型観光」のベースにあるのは、環境・文化・社会・経済の各面からサステナビリティを重視し、観光の力でその土地をより良い状態にして、将来世代に引き継ごうという概念です。「持続可能」よりも一歩踏み込んだ考え方になります。
カナダは世界で2番目に国土の大きな国で、多様な自然環境や風土、文化などが魅力です。各地域ではそれぞれの魅力を大切にした観光を提供していて、自然との共生や文化の多様性を重視しています。よって、再生型観光を実現する鍵は、各地域の魅力に旅行者が価値を感じてくれるかどうかです。

そこで大事なのは、その土地の人と旅行者とが、交流を通して"地元愛"を分かちあうことです。その土地の人たちが一番大切にし、受け継いでいきたい"地域のDNA"ともいえる本質的な価値が、旅行者の人生をも豊かにする。その土地が、地元の人々だけでなく旅行者にとっても唯一無二の大切な場所になる。そんな新しい旅のカタチを、日本の皆さまにお届けしたいと取り組んでいます。それがJTBさんも言われているような、旅行者にとって「人生が豊かになる旅」や「心豊かな旅」にも繋がるのではないでしょうか。

―― 再生型観光という考え方自体は90年代からあったようですが、いま、カナダがこれをより強くフォーカスするようになった理由には何かあるのでしょうか。

半藤:やはり新型コロナの影響が大きいです。国際的な人流の断絶によってカナダの観光業も危機にさらされ、「どんな人に、どういった旅を楽しんでもらいたいか」を、より突き詰めて考えるようになりました。

そして「先住民観光」という考え方もあります。歴史的に弱い立場にあった先住民と真摯に向き合い、共により良い未来を築こうとする機運がカナダ全土で高まっています。そこで観光が果たせる役割は非常に大きいと考えられ、自然と共生してきた先住民の生き方に学び、彼らが語りかける物語を肌で体験し、その知恵を活かすことで、未来へ向けた自然との共生を考えようとしています。

ウィスラーにあるスコーミッシュ リルワット カルチュラル センター

ウィスラーにあるスコーミッシュ リルワット カルチュラル センター
© Squamish Lil'wat Cultural Centre / Logan Swayze

訪れた土地を想う旅人が、その土地を大切にしてくれる

―― このカナダの旅に関して、カナダ観光局とJTBでパートナーシップを締結されました。JTBとしてはどのような目的や意義があるのかお聞かせください。

観光の力で、ふるさとを次の世代へ - 永安

永安:コロナ禍の中、私たち観光業も本当につらい時期を過ごしました。それと同時に、これからのツーリズムの担うべき役割と、私たちJTBにできることは何かという課題を突き付けられました。
これまで提供してきた商品は、「どこの景色が一番きれい」とか、「この食事が一番おいしい」といった、旅行会社側が考えるベストな旅であり、それを押し付けていた感がありました。旅行者の皆様には、もちろん現地で満足はしていただけるものの、いわば楽しさを消費するだけ。そんな旅行がコロナ後も続くのか、受け入れられるのか。消費するだけの旅行は、未来に継続しないという危機感が次第に大きくなっていきました。

そして、現地の人たちからすれば、一時的に楽しんで去っていくだけの旅行者に対し、心から歓迎したいという気持ちは湧きにくいでしょう。オーバーツーリズム(※)を起こせば、現地の負担にもなりかねませんし、旅行者を迷惑にすら感じ始める。そんなネガティブな感情を生みだす旅なんて、決して未来にはつながらないはずです。

※ 観光客の数が、地域住民の生活や自然環境、景観等に対して受忍限度を超える状況。

そのため、JTBでは旅行者だけでなく、現地の人たちにもポジティブな気持ちになっていただきたいと考えていました。そして、そんな今後の旅の在り方に対する考えが、「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」というカナダ観光局様の方針に通じるものがあり、パートナーシップを締結させていただいた次第です。

この中で重要なテーマである「心でつながる旅」は、私の部署のトップが何度もカナダ観光局様と話し合う中で生まれたものです。カナダと似たような思いをもって観光事業に取り組まれている国や地域は他にもあります。しかし、「訪れた土地を想う旅人」が生まれる場所として、私はカナダがもっとも可能性のある国だと考えています。「私たちの大好きなこの地を好きになって」というメッセージが強く発信されていると思うので。

カナダ観光局 日本地区代表 半藤 将代/JTB 海外エスコート部 企画課 グループリーダー 永安 智美

半藤:どこかの土地を訪れることで、旅行者の「行動変容」につながってくれたらとも考えています。例えばバンクーバーは、世界一グリーンな都市を目指した持続可能なライフスタイルで知られていますが、訪れた旅行者のうち約69%が環境意識を高めたというデータ(※)もあります。

また、JTBさんと一緒に取り組んでいるシロクマ鑑賞ツアーでは、シロクマが置かれている自然環境の変化や厳しさを知り、旅行者の帰国後の行動に変化が生まれています。その土地を好きになったことで、気候変動問題を一緒に考え、対策にも一緒に取り組み、その土地を大切にしてくれる存在となっています。

※ 「NIKKEI STYLE トラベル」調べ

観光の力でふるさとを再生、将来へつながる暮らし

―― 現地では具体的に、どのような取り組みが見られるでしょう。よい事例はありますか。

半藤:歴史あるタラ漁を生業としていたフォーゴという島では、一時期、乱獲により漁獲量が激減。多くの漁師が仕事を求めて島を去っていきました。しかし、親と共に島を去った少女が後に事業家となり、島へ戻って観光業を成功させ、その力で島を復興させたんです。なんと打撃を受けたタラ漁も持続可能な漁法で再興させつつあり、その高品質なタラは、いまやカナダのグルメ界を席巻しているほど。

カナダのグルメ界を席巻する、フォーゴ島のタラ

カナダのグルメ界を席巻する、フォーゴ島のタラ
© Destination Canada

この事例の特長は、観光業を社会的事業として立ち上げたこと。観光事業は島の所有であり、収益はすべて地元に還元されます。そこでは、宿泊やクラフト等の料金の内訳と、その利益の使途などを明らかにする「経済成分表」と呼ばれる資料を開示していて、旅行者は自分が支払った料金が何に利用されているのかを知ることができます。これが大変支持を集め、決してアクセスのよい島ではないのですが、数々の有名人や政治家なども訪れるようになりました。

ほかにも観光の力で地域がより幸せになった事例はカナダ各地にあります。先ほどのシロクマの街・チャーチルでは、かつてはシロクマに出くわすと仕方なく殺していましたが、90年代にシロクマと共生する道を選びました。住民たちの行動変容により、今ではシロクマとの距離を設けるため地域の棲み分けを図り、危険があれば通学や通勤も車で送迎をしたり、街中に出現した場合にも麻酔銃で眠らせて街から遠くに移すなど、しっかりとした対応方法が定められています。これが様々なメディアの注目を集め、野生のシロクマを見たいと世界中から観光客が訪れるようになりました。

その結果、雇用も増えて街の経済も安定し、環境保護の取り組みも進みました。住民はシロクマと共生する街に誇りを持っています。

シロクマの首都とも呼ばれるカナダ極北の街、チャーチル

シロクマの首都とも呼ばれるカナダ極北の街、チャーチル
© Destination Canada

旅した土地への想いが、家族や友人に広がる期待も

―― カナダ観光局とJTBが協力し、ツアーとして企画されたものには何がありますか。

永安:特にご紹介したいのは、ケベック州の豊かな自然に囲まれた小さな砂糖小屋で、昔ながらの製法を守るメープルシロップの生産者を訪ねる旅です。アンドレさんという方が、春先に砂糖カエデの樹に穴をあけ、滴る樹液をバケツで集め、煮詰めて手作りしています。

カナダの冬といえば、煮詰めた熱々のメイプルシロップを雪の上に垂らしてつくるメイプルタフィー

カナダの冬といえば、煮詰めた熱々のメイプルシロップを雪の上に垂らしてつくるメイプルタフィー
© Destination Canada

半藤:砂糖カエデの樹が群生しているのは、世界的に見てもケベック州、オンタリオ州を中心としたこの一帯くらいです。その原生林を大切に守りながら、メープルシロップが生産されています。40リットルの樹液からできるメープルシロップは1リットルほどで、大変希少ですよね。その樹液が採取できる期間も1年のうちで春先の4週間ほどしかありません。

手作りでメープルシロップを作っているアンドレさん(写真右)

手作りでメープルシロップを作っているアンドレさん(写真右) © カナダ観光局

永安:ツアーでは紅葉の美しい秋のシーズンに訪問します。シロップを楽しむだけでなく、豊かな森を歩いて、シロップが森の恵みであり、先住民族の発見や生活の知恵をもとに生まれたものであることをアンドレさんから直接お聞きすることができます。このように、生産者の思いも聞いていただくことで、旅行者にも豊かな森を守り、未来へつなぐことの大切さに思いを馳せてもらうツアーとして企画しました。

メープルシロップづくりは"伐らない林業"とも言われています。樹木を保護するため、樹液を採取するのは樹齢40年以上、しっかり育った木のみであり、大切に保護しておけば毎年その恵みを得られるんですね。昨年研修で訪問したJTBのスタッフらも、美味しいメープルシロップに感動するだけでなく、森の中の散策をしながら、その豊かさを守ることの大切さに気づいたようです。

メープルシロップ

© カナダ観光局

またこれは笑い話ですが、スタッフたちはこのメープルシロップがあまりにおいしかったので、お土産にとその時売り場に出ていたものを買い占めてしまったんだとか(笑)でも、それを受け取った人がカナダに興味を持たれるかもしれませんし、森の恵みについて考えてくれる人もいるかもしれない。このツアーに参加くださるお客様にも、是非そういったつながりを広げていただきたいと考えています。さらには、そんな森を想う気持ちを胸に、今度は日本国内にも同様の目を向けてくださったらと考えています。

―― 後編では、実際にその土地の人たちと旅行者との間に、どのような交流やエピソードが生まれているのか、そしてお二人が思い描く未来をお聞きします。

観光の力で、ふるさとを次の世代へ - 11

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