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観光地のゴミ問題を解決したい。社会課題に立ち向かった社員たちの想いとは?

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観光地のゴミ問題を解決したい。社会課題に立ち向かった社員たちの想いとは? - KV

観光地でゴミが落ちているのを見て、残念な気分になった経験はありませんか?日本はどこも比較的きれいな国として認識されていますが、実は観光地におけるゴミのポイ捨てや処理費用は、長年に渡る問題となっているのです。JTBではツーリズム産業に関わる企業として、以前からこの問題に向き合ってきましたが、今、これまでとは発想を変えて、「ゴミ処分の有料化」に挑む新しい取り組み『Go!ME(ゴーミー)』を試験的にスタートさせています。

JTB エリアソリューション事業部 エリア開発チーム 高橋 佑基

エリアソリューション事業部 エリア開発チーム 高橋 佑基

入社以来、埼玉で法人営業を担当。2021年3月に社内新規事業公募制度「JUMP!!!」で最優秀賞を受賞。
受賞をきっかけに現在の部署へ異動し、Go!MEの推進リーダーとして、エリア事業開発に従事。趣味はキャンプ。

JTB エリアソリューション事業部 企画・開発推進チーム 石原 隆之介

エリアソリューション事業部 企画・開発推進チーム 石原 隆之介

入社以来、大阪で法人営業を担当。2022年より、現部署に異動。観光ICT領域の事業開発を担当しながら、Go!ME推進プロジェクトにも携わる。

ゴミ問題に悩み続けている日本の観光地

―― Go!MEが生まれた背景を教えてください。

高橋:日本の観光地で、ゴミのポイ捨ては長らく解決できずにいる問題です。今後はインバウンドの回復も期待されるなか、さらに大きな問題となるかもしれません。原因の一つとして考えられるのは「ゴミ箱の少なさ」です。観光庁のアンケート(※)によると、「外国人旅行者が、訪日旅行中に困ったこと」として第1位(23.4%)の回答だったというデータもあります。外国人に限らず、観光客は捨てる場所に困っているのではないか。実際、私も観光客が観光ルート上のコンビニエンスストアや道端にゴミを放置するケースを目にしてきました。そこでゴミ問題に対する解決策として、ゴミ箱を適切に設置できないかと企画したのが、この『Go!ME』です。

※ 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート(令和元年度)

平日も観光客でにぎわっている川越一番街商店街(埼玉県)。観光中に出たゴミはどうしているのか――

平日も観光客でにぎわっている川越一番街商店街(埼玉県)。観光中に出たゴミはどうしているのか――

川越一番街商店街に設置された「Go!ME」専用ゴミ箱(二代目/名古屋モード学園の学生さん達によるデザイン)。利用料金(応援金)は1回100円で、環境美化に役立てている。

川越一番街商店街に設置された「Go!ME」専用ゴミ箱(二代目/名古屋モード学園の学生さん達によるデザイン)。利用料金(応援金)は1回100円で、環境美化に役立てている。

そもそもこの問題は、単にゴミ箱の数を増やせばよいという話ではありません。観光客が持ち込んでくるゴミの処理費用が、現地の観光事業者に大きな負担となっているためです。そこで、観光客が出したゴミの処理費用の一部を、観光客に負担いただくことで、解決できないかと考えました。旅行者に「ゴミを持ち帰る」だけでなく、「お金を払い、観光地でゴミを処分してもらう」というアイデアです。一方、食べ歩きした後のゴミを観光客が持ち帰って別の自治体で処理することにも疑問を持っていました。よって観光客がある観光地で何かを購入して出たゴミは、その観光地で処理をする、それを実現できるゴミ箱を用意すべきだと考えました。

そこで私はGo!MEを事業化すべく、JTBグループの新規事業公募制度「JUMP!!!」へ応募し、かなりの高い倍率を突破して最優秀賞に選ばれました。こうして事業化へ向けたプロジェクトが動き出しました。

Go!MEとは「ゴミ」をもじった名前ですが、ごみ問題を解決しなければすべて環境に=ME=自分に還ってくるという意味が込められています。

観光地のゴミ処理を、観光客が応援できるのがGo!ME

―― 「処理にお金を払ってもらう」のは、簡単ではなさそうですね。

石原:私は途中からこのプロジェクトに参加しました。最初は「観光客に、この価値観を受け入れてもらえるか」という点でハードルの高さを感じましたが、観光地の現状を考えると、Go!MEは社会的に意義のある事業だとすぐに認識しました。「交流創造」により人流を生み出すことを事業ドメインとするJTBは、交流により出てしまったゴミに対しても責任を持つべきだと思ったのです。これは挑戦であり、JTBが引き続き地域に寄り添う上で、必要不可欠な事業になるはずだと確信しました。

高橋:現在、事業化に向けた実証実験を行っています。まず仕組みとしては、Go!ME専用のゴミ箱を観光地に設置。ゴミ箱にはGo!MEの趣旨や協力方法など、観光客への案内が分かりやすく記されています。これに共感していただいた観光客が、ゴミ箱に掲示された二次元コードを利用し、既定の金額を「応援金」という形でキャッシュレス決済するシステムにしています。

「Go!ME」のシステム

しかし、そのようなゴミ箱の使い方や応援金の送金方法よりも、このゴミ箱を通じて観光客へ本当に伝えたいメッセージは、Go!MEという取り組み自体の価値や意義です。「皆さんの応援金がゴミ処理費用となり観光事業者を支援する」ことだけでなく、「皆さんが楽しんでくださった景色や環境の美しさを守る」ことになる。それが、ひいては観光客の「応援したい(お金を出したい)」という思いにつながるのではないか。そんなビジョンをもって取り組むことが重要だと考えています。

―― メッセージは思うように伝わっていますか。

初代の「Go!ME」専用ゴミ箱。もっと存在感が必要と反省。

初代の「Go!ME」専用ゴミ箱。もっと存在感が必要と反省。

石原:それにはまず大事なのが、Go!ME専用ゴミ箱の存在に気づいてもらうことです。関心を持ってもらわなければ、どんな良いメッセージでも届きません。しかし当初のゴミ箱は、特徴のない銀色のスチール製で、ポスターを貼り付けたものだったので、まったく目立たず、ほとんど気づかれませんでした。

高橋:そこでデザインの専門学校にご協力いただき、在校生参加型のゴミ箱デザインコンテストを実施しました。「見える、気づく、立ち止まる」といったキーワードで、いかにしてゴミ箱の前で観光客に足を留めていただくか。私たちも審査に加わらせていただきました。

京都錦市場商店街に設置した「Go!ME」専用ゴミ箱(二代目/大阪モード学園の学生さん達によるデザイン)。舞妓をモチーフにしたピクトグラムが用いられ、フタには八つ橋を食べている姿もあるなど、楽しんで見てもらえる仕掛けが盛り込まれている。

京都錦市場商店街に設置した「Go!ME」専用ゴミ箱(二代目/大阪モード学園の学生さん達によるデザイン)。舞妓をモチーフにしたピクトグラムが用いられ、フタには八つ橋を食べている姿もあるなど、楽しんで見てもらえる仕掛けが盛り込まれている。

石原:できるだけ目立つデザインがいいなとは思っていましたが、観光地の雰囲気は大切にしたいですし、景観条例もありますので難しい審査になりました。しかし、グランプリに選ばれた作品はご当地色のある大変すばらしい作品で、特にピクトグラムを使った点は外国人観光客にも分かりやすいと思いました。

実証実験では、この新しいデザインによって、ゴミ箱の存在が外国人観光客も含めて誰にでも分かりやすくなり、足を留めてもらえるようになりました。Go!MEが観光地にとって有益なものであることが観光客へ伝わるようになったと、設置協力店からも評価いただいています。

変化した、ゴミへの意識。芽生えた、交流。

―― 現場では、具体的にどのような変化が見られますか。

谷川岳連峰(群馬県)を一望できる谷川岳ロープウェイに設置された「Go!ME」専用ゴミ箱。

谷川岳連峰(群馬県)を一望できる谷川岳ロープウェイに設置された「Go!ME」専用ゴミ箱。

高橋:引き続き実証実験を行っていますが、私が担当する埼玉県の川越一番街商店街ではすでに200人の観光客が応援金を支払ってくださり、手応えを感じています。昨年9月に行った群馬県の谷川岳ロープウェイでの実証実験は、現地からのご要望で予定していた1ヶ月半を延長して現在も設置しています。結果、ゴミの分別が促進され、ゴミの量も減ったと聞いています。登山者が持ち込むゴミの問題を知り、持ち帰ろうとする意識も生まれたようです。

石原:私は実証実験の中で、事業者からの期待だけでなく、世の中の関心の高さも感じています。そして、無料だったことにお金を払うというGo!MEの仕組みを、非常にポジティブに捉えてくださるグループが確実にいると分かりました。特に若い方が多い印象を持っています。デザイン専門学校の生徒さんや現地を観光する方からヒアリングした際にも、賛同や協力してくれる意識を肌で感じます。いまは小学校からSDGsなどを学ぶ機会があるそうなので、そんな次世代の方々と一緒に、観光地の未来を創っていきたいです。

―― 「交流創造」の観点で何か収穫はありそうですか。

高橋:2つありまして、1つは「組織」のあいだでの交流です。例えば、川越にある一番街商店街には100を超える店舗や企業があるのですが、Go!MEをきっかけに、美化やゴミ問題をあらためて考えるようになったそうです。店舗や企業のあいだに新たな交流を生み出せていると実感しています。

川越一番街商店街(埼玉県)。Go!MEの実証実験を行っている

そしてもう1つ、ゴミを一つのきっかけに観光客と地域の方々のつながりも生まれています。これは店舗の方から聞いた話ですが、そのお店ではゴミ箱を見た観光客からGo!MEについて質問され、それをきっかけに接客以上の会話が生まれることもあるそうです。実はこのGo!MEの二次元バーコードからは観光客が応援メッセージを送れる機能もあり、「店員さんの対応、とても温かかったです。 また買いに行きます」「親切に教えてくださり、ありがとうございました!!」といった観光客の声をお店へフィードバックしています。これも新たなつながりの創造と言えるでしょう。

「Go!ME」専用ゴミ箱を設置いただいた亀屋さんにて。

「Go!ME」専用ゴミ箱を設置いただいた亀屋さんにて。

石原:Go!MEをきっかけに、そして新たなつながりの誕生によって、観光客がその地域への愛着や、サステナビリティに対する共感なども持ってくれたらうれしいです。人流による物理的な交流だけではなく、心の交流も創造していくのがJTBの使命だと思います。

世界展開、そしてサステナビリティの実現を見据える。

―― 最後に、今後の展望を聞かせてください。

高橋:まずは、この実証実験を成功させ、全国の観光地へ広げていきたいと考えています。そのためには、社会やそれぞれの地域の課題に向き合い、観光客が感じる本質的な価値やニーズの理解が大切だと思っています。Go!MEをきっかけに、「普段からゴミを出さない」という意識や行動の変化につなげ、最終的には美しい観光地を保ち続けられる仕組みを確立して、海外へも挑戦したい。その先にはSDGsの2030年ゴールも見据えています。

石原:この挑戦は現在進行形ですが、「人流の中で出たゴミに対しJTBが責任を持つ」ことに真摯に向き合いたい。そして全国、やがては全世界へしっかりと広げていきたいです。また、社内の新規事業公募制度から生まれたこの「GO!ME」を成功させることで、社会課題に向き合って挑戦する環境づくりにも寄与したいと考えています。そこから次のアイデアが生まれ、その芽が開花して、世の中やJTBの発展につながれば、こんなに嬉しいことはありません。

Go!ME
Go!MEは全世界展開を目指す!左から、エリアソリューション事業部 石原 隆之介、蛯名 匡実、高橋 佑基、仙波 翔太。

Go!MEは全世界展開を目指す!左から、エリアソリューション事業部 石原 隆之介、蛯名 匡実、高橋 佑基、仙波 翔太。

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