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広大な東北をタクシーでつなぐ。二次交通の壁に挑む、「Tohoku Taxi Cruise」担当者の挑戦

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自然が豊かで、魅力的な景勝地も多い東北。
東北の旅にはさまざまな見どころがある一方で、「とにかく広くて、移動に悩む!」と感じた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。飛行機や新幹線を降りた後の二次交通手段が少なく、公共交通機関だけでは辿り着けない場所に絶景や名所が点在していることが観光のネックになることも。

東北を線で結び、この問題を解決するために生まれたのが「Tohoku Taxi Cruise(東北タクシークルーズ)」です。
今回は、このプロジェクトに取り組む二人のJTB社員に熱い挑戦について語ってもらいました。

佐々木 友美
JTB 国内仕入商品事業部 東北仕入販売部

2005年入社。東北エリアの店舗にて、個人やグループ旅行者への販売業務に従事し、多くのお客様の旅をサポート。
その後、観光を通じた地域課題解決や交流人口創出を担う地域交流チームでの営業サポートを経て、現在は国内仕入商品事業部で東北の魅力を届けるべく地域の資源を生かした体験コンテンツの開発に従事。

佐藤 真由子
JTB 国内仕入商品事業部 東北仕入販売部

2007年キャリア入社。メディア販売事業部での「旅物語」の商品造成や、提携販売事業部での各種手配業務を経て現職へ。
現在は国内仕入商品事業部にて、訪日インバウンドや国内旅行者向けに、東北の観光素材を生かした体験プランづくりを担当。

“一回きり”で終わらせない。地域の未来をつくる「日本の旬」

――まず、今回のプロジェクトのベースである「日本の旬」について教えてください。

佐々木:「日本の旬」は、JTBが「日本の魅力の再発見」をテーマに長年実施しているキャンペーンです。地域の魅力を掘り起こし、旅行を通じてより多くの方に現地の魅力を感じていただくことで、地域活性化へ貢献することを目指しています。

半年ごとに1つのエリアに焦点を当てているのですが、今回、2026年の春夏は「日本の旬 東北」。東北エリアが主体となって、1年以上前から準備をしてきました。

実は、「日本の旬」にはこれまで「キャンペーン期間中に盛り上がりを見せるがゆえに、期間が終わるとその反動でお客様になかなか足を運んでいただきづらくなる」という課題があったんです。そのため現在は、「日本の旬」をきっかけに持続的な送客ができるような仕組みの開発にも取り組んでいて、そのひとつとして生まれたのが「Tohoku Taxi Cruise」でした。

佐藤:東北地方の周遊観光タクシープランで、公共交通機関ではアクセスしにくい絶景スポットや観光名所を、貸切タクシーで効率よく、プライベートな空間で快適に巡ることができるというものなんです。

佐々木:東北は面積が広大ですから、魅力的なスポットも沿岸から山間部まで点在しています。大きな空港や駅から離れたところですと、電車やバスの本数が少なく、公共交通機関がない場所もあります。そこをなんとか線でつないでよりお客様に楽しんでいただきたい。つなぐことによって東北の地域に貢献できることがないだろうかというところからこの取り組みが始まりました。ヨーロッパでJTBが展開しているバスツアー「ランドクルーズ」をヒントに、東北ではまずはより小回りの利くタクシーで実現しようと考えたんです。

佐藤:お客様からも「美しい自然を見に行きたいけれどレンタカーを運転して行くのは不安」という声が多く届いていたこともあって。一時間に一本の電車を待つ旅もいいですが、もっと効率的に、プライベート感のある特別な旅として東北を楽しんでいただきたかったんです。
「一回行ったからもういいや」ではなく、「日本の旬」キャンペーンが終わった後も地域のレガシー(遺産)として残り続けるものを作りたい。そんな想いが私たちの原動力になっています。

理想と現実のギャップ——ゼロからの開拓に立ちはだかった壁

――構想から実現まではかなりの苦労があったとか。

佐々木:正直、準備期間の1年間、特にツアー募集が始まるまでの半年間は本当に濃密でした。
旅行商品は、ツアーの行程を作って、移動手段や宿泊施設、観光スポットの仕入れをして、料金設定をして、販売するという流れなのですが、本当にたくさんの壁があったんです。

佐藤:まず、肝心の協力をしてくださるタクシー会社さんを探すのが大変で…。
日本のお客様だけでなく、訪日インバウンドのお客様も利用されることを想定すると、大きな荷物を積めるアルファードやジャンボタクシーが必須なのですが、そうした大型車を保有している会社さんは意外と少ないんです。台数が限られるなかでこの企画用に車を確保しておくことが難しく、「大型のタクシーは2台しかないので協力は難しい」と、物理的な理由で断られることもありました。

佐々木:どうにか協力いただける会社がないかと、タクシー会社との商談会にも行きましたし、タクシー業界の会合にも飛び込みました。一社一社のタクシー会社さんに「訪日インバウンドのお客様はどう対応されていますか?」と、現場の声をヒアリングして歩き、私たちのプロジェクトを実現させるヒントを探していくという、地道な開拓から始まったんです。

――パートナーとなるタクシー会社さんの開拓と合わせて、観光スポットとの調整も一筋縄ではいかなかったそうですね。

佐々木:そうなんです。私たちが「特別な体験を!」とこだわって行程に組み込もうと思った施設でも、コロナ以降の業界全体の人手不足の問題もあり、施設側から「対応できるスタッフが限られるので難しい」と言われてしまうこともあって。

佐藤:受け入れ先施設のスタッフを確保するためには、ツアーを催行するかどうかを早く決めなければいけない。ただ、そうするとお客様にとっては予約の締め切りが早すぎたり、開催日が限定されたりと「申し込みにくい商品」を生んでしまうジレンマなどもありました。
お客様にとって魅力的なツアーであることは大前提として、実現性のあるツアー、できるだけ申し込みをしやすいツアーを作るためにみんなで頭をひねる毎日でしたね。初めはあれもしたいこれもしたいと理想ばかりが先行していたのですが、各所と細かく確認をしながら、2025年度はできるだけシンプルなプランに削ぎ落として、始めていくことにしたんです。

いよいよ販売…そこにもまた大きな壁が⁉︎

――いざ、プランをお客様に届ける段階での苦労はありましたか?

佐々木:まさにそこに、また大きな壁があったんです。私たちがいる東北仕入販売部では普段から東北の着地型商品*を造成して、JTBの各店舗やウェブサイト、提携販売店などで販売をしてもらっています。それらは国内のお客様に向けたものがほとんどなのですが「Tohoku Taxi Cruise」は、国内外問わず訪日インバウンドのお客様にも利用いただきたいと考えていて…。
これまでにあった販路だけではなく、海外のオンライン旅行予約サイト(OTA)に載せたくても、旅行業法などのさまざまな制約があるんです。

※ 旅行者を受け入れる地域で作られる旅行商品

佐藤:「せっかく自信をもってお勧めしたいプランを作ったのに、訪日インバウンド向けにどこで販売すればいいのか…」と私たちの部署だけではなかなかいいアイディアが出てこず悩みましたね。
でも、そこで諦めずに、社内の専門部署や訪日インバウンドに特化したグループ会社、海外支店とも手を取り合い、なんとか販売にこぎつけることができました。
2026年度からは、海外のオンライン旅行予約サイト(OTA)への販路もさらに光が見えてきていて、国内のお客様だけでなく、世界中の人に東北の魅力を届ける準備が整いつつあると感じています。

佐々木:一方で、JTBだからこそ叶ったこともあります。たとえば山形蔵王の樹氷ナイトツアー。
通常は、発売と同時に完売してしまうチケットを、JTB事前予約枠として事前に確保してもらっており、これはまさに、長年築いてきた関係性があったからこそできていることです。これまで事業パートナーの皆様と築いてきた信頼関係のおかげと改めて感謝の思いが込み上げました。

「東北の新しい観光インフラ」への進化を目指して

――これからの展望について教えてください。

佐々木:これまではタクシーだけで周遊することを前提にツアーを作っていましたが、今後は鉄道などの一次交通ともっと柔軟に連携していきたいと考えています。より広域をサステナブルに、かつ手軽に旅することができる「東北の新しい観光インフラ」として定着させたい。これが私たちの大きな目標です。

佐藤:具体的なコースも鋭意準備中です。東北の冬ならではの美しい雪の絶景をめぐるプランや、春の桜の名所を巡るプランなど、ワクワクするような体験をお届けできるよう準備を進めています。
ホスピタリティ溢れるベテランの観光ドライバーさんと一緒に巡る旅は、自分たちで運転していては見逃してしまう景色や温かい出会いがたくさんあります。私たちも、より多くのお客様にお楽しみいただけるよう、この企画を推進していきます。
ぜひ一度「Tohoku Taxi Cruise」で、東北の新しい旅を体感してみていただきたいです。

文:藤田華子
写真:鍵岡龍門
編集:花沢亜衣

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