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個々の違いこそが宝物。「違いを価値に、世界をつなぐ。」JTBのDEIB推進

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「DEIB」というワードをご存じでしょうか?

DEIBはDiversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)、Belonging(帰属性)から構成される概念であり、企業や組織において多様な人財が活躍できる環境をつくるための考え方です。

かねてからダイバーシティ推進に注力してきたJTBですが、2023年4月よりDEIBの推進へと深化。その背景には何があり、DEIB推進のためにどのような取り組みをし、その先にどんな未来を切り拓こうとしているのか。DEIBチームの片岡香津希、小澤碧、さらにはDEIB推進に積極的に取り組む菊地純子へのインタビューからひも解きます。

事業基盤機能 DEIBチーム ジェンダー平等担当 片岡 香津希

2006年に株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベルへ入社。訪日旅行営業などを経て、2019年同社のブランド推進室にてダイバーシティの推進に従事。2022年に株式会社JTBに出向し、現職はグループ全体のDEIB推進のジェンダー平等、女性活躍推進を主に担当。社員の活躍を支援する研修・セミナーを企画、運営。2021年に国家資格キャリアコンサルタントを取得したことが転機となり、「自分らしく、しなやかに働き続ける」ための支援がライフワークに。

事業基盤機能 DEIBチーム 組織開発支援担当 小澤 碧

2007年入社。課題解決型の法人営業や商品企画などを経て、2018年に仕入商品事業部にてコミュニケーション改革担当として心理的安全性や会議価値向上プロジェクト、Teams活用の推進に従事。2022年に公益財団法人に外部出向。出向時には、侵攻から間もない時期にウクライナ国境にてウクライナ避難民の支援活動にも取り組む。2024年より現職。組織開発、ワークスタイル変革、コミュニケーション基盤の構築を担当。

ビジネスソリューション事業本部 第七事業部 営業開発プロデューサー 菊地 純子

1995年入社。法人営業や営業推進に従事。2019年にはJATAが主催する「働き方・休み方改革、ダイバーシティ推進」にて聴覚障害を持つ従業員と共にプレゼンし、ダイバーシティ大賞受賞。2020年にはJTBベネフィット(当時)に出向し、従業員の成長を後押しするサービス「flappi」の新規開発プロジェクトに従事。2022年より現職。2024年度からは事業部内のDEIB推進責任者も兼任する。

JTBのDEIB、それは「違いを価値に、世界をつなぐ。」

——まずは、JTBの「DEIB推進」について教えてください。

片岡:「違いを価値に、世界をつなぐ。」これがDEIBを推進していく上での、私たちのステートメントです。ステートメントとは、いわゆる「宣言」になり、DEIBを進める方針を明確化したものです。

年齢も性別も人種も、経験も文化も価値観も、個々の違いから成るDiversity(多様性)そのものが企業に大きな力をもたらし、価値を生み出します。一方、多様性の持つ価値を引き出すには、個々の人財が最大限に力を発揮できるよう、環境を整えなくてはいけません。その環境整備は、単に平等性を確保するだけでは不十分だと考えます。力を発揮するために不足している部分を補ったり、活躍の機会を創出したり、多様な人財が個々に輝ける土台をつくることが大切であり、これはすなわち公平性(Equity)です。

小澤:個々が最大限に力を発揮するには、共に働く仲間がお互いを尊重し合うことも欠かせません。この姿勢が組織のInclusion(包括性)を高め、仲間とのつながりが個々のポテンシャルを引き出します。そして、Belongingに関しては、私たちJTBグループでは帰属性ではなく、「心理的安全性」と捉えています。JTBで働く一人ひとりが自分らしく力を発揮するには「ここに居場所がある」と思えることが重要です。私たちは仲間の皆が自分を偽ることなく、安心して力を発揮できる環境整備に努めています。

これからの時代、多様なお客様、そして多様性が当たり前である社会から必要とされる企業であり続けるためには、これまでの「D&I」に加え、この「Equity」と「Belonging」の観点をしっかりと出し、表現していくことが必要だと考えています。

人は財産。だからこそ「心理的安全性(Belonging)」の考え方を根底に

——JTBがDEIBを推進するに至った、きっかけをお聞かせください。

片岡:きっかけは2007年にまでさかのぼります。当時、国内外グループ会社役員が一堂に会する会議を開催したところ、400名のうち女性が4名。たった1%だったんですね。JTBはダイバーシティという言葉が広く知られる以前から女性が多く働き、世間の皆様にも“女性が活躍する会社”というイメージがあったはず。にもかかわらず、4人という女性役員の少なさは看過できません。その危機感から、同年内に「ダイバーシティ推進室(現在のDEIB推進事務局)」を設置し、ダイバーシティへの取り組みをスタートしました。

そこから女性活躍にとどまらない人的多様化の推進、働きやすさの追求や企業風土・社員意識の改革をはじめ、多くの施策を重ねてきました。2018年にグループ全社の経営体制を再編・統合した際には、初めての女性執行役員として髙﨑邦子が就任しています。

小澤:組織の変革と同時並行的に足元の意識改革にも取り組み、部署や役職の垣根を越えた“さん付け”の呼びかけも進めてきました。これも2018年に始めた取り組みですが、今ではしっかりと根付き、JTBでは社長の山北に対しても“さん付け”です。グローバルではニックネームで“Eddie”と呼ぶこともあるんですよ。

さん付けにしてもニックネームにしても、呼び方をちょっと変えるだけで、心の距離が縮まる気がしますよね。小さなことかもしれませんが、これを実感してもらうことが心理的安全性の担保につながります。ありのままの自分で組織に帰属できるBelongingの考え方がベースにあってこそ、多様性も公平性も包括性も成し遂げられるのではないか。そうした考えのもと、JTBでは2023年4月よりDEIB推進を深化させています。

——お二人が所属するDEIBチームとは、どのような組織なのでしょうか。

片岡:DEIBを経営の根幹と位置づけ、DEIB戦略や人財戦略をベースに、5つの活動軸(組織開発支援、ワークスタイル変革、キャリア開発支援、障害者雇用と活躍支援、ジェンダー平等)を中心にDEIBを推進するチームです。経営戦略の礎として、人財開発や人事、人事企画チームとも連携しながらグループ全体のDEIB戦略を練り、社員一人ひとりの経験や価値観を尊重し、個性を生かして輝くことができる環境を創っていくことがチームの役割です。小澤は組織開発支援を、私はジェンダー平等を主に担当しています。

個人と組織の信頼関係を育む、横展開の組織開発

——小澤さんが担当する「組織開発支援」の取り組みについて、お聞かせください。

smile委員の皆さん(一部)

小澤:「組織開発支援」のうち、私が主に担当しているのは「JTBグループ社員意識調査」「組織開発プログラム」です。

「JTBグループ社員意識調査」というのは、JTBグループが年に一度、海外グループ会社を含む約19,000名の社員全員に実施しているもので、これは組織の状態を数値化し、自分たちの「ありたい姿」と現状のギャップを確認することが目的です。そして、その進捗確認と見直しを行うためのコンサルティングが「組織開発プログラム」です。

JTBは大規模な組織であり、部署や支店、チームごとに抱える課題もさまざま。私たちが目指す組織開発を進めるには、各組織の能動的な改善推進が欠かせません。そこで、各組織では「Smile活動」と称して、それぞれの職場の組織風土の変革や社員エンゲージメントの強化を目的とした自律的な活動が行われており、この活動を支援するのもDEIBチームの役割です。活動内容は本当に多種多様なのですが、例えば、菊地さんが所属する事業部の活動も素晴らしく、ハッとさせられました。

菊地:私は法人事業領域であるビジネスソリューション事業本部 第七事業部に所属しています。小澤さんのお話にもあったように、JTBグループは大きな組織で業務も多様。私の事業部ひとつとっても、リテール(店舗)から異動してくる社員や中途採用など、さまざまな社員がいます。

ひとりひとりが異なるバックボーンによって育まれた強みを持っているので、その強みを掛け合わせ、強い組織を作っていくのが「Smile活動」だと考えています。

活動の一貫として、私たちの事業部では「BS(ビジネスソリューション)第七図鑑」を制作しました。社員それぞれの出身地、経験業務、趣味や得意なことをまとめ、冊子にしたものですが、これがとっても個性的です。例えば、うちの課長は結構仕事が細かく、几帳面な雰囲気の人。でも、課長のページには「片付けが苦手で自宅は散らかっています。」という自己紹介が記されていて(笑)。この一言を読んだだけでも、課長への親近感が湧きますよね。所属員全員に一人一冊配ったので、困ったときにはその人を頼ったり、共通の趣味や出身地などでコミュニケーションを深めたりもできます。

また、最大のポイントとしては、全員のページそれぞれに事業部長からコメントが寄せられていることです。期待されていることを社員が知ることで、「私は事業部から必要とされていて、ここに居場所がある(Belonging)んだ」と実感してもらえるのでは、と考えました。

ブラインドサッカー体験研修の様子

小澤:ほかにも菊地さんの部署では、コミュニケーション課題を解決するための面白い研修を実施していましたよね。私も一緒に参加させていただいた「ブラインドサッカー体験」では、研修を通じてあらためて相手の立場に立ち、想像力をもってコミュニケーションをすること、信頼関係構築の重要性に気づかされました。

少し話が戻りますが、こういった個所の活動に対してどんな支援をするべきなのか、指標の一つとなっているのが「JTBグループ社員意識調査」です。年に一度、100ページ以上にわたる報告書を作成しており、その分析結果からグループ全体が抱える課題は何なのか、事業部や支店ごとの課題はどこにあるのか、事細かにまとめます。報告書を見てもらうだけではなく、より踏み込んだ支援を求めるチームに対してはコンサルティングを行っています。

菊地:私たちの部署も組織開発のコンサルティング支援に挙手しましたが、そのサポート姿勢はまさに伴走、寄り添いです。プログラムの分析結果から、私たちの部署は「オフィス環境が快適でない」と感じるメンバーが多いことが分かりましたが、一度の調査だけではレイアウトや会議スペースなどのハード面のことなのか、人間関係などのソフト面のことなのか、判断しにくかったんですね。

そこをクリアにすべくDEIBチームにアドバイスいただき、グループ全体の意識調査とは別に部署独自のアンケートを実施したところ、「周りの人が忙しそうに見えて、ちょっとした相談がしにくい」という声が出てきました。現在はこの課題を解決するためにオフィスグリコを導入して、そこで会話が生まれるようにしたり、障害者アートを使ったワークショップを実施したり、相互理解による相談のハードルを下げる取り組みを実施しているところです。組織の課題にじっくりと向き合うきっかけになったと感じています。

小澤:プログラムの分析結果はもちろんですが、各職場がどのように組織強化やエンゲージメント向上を達成してきたのか、社の組織開発支援を横断的に担う私たちは、多くの成功事例を目の当たりにしています。今回のように横の事例を共有し合いながら成長していくことは、自社のエンゲージメントの定義である「個人と組織の信頼関係が一体となり、成長に貢献し合うこと」の達成にもつながるはずです。

真似しなくていい、自分ゴトのための“ロールパーツ”

——片岡さんが担当する「ジェンダー平等」では、どんな取り組みをされているのですか。

片岡:JTBグループでは、女性の活躍推進、男性の育休取得推進、「アンコンシャス・バイアス(=無意識の思い込み)」の解消、LGBTQ+の4つのテーマでジェンダー平等を推進しています。

女性活躍推進の取り組みを中心にお話ししますと、2024年度は「プラスフォーラム」と題し、ライフステージの変化に伴う「アンコンシャス・バイアス」を解消し、自分らしいキャリアを描けるよう、キャリア編・両立支援(育児)編・自己理解編の3つを実施しました。

両立支援(育児)編では、育休取得前から復職後までのセミナーを通じて、会社の制度理解や男性の育児参画、パパ育休取得の重要性、そしてキャリアを継続的かつ長期的に考えることの大切さをお伝えしました。特に復職後の上司部下セミナーの目指すところは、復職される方には長期的にキャリアを考えることの重要性を認識いただくこと、上司には現在の子育て環境の理解促進や「責任ある仕事を任せたら負担では?」といった無意識の思い込みを解消いただくことです。

女性社員向けの「キャリア編・なでしこフォーラム」に関しては、会社理解、自己理解、座談会を通じて自分らしいキャリアデザインをすることを目的に実施。フォーラムと聞くとステージに上がり、登壇者がスピーチをするような様子が思い浮かぶかもしれませんが、「なでしこフォーラム」は双方向でのコミュニケーションを意識しました。

特に多種多様なキャリアを歩んできた女性社員を囲んでの座談会は大盛り上がりで、キャリアの悩みや前向きになれた経験など、ざっくばらんにお話しいただきました。このときは小澤さんにもスピーカーとしてお話しいただきましたよね。

小澤:そうでしたね、私自身のキャリアについて参加者の方と自由に語り合うスタイルでしたので、ざっくばらんにお話しすることができました。

実は、私はこれまでのキャリアにとても恵まれていて、会社に提出する目標シート(※)に書いた内容がすべて実現しているんです。その話をしたところ「どうしたら希望部署に異動できるのか、シートの書き方を教えてください…!」なんて質問も飛び出したりして、楽しかったですね(笑)。

※年度目標の管理に加え、3年後5年後10年後の希望部署を記載できるシート

菊地:私も部署の仲間と参加しましたが、小澤さんをはじめとするスピーカーの方々のお話が率直に胸に響いた実感があります。部署のメンバーも、こんな働き方があるんだ、こんなキャリアの進め方があるんだ、と大きな気づきを得たようです。フォーラムのあとに皆で食事をしたのですが、「与えられたキャリアを歩むことが当たり前だと思っていたけれど、自分が望むキャリアを口にしていいんだ」と話していたことがとても印象に残っています。

片岡:これはもう、本当にうれしいお言葉です。キャリアの描き方は本当に人それぞれ。ロールモデルを探し、誰かの築いたキャリアをモデルに歩むのではなく、自分が取れ入れたいロールパーツを取り入れ、自分らしいキャリアを築いていくことが大切だと思っています。

また、各研修やフォーラムのなかでは、会社の制度についてもお話しするようにしています。JTBの例ですと、これまでは女性向けに設けていた生理休暇を拡大し、2024年から性別を問わず利用できるウェルネス休暇へと刷新。ホルモン治療や健康診断の再検査受診、卵子凍結・精子凍結、性別移行のための休暇にも適用できるよう、制度を拡充しています。キャリアを継続する上で、制度を知り正しく活用することも大切な要素だと捉えているからです。

フォーラムに参加したことで、何か今の自分にひとつでも“プラス”してみよう。あのフォーラムで聞いた要素をここに“プラス”してみよう。「プラスフォーラム」と言う名称にしたのは、今の自分に何かプラスして踏み出すきっかけになれば、という気持ちの表れでもあります。

目指すビジョンの実現に向け、心に触れる取り組みを

——DEIB推進を続けた先に描く、お二人のビジョンをお聞かせください。

片岡:「違いを価値に、世界をつなぐ。」。冒頭にお伝えした、この言葉を体現することに尽きるのでないでしょうか。ダイバーシティの推進から始まり、JTBグループがDEIB推進へと深化したのは2023年4月のこと。DEIBを推進する意義・意味とは何なのか。これはそう簡単に理解・浸透していくものではありません。DEIBの考え方が社員一人ひとりの“当たり前”になっている状態を目指していきたいです。
そのためにはDEIBを自分ゴトとして捉えていただけるよう、人の心に触れる施策を重ねていきたいと考えています。

小澤:だからこそ、私たちは言葉の選び方一つひとつにも妥協はしません。実は「違いを価値に、世界をつなぐ。」の英訳には、「Treasure the Difference, Bring the World Together.」というフレーズを用いています。「価値」は通常、「Value」と訳されることが多いのですが、JTBグループではあえて「Treasure」、宝物という言葉を採用しています。目指すビジョンの実現に向け、このフレーズに込めた「自分の価値を宝物のように育み、発揮してほしい」という想いを伝え続けていきたいと思います。

文:大谷亨子
写真:飯本貴子
編集:花沢亜衣

  • 本記事の最上部にてご紹介しているアート作品は「2022アートパラ深川おしゃべりな芸術祭」JTB賞受賞作品の『たゆたうひまわり』(櫻井 彩也香 作)です。詳細はこちら

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