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自由と安心、欲張りな旅へ。ヨーロッパ周遊バス「ランドクルーズ」が変える旅のスタイル

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ヨーロッパを自由に巡れるのに、言葉の壁や移動の不安を感じない旅があるとしたら?JTBの「ランドクルーズ」は、そんな旅を可能にする新たな旅のカタチとして注目を集めています。バスの乗り降りが自由なシートインコーチという旅行形態は、一人旅初心者や20代の若者を中心に、これまでJTBを利用したことがない方にもご利用いただいています。今回はJTBでランドクルーズを担当する伊藤と、実際にこの旅を3回も体験した旅行インフルエンサーのMaibaruさんに、その魅力と可能性を聞きました。

JTB ツーリズム事業本部 事業推進部 国内海外政策チーム 伊藤 寛隆

2015年入社。宇都宮支店にて企業、自治体営業を担当したのち、2023年より現職。現職では海外旅行推進をミッションとし、当社の主要商品であるエスコート商品、ロイヤルロード商品の販売支援や、ランドクルーズのマーケティング戦略の全体設計、実行を担当している。農学部出身。趣味は野鳥観察。

YouTubeクリエーター Maibaruまいばる

旅の様子を写真を交えたYouTubeが人気のクリエーター。映像に登場する日本人女性まいばるさんと撮影担当のYuuさんによる旅行コンテンツを発信する2人組ユニット。タイ移住経験後、日本と世界の旅行動画を発信するYouTuber「Maibaru Travel」を開始。
https://www.youtube.com/c/maibaru

欧州で人気の「シートインコーチ」を日本人向けにアレンジ

———ランドクルーズとはどのようなサービスなのでしょうか。

伊藤:ランドクルーズとは、一言で言えば、ヨーロッパ21カ国を巡る「シートインコーチ」と呼ばれる旅行スタイルです。「シートインコーチ」とは、バスの乗合型の旅行のことで、このバスを乗り継ぐことで広範囲にわたる旅が可能になります。
もともとは、JTBグループの「ヨーロッパ ムンドバケーションズ(以下、EMV)」が、主に南米のお客様向けに展開していたサービスですが、その豊富なノウハウを生かして、日本人向けにアレンジしました。現地には日本語対応の係員を配置し、日本人が興味を持ちやすいスポットを厳選してご案内しています。

———ランドクルーズが生まれた経緯や背景を教えてください。

伊藤:近年、多くの方が「個人手配型」の旅行を好むようになっており、「従来型のパッケージツアーだけでは、これからの旅行者のニーズに応えきれない」という声が社内でも聞かれるようになっていました。そこで、自由度が高いながらも安心感のある旅行スタイルを提供する手段としてランドクルーズが生まれました。また、前述のEMVが2014年にJTBグループに加わったことで、その知見やリソースを生かせるようになったという背景もあります。

———従来のツアーや個人旅行との違いはどういったところにありますか。

伊藤:ランドクルーズは個人手配型の旅行とパッケージ商品の「いいとこどり」と言えます。一般的なツアーでは航空券も含まれていて、フライト、食事する場所、観光する場所も全部決まっていることが多いですよね。 一方、ランドクルーズの場合は自由行動が中心で、昼食と夕食は含まれていません。そのため、お客様が行ってみたいレストランやスポットに自由に行くことができるんです。 また、航空券も含まれていないので、例えば格安航空券と組み合わせたり、マイルを使ったりして、自分なりに旅費を調整することもできます。そして最大の特徴は、現地の日本語係員が同乗していることです。ヨーロッパに初めて行く方や一人旅をする方も、何かあれば相談ができるのでご安心いただけると思います。

———日本人旅行者にとって、どのような工夫がされているのでしょうか。

伊藤:私たちが意識しているのは、日本人が海外旅行で感じる「不安」と「自由への憧れ」のバランスです。SNSで見つけた素敵なスポットに行くことや、美味しい料理を自分で選んで食べたいという希望はそのままに、言葉の壁や移動の不安は解消できるよう工夫しています。

日本人旅行者は言語や現地の公共交通機関の利用に不安を感じる方が多いので、日本語を話すスタッフを配置し、ホテルの立地や安全面も日本人の感覚に合わせて調整しました。他国のお客様向けのサービスをそのまま提供するのではなく、日本人旅行者の視点で全体を見直しています。

———JTBの事業戦略において、ランドクルーズはどのような役割を担っているのでしょうか。

例えば、こちらは4日間でフランスパリ、ジベルニー、ルーアン、カーン、モンサンミッシェル、サンマロ、レンヌ、アンジェ、トゥール、アンボワーズなどを訪問するコース。バス旅ならではのさまざまな観光が楽しめる。

伊藤:“これまでに無い新たな旅のカタチ”として、ランドクルーズを位置づけています。特に注力しているのは、「今までJTBを利用したことがない方」との接点づくりです。「JTBってパッケージ旅行の会社だよね」と思っていた方々に、「実はこんな自由な旅も提案しているんですよ」と知ってもらう入口になればと考えています。 実際にデータを見ると、利用者の中で20代の若い世代が多く、一人旅の方の比率も高くなっています。

ツアーのような安心と個人旅行の自由を両立

———ここからは、実際にランドクルーズを体験したMaibaruさんにお話を聞いていきたいと思います。 Maibaruさん、率直な感想としてランドクルーズはいかがでしたか。

Maibaru:実は、これまでパッケージ旅行には「窮屈」というイメージしかなくて、ずっと個人旅行派でした。でも、ランドクルーズは想像以上に自由に動けるので、びっくりしたんです!移動時はバスという「安心感」があって、観光中は「自分のペース」で楽しめる。このバランスが素晴らしい。シンプルに言うと、旅の自由度が広がるんです。個人旅行では行きづらかった場所も気軽に組み込めるので、旅の可能性がぐっと広がりました。

———具体的に良かった点を教えてください。

初めてのランドクルーズでミラノにて。このときはイタリア4都市(ローマ・フィレンツェ・ミラノ・ヴェネチア)を巡った。

Maibaru:そうですね、特に気に入った点は3つあります。まず、食事が自由。これは思った以上に良かったです。例えば各地の郷土料理を楽しみたいとき、「この街の名物は何ですか?」とガイドさんに聞くと教えてくれるので、知らなかった料理との出会いがたくさんありました。おすすめのレストランも紹介してもらえるので、自分で探す手間も省けるのもありがたかったですね。おなかや自分の好みと相談しながらメニューを選べたり、事前にSNSなどでチェックしていたお店を訪ねたりすることもできるのも良かったです!

2つ目は、とにかく疲れないこと。私はあんまり体力がなくて(笑)個人旅行だと移動だけで体力を消耗して、観光する元気がなくなることがよくあったんです。でもランドクルーズでは、バスの中でしっかり休めるので、1週間の旅でも驚くほど元気でした。バスに一緒に乗っていた70代のご夫婦も元気に観光を楽しまれていました。体力に自信がない方にも、このスタイルはぴったりだと思います。
それから3つ目は、身軽に観光できたこと。バスに荷物を置いて出掛けられるので、重いスーツケースを持ち歩く必要もないですし、防犯面でも不安なく過ごせる。安心感も大きなメリットでした。

イタリアを旅した際、「ローマやベネツィアといった主要都市はもちろん、サンジミニャーノやシエナなど、個人で行くのが少し難しい場所も効率よく回れました」というMaibaruさん。一度使うと、次の旅行計画を立てるときも「このエリアにはランドクルーズのルートはないかな?」と自然に選択肢に入ってくるようになったそう。

———Maibaruさんは次回のスペイン・フランス旅行で新しい使い方にも挑戦されるそうですね。

今回Maibaruさんに乗っていただくのは、マドリードから出発しパリへ行くコース。パリに滞在したあとは別のコース(バス)に乗り換え、モンサンミッシェルへ行く予定。

伊藤:はい。Maibaruさんは今回で4回目になるので、「ランドクルーズの新しい楽しみ方」を体験していただく予定です。スペインのマドリードから始まり、サンセバスチャン、パリを経由してモンサンミッシェルへ向かうコースなのですが、途中のパリでの過ごし方にアレンジを加えました。 ランドクルーズとランドクルーズの間に、別途予約した高級ホテルでの滞在を挟んでいるんです。

実はこういった「自分らしいカスタマイズができること」がランドクルーズの魅力の一つなんです。通常、ランドクルーズでは機能的なホテルを選んでいるのですが、例えばハネムーンなど特別な旅では、一部の日程だけ贅沢なホテルに泊まりたいというニーズもありますよね。今回のMaibaruさんの旅は、そんな「ランドクルーズの上級者的な使い方」のモデルケースにもなるのではと思っています。

サンセバスチャンは「美食の街」として有名。海鮮料理が絶品で、バル巡りを楽しめるのも魅力の一つ。「Maibaruさんには、さまざまなバルを訪れて、お酒と一緒に地元の食文化を存分に楽しんでいただきたいですね」(伊藤)

ランドクルーズの課題と今後の展望

———ランドクルーズを推進していく上での課題や難しさがあれば教えてください。

伊藤:そうですね、ランドクルーズ最大の課題は「いわゆるパッケージツアー商品とシートインコーチの違いをどう伝えていくか」かもしれません。というのも、JTBの旅行商品というと、どうしても添乗員が全てをお世話してくれるような、フルサポートのイメージを持たれる方が多いんです。しかし、ランドクルーズは違います。このあたりはMaibaruさんも、違いを感じられたのではないでしょうか。

Maibaru:はい。例えば、あるエリアの観光後、「ここで解散です。ホテルには地下鉄で戻ってください」ということがありました。私たちは、ある程度自由に楽しみたいタイプなので、解散後にも街中を思い思いに過ごせるのは有難かったのですが、自分で路線図を調べて切符を購入しホテルまで戻る必要があるので、常にマンツーマンでサポートしてほしいという方は、戸惑われるかもしれませんね。

伊藤:そうなんです。私たちも、ホームページや店頭での案内を通じて、ランドクルーズの特徴をしっかり伝えるよう心がけています。 事前にきちんとお伝えしておけば、現地のことを調べたり、下準備の時間もきっと楽しんでいただけるのではないかと思います。

———今後のランドクルーズの展望についてお聞かせください。

伊藤:最初は、新しい旅行形態であることやコロナ禍なども相まって、なかなか認知拡大が難しかったのですが、現在は着実に認知度が高まってきていると感じます。「ランドクルーズ」というキーワードの検索数も、2023年から2024年にかけて約4倍に増加しました。Maibaruさんの動画も大きな影響を与えてくださっていて、「YouTubeを見て申し込みました」というお客様も多いんですよ。

ランドクルーズの魅力をリアルに伝えてくれるMaibaruさんの動画。「私たちは通常、撮影では晴れの日しか撮らないのですが、イタリアは曇りでも素晴らしかったです!」とMaibaruさんが興奮気味に語るほど感動的な風景は必見です。

伊藤:今後の展望として特に伸ばしていきたいのは「一部利用」です。従来のツアーのように最初から最後まで同じグループで行動するのではなく、旅の一部だけにランドクルーズを活用するスタイルですね。
例えば「スペインのペニスコラに行きたい」「この人に会いたい」「この料理を食べたい」など、明確な目的を持つ旅行者が、そのポイントへ行くためだけにランドクルーズを利用する。このように交通インフラとして気軽に使ってもらえるようになると、より多くの方の旅をサポートできると考えています。
旅行市場は引き続き、大きく変化しています。旅行者一人ひとりの目的が多様化し、それぞれが「自分だけの旅」を求めるようになってきました。ランドクルーズはまさにそんな時代のニーズに応えるもの。これからも柔軟性を高めながら、より多くの方の「行きたい」を叶えるサービスとして発展させていきたいと思っています。

Maibaru:思った以上に便利すぎて、一度乗った方はきっと「次もランドクルーズを使いたい」という気持ちになると思います。私の動画がその1回目のきっかけになれば嬉しいですし、私自身もっとランドクルーズを使いこなして、これからも“バスだからこそ行ける”、日本人にはまだ馴染みのない都市にも行ってみたいなと思っています。そしていつかヨーロッパ以外の場所にも、ランドクルーズで行けるようになったら嬉しいですね!

伊藤:頑張ります!(笑)

文:大西マリコ
写真:鍵岡龍門
編集:花沢亜衣

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