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記憶に刻まれる万博を目指して。日本国際博覧会協会とJTBが語る「2025年大阪・関西万博」が未来に残すもの

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170年以上の歴史を持つ国際博覧会。

2025年4月13日より開幕する「2025年日本国際博覧会(以下:大阪・関西万博)」までいよいよ残り3カ月を切りました。日本で行われた国際博覧会としては最大数となる158カ国・地域、9国際機関が参加する今回の大阪・関西万博では、文化の交流、産業の交流、さまざまな「つながり」の創出が期待されています。

今回は、日本国際博覧会協会のお二人とともに、大阪・関西万博のテーマや見どころについて語り合いました。

2025年日本国際博覧会協会 畑田 健

広報・プロモーション局 地域・観光部 観光推進課長。
2003年西日本旅客鉄道㈱に入社。自治体等と連携した観光コンテンツの開発・商品化業務やJRグループニューヨーク事務所での勤務を経て以降は、主に海外からのインバウンド誘致、受入体制整備などを担当。2022年6月に(公社)2025年日本国際博覧会協会地域・観光部に出向。

2025年日本国際博覧会協会 山川 真由

広報・プロモーション局 地域・観光部 観光推進課。
2019年に三重県庁入庁。国立公園等の魅力発信事業や、林業、木育をテーマとした自然体験事業などに携わり、地域資源の魅力の掘り起こしに関わる。2024年4月より(公社)2025年日本国際博覧会協会地域・観光部に出向、万博+観光ポータルサイトの商品掲載等を担当。

JTB エリアソリューション事業部 大阪・関西万博営業推進プロジェクト長 松岡 日出人

1992年に入社後、西宮支店・団体旅行神戸支店にて法人営業に従事。海外大型MICE事業を通じて、ツーリズム事業が持つ「旅のチカラ」を実感する。その後、本社部門にて法人・個人営業推進や、地域交流事業を経て、2015年より担当した訪日インバウンドソリューション開発を通じて、訪日インバウンド市場の魅力を体感。2021年より「2025年日本国際博覧会」に関する事業統括を担当し、現在に至る。

JTB エリアソリューション事業部 大阪・関西万博推進担当  南 美智代

2003年入社。旅の予約センターにて電話・メール受付業務に従事し、本社にて店頭営業推進業務ののち、新大阪駅内店・高槻アクトアモーレ店にて店舗運営、大阪北エリア・神戸支店にて店頭営業推進全般の業務を経て、2024年4月より現職。「万博+観光情報ポータルサイト」の運営と会計業務・販売促進を担当。

170年以上の歴史を持つ国際博覧会

――いよいよ大阪・関西万博の開催が近づいています。まず、「国際博覧会」について簡単に教えていただけますか。

畑田(博覧会協会):国際博覧会は1851年のロンドン万博に始まり、約170年にわたり世界各地で開催されてきた歴史ある国際イベントです。特にアジア初として1970年に開催された大阪万博は、テレビなどで見聞きしたことのある方も多いのではないでしょうか。

1970年の大阪万博は、電気自動車や動く歩道、携帯電話など、現代の私たちの生活に欠かせない技術が普及するきっかけとなりました。

――今の私たちの生活を快適にしている技術が、国際博覧会をきっかけに生まれていたのですね。

畑田(博覧会協会):そうですね。1970年の大阪万博には6400万人以上が訪れ、長らく国際博覧会史上最高の来場者数でした。しかし、2010年の上海万博はそれを上回る盛況ぶりを見せ、さらに2020年には中東・アフリカで初めての開催となるドバイ万博が開かれました。このように、国際博覧会は時代とともに世界各地に広がり、ますます国際色豊かなイベントへと進化を遂げています。

多様性を尊重しながら、人と人がつながる場を目指して

――大阪・関西万博への参加国は158カ国・地域、9国際機関と、日本で開催される国際博覧会の中では史上最大数となるそうですね。

畑田(博覧会協会):はい、今回の大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。現代社会では、人間と自然の分断による環境問題や文化・価値観の違いによる争いなど、さまざまな分断が生じています。この大阪・関西万博では、命の多様性を認め合いながら共生する社会を目指し、それを未来につなげていくことを目標としています。

特に注目していただきたいのは「大屋根リング」。これは日本の伝統技術を用いて建設された、世界最大級の木造建築物です。

今回の会場には従来のようなメインステージという「中心」はありません。代わりに、各国や企業のパビリオンを結ぶように「大屋根リング」が広がっています。一点に「中心」を置くのではなく、それぞれの個性を尊重しながらも、互いにつながり共存していくというメッセージがこのデザインに込められています。

――皆さん、それぞれの視点から見て今回の大阪・関西万博の見どころとはどこにあると思いますか。

松岡(JTB):畑田さんがおっしゃる通り、「大屋根リング」は圧巻です。内径約615mもあり、東京スカイツリーを横に倒したくらいの大きさ。これだけでも見る価値があります。

また、各国のパビリオンも個性豊かで面白いですよ。例えば、音楽で有名なオーストリア共和国は楽譜をモチーフにし、中国は書物の巻物の形をしたパビリオンを出展。日本館は、会場内のゴミをエネルギーに変える循環型社会の実現を目指した設計が特徴です。各国それぞれが今回の大阪・関西万博のテーマを独自の解釈で表現しています。

山川(博覧会協会):公式参加者のパビリオンの他にも、8人のプロデューサーによる「シグネチャーパビリオン」や13の民間事業者による民間パビリオン、日本政府による日本館、大阪府市による大阪ヘルスケアパビリオン、関西広域連合が主体となり出展する関西パビリオン、人々が平等に生き尊敬し合い共に歩みながら能力を発揮できる世界をつくるきっかけを目指す「ウーマンズ パビリオン」などさまざまなパビリオンを展開します。

また、パビリオンに加えて、公式に参加する国・地域や国際機関「公式参加者」がその国の展示やライブイベントなど披露する「ナショナルデー・スペシャルデー」が1日ずつ開催されるほか、自治体や事業者による催事、水上ショーや花火などさまざまなイベントを日々実施します。

さらに、異なる地球規模の課題を約1週間ごとに扱う「テーマウィーク」にも注目いただきたいです。例えば4月25日〜5月6日は「未来の文化共創」をテーマにした展示と有識者を招いたビジネス対話も予定されています。

――本当に盛りだくさんですね!いつ行くか迷ってしまいそうです。

山川(博覧会協会):公式ホームページに掲載されているイベントページをご覧いただき、ご自身の興味関心に合わせて選んでいただければと思います。184日間、毎日催しが変化していくので、何度来ても新しい発見があるはずです。1日パスはもちろん、夏休み中や会期中に何度でも来場できるパスもご用意しています。

松岡(JTB):私はもちろん通期パスを購入しましたよ(笑)!これから発表される豪華ゲストもたくさんいますから、「この国のアーティストはもしかしてあの人?」とワクワクしながら情報解禁を楽しみにしていてください。

各地域のストーリーを伝えたい。JTB協賛の「万博+観光情報ポータルサイト」

――そんな大阪・関西万博ですが、今回JTBは主に「万博+観光情報ポータルサイト」に運営協賛しています。

松岡(JTB):大阪・関西万博を契機に、さまざまな交流を生み出すことが私たちJTBの役割と考え、協賛させていただきました。その取り組みの1つがポータルサイトの制作・運用です。

このサイトは、大阪・関西万博来場者に日本の多様な魅力に触れていただくことを目的として、各地域の万博のテーマに関連する体験や地域イベント情報の紹介をしています。気になった体験があれば、このサイトから予約いただくことも可能です。

畑田さん、山川さんを筆頭に日本国際博覧会協会様から各自治体や事業者向けに説明会を実施していただいたところ、800件を超える掲載の申請がありました。そのなかから大阪・関西万博のメッセージに合致したプランを厳選し、今後さらに追加していく予定です。

――大阪・関西万博のメッセージに合ったプランとは、具体的にどのようなものでしょうか。

山川(博覧会協会):単に観光地を巡るだけでなく、地元の人々との交流や、その地域の背景を深く知ることができるようなプランを基準としました。

地名や地図からの検索はもちろん、ジビエやローカルフード、伝統行事、アニメ・漫画などの「ジャンル」での検索も可能です。さらに、「いのちを救う」「いのちに力を与える」「いのちをつなぐ」という万博のサブテーマからも検索できます。

また、トップページにはその地域の魅力を凝縮した動画を配置しています。このサイトを見るだけで各地域の魅力が伝わる設計は、長年旅行を取り扱ってきたJTBさんならではの提案だと感じました。

南(JTB):そう言っていただけてすごく嬉しいです!まさに、サイト設計において「各地域のストーリーを伝えること」を大切にしてきました。

単に旅行プランを販売するのではなく、このサイトを訪れたお客様がその地域の歴史やストーリーに魅力を感じ、共感し、「行ってみたい」と思っていただくこと。さらには、その体験を通じて大阪・関西万博とつながるメッセージを持ち帰っていただくこと。これらが私たちの目標です。サイトでの見せ方はもちろんのこと、各地域のプランのブラッシュアップもお手伝いさせていただいています。

――特におすすめしたいプランはありますか。

南(JTB):本当に素敵なものが多いので迷いますが…個人的におすすめなのが大阪・関西万博開幕と同じ春に開催される「瀬戸内国際芸術祭」のプランでしょうか。瀬戸内海の島々をチャータークルーズで巡り、桜も見られる贅沢な体験です。

畑田(博覧会協会):いいですね。実は国際博覧会が海に面して開催されるのは今回が初めてなんですよ。大阪・関西万博をきっかけに瀬戸内の魅力が世界的にも発信される機会になるのではないかと。

南(JTB):その他にも長年旅行の販売をしてきた私たちですら初めて見るような希少性の高いプランがたくさん集まってきています。「いいプランはあるけれど販売する場所がない」という課題を抱えた事業者様も多くいらっしゃいますから、この大阪・関西万博をきっかけに世界に発信する機会になるよう、しっかりサポートさせていただきたいと思っています。

来場者の心に響く万博に。大阪・関西万博が未来に残すもの

――国際博覧会は開催期間中だけでなく、未来につないでいくことを大切にしているイベントかと思います。今回の大阪・関西万博が未来に与える影響や効果はどのようなものだとお考えですか。

畑田(博覧会協会):まず1つは経済効果です。かつての大阪万博で発表された携帯電話や電気自動車が実用化されたように、中小企業を含むあらゆる企業の技術に注目が集まり、投資拡大や商用化のチャンスにつながります。

また、国際博覧会は都市再開発の重要な契機となります。前回のドバイ万博では、もともと何もない砂漠が会場となり、今では新たな都市として活用されています。

松岡(JTB):国際博覧会には人々の動きや都市構造をガラッと変える力がありますね。今回の会場である夢洲も魅力的な場所へと変貌していくでしょう。開催期間中はもちろん、その後の発展にも注目していただきたいです。

――最後に、大阪・関西万博の意気込みをお聞かせください。

松岡(JTB):大阪・関西万博をきっかけに、さまざまな国の人々や多くの報道陣が日本を訪れます。現在、世界各地でオーバーツーリズムが問題となっておりますが、今回の大阪・関西万博をきっかけに、京都や大阪のみならず、日本の各地域へもぜひ足を運んでいただきたいです。そして数年後には、そんな旅行のあり方が当たり前になっていてほしい。それが地域の持続的な発展にもつながっていくはずです。
将来「日本の地域の魅力が広まったのは2025年の大阪・関西万博がきっかけだったよね!」と誇りを持てるように、力を尽くしたいと思っています。

南(JTB):大阪に長年住んでいる私にとって、「万博」は「万博記念公園駅」や「万博ロード」など、1970年の大阪万博の名残として地名や駅名に残る、幼い頃からの馴染み深い言葉です。

しかし、その馴染み深さゆえ「万博」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、今回ではなく1970年の大阪万博なのではないかと。「万博と言えば2025年の夢洲だよね!」と後世の人々に思ってもらえるよう、さらに魅力を発信していく必要があります。

山川(博覧会協会):この仕事を通じて、前回の大阪万博が人々の記憶に残る素晴らしいイベントだったということを多くの人から聞きました。今回の万博もそれに劣らず、何年経っても「素晴らしかったね」と言われるようなものにしたいです。

畑田(博覧会協会):大阪・関西万博での催事コンセプトにあるメッセージの1つに「その一歩は、誰かの心を震わせるか」という言葉があります。純粋に「面白かった」「楽しかった」と感じていただくだけでなく、1人でも多くの来場者の未来につながり、心に響くものであってほしい。20年ぶりの日本開催という貴重な機会ですから、多くの人に来場いただき、生涯の記憶に残るものにしていきたいと思います。

写真:大童鉄平
文: 佐藤伶
編集:花沢亜衣

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