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「日常の中にある"学び"を伝えたい」  自身の仕事と子育て経験から得た気づきを「OYACONET事業」に込める

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「週末、子どもと一緒にどこに出かけよう?」「子どもにどんなことを体験させよう?」。休日や長期休みのたびに、お子さん との過ごし方で頭を悩ませている親御さんも多いのではないでしょうか。

今回ご紹介する「OYACONET」は、「子どもたちの学びの機会を創出すること」を目的に、担当者自身の仕事と子育ての経験から生まれた新規事業です。今夏、商品化が決定している体験型教材「OYACONET-QUEST(おやこねっと・クエスト)」では、子どもたちと世の中のさまざまな場所・モノ・コト・情報との出会いを通して、豊かな学びへと発展させることを狙いとしています。

約3年がかりで商品化が実現したJTBの新たな試みについて、これまでの道のりと事業にかける想いを、担当の高岡裕之に聞きました。

企画開発プロデュースセンター 高岡 裕之

1997年入社。教育事業に携わったのち、ダイバーシティ推進事務局 事務局長としてDEIBを推進。2021年に、社内の新規事業公募制度「JUMP!!!」を通過した「OYACONET」の企画に携わり、事業責任者に。現在は企画開発プロデュースセンターに所属し、サービスの企画・開発を手掛けている。

ゲーム感覚で世の中の仕組みや工夫を学べる「体験型教材」を開発

――2021年に新規事業としてスタートした、「OYACONET」の概要を教えてください。

高岡:OYACONET事業では、「社会と家庭をつなぎ学びの世界をひろげる」というテーマのもと、サービス開発や商品づくりに取り組んでいます。

最近では、親子で取り組める体験型教材「OYACONET-QUEST」の企画・開発を手掛け、2024年7月には、夏休み期間に合わせた内容の「OYACONET-QUEST おさるのジョージスペシャルエディション」の販売が決定しています。この教材は、子どもたちが主体となってさまざまなクエストにチャレンジし、活動を通して学びを深めていくというもの。小学生を主な対象としており、「普段から利用している場所」や「身近にあるもの」などをテーマにしたクエストを用意しています。

先日、実施したテストマーケティングでは、図書館やコンビニ、家の中などを舞台にしたクエストに取り組んでもらいました。例えば図書館では、「図書館のように家の本棚を並べ替える」というクエスト、コンビニでは「コンビニのレジ前に何を置くか考えて家で提案する」などのクエストを提示。クリアするためには、子どもたちが「いつもと違う視点」を持って施設やお店に赴き、考えることが求められます。これまでと違った切り口で物事を見つめることで、新しい発見につながることを期待しています。

――普段から利用している場所も、視点を変えるだけでさまざまな気づきが得られそうですね。

高岡:そうですね。チャレンジを通して、世の中の仕組みや工夫に気づいてもらえれば嬉しいです。また、「身近なもの」に目を向ける仕組みを作るため、「家の中にある油が使われている食材を探し出す」など、「家の中」をテーマにしたクエストも実施しました。

「油」に着目したクエストは、食品メーカーとのタイアップで制作しました。このように、企業とタイアップしたクエストを制作することで、子どもたちにとっては、社会にあるさまざまな物事に目を向ける機会となり、協力いただいた企業にとっては、消費者との接点創出や伝えたいメッセージを伝える機会になると考えています。

「学校以外でも学びの機会を」。発案者の想いを引き継ぎ新規事業にチャレンジ

――事業が始まった経緯について教えてください。

高岡:社内の新規事業公募制度「JUMP!!!」に通過した企画がベースとなり、事業化につながりました。発案者は、現在バンコクに赴任している川口亨さんです。彼とは入社以降、一緒に教育旅行を担当し、学校営業を行ってきました。また、川口さんも私も子を持つ父。学校営業での気づきに加え、互いの子育てへの想いを共有するうち、「学校以外でも子どもたちに学びの機会を提供したい」という考えを深めるようになっていきました。

JTBでは、長年、修学旅行などBtoBでの教育事業は行ってきましたが、BtoCの教育事業はほとんどありません。そこで、新規事業の公募がかかるたびに、各々でアイデアを応募していくことに。その後、2021年度の「JUMP!!!」に応募した川口さんの「OYACONET」のアイデアが見事審査を通過し、事業化が決定しました。

しかし、事業化に向けて進めていたタイミングで川口さんの海外赴任が決まったため、審査の途中から企画に参加していた私がメインで担当することに。プレッシャーは感じましたが、長年思い描いていたことを形にできるチャンスを得たことに大きな喜びを感じ、とても嬉しかったことを覚えています。

――「学校以外の学び」に目を向けるきっかけとなった出来事について教えてください。

高岡:多くの親御さんが「わが子に豊かな体験をしてもらいたい」と考えていると思います。わが家でも、動物園に行ったりいちご狩りに連れて行ったり子どもたちの体験の機会を意識的に作ってきました。しかし、「楽しかった」で終わってしまうことがほとんどで…。「思い出」だけで留まってしまうことが、もったいないと感じるようになっていったんです。

一方で、私が担当していた学校の遠足や社会科見学では、先生方が「事前・事後学習」にも力を入れており、「体験をより価値のあるものにつなげる」という姿勢を強く感じます。家庭でも、同じような仕組みを作りたいと考えましたが、親御さんは仕事や家事に忙しく、準備やフォローまで手が回りません。それならば、「学びにつながる工夫や仕掛けを商品にして、家庭に届けてはどうか」と思い至りました。

「100円だって払えない」。ユーザーからの厳しい意見にヒントをもらい「体験型教材」へと方針を変更

――「OYACONET」という名称には、どのような想いを込めたのでしょうか。

高岡:「OYACONET」の「CO」は、「コミュニケーション」や「コネクト」を意味しており、「親と子の関わり」や「社会と家庭のつながり」という想いを込めています。それから、「親同士のネットワークのつながり」という意味も含ませました。

もともとの企画では、親同士のコミュニケーションが図れるようなプラットフォームをWEB上に構築し、体験の工夫をレシピのようにシェアしてもらおうと考えていたんです。ところが、サイトの利用料として月額制を検討していたにもかかわらず、ユーザーインタビューを実施したところ、「たとえ月100円だとしても払えない」という厳しい意見をいただいて…。目に見えない「情報」にお金を払ってもらうという難しさを痛感する結果となりました。

――コミュニティサイトの企画をがらっと変えて、手に取れる「体験型教材」の制作に踏み切ったということですね。

高岡: そうです。やはり「お金を払ってでも手にしたい」と思ってもらえるには、「自分もやってみたい」「子どもにさせたい」という思いを喚起させるユーザー体験を分かりやすく伝えることがとても重要だと気づきました。そのためにも、まずは私たちの理念や想いを手に取れるかたちにして家庭に届け、体験していただくなかで共感の輪を広げ、ファンを増やしていく方針に変えました。

――「OYACONET-QUEST」の商品化にあたり、こだわった点を教えてください。

高岡:「子どもが楽しく取り組める仕組み作り」と、「親が子どもにやってほしいと思える内容」に重きを置きました。

今年の夏に発売される「OYACONET-QUEST おさるのジョージスペシャルエディション」では、より一層ゲーム感覚で取り組んでもらえるように、ビンゴ形式を採用しています。ビンゴをクリアするとごほうびチケットがもらえる設計で、その内容は、「ゲーム時間をプラス30分延長できる」「夕飯をハンバーグにしてもらう」などさまざま。自由に記入できるチケットもあるので、親子で話し合いながら、ごほうびの内容自体も考えてもらえたらと思います。

またビンゴカードには、「クエストをやる」というマス以外にも、「日常生活」をテーマにしたアクションも含まれています。「早寝早起きをする」「お手伝いをする」「ゲームをしない日を決める」などのアクションが、生活習慣の改善にもつながることを期待しています。ぜひ楽しみながら取り組んでもらえたら嬉しいですね。

――体験型教材の形態にしたことで、ユーザーからの意見はポジティブなものに変わりましたか?

高岡:最終版に至るまで、ユーザーを集めて数回のグループインタビューを実施し、検討と改善を繰り返してきました。先日実施したテストマーケティングでは、「家庭では思いつかないような課題に取り組めた」「身近なものを調べたり考えたりするきっかけになった」「親子のコミュニケーションのきっかけになった」などの嬉しいご意見をいただき、手応えを感じています。

子育ての充実感を感じてもらいたい。「OYACONET-QUEST」を通して伝えたいメッセージ

――「OYACONET-QUEST」に取り組むことで、どのような効果が生まれることを期待していますか?

高岡:子どもにとっては、世の中との接点を増やし、社会の仕組みや工夫への学びを深めることを期待しています。そして、そしてさまざまなことに興味や関心を持ち、楽しみが見出せるようになればいいなと思っています。

また、親御さんにとっては、お子さんの新しい一面を発見できる機会になればと考えています。「OYACONET-QUEST」にある問いは「正解がない」がないものばかり。自由な発想で取り組める内容となっているため、「うちの子はこんな考え方ができるんだ」「こんな思いを持っているんだ」「こんな表現ができるんだ」など、きっとわが子の新しい一面が見えてくるはず。親御さんには、お子さんの取り組みに寄り添い、出てきたアウトプットをよく見て、たくさん褒めてあげてほしいです。

――「OYACONET-QUEST おさるのジョージスペシャルエディション」では、「おさるのジョージ」をキャラクターとして利用としていますね。何か理由があるのでしょうか。

高岡:「おさるのジョージ(※)」に出てくる黄色い帽子のおじさんをご存知ですか?好奇心旺盛なジョージがいろいろなことをしでかすのですが、何事も否定せずに見守り、時には導いてあげてくれるんです。そんな黄色い帽子のおじさんとジョージの関係性が、「OYACONET」の理想像にとても近いと感じ、オファーしました。子どものアクションやアウトプットに対して、親が興味を示し、一緒になって楽しみ、具体的に褒めたり気づいたことをフィードバックしてあげたりすることが実現できたら、より良い学びにつながっていくのではないでしょうか。

子育ては、かけがえのない時間。私も 真っ只中にいたときは忙しさや大変さが先に出てしまっていたかもしれませんが、子どもが大きくなってしまうと、「二度と戻ってこない大切な時間だった」と感じるようになりました。この体験型教材 を通して、親子の心豊かな時間を創り出し、親御さんにとっても子育ての充実感と満足感を感じていただきたいと思っています。

――今後の展望や、新たに挑戦したいことを教えてください。

高岡:次のステップとして、「サービスのデジタル化」を予定しています。デジタル化が実現すれば、クエストをクリアするごとにポイントを貯めたり、ランキング形式でチャレンジしたりすることが可能となり、紙の形態では難しいさまざまな仕掛けを作ることができます。そのためにまずはファンを増やすことに取り組みたいと思っています。

それから、ファンづくりの中で、「親同士のコミュニティ作り 」も再検討していきたいです。各家庭での「体験の工夫」を自発的にシェアできるようになれば、「日常生活の中でも豊かな体験を創出できる」という意識がどんどん広まっていくはず。

将来的には、ユーザーが作り手となって、施設や企業と協力しながらコンテンツ(クエスト)を作り出してシェアしていく・・・そんなユーザー生成コンテンツのプラットフォームを構築したいと思っています。
長年の夢でもあった、「子どもの教育に直接携わり、世の中に新しい価値を届けること」にチャレンジできる機会をありがたく受け止め、今後も事業に力を注ぎ、ライフワークとして取り組んでいきたいと思っています。

文:佐藤有香
写真:赤坂淳
編集:花沢亜衣
 
 
 

※ 「おさるのジョージ」は、アメリカの絵本作家レイ夫妻によって1941年に刊行された絵本「Curious George」に登場するキャラクターとして生み出されました。日本ではその絵本が「ひとまねこざる」シリーズとして1954年に出版されて以来、多くの人々に愛されてきました。2021年には80周年を迎え、キャラクター商品の展開を中心に子供から大人までの幅広いターゲットに対してさらに人気が拡大しています。
おさるのジョージオフィシャルサイト:https://osarunogeorge.jp/
© Universal City Studios LLC. All Rights Reserved. Curious George and related characters, created by Margret and H. A. Rey, are copyrighted and registered by HarperCollins Publishers L.L.C. and used under license. All rights reserved.

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