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「情報を、魅力を、想いを」、あなたの国の言葉にして。 多言語コミュニケーションツールが高める、観光客の満足度。

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コロナ禍が落ち着き、2023年4月の訪日外国人数は、2019年同月比で68.5%(※)まで回復しています。彼らに日本の旅を快適に、そして楽しく過ごしていただくために知ってほしいことを、どのように伝えるか。人手不足などの課題もあり、宿泊事業者は悩んでいます。

そこへ一筋の光を照らすのが、言葉の壁を越えた人と人、人と地域の「交流」を実現する、宿泊事業者向け多言語コミュニケーションツール「Kotozna In-room(コトツナ イン ルーム)」です。

※ 日本政府観光局 (JNTO) 2023年6月発表の推計値

大阪第一事業部 営業推進課 小林 義明

Kotozna In-roomチームで、部署の管理と営業実務を担う推進役。JTB入社後、主に大学営業に従事し、留学プログラムや海外研修などを提案。その後、自身も北京支店での海外研修を経験するなど、今も海外マーケットで挑戦したいと考えている。休日は、子どもと一緒に過ごす時間を大切にしている。

大阪第一事業部 営業推進課 板谷 優之介

Kotozna In-room チームでは、営業実務に従事。入社時から宿の仕入れ(JTBで取り扱う客室を手配するために、主に大阪府内の宿泊事業者と交渉)を担当していた経験を生かし、現在はKotozna In-roomを全国の宿泊事業者へ提供している。入社後はゴルフに没頭、今は高校時代の仲間と草野球チームで汗を流している。

外国人宿泊客に、ホテルでの過ごし方を、どうお伝えするか。

―― 急に外国人観光客が増え、いま宿泊施設ではどのような悩みがあるのでしょう。

小林:海外を旅行するときにはいくつか困ることがありますが、なかでも多くの人に共通するのが「言葉」の問題。日本を訪れた外国人観光客にアンケートを取ると、いつも回答の上位に出てきます。この悩み、実は外国人観光客を受け入れる側も同じで、特に宿泊施設では設備やマナーを説明するのにかなり苦労されているんです。うまく理解していただけなかったことが原因で、トラブルも起きてきました。

板谷:ある宿泊施設では、大浴場に水着で入ったり、湯沸かし用の電気ケトルで即席ラーメンを作ったり、客室内用のパジャマとスリッパで朝食会場へ行ってしまった外国人宿泊客がいたとか。きっと悪気があるわけではないのですが、文化の違いがあったり、宿泊施設ごとにも異なるルールがあったりするので、そのような細かな情報を正しく伝えるのは難しいんですよね。

小林:またフロントには外国人宿泊客から、いろいろな問い合わせや依頼がきます。「客室の水道水は飲めるのか」「客室の空調や共用のランドリーはどう使うのか」、さらには「周辺施設の予約をしてほしい」といったケースも多いようです。
そして、これは多くの業界が抱える課題かもしれませんが、いま宿泊業界の人手不足はとても深刻です。コロナ禍に削減したスタッフを、需要の回復に合わせて取り戻そうと求人募集をしていますが、宿泊業界の給与水準の課題などから人が集まりにくく、特に外国語が堪能なスタッフの確保に苦労されているようです。

板谷:そのような状況ですので、外国人宿泊客への対応が大きな負担となってしまっていることは想像に難くありません。たとえば、チェックイン時の宿泊に関するご説明に時間がかかったり、問い合わせに対して1件1件個別に客室まで行ってご説明したり。それらを外国語が話せるスタッフだけに対応を集中させず、ホテルのスタッフ皆で対応できれば、ホテルの運営側としてはとても便利になるはずだと、よく耳にしていました。

小林:そういったこともあり、業界ではデジタル技術で多言語対応を補完したいというニーズが高まっていましたが、やはり費用面での余裕がないという事業者は少なくありません。そして、日々の業務をこなすのに精一杯で、あらたな取り組みをする時間的な余裕もないというのが、現場の声でした。

すぐれた多言語同時翻訳ツールを、宿泊施設の現場へ。

―― デジタル技術による多言語対応に、JTBはいつ頃から取り組んでいたのでしょう。

板谷:そもそも言葉の問題はコロナ前からあったものですが、それをテクノロジーで解決できる手段はないかと2017年ごろから検討していたのが、当事業部の営業開発プロデューサー玉﨑です。
はじめはスマートスピーカーなどの活用を考えていましたが、当時はまだ技術や機能が未成熟で、なかなかうまくいかなかったそうです。いろいろ模索する中、知人を通じてKotozna株式会社を立ち上げられた後藤社長に出会ったと聞いています。

小林:Kotozna社は、「世界中の言葉の壁を解消するために、グローバル規模で多言語環境を構築していくこと」をミッションとするJ-Startup認定企業(※1)で、多言語システムやDX(※2)推進などの最先端テクノロジー領域で実績を上げられています。そんな同社を代表する多言語同時翻訳チャットツールが「kotozna Chat」です。この技術を利用して宿泊事業者向けの多言語同時翻訳ツールを作れば、外国人宿泊客とも円滑なコミュニケーションを図れるのではないかと考え、玉﨑が開発を持ち掛けたのがきっかけです。

※ 1 J-Startup:「企業価値又は時価総額が10億ドル以上となる、未上場ベンチャー企業(ユニコーン)又は上場ベンチャー企業を2023年までに20社創出」という政府が掲げた目標に対し、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラムです。Kotozna株式会社は2019年6月に選定されました。

※ 2 DX:デジタルトランスフォーメーション

板谷:こうして生まれたのが「Kotozna In-room」です。kotozna Chatをベースに開発しているため、その最大の特長である「多言語翻訳チャット機能」により、異なる言語の人どうしがリアルタイムにコミュニケーションできるという特長をもっています。

小林:システムの開発はKotozna社が担い、JTBでは宿泊施設における現場の声をキャッチアップし、要望や考えをエンジニアの皆さんへ伝える役割を担いました。どうしたら現場の人たちにとって本当に役立つツールとなるのか、使う人の目線を大事にしながら、今も継続して開発を進めています。

言葉の壁を越えた意思疎通や情報発信で、旅をもっと快適に。

―― Kotozna In-roomでできることを、もう少しくわしく教えてください。

小林:Kotozna In-roomの多言語コミュニケーションの核となっている多言語翻訳チャット機能は109言語に対応(※)し、一方で入力した文を相手の母国語に自動翻訳して表示させることができます。言語の壁を感じさせることなくスムーズな意思疎通を実現し、外国人宿泊客からの問い合わせ対応をサポートしてくれます。

※ 2020年8月末時点、Kotozna独自の翻訳システム(特許取得済)により、単体の機械翻訳を利用するよりも、精度の高い翻訳を実現します。

また、Kotozna In-roomには「情報発信」機能もあります。宿泊施設側から多様な情報提供を多言語でおこない、宿泊施設の利用に関してご案内できるだけでなく、周辺スポットやイベントの情報をお届けし、宿泊客の旅をサポートすることができます。

この情報発信機能は、実はこれまでJTBの課題であった「インバウンドへのタッチポイントを作る」手段としても有効です。旅行商品の販売などで、今まで取り込めなかったインバウンドマーケットにリーチするための一手になるのではと期待しています。
ただ、Kotozna In-roomは決して外国人宿泊客に特化した仕組みではありません。日本人のお客様にも情報をデジタルでリアルタイムにお届けすることができます。コロナ禍ではデジタル化による非接触で安心・安全な情報提供を実現しました。日本人宿泊客の利用も取り込みながら、利用実績はすでに累計で約108万人を記録しています(※)。

※ 2023年5月末現在

Kotozna In-roomを導入いただいているアートホテル大阪ベイタワー副総支配人とともに

施設も宿泊客も、「やるべきこと、やりたいこと」がスムーズに。

―― 実際、現場では具体的な効果が生まれているのでしょうか。

板谷:まず宿泊事業者としては、人手不足のサポートとなる業務負担の軽減が見られます。たとえば、チェックインにかかる時間の短縮。フロントにおける「口頭」での説明は最低限の内容にし、残りはお部屋でKotozna In-roomから確認していただけるようご案内することで、1組10分ほどかかっていたチェックインを5分ほどに短縮できました。1日に20組~30組のチェックインがあるとしたら、1組5分の短縮が年間では数百時間の短縮につながる計算です。

小林:宿泊客が滞在中に知りたい情報を109言語で案内することで、問い合わせ対応が減りました。宿泊客から内線で来ていた問い合わせも、チャットで受けて手軽に回答することができるようになりました。「外国人ゲストへのご案内に不安や緊張がなくなった」「フロントで質問を受ける回数が減った」「あらゆる案内を翻訳する手間がなくなった」と、宿泊施設の方々からも好評です。宿泊客とスタッフのチャット履歴を拝見すると、「助かりました」「ありがとう!!」「対応に感動しました」といったメッセージを目にすることがあり、宿泊客に施設理解や安心感が生まれていると感じています。

板谷:そして、「紙」によるご案内を「デジタル化」したことによるメリットも大きいようです。紙だと情報に変更が発生したとき、内容を変えて刷りなおし、館内に点在する資料類を差し替えます。この作業がなくなることで、大幅な業務量削減につながりました。また年間に数千枚単位の印刷物もなくなりますので、大幅な印刷コストや紙資源の節約にもなります。

板谷:情報発信という観点でも、よりわかりやすく多様なご案内ができるようになったことは、お客様満足度の向上に大きく貢献できているようです。たとえば、ルームサービスを利用する際にKotozna In-roomがあると、その人の母国語でメニューが説明されるのでわかりやすい。「さわらの西京焼き」も、外国人宿泊客の方が文字だけで見るとどんな料理が出てくるのかわからないですが、Kotozna In-roomで素材や調理法の説明が母国語でできるようになったため、注文が増えたという話を聞きました。スマートフォンからボタンひとつで欲しいものを気軽に注文できるのが良いところです。

小林:説明方法は、文字によるものだけではありません。「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、画像や動画を使ったご案内も効果的です。たとえば、「空港のリムジンバスの乗り場はどこ?」「おすすめのレストランはどこ?」「交通機関の運行状況は?」といった問い合わせが結構あります。その際に、地図画像を送ったり、マップアプリで経路を教えたり、外部サイトへ誘導したりと、いろいろな方法をとることができます。

板谷:ご好評いただき、いまやKotozna In-roomは全国約380の施設で導入されています(※)。私、実は外国語大学出身なんですが、その4年間を返してほしいと思いました。Kotozna In-roomで世界中の人がやりとりできてしまったら、外国語を学んだ意味はなんだったんだろうって(笑)。

※ 2023年5月末現在

人と人、そして人と地域の「理解」から広がっていく「交流」。

―― 物理的効果にくわえ、利用者の「よろこび、満足」といった面での価値はいかがでしょう。

小林:異なる言語を話す者どうしのコミュニケーションを手助けできるKotozna In-roomには、お互いの理解をより深いものにするだけでなく、さらに一歩踏み込んだ「交流」や「つながり」を生みだす力があると期待しています。たとえば、こんな話を聞いたことがあります。あるレストランでの食事を、とても楽しみに来日された外国人宿泊客がいました。ところが希望していた日に空きがなく、非常に落胆されていたそうです。今までなら、それで終わっていたかもしれません。しかし、その宿泊施設にはKotozna In-roomがあったことで、別の日には空きがあることをスムーズにお伝えでき、とても感謝され、満足していただけたとのこと。小さなことかもしれませんが、そのような経験がお客様満足につながり、さらなる人や地域との交流機会を創り出していくのではないでしょうか。

板谷:そういう意味では、Kotozna In-roomの提供開始から3年、私もホテルや宿泊施設内で交流というものが生まれてきているように感じています。言葉の壁があったことで、これまでは外国人宿泊客は必要最低限のことしかスタッフに質問できず、スタッフ側も、日本人宿泊客に話しかけるように、周辺のオススメスポットを説明したり、旅の感想を聞いたりすることが気軽にできませんでした。こういった場面で、よりスムーズなコミュニケーションができるようになったのは、Kotozna In-roomのおかげだと思います。

小林:宿泊施設側の変化も感じています。Kotozna In-roomに情報を設定する際は、客室・レストラン・ゲストサービスなど多岐にわたる部門のスタッフが関わるケースがあります。設定する情報をどうするか全体で意見を出し合う中で、異なる部門間のコミュニケーションが生まれ、気づきを得て、サービスや業務に好影響が生まれたこともあったようです。

「109言語」のポテンシャルは、今すぐにも海外で通用する!

―― 今後の展開について、お考えのことを教えてください。

板谷:2年後には、全国700施設100,000室への導入を目指しています。さらには海外展開も視野に、足固めをしているところです。昨年からハワイやシンガポール、インドネシアで準備を開始し、ハワイでは今年、海外進出の第一号として利用開始の予定です。

Kotozna In-roomに関わるメンバー

小林:ツールとしては、まずは旅の最中のさまざまなタッチポイントとなれるよう、さらなるサービスを展開していきます。たとえば、観光チケットなどをホテルの部屋からKotozna In-roomで買えるようにしたい。そしてホテルを基点とした地域全体の交流を促す役割を担いたい。地域のツーリズム産業の発展に貢献できるよう取り組んでいきたいと考えています。

―― 最後に、お二人の抱負をお聞きできますか。

板谷:「言葉の壁」というものがなくなって「世界中どこに行っても言葉に困ることがない社会にする」というのが今の夢です。そうなれば、もっとたくさんの人や景色と出会うことができ、より多くの感動や知識を得ることができるのだろうと。そのために、まずはKotozna In-roomの海外進出に貢献したいと考えています。Kotozna In-roomは「日本語対109言語」ではなく、「109言語『どうし』」によるコミュニケーションが可能です。だから、市場は日本に限られたものではありません。

小林:Kotozna In-roomには、宿泊客の利便性を高め、快適な滞在をサポートし、日本の魅力を発信できる大きなポテンシャルがあります。多くの宿泊事業者に導入いただけるよう、全国での普及活動と機能拡張を続けていきます。そして、地域に不可欠な「旅行者と地域をつなげるプラットフォーム」として、地域に必要とされる存在に昇華させたい。夢は非常に大きなものですが、少しずつ前進している実感があります。自分自身も楽しみながら貢献していきたいと思います。

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