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特徴的な取り組み

【2023】ステークホルダーダイアログ
「サステナブルな観光地経営支援について」

~2022年度ALL JTB AWARD サステナビリティ推進賞受賞の取り組みから
今後のさらなる可能性を探る~

2023年9月26日実施

座談会

<会場の様子>

有識者

GSTC(Global Sustainable Tourism Council)

Randy Durband氏

持続可能な観光の国際基準を策定、管理する国連設立のNGO、グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)の最高経営責任者(CEO)。米国の大手アウトバウンドツアーオペレーターで上級管理職を歴任。持続可能な観光政策やその実施について、政府や企業のアドバイザーや講演者としても活躍。

貝和 慧美氏

グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会(GSTC)のマネージャー アジア太平洋地域にて、会員・研修・会議等の業務全般を担当。現在開発中のMICE国際基準・アトラクション国際基準プロジェクトも担当。

JTB

髙﨑 邦子

司会(髙﨑):今回は「2022年度ALL JTB AWARDサステナビリティ推進賞※受賞の取り組みから今後の更なる可能性を探る」をテーマにして、サステナブルな観光地経営支援について議論できればと思います。まずは、受賞されました熊本支店から「小国郷(おぐにごう)最大の観光資源 鍋ヶ滝における持続可能性の評価獲得」のご説明をお願いします。

※ JTBグループの商品、サービス、事業、仕組み、および社内の組織活動等の取り組みを対象とし 、サステナビリティへの貢献度、事業成長へのインパクト、KPIの明確さと達成度合いを総合的に勘案して授与される賞。

中村 亮介

中村:世界のサステナブルな観光地100選に選出された、熊本県阿蘇郡小国町鍋ヶ滝における取り組みを評価していただきました。鍋ヶ滝は開園以来20年以上、繁忙期にオーバーツーリズム状態になるという課題がありましたが、21年度から弊社とグッドフェローズJTB社が参画したことによって、渋滞などのオーバーツーリズムの問題が見事に解決されたのです。

具体的にはグッドフェローズJTB社が提供するチケットHUBシステムにより事前予約制を導入し、観光客の動態調査を行いました。何時に来園者が多いのか、一つの車両に何名乗ってきたのかといったデータを分析し、事前予約制を導入することで渋滞を解消したのです。いままでの紙チケット販売がWEB上での販売になったので、紙使用とそれに伴うCO2の排出も削減できました。
観光客の方は渋滞に遭遇せずに済み、地域の方にとっても生活の改善に繋がっています。また、弊社としても利益を享受できるという理想的な状況を作ることができたのです。

木村:チケットHUBは、入場チケットをデジタル化し、様々なセラーで流通させるプラットフォームになります。販売したチケットの二次元バーコードをスマートフォンアプリで読み取り、簡単に着券が完了するという仕組みになっています。
今回、イベントの入場コントロールができるということが、広くJTBの中で認知されたこともあり、チケットHUBの日時指定の仕組みを使って、紅葉時の渋滞対策などにもご活用いただいています。

三村:今回の鍋ヶ滝での取り組みは、地域の課題を何とかしたいという支店営業担当者の思いが、具体的な成果につながったとても良い事例だと思っています。成功するに至ったポイントの1つ目は、地域の方へのシステム面の案内や、駐車場予約の啓蒙など、ひとつひとつのプロセスを丁寧に対応してきたことです。2つ目はデジタルの力と人の力を生かして取り組んだ提案だったところです。エリアソリューション事業全体としても、デジタルとヒューマンを融合して地域の課題を解決していきたいと考えていますので、まさにその成功事例となりました。

司会(髙﨑):エリアソリューション事業における、その他の事例についてもお話しいただけますか?

三村 堅太

三村:弊社のエリアソリューション事業では、100年以上培ってきたツーリズムのプロフェッショナルとしての知見とテクノロジーの両方を生かしてサービスを提供しています。
事例としては、Kotozna In-roomというコミュニケーションツールを活用した、ベンチャー企業との共同事業が挙げられます。ホテルや旅館の中で、スタッフとお客様とのコミュニケーションを円滑にするツールです。

また、お客様ご自身のスマートフォンなどの端末を使ったKotozna In-roomのようなデジタルサービスと、ホテルの基幹システムであるPMSを接続してデジタルにデータを貯めていくJTBデータコネクトHUBというサービスも展開していきます。これにより、お客様の利便性も高まりますが、同時にホテルのスタッフの労力を格段に減らすことが可能になります。データ連携により作業量を減らし、お客様へのリアルなサービスに傾注していただけるようになります。

Randy:デジタルデータの活用は、観光にとって大きなチャンスをもたらすものだと思いますし、われわれがGSTCで行っていることと連動しています。鍋ヶ滝の取り組みは、民間部門が先頭に立ったということで大変珍しく、見事な取り組みでした。
私からも世界の事例について紹介したいと思います。1つはクロアチアにあるドブロブニクの事例です。歴史的な観光地でオーバーツーリズムに苦しんでいましたが、すべてのクルーズ船が一気に停泊することのないように、停泊の時間帯を分散する取り組みをして、非常にうまくいきました。GSTCのディスティネーションズの基準に合わせて、経営管理、地域コミュニティの社会的・経済的インパクト、環境対応等について調査をして進めました。

Randy Durband氏

もう1つ、シンガポール政府がサステナビリティ戦略の一環として、シンガポール政府観光局(STB)が取り組んだ事例があります。まずは、ホテルに対してターゲットを設定し、ホテルがサステナブル認証の取得とCO2排出量を測定できるようにしました。公共部門から助成金の提供もありました。これらは公共部門が強いリーダーシップを取って成功した事例ですが、成功のカギとなったのは、民間部門の参画です。

次に、民間部門が主導した事例をご紹介します。世界第2位のクルーズ船、ロイヤル・カリビアン・クルーズラインです。これはGSTCと直接連携し、WWFとも協力した事例です。多く保持する船舶の一つ一つの炭素削減等をターゲットとしています。また、一つのターゲットに、寄港地でのエクスカーションを実施するツアーオペレーターのサステナブル認証取得があります。停泊中のエクスカーションで海や近隣地域にマイナスの影響をもたらさないか、クリーンエネルギーの陸上交通輸送機関を使っているか、ツアーガイドが責任ある行動を取っているか、といった項目を見ていきます。このプログラムでは、早い段階で目標達成し、現在も同プログラムを継続しています。持続可能な運航をもたらした成功事例といえると思います。
ロイヤル・カリビアン・クルーズラインは契約をする前に、入札ポリシーを設定しています。つまりサステナビリティの認証を取っているところが契約を取れるわけですから、ツアーオペレーターはサステナビリティを実行すればビジネス上、非常に大きなチャンスになるという認識が出てきて、考え方が大きく変わったのです。また、ロイヤル・カリビアンは競合他社を支援して同じような方向に進めるようにもしました。
新しいテクノロジーや考え方は進んでいますが、皆さんにとって合うやり方は何なのか、ぜひ考えていただきたいと思います。関係する取引先や、47都道府県の拠点、部門に対して目標値を設定する。そうしたことが積み重なっていくのだと思います。

三村:官だけではなく、民が参加することで持続的な地域の成長があるということが改めて確認できました。事業者を取りまとめてコミュニティをつくり、一緒に取り組んでいくことが重要だと思います。
日本の観光関連の事業者には中小企業が多いことから、資金や活用方法も十分ではありません。データを提供して、その使い方やお客様の囲い込み、プロモーションにつながる支援をしていけたらと考えています。また環境への配慮の意識などをアンケートで調査することも含めて、そうしたデータを掛け合わせてサステナブルな観光地をつくる提案をしていきたいです。

Randy:中小企業の関わりという点、興味深く拝聴しました。小規模なホテル、旅館などの中小企業でも使えるようなものが望まれます。小さな旅館が全国に点在している日本なりのソリューションが必要だと思います。データマネジメントのエキスパートが社内にいなくても対応できるようなものを用意することが非常に重要かもしれません。簡単に使えて、負担にならないようにするということです。

西松 千鶴子

西松:中小規模の旅館やホテルへのソリューションが大きな課題であり、JTBがやるべきところだと思っています。チケットHUBのような仕組みの中にCO2排出量を可視化することを組み込んでいくことなど、課題に対するソリューションメニューをより豊富に用意した中で、個々のニーズに合わせてカスタマイズし、提供していくことが我々の得意とするところかと思います。ここに関して、他に可視化すべき項目はありますでしょうか?

Randy:フードウェイストも問題になっています。フードウェイストが適切に処理されないと、埋め立ての一部となりメタンが発生し、CO2の排出になりますが、あまり認知されていません。その部分も改善できるのではないでしょうか。プラスチックの廃棄物についても同じです。

貝和:これからは持続可能な地域になっていかなければならないという目標を国として立てているので、日本各地の自治体はプレッシャーを受けていると思います。どうすればいいかわからないという地域は多くあります。人手不足やデジタルの知識、新しいアイデアの問題をよく聞くので、そうした地域を探し、JTBのような民間部門の方々が入ることで改善、向上していけると思います。

山北 栄二郎

山北:私達が民間部門としてビジネスパートナーにインパクトを与えていくという観点で、中小規模の事業者の皆さんに対して協力関係をつくっていくために参考となる事例はありますか?

Randy:優先契約はその1つです。義務付けではないのですが、複数の入札者がいたときには、いくつかの項目を満たしていれば優先的に契約できるというものです。まずは、研修・啓蒙に力を入れることが重要かと思います。中小企業に対して、低コストの研修をパッケージ化して知識やツールを提供することも必要です。

中村:今年も酷暑で、このまま続いたら、遠い未来の子ども世代には果たして普通に生活できる地球が残っているのかと考えるようになりました。身近なところで私たちが意識して取り組めること、未来のためにできることについてご意見をいただきたいと思います。

貝和 慧美氏

貝和:WWFは「地球1個分の暮らしをしていこう」という宣言をしています。私たちが今の状態で過ごそうと思うと、地球約1.75個分が必要といわれています。この状況を変えていくには、小さなお子さんたちにも、現状を知らせていくことが重要です。いま日本の教育の中でもSDGsを低学年の子どもたちにも教えるようになっています。小さい頃からそうした考え方が当たり前になっていくと、大人になって社会に出て、例えば会社を経営していくときにどういう決断をするのかが変わってきます。その行動指針の軸にサステナビリティがあると、産業界にも影響を与えると思います。

Randy:まず実務家の皆様に何をしなければならないか理解していただくことが必要です。そして大小にかかわらず、経営者が意識を高めていかなければなりません。観光業がサステナブルにならなければいけないのはなぜですか、と問われても、どのような事業でもそうだと私は答えます。
ブッキングドットコムなどの調査を見ると、全世界の旅行者の態度は大きく変わってきています。お客様は予約時にサステナビリティを求めているというよりも価格やサービスで決めていると言われますが、現場では益々サステナビリティが要求されているのです。過去のような考え方ではいけないということを指摘する必要があります。ホテルやツアーオペレーターが何をすべきかということだけではなく、経営者、ビジネスオーナーとして何をすべきかを、体系立てて測定可能なかたちで実践していかなければなりません。

三村:私たちは新しいビジネスモデルやシステム、仕組みを創る部門でもあるので、中小企業の皆さんと一緒になって課題を解決していくことを主眼に置いたモデルを創っていくことの重要性を感じました。そのことが自分たちのビジネスにもなるし、地域、社会のためになるということを啓発・啓蒙していきたいと思います。

木村 麻由子

木村:一人ひとりの意識改革が非常に重要だと感じました。ビジネスにおいてきちんとサステナビリティを考えていくことは、非常に大切で必須なことだと改めて思いました。

山北:サステナビリティは当然取り組むべきことだと認識しなければなりません。官民どちらが主導したとしても、全体が機能する仕組みづくりも必要です。今回の事例のように、テクノロジーで課題を解決し、システム開発ができない事業者でも参画できるプラットフォームを提供することも、とても意義深いと改めて感じました。地道な啓蒙活動はこれからも続けていかなくてはなりませんが、排出量などの可視化や、ファクトに基づいた数字の検証も確実に改善を続けていかなくてはなりません。
JTBグループは日本中にネットワークのあることが一つの強みです。リアルに人と話をしながら、こうした活動に取り組んでいけることを最大限生かしていきたいと思います。もう一つの強みは、事業の広がりを持っているということです。単純に旅行の予約をしてアレンジをするという会社ではありません。旅行する人の目線、地域を良くしようとする人の目線、企業活動をする人の目線、それぞれの目的に寄り添ってソリューションを提供するという事業の広がりを持っていることが、この活動に非常に大きく貢献できると思っています。

司会(髙﨑):JTBグループの経営理念は「地球を舞台に人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する」で、これはサステナビリティそのものだと自負しています。
これからも持続的な観光地経営支援をはじめとして、サステナビリティの取り組みを加速、進化させていくということを、私たちがリーダーシップを持ってやっていくことが非常に重要だと感じます。

本イベントは「COゼロMICE®」を利用して実施しました。

COゼロMICE®とは
 「COゼロMICE®」 は、MICEを実施する際に、その会場で使用される電気を再生可能エネルギーに置き換えることで、CO2を実質0にできるサービスです。再生可能エネルギーの調達、実際に使用されたエネルギーが再生可能エネルギーの環境価値としてどれほどなのかを算出し、事後検証などを含めてパッケージにした商品です。