JTB

  • Our Story
  • 事業領域
  • サステナビリティ
  • JTBeing

「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2023年1月)」 ~行動制限のない第8波における個人の意識と旅行~

thum_2023010601_1.png

2023年第1

(生活者全体からみた意識)

■「今後、1年以内(2312月まで)の国内旅行の実施意向」は40.3%、前回から微減(▲0.8P)

・前回より上昇したのは、男女60歳以上(男性+5.7P、女性+1.6P)と女性30代(+0.6P)
女性40代(+0.3P)のみ

・景況感は急に悪化した前回より僅かに改善も依然厳しい状況。好きなことへの消費意向は根強い

■「全国旅行支援は必要だ」30.1%、「必要ではない」31.7%。前回より積極的回答が大きく伸びる

・「第8波では移動制限要請がなければ旅行に行ってもよい」33.5%、「行くべきではない」は29.0

1年以内に旅行を予定・検討している人の意識)

2023年の旅行頻度は前年より「増える」が52.4%、「コロナ禍前の水準以上まで」は19.5

・前年より増える理由は「感染対策を基本とした生活や旅行に慣れてきた」が47.5

・コロナ禍前まで増えない理由は「新型コロナの収束が見えないから」「宿泊料金が上昇傾向にある」

「旅行先や帰省先などでリモートワーク(ワーケーション)」は、積極派が約4割

・「継続したい/機会を増やしたい」21.4%、「今後やってみたい・新しく取り入れたい」17.4

thum_2023010601_2.jpg

 株式会社JTB総合研究所(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 風間 欣人)は、「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2023年1月)」の調査結果をまとめました。

 当社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下新型コロナ)の世界的流行が始まった2020年2月から定点で意識調査を実施し、感染拡大や緊急事態宣言発令などに揺れ動く人々の意識や行動、そして旅行意向について追ってきました。今回で13回目の調査となります。

 2022年10月11日より日本の水際対策が一層緩和され、1日あたりの新規入国者数の上限撤廃、陰性証明や隔離期間など入国時の条件緩和、そして訪日外国人観光客の個人旅行の解禁と、訪日外国人旅行および日本人の海外旅行は大きく動き始めました。国内旅行についても「全国旅行支援」が始まり、各地は盛況です。しかしながら、円安やエネルギー価格の高騰等による物価上昇が生活に影響を及ぼすと同時に、新型コロナの第8波の到来で新規感染者は再び拡大しています。第8波は第7波同様、移動や外出制限の要請はなく、行動は個人の意思に委ねられています。生活が正常化に進む中、人々はどんな意識を抱いているのでしょうか。

【調査概要】

調査手法:インターネット調査会社が保有しているモニター対して、インターネットでの予備調査を実施、対象者を抽出後に本調査を実施

thum_2023010601_3.png

【調査結果】

<予備調査から市場全体をみる> 

最初に予備調査(全国20歳以上の男女対象)で生活者全般の意識や旅行意向について俯瞰しました。参考までに、コロナ禍前までは国内旅行に行った人の割合(年間)は約6割程度で推移していました。

1.今後1年以内(23年12月まで)の国内旅行の実施意向は全体で40.3%、前回調査から0.8ポイント減少

前回から上昇したのは、男女60歳以上(男性+5.7P、女性+1.6P)女性30代(+0.6P)40(0.3)

海外旅行の1年以内の意向は全体で13.1%(+1.9P)、女性60歳以上(8.0%、+3.3P)が伸びる

 市場全体の把握のため、今後1年以内の旅行実施意向について予備調査で聞きました。国内旅行は全体で40.3%の人が「予定・検討している」と回答し、前回調査(2022年7月実施)から0.8ポイント減少しました。減少はこの質問を設けてから初めてです。最も意向が高いのは、男女20代(男性48.2%、女性53.5%)で若者の意欲の高さに変わりはありませんが、それぞれ2.9ポイント、1.5ポイント前回から減少しました。一方で男女60歳以上(男性44.4%、女性34.7%)は前回からそれぞれ5.7ポイント、1.6ポイント増加しました。年代が高くなるにつれ旅行の実施意向は低くなりますが、今回の調査では、男女60歳以上が男女50代より高い結果となり、シニアの意向回復が見られました(図1、2)。

 海外旅行に関しては、今後1年以内に「予定・検討している人」は全体で13.1%と、前回より1.9ポイント増加しました。すべての性年代で実施意向は増加し、最も高いのは男女20代(男性23.9%、女性26.1%)でした。最も高い伸びを示したのが男性30代(20.5%、前回比+5.8ポイント)および男性40代(13.3%、同+4.9ポイント)で、本調査ならびに他調査を元に、海外出張が戻りつつあると考えられます。次に伸びが大きかったのが女性60歳以上(8.0%、同+3.3ポイント)で、コロナ禍で海外旅行に消極的だったシニア女性の意向が上向いていることが分かります(図3、4)。

(図1)今後予定・検討している国内旅行の時期(性年代別)(単数回答)

thum_2023010601_4.png

(図2)今後1年以内に国内旅行を予定・検討している割合(223712月調査比較)(単数回答)

thum_2023010601_5.png

(図3)今後検討している海外旅行の時期(性年代別)(単数回答)

thum_2023010601_6.png

(図4)今後1年以内に海外旅行を予定・検討している割合(223712月調査比較)(単数回答)

thum_2023010601_7.png

2.景況感は、急に悪化した前回からやや改善も依然厳しい状況。「家計に余裕はない(43.8%)」は0.9P減少

「普段の生活も趣味や旅行も費用を節約している(22.6%)」は前回から+0.6Pの一方で、「趣味や旅行など必要性の低い消費機会を減らす(20.7)」は▲1.3Pと好きなことへの消費意向も根強い

 前回調査では、円安や物価高により景況感は急速に悪化していました。今回は「家計に余裕はない(43.8%)」は前回から0.9ポイント減少した一方で、「普段の生活も趣味や旅行も費用は節約している(22.6%)」は0.6ポイント増加し、依然厳しい状況に変わりがないといえます。しかしながら、「趣味や旅行など、必要性の低い消費をする機会を減らしている(20.7%)」は1.3ポイント減少、「普段の生活は切り詰めるが、趣味や旅行など自分の好きなことにはお金を惜しまない(12.4%)」が0.5ポイント増加し、好きなことにお金を惜しまない層が一定程度維持されていることが分かります(図5)。なお、性年代別でみると、「将来のことはわからないので今の生活を楽しみたいと思う(全体20.2%)」は男女60歳以上(男性26.8%、女性22.6%)および女性20代(25.3%)が平均値以上でした。「趣味や旅行など、必要性の低い商品の1回あたりの単価を減らしている」は男女とも年代が上昇すると高くなる傾向がみられました(性年代別は図表省略)。

(図5)景況感について(複数回答)

thum_2023010601_8.png

.「第8波では移動制限が出ていなければ旅行に行ってもよい」は33.5%、「行くべきではない」は29.0

「今の経済環境下では全国旅行支援は必要だ」30.1%、前回から積極的な回答が大きく伸びる

「これからは貧困や少子高齢化などの社会課題を優先するべきだ」は43.9%、「コロナ対策優先」は18.9

 コロナ禍の生活もまもなく3年が過ぎようとしています。感染者数は依然多いものの、ワクチン接種が広がり、第7波、第8波では外出制限や移動制限が要請されることもなく、自分の意思で感染防止に留意し、行動する機会が増えました。また、リモートワークやEコマースなど移動や対面を必要としない生活様式も広がりました。こういった変化の中で、人々はどのような考えを持っているのか、項目別に聞きました。

「第8波の現状では、移動制限があっても、国や自治体が行動基準を決めてほしい(A)」は29.1%:「Aに近い」と「どちらかというとAに近い」の合計値は29.1%でした。反対の「国や行政が行動基準を決めるよりも自分の意志や判断で行動したい(B)」で「Bに近い」と「どちらかというとBに近い」の合計値は35.2%でした。参考までに、前回調査の似た質問の結果と比較したところ、「国に決めて欲しい」が今回は微減となり、その分「自分の判断で行動したい」が微増となりましたが、大きな変化というほどではありませんでした。

「第8波の現状では、移動制限要請が出てなくても、旅行に行くべきではない・自分も行かない(A)」は29.0%:「移動制限が出ていなければ旅行に行っていい・旅行に行く(B)」は33.5%でした。参考までに、前回調査の同様の質問では、「A(旅行に行くべきではない・行かない)」は41.2%、「B(旅行に行っていい・旅行に行く)」は24.2%でした。今回は「旅行に行っていい・自分も旅行に行く」が逆転し、積極派が多くなったといえます。

「現在の経済環境下では、全国旅行支援は必要だ(A)」は30.1%:「現在の経済環境下では、全国旅行支援は不要だ(B)」は31.7%でした。前回の調査で全国旅行支援に対して肯定的な意見は20.9%、否定的な意見は43.1%と大きな差がありましたが、今回は肯定的な意見が増え、大きな差はなくなりました。なお、今回調査では、男女20代、女性30代、男性40代で「全国旅行支援は必要だ」の方が「不要だ」より高い結果となりました。

「ワクチンの三回接種証明書の提示など出入国の水際対策は、早く解除してほしい(A)」は23.9%:「ワクチンの三回接種証明書の提示など出入国の水際対策は、まだ解除してほしくない(B)」は37.7%で、慎重派の方が多い結果となりました。男性20代および30代だけが、「早く解除してほしい」が「まだ解除してほしくない」を上回る結果となりました。

「今後も物価の上昇が見込まれるので、今のうちにお金を使う・消費をする/している(A)」は14.2%:「今後も物価の上昇が見込まれるので、今のうちから節約する・消費を控える/控えている(B)」は47.6%でした。男女とも若い年代になるほど、「今のうちに使う・消費をする/している」が高い傾向でした。

「これからは、貧困や少子高齢などの社会課題の解決を優先すべきだ(A)」は43.9「社会課題よりも、まだ新型コロナの感染対策を優先にするべきだ(B)」は18.9%。ただし、男性20代、30代は「社会課題の解決を優先すべき」が平均値より大幅に低くなりました。前回調査の同じ質問では「社会課題を優先すべきだ(A)」41.0%、「新型コロナの感染対策を優先するべき(B)」は20.9%で、徐々にではありますが、社会課題の解決を優先すべきと考える人が増えていることが分かりました。

 「地方で暮らすか、都会で暮らすか」や「日本の未来に希望を持っている、持っていない」については、前回調査と比較して違いはあまり見られませんでした(図6、表1)。

(図6)今の社会や暮らしに対する気持ち(単数回答)

thum_2023010601_9.png

(※参考:20227月調査結果)

thum_2023010601_10.png

(表1)今の社会や暮らしに対する気持ち(抜粋/性年代別)(単数回答)

thum_2023010601_11.png

<本調査から具体的な旅行意向を知る>

 ここからは本調査で、今後約1年以内(23年7月まで)に国内旅行を予定・検討している人を対象に、今現在の旅行意向について具体的に聞きました。

4.2023年の旅行の頻度は、2022年と比べて「今年より増える」が52.4%、

「コロナ禍前の水準あるいは水準以上」は19.5%、「コロナ禍前の水準以下」は32.9%

増える理由は、「感染対策を基本として生活や旅行に慣れてきた」が47.5%

 2023年に旅行をする予定のある人は、旅行頻度をどのように考えているのでしょうか。「2022年よりも増える(コロナ禍が始まる前の水準あるいはそれ以上)」は19.5%、「2022年よりも増える(コロナ禍前の水準まではいかない)」は32.9%と、合計で52.4%の人が2023年の旅行は2022年より回数が多くなるとしています。「今年と変わらない」は37.4%でした。コロナ禍の前の水準以上まで増えると回答した人は、女性20代が最も多く(31.6%)、男性30代、男性20代と続きました(図7、性年代別は省略)。

 「2022年よりも増える」と回答した人に理由を聞いたところ、最も多かったのが「コロナ禍の感染対策を基本とした生活や旅行に慣れてきたから(47.5%)」で半数近くを占め、「自分の趣味などを極める機会にしたい(27.7%)」が続きました。次に、「2022年よりも増える(コロナ禍前の水準まではいかない)」、「2022年と変わらない」、「2022年よりも減る」、「分からない」と回答した人にその理由を聞きました。全体で最も高い割合を占めたのが、「現在もなお、新型コロナの収束が見えないから(35.3%)」でした。次が「宿泊料金などが上昇傾向にある(28.1%)」でした。図表は省略しましたが、特に「2022年よりも増える(コロナ禍前の水準まではいかない)」人は「現在もなお新型コロナの収束が見えないから」が42.0%、「宿泊料金が上昇傾向にある」は30.6%と全体より高い結果となりました。旅行頻度が増えない理由として、依然「新型コロナの問題」、そして「宿泊料金などの上昇傾向」が大きいことが分かりました。

(図7)2023年の旅行頻度と旅行が増える/増えない理由(単数回答/複数回答)

thum_2023010601_12.png

5.今後の国内旅行の実施時期は「2023年1~3月」と考えている人が最多の52.1%、4~6月は26.1%

旅行先は居住地のある地域以外が増える傾向。域内の旅行が増加したのは「関西」と「九州」

同行者は「家族(中学生以下の子供連れ)」が20.3%で3.9P減少、「一人」が14.2%と2.3P増加

 今後1年以内(2023年12月まで)に予定している直近の国内旅行の内容については、以下のとおりです。

予定・検討している直近の国内旅行の出発時期:全体では「2023年1~3月」が52.1%、「4~6月」は26.1%、「7~9月」は16.1%でした。すべての性年代で「1~3月」が最も多くなりました。全体より高かったのは、男性20代(52.4%)、40代(58.4%)、50代(59.6%)、女性30代(53.1%)、40代(60.2%)でした(図8)。

旅行先:上位から「関東(24.6%)」、「関西(15.2%)」、「中部(13.9%)」でした。前回と比べて上昇した地域は「関西(前回比+1.4ポイント)」、「九州(同+1.3ポイント)」、「北海道(同+0.9ポイント)」、「東北(同+0.9ポイント)」「沖縄(同+0.5ポイント)」でした。居住地別では、全体的に域外の旅行が増え、域内が増えた旅行先は「関西(同+1.9ポイント)」と「九州(同+10.5ポイント)」だけでした(図9)。

同行者:最も多かったのが「夫婦のみ(23.9%、同+1.2ポイント)」でした。前回調査で最も多かった「子供連れ(中学生までの子供がいる)の家族旅行(20.3%、同▲3.9ポイント)」と順位が逆転しました。「自分ひとりで」は、前回調査までは移動制限がなくなりつつある中、減少傾向にありましたが、今回調査では上昇に転じました(14.1%、同+2.2ポイント)。同行者の人数が小さくなる傾向が見られたことについては、直近の旅行で最も多い「1~3月」は年度末でスケジュールが合わせにくいことに加え、物価上昇による景況感の変化や宿泊料金などの上昇で、家族旅行の出費が負担になったことも考えられます(図10)。

(図8)今後1年間に予定・検討している国内旅行の出発時期(性年代別)(単数回答)

thum_2023010601_13.png

(図9)今後1年間に予定・検討している国内旅行の行き先(地域別)(単数回答)

thum_2023010601_14.png

(図10)今後1年間に予定・検討している国内旅行の同行者(単数回答)

thum_2023010601_15.png

6.第8波での外出や移動への考え方は依然として慎重な姿勢がみられるが、感染防止意識は減退傾向に

「マスクによる感染防止対策は公共の場では必要(35.5%)」、「三密回避は今も徹底するべきだと思う(28.8%)」

感染防止意識は減退も「宿泊施設の感染予防対策をHPで事前に確認できること」は前回並みの15.6%

 第8波では第7波同様、新規感染者数が1日あたり20万人を超える日もありましたが、特に移動制限要請は行われていません。こういった状況下で、旅行者は外出や旅行についてどう考えているのでしょうか。また今後予定している直近の国内旅行の予約・検討時に、宿泊施設の選択で重視することはどんなことでしょうか。

 第8波における旅行者の外出や移動については、20.7%の回答者が「ワクチンの接種率が上がっても、移動や外出に対する不安はある」としていますが、「今の感染状況は、自分の移動や外出に影響しない(16.3%)」が「移動や外出はなるべく控えようとしている/控えている(13.9%)」を上回る結果となっています。感染対策としては、「現在のマスクによる感染防止対策は公共の場では必要だ」が35.5%、「三密回避は今でも徹底するべきだと思う」が28.8%あり、不安は残るものの、感染防止をすれば移動や外出に影響はないという考え方が強くなっていると考えられます(図11)。

 宿泊施設の選択で重視することについては、定点調査によるこれまでの推移を見ると、2021年10月調査(9月末でデルタ株による緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が解除)時点がほとんどの項目で最も選択率が高く、その後、徐々に低くなる傾向が見られます。ただし、「宿泊施設が実施する感染予防対策を、HPなどで事前に確認できること(15.6%)」、「露天風呂客室や貸し切り風呂が利用できる施設であること(14.1%)」、「20部屋程度までの小規模な宿泊施設であること(7.4%)」、「セルフチェックイン、チェックアウトができること(9.6%)」は前回調査とほぼ変わりなく、自ら防止に努める意識は一定程度維持されていると考えられます(図12)。

(図11)新型コロナ 第8波における外出や移動に対する考え方(複数回答)

thum_2023010601_16.png

(図12)国内の宿泊施設を選ぶ際により重視するようになったこと(複数回答)

thum_2023010601_17.png

7.今後行きたい海外旅行先は「ハワイ(20.4%)」、「ヨーロッパ(12.9%)」、「台湾(11.5%)」、他アジアが伸びる

行き先を選んだ理由は「その場所が好きだから」、「日本人が訪問しやすい国・地域だから」

どんな状況なら海外旅行をしたいかは「円高が進めば(27.1%)」「休みがとれれば(22.0%)」

 日本人の海外旅行への意向は現在どのようになっているのでしょうか。本調査対象者のうち、今後時期を問わず海外旅行を予定・検討している426人に対して旅行の詳細を聞きました。

 直近の旅行の行き先を1つ選択してもらったところ、「ハワイ」が20.4%で最も高く、次いで「ヨーロッパ(12.9%)」、「台湾(11.5%)」となりました。今回の調査では、ヨーロッパが前回より選択率が下がり、東南アジア、韓国が上がりました(図13、前回調査数値は省略)。その旅先を選択した理由を聞くと、最も高かった理由から順に「その場所が好きだから(29.3%)」、「日本人が訪問しやすい国・地域だから(27.0%)」、「自分が行き慣れている国・地域だから(23.7%)」となりました(図14)。

 また、海外旅行の予定がない人を含めた本調査対象者(もともと海外旅行をしない人を除く)に、どんな状況だったら海外旅行をしたいかを聞いたところ、「円高が進めば(27.1%)」、「休みがとれれば(22.0%)」、「旅行先の新型コロナの感染状況が落ち着けば(21.6%)」、「手頃なプランや宿泊施設がとれれば(21.5%)」が上位となりました(図15)。

(図13)今後予定・検討している海外旅行の行き先(単数回答)

thum_2023010601_18.png

(図14)今後予定・検討している海外旅行先を選んだ理由(複数回答)

thum_2023010601_19.png

(図15)今後、どんな状況なら海外旅行をしたいか(複数回答)

thum_2023010601_20.png

8.コロナ禍で起きた生活や旅行の変化について、今後、「継続したい/機会を増やしたい」思うことは

「マスク着用(50.2%)」「二拠点・多拠点生活(16.5%)」「旅行先や帰省先でリモートワーク(21.4%)」

 コロナ禍では感染防止のために、移動や対面を避ける、出社をせずに働くなど今まであまり考えられなかった様々な生活様式を経験することになりました。生活が徐々に正常化に向かう現在、コロナ禍で広がった行動は今後どのようにしたいと考えられているのでしょうか。旅行に関わりのある項目を中心に継続意向を聞きました。 

 まず、感染防止のための行動の「アルコール消毒」と「マスク着用」について、「アルコール消毒」を継続したいと思っている人は全体のうち55.3%で、「マスク着用(50.2%)」より割合が高いことが分かりました。また「三密回避・ソーシャルディスタンスの確保(50.2%)」も「マスク着用」と同率となり、回答者の半分以上が感染防止対策をこれからも継続したいと回答しています。一方で「マスク着用」は全項目の中で「控えたい/機会を減らしたい」の割合が最も高く、29.7%ありました。

 デジタルツールが広がったことにより、リアルに移動しなくてもコミュニケーションをとったり仕事をしたりすることが可能になりましたが、「オンラインでの集まり(飲み会やお茶会、会合など)」は「継続したい/機会を増やしたい」は19.4%、「控えたい/機会を減らしたい」は26.2%でした。一方で「今後やってみたい・新しく取り入れたい」は14.6%でした。性年代別では男性20代だけが「継続したい/機会を増やしたい(31.1%)」が「控えたい/機会を減らしたい(28.2%)」より高く、「今後やってみたい・新しく取り入れたい」も22.3%あり、積極的な姿勢が見られました。「オンラインでの会議、商談会、展示会などへの参加」については経験者が限られますが、「継続したい/機会を増やしたい(27.0%)」が「控えたい/機会を減らしたい(19.2%)」を上回りました。特に男性50代は「継続したい/機会を増やしたい」が36.4%ありました。今後はリアルとオンラインの良さをそれぞれ活かした効果的な開催手法が期待されます。

 コロナ禍では、職場に出勤しないで仕事をするリモートワークも広がりました。その結果、自宅以外の場所、旅先や帰省などで仕事をする人も見られるようになり、仕事と休暇を合わせたワーケーションという旅行スタイルも登場しました。就業の有無や職種により経験者は限られますが、「旅行先や帰省先などでリモートワーク(ワーケーション)」については、「継続したい/機会を増やしたい(21.4%)」が「控えたい/機会を減らしたい(18.3%)」を上回りました。「今後やってみたい・新しく取り入れたい」も17.4%あり、積極派は4割弱いるといえます。また、実家や思い入れのある地域と繋がりを持ちながら行ったり来たりするスタイル「二拠点・多拠点生活(自宅とは別に拠点をもち、行き来する生活)」は「継続したい/機会を増やしたい」は16.5%で、「控えたい/機会を減らしたい(16.9%)」よりやや少ない結果となりました。しかしながら「今後やってみたい・新しく取り入れたい」は17.6%あり、関心やニーズは一定程度あるといえそうです。「二拠点・多拠点生活」は全体では男性かつ若い人の方が積極的で、男性20代、30代は「継続したい/機会を増やしたい」がそれぞれ26.2%、23.7%ありました。また、男女20代は「今後やってみたい・新しく取り入れたい」がそれぞれ25.2%、30.5%と希望が高い一方で、「控えたい/機会を減らしたい」も27.2%、28.4%と高い結果でした。年代に限らず、なぜ「控えたい/機会を減らしたい」と考えるのかを把握し、地域の誘致活動に反映させる必要がありそうです(図16、性年代別は省略)。

(図16)今後の生活で利用を継続したいこと・減らしたいこと(単数回答)

thum_2023010601_21.png

9.まとめ

 現在の第8波は第7波と同様に、多数の新規感染者数が報告されながら移動自粛要請などが出されず、また10月に水際対策の緩和や全国旅行支援が始まり、行動はより個人の意思に委ねられるようになってきました。今回の調査は、このような状況下で、人々が日常的に抱く意識がどう変化していくのかに注目していました。

 今後1年以内の旅行実施意向ですが、今回は調査を開始して初めて微減となりました。若者の旅行意欲が高いことに変わりはありませんが、伸び悩んでいた男女60歳以上の意向が国内海外共にプラスとなり、シニア層がかつての旅行消費を引っ張る層に戻っていくのか、今後の動きに注視したいところです。

 コロナ禍の行動については「移動制限があっても、国や自治体が行動基準を決めてくれた方が行動しやすい」と考える人は、前回調査も今回も30%前後ありました。「自分の意思や判断で行動したい」も共に35%前後と意識に大きな変化はなく、今も行動基準となるものを望む人が一定程度いると考えられます。一方、旅行に対する考え方については前回より寛大になり、肯定的な意見が否定的な意見を上回りました。また、「全国旅行支援」も前回は否定的な意見が大幅に多かったのですが、今回はほぼ二分され、コロナ禍で感染対策を基本とした生活や旅行が前提になってきたことがうかがえました。

 デジタルツールの活用が広がり、職場に出勤しないで仕事をするリモートワークが広がったことは、コロナ禍で起きた変化の中でも大きな変化の1つといえるでしょう。働き方が変わるだけではなく、祝祭日と週末の間の平日利用や長期滞在をはじめとする旅行スタイルや二拠点・多拠点といった暮らし方を多様なものにしたと考えられます。実際にリモートワークが可能な人は限られますが、「旅行先や帰省先などでのリモートワーク(ワーケーション)」は1年以内の旅行予定者のうち21.4%が「継続したい/増やしたい」と答え、17.4%が「今後やってみたい・取り入れたい」としています。その一方で「控えたい/減らしたい」は18.3%ありました。また「二拠点・多拠点生活」は、16.5%が「継続したい/増やしたい」と答え、それ以上の17.6%が「今後やってみたい・取り入れたい」と関心の高さがうかがえます。しかしながら「控えたい/減らしたい」も16.9%あり、「旅行先や帰省先などでのリモートワーク」も「二拠点・多拠点生活」も新規の希望者とほぼ同数が「控えたい/減らしたい」と考えています。これらを新しい地域活性化の手法として定着させるには離反理由をもっと深く掘り下げて施策に反映させる必要がありそうです。

<お問い合わせ先>
(株)JTB 総合研究所 企画調査部
03-6260-1211
contact@tourism.jp

<調査分析および執筆>
岡野 千帆、波潟 郁代
https://www.tourism.jp/

記事一覧へ戻る