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SDGsに対する生活者の意識と旅行についての調査(2022年12月)~ドイツ、オーストラリア、タイと日本の比較~

News Release 株式会社JTB総合研究所SDGsの認知度("詳しく知っている"と"17のゴールは知っている"の合算)および重要性の認識度は、タイ、日本、ドイツ、オーストラリアの順で高い
 ・各国共通で日常生活で重要と思うゴールは「すべての人に健康と福祉を」、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」
 ・旅行・観光で重要なゴールは共通で「安全な水とトイレを世界に」、「すべての人に健康と福祉を」、「貧困をなくそう」

日常生活でできているSDGsにつながる行動は、旅行中は実践率が低くなり、特に日本は大幅に低い

「旅行」はSDGsの取り組みを重視しても「価格差があるなら選ばない」が日本、ドイツ、オーストラリアで7品目中最も高く、価格にシビアな点が浮き彫りに

●「実際に実践していること」では、「混雑する施設や場所への訪問は避ける、混まない時間に訪れる」が各国共通


「今後実際したいこと」では「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する」が各国共通で高い傾向

ドイツ、オーストラリア、タイは、取り組みの可視化や自分で情報を得るしくみを望む傾向
 「事業者の取り組みが分かる」、「世界的な認定機関からの認定」、「交通機関のCO2排出量が検索できる」
 ・日本は、個人が意識しなくても自動的に推進できているしくみ、SDGs消費にポイントが付く意向が高い


線

 (株)JTB総合研究所(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 風間 欣人)は、「SDGsに対する生活者の意識と旅行についての調査(2022年12月)~ドイツ、オーストラリア、タイと日本の比較~」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な視点で継続的に行っています。

 SDGs(持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。当社は、観光の持続可能性について、旅行者と地域がどのような関係性を築いていくべきかを検討するために、日常生活および旅行時におけるSDGsに対する意識や行動について2021年に調査を行いました。今回は2回目となり、2022年11月に日本人の生活者全体と旅行者についての「国内編」を発表しています。本稿は日本の旅行者とドイツ、タイ、オーストラリアの旅行者との比較についてまとめました。

【調査概要】
調査方法:インターネットアンケート調査
対象者:過去3年間(201910月~20229月)に観光や帰省などの目的で1泊以上の旅行(海外旅行も含む)をした対象国の居住者に対して、公用語で実施
(日本)対象者:2,000人 調査時期:20221019日~24日、1115日~1116
(ドイツ)対象者: 520人 調査時期:2022114日~1110
(オーストラリア)対象者:508人 調査時期:2022114日~1110
(タイ)対象者:513人 調査時期:2022114日~1110

【調査実施の背景】
 今回の調査では日本国内の意識との比較を行ううえで、ドイツ、オーストラリア、タイの旅行者を対象としました。ドイツは昨年も調査対象とし、SDGsの認知度は決して高い方ではないものの、日本に比べて個人の消費や行動にその重要性が反映されていることが明らかになりました。同国は2015年にSDGsが国連で採択される以前の2002年に、国独自の取り組み「ドイツ持続可能な開発戦略(GSDN)」を策定し、早くから取り組みを始めていること、旅行消費額の上位国であることから今回も引き続き対象とし、オーストラリア、タイは近年日本への旅行者が増加している点から新たに対象としました。
 なお、本調査結果では、タイの回答者の選択率が他より高い傾向がみられました。インターネット調査の対象者に、比較的高学歴かつ経営者や自営業者の割合が高く、旅行経験も豊富なことから知識や情報感度が他の国の平均より高かったことが理由として考えられます。また、タイに限らず、それぞれの国ごとに、異なる言語や回答環境の中で調査を実施しているため、一概に国同士の値は比較せず、分析にあたっては、なるべくそれぞれの国の中での特徴を明らかにすることに焦点をあてるようにしました。



【調査対象4カ国の旅行実施者のSDGsの認知度と社会的な重要性の認識、日常生活での行動】 
1.「SDGsの認知度」、「重要性の認識度」はいずれも、高い順から、タイ、日本、ドイツ、オーストラリアという結果に
  日本は「言葉を聞いたことがある程度」の割合が高く、ドイツ、オーストラリアは「知らない・聞いたことがない」が高い
 最初に、「SDGsの認知度」、「重要性の認識度」について、4カ国で比較をしました。結果は両者とも高い順から、タイ、日本、ドイツ、オーストラリアという結果となりました。
 タイは、「SDGsの理念、ゴール、ターゲット、指標など詳しく知っている(44.2%)」と「17のゴールは知っている(18.7%)」の合算値が62.9%となり、これらの人が「知っている」と捉えることができます。「SDGsの言葉を聞いたことがある」が23.6%、「知らない」は13.5%でした。タイの認知度の高さは前述の通り回答者の属性の影響も考えられます。日本は「SDGsの言葉を聞いたことがある(54.6%)」と答えた人が最も多くなりました。「詳しく知っている(12.8%)」と「17のゴールは知っている(28.0%)」の合計は40.8%でした。ドイツは「詳しく知っている(11.7%)」と「17のゴールは知っている(23.1%)」の合計が34.8%、オーストラリアは「詳しく知っている(13.8%)」と「17のゴールは知っている(15.7%)の合計は29.5%で、ドイツ、オーストラリアとも3割前後の認知度といえます。一方で両国は「知らない・聞いたことがない」が日本、タイより大幅に高い結果となりました(ドイツ33.7%、オーストラリア43.1%)(図表1)。
 「SDGsの重要性の認識度」が最も高いのもタイで、「とても重要だと思う(45.2%)」と「まあまあ重要だと思う(35.9%)」との合計は81.1%となり、8割以上の人がSDGsは重要だと感じています。日本は「とても重要だと思う(21.5%)」と「まあまあ重要だと思う(47.5%)」の合計は69.0%、ドイツは「とても重要だと思う(20.6%)」と「まあまあ重要だと思う(37.3%)」の合計が57.9%、オーストラリアは「とても重要だと思う(24.0%)」と「まあまあ重要だと思う(29.7%)」との合計は53.7%でした(図表2)。
 なお、ドイツのベルテルスマン財団と「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が発表した、世界各国のSDGsの達成度合いを評価した「持続可能な開発報告書(SDR)」の2022年版によると、4カ国のSDGs達成度ランキングは上位から、ドイツ6位、日本19位、オーストラリア38位、タイ44位でした。旅行者の認知度や重要性の認識度が、各国の達成度とは必ずしも一致していないことが分かります。


(図表1) SDGsの認知度(理念、ゴール、ターゲットなど)(単一回答)

(図表1)SDGsの認知度(理念、ゴール、ターゲットなど)(単一回答)     

(図表2)SDGsに対する重要性についての意識(単一回答)

(図表2)SDGsに対する重要性についての意識(単一回答)



【日常生活で重要だと考えるSDGs17のゴールと、自らの旅行経験から考える旅行・観光に重要なゴールについて】

2. 各国共通で日常生活で重要と思うゴールは「すべての人に健康と福祉を」、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」
  旅行・観光で重要なゴールは共通で「安全な水とトイレを世界に」、「すべての人に健康と福祉を」、「貧困をなくそう」
 SDGsの17のゴールについて回答者に説明をした上で、「日常生活の中で重要だ」と感じるゴールを最大5つまで選んでもらい、そのうち最も重要だと考えるゴールを1つ選んでもらいました。最大5つの複数選択では、順位は国で異なりますが、4カ国すべてで上位6つの中に「すべての人に健康と福祉を」、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロに」の3つのゴールが入る結果となりました。注目度の高い「気候変動に具体的な対策を」は日本では3位(37.6%)、オーストラリアは4位(40.9%)の一方で、ドイツは10位(22.5%)、タイは14位(13.8%)と低い傾向となりました。「質の高い教育をみんなに」は、タイでは3位(46.6%)、ドイツでは5位(31.5%)、オーストラリアでは6位(39.2%)に入っていましたが、日本では10位(22.3%)でした。「人や国の不平等をなくそう」は日本では6位(28.0%)、タイは5位(33.9%)でしたが、ドイツは12位(12.1%)、オーストラリアは13位(12.8%)と低い結果となりました(図表3、7位以降は記載を省略)。
 次にこれまでの自身の旅行経験から、旅行・観光分野で重要だと思うゴールを最大5つまで選んでもらい、そのうち最重要と思うものを1つ選んでもらいました。最大5つの複数選択では、順位は国で異なりますが、4カ国すべての上位6つの中に、「安全な水とトイレを世界中に」「すべての人に健康と福祉を」「貧困をなくそう」の3つが入りました。日常生活で共通だった「飢餓をゼロに」は日本のみランク外となりました。「気候変動に具体的な対策を」は日常生活と同様に、日本(5位、27.9%)、オーストラリア(5位、32.7%)が上位6つに入りました。旅行・観光分野では、日本だけが「海の豊かさを守ろう(1位、8.1%)」「陸の豊かさを守ろう(3位、31.3%)」が上位に入り、観光資源に直接つながる自然環境保護への意識の高さが明らかになりました(図表4)。
 旅行・観光分野で「最も重要」と考えるゴールは、日本が「気候変動に具体的な対策を(12.0%)」、ドイツが「飢餓をゼロに(18.3%)」、オーストラリアが「安全な水とトイレを世界中に(14.2%)」、タイが「すべての人に健康と福祉を(16.2%)」となりました(図表5)。最も重要だと思われるゴールの中で、4カ国共通で旅行・観光分野の方が日常生活より高かったものは、「安全な水とトイレを世界中に」、「住み続けられるまちづくりを」、「つくる責任 つかう責任」、「陸の豊かさも守ろう」でした(日常生活のグラフは省略)。


(図表3)日常生活で重要だと考える17のゴール(5つ以内選択)、上位6つまで(国別)(複数回答)

(図表3)日常生活で重要だと考える17のゴール(5つ以内選択)、上位6つまで(国別)(複数回答)

(図表4) 旅行経験から考える、旅行・観光に重要だと考える17のゴール(5つ以内選択)、上位6つまで(国別)(複数回答)

(図表3)日常生活で重要だと考える17のゴール(5つ以内選択)、上位6つまで(国別)(複数回答)

(図表5)旅行経験から考える、旅行・観光に最も重要だと考える17のゴール(国別)(単一回答)

(図表5)旅行経験から考える、旅行・観光に最も重要だと考える17のゴール(国別)(単一回答) 



SDGsの取り組みを重視した商品・サービス(自動車、電化製品、食品、日用雑貨、衣料品、家・マンション、旅行の7品目)の購入意向と価格について】 
3. 日本は購入意向が大幅に低い傾向で、「価格差があるなら選ばない」がほとんどの品目で約半数を占める
「旅行」は「価格差があるなら選ばない」が日本、ドイツ、オーストラリアで7品目中最も高く、SDGsでも価格にシビア
 SDGsの取り組みを重視した商品の購入意向は、品目別ではどのようになっているのでしょうか。旅行を含む代表的な品目7つ(自動車、電化製品、食品、日用雑貨、衣料品、家・マンション、旅行)について、SDGsの取り組みを重視した商品ならば価格が高くても購入するか、購入する場合はどの程度の価格差なら許容できるかを聞きました。価格が高くても購入すると答えた人の割合が最も高いのはタイとなり、続いてドイツ、オーストラリア、日本となりました。品目別でみると、「旅行」はどの国も他の品目と比べて購入意向が低くなり、「価格差があるなら選ばない」を選択する割合も他の品目に比べ高い傾向となりました。SDGsの取り組みを重視した商品でも価格には厳しい様子が見えてきました。
 日本は、購入意向の高い品目は、上から、「電化製品(31.1%)」、「食品(31.0%)」、「日用雑貨(30.1%)」で、「旅行」は25.5%と6番目、最も低い品目は「家・マンション(22.9%)」でした。「価格差があるなら選ばない」を選択した人は、すべての品目で最も高い割合となり、「旅行」は最も高い51.1%でした。「わからない」と答えた人もすべての項目で20%前後と、4カ国中最も高くなりました(図表6)。
 ドイツは、購入意向の高い品目の上位3つは「衣料品(74.6%)」、「食品(73.4%)」、「自動車(69.3%)」でした。「旅行(66.8%)」は7品目中6番目でした。ドイツも「価格差があるなら選ばない」は「旅行」が最も高く、21.7%ありました。また、他の国と比べ「30%以上高くても購入する」と回答した人の割合が高く、すべての商品で10%以上ありました。「旅行」も11.2%で、意向は二極化しているのかもしれません(図表7)。
 オーストラリアの購入意向の高い品目上位3つは「食品(62.4%)」、「電化製品(61.9%)」、「衣料品(60.4%)」で、「旅行(56.1%)」は6番目、最も低い品目が「家・マンション(51.4%)」でした。「価格差があるならば選ばない」は「家・マンション(32.3%)」が最も高く、「旅行」が29.9%と続きました(図表8)。
 タイの購入意向の高い品目上位3つは「自動車(89.9)」、「食品(89.1)」、「電化製品(88.6)」で、5番目に「旅行(87.7%)」となりました。「旅行」は「10%程度高くても購入する」が51.3%と半数以上を占めました。「価格差があるなら選ばない」は4番目の9.7%で、旅行より高くなったのは、「衣料品(11.7%)」、「家・マンション(11.3%)」、「日用雑貨(10.3%)」でした(図表9)。


(図表6,7,8,9)SDGsの取り組みを重視した商品やサービスの購入意向(単一回答)

(図表6,7,8,9)SDGsの取り組みを重視した商品やサービスの購入意向(単一回答)
*四捨五入のため小計が100にならない箇所があります



SDGsのゴールにつながる具体的な行動の実践状況(日常生活および旅行中に対する自己評価)】
4. 日常生活も旅行中も、最も実践されている行動は、4カ国とも「食品ロスの削減」
  ドイツ、オーストラリア、タイの旅行中の実践率は同程度、日本だけが大幅に低い傾向
 持続可能な地球や社会につながる具体的な行動をいくつか例示し、日常生活と旅行中での実践状況を自己評価してもらいました。最も実践できている行動は、4カ国すべてにおいて、日常生活も旅行中も共に、「食品ロスの削減(使い切る適量の食材の購入・外食で料理を残さない等)」となりました。タイは日常生活での実践率が全体的に高い結果ながらも、旅行中の実践率との差がドイツ、オーストラリアより大きいため、日本を除く3カ国の旅行中の実践率はほぼ同じ程度となりました。一方、日本は日常生活での行動は他の3カ国と比べて低く、旅行中になるとさらに低くなりました。日本は前述の消費に加え、持続可能な地球や社会に配慮した行動が個人にあまり浸透していないことがうかがえます(詳細は「SDGs に対する生活者の意識と旅行についての調査〜国内編〜(2022)」を参照)。 
 日本は、日常生活で最も実践できている「食品ロスの削減(73.0%)」が、旅行中になると実践率が29.7ポイント低い43.3%でした。次に高い「レジ袋・梱包紙等の辞退(72.9%)」は旅行中では32.5ポイント低い40.4ポイントでした。日常生活と旅行中の差が最も開いたのは「テレビ・照明等のこまめな消灯(日常62.3旅行中26.2%)」で36.1ポイント差となり、いずれの行動も日常生活と旅行中で大きな差が開きました(図表10)。
 ドイツでは、日常生活で最も実践率が高い「食品ロスの削減(89.0%)」が、旅行中は19.2ポイント低い69.8%でした。次に高い「テレビ・照明等のこまめな消灯(83.5%)」は、旅行中は13.9ポイント低い69.6ポイントと、日常生活と旅行中の差が4カ国の中では小さい傾向でした。最も差が小さい行動は、「レジ袋・包装紙の辞退(日常77.5旅行中65.4%)」で12.1ポイント差、最も差が大きい行動は「エアコンやヒーター等の温度調節や利用制限(日常79.8旅行中59.8%)」で20.0ポイント差でした(図表11)。
 オーストラリアは、「食品ロスの削減(88.4%)」が旅行中では16.0ポイント低い72.4%でした。日常生活で次に高い「テレビ・照明のこまめな消灯(88.2%)」は、旅行中では18.1ポイント低い70.1%でした。日常生活と旅行中の実施率の差が最も大きいのは「ゴミの分別・リサイクルや持ち帰り(日常87.4旅行中61.6%)」で25.8ポイント差でした(図表12)。
 タイは、「食品ロスの削減(93.6%)」が、旅行中は18.0ポイント低い75.6%、次の「テレビ・照明等のこまめな消灯(93.2%)」は、旅行中で22.0ポイント低い71.2%でした。日常生活と旅行中の実践率の差が最も大きい行動は「マイ箸・マイスプーンの持参(日常82.8旅行中58.7%)」で24.1ポイント差、「レジ袋・梱包紙等の辞退(日常92.6旅行中68.6%)」は24.0ポイント差で、旅行中になるとほとんどの項目で20ポイント以上低い傾向が見られました(図表13)。

(図表10、11,12,13)国別 日常生活と旅行中における、SDGsや環境保全に対する実践内容(一部抜粋)(複数回答) 

(図表10、11,12,13)国別 日常生活と旅行中における、SDGsや環境保全に対する実践内容(一部抜粋)(複数回答) 



【旅行中のSDGsに関わる行動で、意識的に実践していること、今後実践したいこと】
5. 「実際に実践していること」では、「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる」が共通
  「今後実際したいこと」では「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する」、
 次に旅行中に特化したSDGsに関わる具体的な行動を例示し、「実際に実践していること」と「今後実践したいこと」の両方について意向を聞きました。結果は国によって傾向が異なりましたが、「実際に実践していること」では、すべての国の上位3つまでに「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる」が入りました(図表14)。これまでの混雑した観光の体験や新型コロナウイルスの影響もあるかもしれません。
 旅行中に「実際に実践していること」の上位3つは、日本が「歯ブラシ、ブラシ、化粧品はなるべく持参する(36.5%)」、「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる(35.5%)」、「旅行先の地域の農産品や工芸品の購入(30.4%)」でした。ドイツは「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる(42.5%)」、「歯ブラシ、ブラシ、化粧品はなるべく持参する(38.7%)」、「連泊する場合の宿泊施設でのシーツやタオルなどの取り換えや部屋掃除の辞退(36.5%)」でした。オーストラリアは「歯ブラシ、ブラシ、化粧品はなるべく持参する(53.3%)」、「スリッパやパジャマはなるべく持参する(39.6%)」、「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる(38.6%)」でした。タイは「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる(51.7%)」、「CO2を排出する自動車や飛行機での移動の取りやめ(40.7)」、「旅行先の地域の農産品や工芸品の購入(38.8%)」でした。
 今後旅行中に実践したい行動の上位3つは、日本は「被災地など応援したい地域を旅行先として選択(16.4%)」、「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する(14.2%)」、「スリッパやパジャマはなるべく持参する(14.1%)」でした。ドイツは「連泊する場合の宿泊施設でのシーツやタオルなどの取り換えや部屋掃除の辞退(37.9%)」、「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる(32.7%)」、「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する(27.3%)」、となりました。オーストラリアは「歯ブラシ、ブラシ、化粧品はなるべく持参する(38.2%)」、「スリッパやパジャマはなるべく持参する(33.3%)」、「連泊する場合の宿泊施設でのシーツやタオルなどの取り換えや部屋掃除の辞退(32.5%)」でした。タイは「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する(41.3%)」、「旅行先の地域住民との積極的な交流や体験プログラムの参加(41.3%)」、「混雑する施設や場所への訪問は避ける、もしくは混まない時間に訪れる(39.4%)」でした。これらの項目のうち「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する」は、オーストラリアは上位3つには入りませんが、選択率は25.8%と日本より高く、今後は多くの旅行者が実践を考えている項目といえそうです(図表15)。


(図表14)旅行中におけるSDGsに関わる行動の実践率(複数回答)

(図表14)旅行中におけるSDGsに関わる行動の実践率(複数回答)

(図表15)旅行中におけるSDGsに関わる行動の今後の実践意向(複数回答)

(図表15)旅行中におけるSDGsに関わる行動の今後の実践意向(複数回答)


【持続可能な取り組みを重視したツアーや旅行商品の、価格が高くなった場合の購入意向】 
6. 商品やサービスに取り入れる持続可能な取り組みの購買意向は
「訪問地の産品の使用(地産地消)」はすべての国で、高くても購買意向が高い傾向
「地域住民との交流」は日本、ドイツ、タイで他の項目より低い傾向、オーストラリアは比較的高い傾向
 SDGsは旅行・観光分野において、地域や旅行会社が持続可能な取り組みを重視した旅行商品やサービスの企画に力を入れていますが、取り組みを重視するほどコストがかかり、価格が上昇する場合も少なくありません。本調査では商品やサービスに取り入れる具体的な内容を提示し、価格が高くなった場合の購入意向を聞きました。購入意向の結果は、国別では高い順に、タイ、ドイツ、オーストラリア、日本でしたが、ドイツは、3項の結果と同じように、すべての項目で「30%以上高くても、SDGsへの取り組みを重視した商品やサービスを買う」が10%以上となりました。
 日本は、価格が高くても購入意向の高い項目の上位が「訪問地の産品の使用(地産地消)(32.1%)」、「食品ロスの削減、再生可能素材の利用などによるゴミの削減活動(29.6%)」でした。ドイツは、「食品ロスの削減、再生可能素材の利用などによるゴミの削減活動(75.7%)」、「フェアトレード商品の使用(74.8%)」、オーストラリアは「訪問地の産品の使用(地産地消)(69.0%)」、ペットボトルやプラスチックの利用削減(67.3%)、タイは「カーボンオフセットや再生エネルギーの活用(92.2%)」、「訪問地の産品の使用(地産地消)(92.2%)」および「食品ロスの削減、再生可能素材の利用などによるゴミの削減活動(92.1%)」、の3項目がほぼ同率でした。日本、オーストラリア、タイで上位だった「訪問地の産品の使用(地産地消)」はドイツでも73.3%と高い結果でした。タイで上位の「カーボンオフセットや再生エネルギーの活用」は、ドイツ、オーストラリアでそれぞれ72.8%と64.8%、日本は26.3%でした。「飛行機ではなく、鉄道ではなどクリーンなエネルギーの乗り物の利用」はタイが90.6%、ドイツ71.2%、オーストラリア60.2%、日本25.1%でした。
 項目毎の違いはあまりないものの、各国の中で比較的低かったのは、日本、ドイツ、タイが「地域住民との交流」、オーストラリアが「紙ではなくデジタル化された行程表などの利用」でした(図表16171819)

(図表16、17、18、19) SDGsを重要視したツアーや旅行商品・サービスの価格と購入意向(国別)(複数回答)

(図表16)日本 N=2,000
(図表16)日本 N=2,000

(図表17)ドイツN=520
(図表17)ドイツN=520

(図表18)オーストラリア N=508
(図表18)オーストラリア N=508

(図表19)タイ N=513
(図表19)タイ N=513
*四捨五入のため小計が100にならない箇所があります



【旅行でSDGsを意識するために、地域や商品・サービスの提供側が行うべき情報発信や推進活動】
7. ドイツ、オーストラリア、タイは、取り組みの可視化や自分で情報を得るしくみを望む傾向
 (事業者の取り組みが分かる、世界的な認定機関からの認定、CO2排出量が検索できる)
 日本は、個人が意識しなくても自動的に推進できているしくみ、SDGs消費にポイントが付くことへの意向が高い
 旅行者の立場から、旅行の際に持続可能性をもっと意識するようになるために、地域や旅行商品・サービスの提供側はどのような情報発信や推進活動をするべきだと思われているのでしょうか。
 国別に高い項目から順に見てみると、日本は「個人が意識しなくとも、その地域の行動が自動的にSDGs推進になるしくみができている(例:センサー利用で自動的に電気が消える、ペットボトルの自販機撤去とタンブラーの貸出など)(28.8%)」、「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサスティナビリティ(持続可能)についての取り組みが分かる(25.4%)」、「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる(23.9%)」となりました。ドイツは「利用する交通機関のCO2排出量が検索できる(鉄道、航空機、高速道路、船舶など)(43.8%)」、「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサスティナビリティについての取り組みが分かる(41.7%)」、「世界的な認定機関から"持続可能な観光を推進する旅行先"としての認証がある(36.2%)」。オーストラリアは「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサスティナビリティについての取り組みが分かる(41.3%)」、「世界的な認定機関から"持続可能な観光を推進する旅行先"としての認証がある(38.0%)」「利用する交通機関のCO2排出量が検索できる(28.3%)」でした。タイは、「世界的な認定機関から"持続可能な観光を推進する旅行先"としての認証がある(64.9%)」、「旅行(移動)により発生するSDGsのマイナス面と旅行先での行動や消費が与えるSDGsのプラス面が詳細に説明されている(53.8%)」、「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサスティナビリティについての取り組みが分かる(48.9%)」でした。
 ドイツ、オーストラリア、タイの結果を見ると、地域や事業者の取り組みの開示や、認証機関による評価、CO2排出量の検索など、取り組み状況を自分で簡単に確認できる項目が高いことが分かります。日本で上位3つに入った「個人が意識しなくとも、その地域行動が自動的にSDGs推進になるしくみができている」や「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる」は他の国では順位が低い結果となりました(図表20


(図表20) 旅行中にSDGsを意識するために、地域や商品サービスの提供者側に希望すること(複数回答)
(図表20) 旅行中にSDGsを意識するために、地域や商品サービスの提供者側に希望すること(複数回答)



8. 持続可能な観光に関わるために、旅行者が、宿泊施設、観光施設、地域全体に望むことは、
  ドイツ、オーストラリア、タイは、地域ぐるみでの「旅行先の地域の環境保全活動への貢献」、
 「旅行先の地域住民と一緒に参加できる体験プログラムの提供」「旅行先の地域の文化活動への貢献」を希望
 旅行先で持続可能な観光に自ら関わっていくためには、地域全体や交通、宿泊施設などの関係者がどんな環境を旅行者に提供してくれたらいいと思うか、前項からより具体的な内容を上げ、選択してもらいました。「地域全体」については、ドイツ、オーストラリア、タイの選択率が高く、「旅行先の地域の環境保全活動への貢献」や「旅行先の地域住民と一緒に参加できる体験プログラムの提供」「旅行先の地域の文化活動への貢献」が挙げられました。「観光施設」については、日本も選択率が比較的高くなり、「訪問者の分散化に向けた、観光施設の事前予約や割引などの工夫」が高くなりました。「宿泊施設」については、日本、ドイツ、オーストラリアで「連泊時のシーツ類の取り換えや掃除を辞退した場合の特典や割引など」を望む割合が高い結果となりました(図表21)。


(図表21) 旅行先で持続可能な観光に関与するために、地域全体、交通、宿泊施設などに希望する取り組み(複数回答)
(図表21) 旅行先で持続可能な観光に関与するために、地域全体、交通、宿泊施設などに希望する取り組み(複数回答)



【旅行者のSDGsに対する各国のイメージと旅行先としての選択】 
9. SDGsの取り組みが進んでいるイメージのある国は、スウェーデン、フィンランドが圧倒的に多い
  行きたい国はSDGsの取り組みが進むイメージの国とは一致しないが、スウェーデン、フィンランドは訪問意向が高い
  タイの旅行者が最もSDGsの取り組みが進んでいると考える国は「日本」。訪問意向も51.3%と他国より大幅に高い
 最後に、SDGsの取り組みが進んでいるイメージのある国はどこか、および、現在行きたい国はどこかについて、調査対象者に「持続可能な開発報告書(SDR)」の2022年度版の達成度ランキングから独自に24の国を選出し、回答者にそれぞれ選択してもらいました。なお、達成度ランキングは、日本19位、ドイツ6位、オーストラリア38位、タイ44位です。全体的には、SDGsの取り組みが進んでいるイメージの国は、フィンランド、スウェーデンの北欧が、行きたい国はヨーロッパ諸国が上位に入りました。また、ドイツ、オーストラリア、タイの結果では、自国を選択する割合が高く、ドイツ(48.7%)、オーストラリア(36.0%)は、自国がスウェーデンやフィンランドを抜き最も高い結果となりました。SDGsのイメージと行きたい国に明白な相関関係は見出せませんが、スウェーデンやフィンランドなどは行きたい国の割合も高い結果でした。
 日本の回答者が考える、SDGsの取り組みが進んだイメージの国は、スウェーデン(45.5%)、フィンランド(44.7%)、ドイツ(22.6%)で、自国である日本については9.2%とオーストラリア(10.8%)に対するイメージより低い結果となりました。一方、行きたい国に関しては、フィンランド、スウェーデン、フランス、イタリア、ドイツとヨーロッパが上位を占めました(図表22)。
 ドイツは、自国をSDGsの取り組みが進んだイメージがあるとする割合が48.7%と高く、スウェーデン(39.0%)、フィンランド(35.0%)より大幅に上回る結果となりました。行きたい国は、スウェーデン、フィンランド、スペイン、アメリカ、オーストラリアが挙がり、日本はアジアで最高の12.9%でした(図表23)。
 オーストラリアも36.0%が自国と回答し、スウェーデン(30.7%)、フィンランド(27.2%)より高い結果となりました。行きたい国は、イギリス、スウェーデン、フランス、イタリアの順で高く、続いて日本とカナダが5番目(21.1%)になりました(図表24)。
 タイは、日本と回答する割合が42.7%あり、フィンランド(36.6%)、スウェーデン(29.2%)よりも高いイメージを持っていることが分かりました。行きたい国としては51.3%が日本と答え、フィンランド、スウェーデン、韓国、シンガポールと続きました。日本にクリーンなイメージを抱いている様子がうかがえます(図表25)。


(図表22、23、24,25)
SDGsについて進んでいるイメージがある国と、旅行先として行きたい国 (複数回答 5つまで選択)

(図表22)日本 N=2,000
(図表22)日本 N=2,000

(図表23)ドイツ N=520
(図表23)ドイツ N=520

(図表24)オーストラリア  N=506


(図表24)オーストラリア  N=506

(図表25)タイ N=513


(図表25)タイ N=513


【旅行者のSDGsに対する意識と行動のまとめ】
 2回目となる本調査では、日本の生活者の日常生活や旅行時の持続可能な社会や地球につながる意識や行動は初回調査より高くなりましたが(詳細は202211月の国内編を参照)、ドイツ、オーストラリア、タイと日本を含めた4カ国の旅行者で比較をすると、個々人の行動や消費への反映にはほど遠い結果となり、昨年度の調査結果と同様に、世界とのギャップが見られました。日常生活でできている行動が旅行中になると日本だけが大幅に下がる中で、旅行中にSDGsを意識するためには意識しなくても自然にSDGsが推進される仕組みづくりやSDGsの消費ポイント制度を希望する割合が日本は高い点において、SDGsの取り組みの可視化を求める他国の関心の高さや自発的な行動などと比べて意識の違いがあると思われます。
 とはいえ、「旅行」は他の消費・サービス(自動車、電化製品、食品、日用雑貨、衣料品、家・マンション)と比較して、どの国もSDGsの取り組みを重要視しても「価格差があるなら選ばない」が最も高くなっており、価格にシビアな品目といえます。どういった取り組みを反映した商品ならば購入意欲が高くなるかを意識し、共感を促すように可視化し、購入に結びつけることが大切と思われます。旅行者が今後実施したいと考えていることに「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する」が日本、ドイツ、タイで上位でしたが、このうちドイツ、タイは「SDGsの取り組みを重視した商品なら値段が高くても購入する」で自動車が上位でした。また地域には「旅行先の地域で生産された農産品、工芸品などの販売商品を増やす」を求める割合も全体的に高かったことから、観光業以外の産業とSDGsの取り組み面で連携することもますます必要になると思われます。


参考資料:JTB総合研究所
SDGsに対する生活者の意識と旅行についての調査(2022年3月)
 ~その3 スウェーデン、ドイツ、日本の3ヵ国比較~
 https://www.tourism.jp/tourism-database/survey/2022/03/sdgs-tourism-2022-3/

SDGs に対する生活者の意識と旅行についての調査〜国内編〜(202211月)
 https://www.tourism.jp/tourism-database/survey/2022/11/sdgs-tourism-report-202211/

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