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SDGsに対する生活者の意識と旅行についての調査 ~国内編~(2022)

<生活者全体(旅行に行かない人も含む)の意識>

認知度("詳しく知っている"と"17のゴールは知っている"の合算)は30.8%で、前年より5.7ポイント上昇

  • ・重要性の認識("とても重要だと思う"と"まあまあ重要だと思う"の合算)は61.7%で、3.0ポイント上昇
  • 過去3年間の旅行経験者は生活者全体と比べて、認知度(40.8%)も重要性の認識(69.0%)も高い

 

<旅行者の意識>

17のゴールで旅行分野に最も重要と思うのは「気候変動に具体的な対策を」、「安全な水とトイレを世界に」

  • ・「どれも重要と感じない」は9.5%と前年から4.0ポイント減少、旅行分野への関心が高まる

日常生活で実践しているSDGsに配慮した行動が、旅行中はあまり実践できていない。が、昨年より改善

  • ・旅行中との差が大きかった行動は、「テレビ照明のまめな消灯」「エアコン、ヒーター等の温度調節、利用制限」
  • ・できない理由は「旅行中は考えたくない/面倒くさい」が大半。「あらかじめ用意されているから」も割合が高い

今後旅行中に実践したい行動は「被災地など応援したい地域の選択」、「レンタカーをEVやハイブリッドに」

  • ・SDGSへの取り組みを重視した旅行商品やツアーで、値段が高くとも購入したい場合とは、「訪問地の産品の使用(地産地消)」「環境に配慮している施設の利用」「地域の伝統文化や伝統芸能の鑑賞・体験」

観光事業者が推進すべきことは、航空や鉄道業界は「エネルギーの節約や環境負荷の少ないエネルギーの使用」、宿泊、飲食は「ゴミの削減やリサイクルの活用」「食品ロスの削減」、旅行会社は「取り組みの発信」

 


 (株)JTB総合研究所(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 風間 欣人)は、「SDGsに対する生活者の意識と旅行~国内編~(2022)」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な視点で継続的に行っています。

 

 SDGs(持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。当社は、観光の持続可能性について、旅行者と地域がどのような関係性を築いていくべきかを検討するために、日常生活および旅行時におけるSDGsに対する意識や行動について2021年に調査を行いました。今回は2回目となり、本稿は「国内編」として、日本人の生活者全体と旅行者について昨年の比較を交えてまとめました。なお、今後は海外旅行者についても発表する予定です。

 
 

【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査

対象者 :

事前調査...全国に居住する18~79歳の男女9,995人を対象、人口分布に応じて割り付け実施

本調査 ...過去3年間(2019年10月以降2022年9月まで)に1泊以上の国内旅行をした2,000人を対象

調査時期:2022年10月19日~24日、11月15日~11月16日

 

〇生活者全体の意識(事前調査による)

 

【1.生活者のSDGsの認知度、社会における重要性の認識】

認知度は、「言葉は聞いたことがある程度」が59.5%(前年比+0.3P)、「17のゴールは知っている」22.0%(同+3.7P)、「詳しく知っている」8.2%(同+1.4P)。「知らない/聞いたことない」は10.3%(同▲5.4P)

重要性の認識は、「とても重要だと思う&まあまあ重要だと思う」61.7%(同+3.0P)、「どちらでもない」16.4%(同+0.5P)、「それほど重要でないと思う&まったく重要でないと思う」8.5%(同+0.6P)「分からない・関心がない」13.4%(同▲4.1P)

 最初に、旅行経験にかかわらず生活者全体からみたSDGsの認知度と重要性の認識について聞きました。

 認知度は、「言葉を聞いたことがある程度(59.5%)」の割合が最も高く、前年から3.0ポイント増加しました。「SDGsの詳細は知らないが、17のゴールは知っている(22.0%)」は3.7ポイントの増加で、最も大きく伸びました。「SDGsの理念、ゴール、ターゲット、指標など詳しく知っている」は8.2%(前年比+1.4ポイント)でした。逆に、「知らない/聞いたことがない」は10.3%と前年より5.4ポイント減少しました。性年代別では、「詳しく知っている」は70代を除き男性の方が女性よりやや高く、また男女とも若い年代ほど高い結果となりました。特に男女29歳以下(男性18.1%、女性14.1%)と男性30代(14.5%)は平均を大きく上回りました。しかしながら、「知らない/聞いたことがない」も男女ともに若い年代ほど高くなり、特に男性29歳以下は16.8%、女性29歳以下は13.1%と比較的高く、認知度に二極化が見られました(図表1)。

 重要性の認識については、「とても重要だ」と考える人の割合は18.4%(前年比+0.7ポイント)、「まあまあ重要だと思う」は43.3%(同+2.3ポイント)でした。一方で、「まったく重要ではない」は3.3%(前年比+0.4ポイント)、「それほど重要ではない」は5.2%(同+0.2ポイント)となり、「重要でない」という意見もわずかに増加しました。また「分からない/関心がない」は13.4%で前年から4.1ポイント減少しました。性年代別では、「とても重要だと思う」は女性70代が最も高く(29.6%)、次いで女性60代(25.2%)、男性70代(23.2%)と続きました。最も低いのは男性50代(12.1%)でした。

 認知度は男性、若い年代ほど高く、重要性の認識は女性、上の年代ほど高い傾向が表れました(図表2)。

 

(図表1)SDGsの認知度(理念、ゴール、ターゲットなど) 性年代別 (単一回答)

SDGsの認知度

 

(図表2)SDGsに対する重要性についての意識 性年代別 (単一回答))

SDGsに対する重要性についての意識

 
 

【2.旅行経験者と生活者の認知度と重要性の認識】

旅行経験者は総じて、生活者全体と比べ、認知度も重要性の認識も高い結果に

 過去3年間(2019年10月以降2022年9月まで)に1泊以上の国内旅行をした旅行者のSDGsの認知度、重要度について、生活者全体と比較したところ、旅行しない人を含む生活者全体よりいずれも高くなりました。認知度については、「詳しく知っている(旅行者12.8% 生活者全体8.2%)」、「17のゴールは知っている(同28.0% 同22.0%)」では旅行者が生活者全体より高くなり、「言葉を聞いたことがある程度(同54.6% 同59.5%)」および「知らない(同4.6% 同10.3%)」では旅行者の方が低くなりました。SDGsに対する重要性の認識は、「とても重要(旅行者21.5% 生活者全体18.4%)」、「まあまあ重要(同47.5% 同43.3%)」では旅行者が高い結果となりました。「分からない・関心がない(同7.0% 同13.4%)」では生活者全体が高くなり、旅行者がSDGsは重要だと考える割合は、生活者全体より高いことがわかりました(図表3~4)。

 

(図表3)SDGsの認知度(理念、ゴール、ターゲットなど) 旅行者・生活者別 (単一回答)

SDGsの認知度

 

(図表4)SDGsに対する重要性についての意識 旅行者・性年代別 (単一回答)

SDGsに対する重要性についての意識

 
 

【3.SDGsの17のゴールの重要性の認識】

重要だと思うゴール(最大5つまで選択)は、1位「すべての人に健康と福祉を(41.4%)」、2位「貧困をなくそう(38.4%)」

昨年より伸びたのは「平和と公正をすべての人に(28.2% 前年+4.8P)」、順位も6位に。国際情勢の影響を受ける

若い世代は「貧困をなくそう」「働きがい経済成長」「ジェンダー平等を実現しよう」など、暮らしや生き方に焦点

 次に、SDGsを構成する17のゴールについて回答者に説明をした上で、重要と思うゴールを5つ以内で選択してもらい、その中から最重要と思うゴールを1つ選択してもらいました。重要と思うゴール(最大5つ)で選択率が高かったものは、「すべての人に健康と福祉を(41.4%、前年比+1.1ポイント)」、「貧困をなくそう(38.4%、同▲1.0ポイント)」、「気候変動に具体的な対策を(34.1%、同+0.7ポイント)」となりました。前年と比較すると、「平和と公正をすべての人に(28.2%、同+4.8ポイント」は最も増加率が高く、ウクライナ情勢をはじめとする国際情勢の影響が考えられます。一方、前年調査より減少したゴールもあり、貧困をなくそう(同▲1.0ポイント)」「飢餓をゼロに(同▲2.1ポイント)」、「ジェンダー平等を実現しよう(同▲0.7ポイント)」が減少の大きい上位3つとなりました(図表5、7)。 

 性年代別にみると、若い年代は「貧困をなくそう」、「働きがいも経済成長も」、「ジェンダー平等を実現しよう」など、身近に感じられる暮らしや生き方に関わる項目が比較的高い結果となりました。特に女性29歳以下は「ジェンダー平等を実現しよう(全体13.6%、女性29歳以下31.9%、前年比+4.2ポイント)」、「働きがいも経済成長も(同16.9%、同21.4%、同+7.5ポイント)」において選択した割合および前年比が他の年代より大幅に高く、社会参画意識が高いことがうかがえました。年齢が上がると、「すべての人に健康と福祉を」、「気候変動に具体的な対策を」、「飢餓をゼロに」、「安全な水とトイレを世界中に」など、地球規模で対処すべき問題に関する項目が高くなる傾向が見られました。なお、若い年代ほど「どれも重要とは思わない」の割合が高くなっています(図表6、7)。

 最も重要だと思うゴールを1つ選んでもらったところ、全体では「気候変動に具体的な対策を(14.7%)」が最も高く、「全ての人に健康と福祉を(12.7%)と続きました(図表5)。

 

(図表5)SDGsの17のゴールに対する重要性の意識について (複数回答)

SDGsの17のゴールに対する重要性の意識について

 

(図表6)SDGsの17のゴールの中で重要と考えるゴール(5つまで) 性年代別 (複数回答)

SDGsの17のゴールの中で重要と考えるゴール

 

(図表7)SDGsの17のゴールの中で重要と考えるゴール(5つまで)の前年対比 性年代別 (複数回答)

SDGsの17のゴールの中で重要と考えるゴール(5つまで)の前年対比

 
 

【4.日常生活でのSDGsを意識した具体的な行動の実践状況(自己評価)】

最も高い実践率は「レジ袋・包装紙などの辞退」、「ゴミの分別・リサイクルや持ち帰り」。上位5つの順位は変わらない

大きく増加したのは、「照明等のこまめな消灯(53.9%、前年比+6.4P)」「エアコンやヒーター等の温度調整や利用制限(45.0%、同+3.5P)」などエネルギーの節約

 

 次に、日常生活でSDGsのゴール達成に結びつく行動について、どのようなことを実践しているか、提示した項目ごとに自己評価してもらいました。全体でできている割合が高かったのは、「レジ袋・包装紙などの辞退(65.9%、前年比▲0.1ポイント)」、「ゴミの分別・リサイクルや持ち帰り(58.4%、同+2.8ポイント)」、「食品ロスの削減(57.8%、同+0.5ポイント)」、「照明等のこまめな消灯(53.9%、同+6.4ポイント)」、「エアコンやヒーター等の温度調節や利用制限(45.0%、同+3.5ポイント)」となりました。昨年と比べ、ほとんどの項目が増加しました。最もポイントを上げたのは、「照明等のこまめな消灯(2022年53.9%←2021年47.5%、前年比+6.4ポイント)」、「エアコンやヒーター等の温度調節や利用制限(同45.0%←同41.5%、同+3.5%)で、昨今の光熱費の値上げによる影響も含まれていると考えられます(図表8)。

 性年代別でみると、ほとんどの項目で女性が男性より、また上の年代ほど実践率が高くなる傾向でした。また割合は少ないものの、「家具や家電、乗り物等のレンタル・シェアリングサービスの利用」は唯一男性の割合が女性より高く、特に29歳以下~40代男性が他の世代より高くなりました。「居住者同士の積極的な交流・地域活動への参加」は男女70代の割合が高く、人との交流や社会との関わりを望む姿が浮かび上がります(図表9)。

 

(図表8)日常生活における、SDGsにつながる行動の実践率 (複数回答)

日常生活における、SDGsにつながる行動の実践率

 

(図表9)日常生活における、SDGsや環境保全につながる行動の実践率(一部抜粋) 性年代別 (複数回答)

日常生活における、SDGsや環境保全につながる行動の実践率

 
 

【5.SDGsの取り組みを重視した商品・サービスに対する購買意向と価格について】

SDGsの取り組みを重視した「旅行」商品を価格が高くても買うと回答した人の割合は20.0%で、7分野のうち6番目

「電化製品」「食品」「日用雑貨」「衣料品」がいずれも25%前後、自動車20.6%、「家・マンション」は最も低く17.3%

 SDGsの取り組みを重視した商品なら通常より高い価格でも購入するのか、どの程度の価格差なら購入するのか、「自動車」、「電化製品」、「食品」、「日用雑貨」、「衣料品」、「家・マンション」、「旅行」の7つの分野について聞きました。結果は分野ごとに差がつきました。「価格差があるなら選ばない」は、いずれも45%前後と違いがほとんどなかった一方で、「分からない」が分野別に差が開いたことが結果に影響しました。

 「価格が高くても買う」意向が高いのは、日常的に使用する「電化製品」、「食品」、「日用雑貨」、「衣料品」で、いずれも約25%前後でした。次いで「自動車(20.6%)」、「旅行(20.0%)」と続き、最も低い結果だったのは「家・マンション」の17.3%でした(図表10)。

 商品やサービスの購入の際に留意するSDGsの視点について分野別に聞いたところ、結果は図表11の通りになりました。「旅行」は他と比べて選択率が全体的に低く、最も高い傾向を示したものは、「提供する企業の取り組む姿勢やイメージの良さ(10.1%)」「提供過程での適正な賃金・労働環境の整備や公正な価格での取引(8.0%)」「利用時のエネルギーの消費の抑制、個人の経済的負担の低減(7.9%)」でした。

 

(図表10)SDGsの取り組みを重視した商品やサービスの購入意向と価格への意識 (単一回答)

SDGsの取り組みを重視した商品やサービスの購入意向と価格への意識

 

(図表11)購入の際に留意するSDGsの視点 (複数回答)

購入の際に留意するSDGsの視点

 
 

〇旅行者編(本調査より)

 

【6.SDGsの17のゴールのうち、旅行者が旅行・観光に重要と考える項目】

旅行・観光に重要だと思うゴールは上位から、「海の豊かさを守ろう(38.1%、前年比+3.1P)」「安全な水とトイレを世界中に(35.7%、同+1.5P)」」「陸の豊かさも守ろう(31.3%、同+1.6P)」

前年より増加率が高かったゴールは、「働きがいも成長も(18.4%、同+5.3P)」「平和と公平をすべての人に(21.3%、同+4.4P)」「すべての人に健康と福祉を(28.4%、同+3.2P)」と、人の生活の豊かさに関わるものが増加

 ここからは過去3年間(2019年10月以降2022年9月まで)に1泊以上の国内旅行をした旅行者を対象に、SDGsに係る意識と行動についてまとめました。

 

 最初に回答者のこれまでの旅行経験から、旅行や観光分野で重要と思うゴールを最大5つまで選んでもらい、さらに最も重要と思うゴールを1つ選択してもらいました。複数回答で割合が高かったのは、上位から「海の豊かさを守ろう(38.1%、前年比+3.1ポイント)」、「安全な水とトイレを世界中に(35.7%、同+1.5ポイント)」、「陸の豊かさも守ろう(31.3%、同+1.6ポイント)」でした。前年より増加したゴールは、伸びが大きい順から「働きがいも成長も(18.4%、同+5.3ポイント)」、「平和と公平をすべての人に(21.3%、同+4.4ポイント)」、「すべての人に健康と福祉を(28.4%、同+3.2ポイント)」と、人間の暮らしや生き方につながる項目が伸びを示しました。最も重要と考えるゴールは上位から「気候変動に具体的な対策を(12.0%、同▲0.2ポイント)」、「安全な水とトイレを世界中に(9.9%、同+0.3ポイント)」、「貧困をなくそう(8.3%、同▲0.5ポイント)」でしたが、1位と3位は前年から微減となりました。また「どれも重要とは思わない」は9.5%で前年より4.0ポイント減少しました(図表12)。

 

(図表12)SDGsの17のゴールで重要と思う項目と最も重要な項目、日常生活と旅行・観光分野別
(重要と思う項目は最大5つまで複数回答、最も重要な項目は単一回答)

SDGsの17のゴールで重要と思う項目と最も重要な項目、日常生活と旅行・観光分野別

 
 

【7.SDGsを意識した行動の日常生活と旅行中の実践の比較および、旅行中の各行動に対する意識】

日常生活で実践出来ている行動が旅行中は大幅に低い結果に。ただし、昨年よりすべての項目で改善

日常生活との差が最も大きい行動は「テレビ・照明等のこまめな消灯(36.1ポイント差)」、「エアコンやヒーター等の温度調節や利用制限、できない理由は「旅行中は考えたくない・面倒」

旅行中の今後の実践意向は「被災地など応援したい地域を旅先として選択」、「レンタカーはEVやハイブリッドを指定」

 次に4項で提示した各ゴールの達成に結びつく具体的な行動を、本調査の回答者に日常生活と旅行中での実践状況をそれぞれ自己評価してもらいました。日常生活での実践率は、事前調査による生活者全体と比べて、旅行経験者の方が総じて実践率が高い結果となりました。また、「SDGsや環境保全に取り組む地元の商業施設の利用(10.7%、前年比▲0.2ポイント)」を除くすべての項目で前年より実践率が増加しました。日常生活で前年より大きくポイントを上げたのは「マイボトルの持参(2022年43.6%←2021年36.2%、前年比+7.4ポイント)」、「節水への取り組み(同54.4%←同48.0%、同+6.4ポイント)」でした。

旅行中での実践率は前年に対し、すべての項目で増加しました。昨年の調査では、旅行中の実践率は日常生活に比べて全ての項目が大幅に低い結果となりましたが、今年の調査でも同様の傾向がみられたものの、全ての項目において前年より差が縮小しました。旅行中の実践率の高い上位3つは、「食品ロスの削減(43.3%)」「レジ袋・包装紙等の辞退(40.4%)」「ゴミの分別・リサイクルや持ち帰り(35.4%)」でした。日常生活と旅行中で実践率の差が大きかったのは、「テレビ・照明等のこまめな消灯(日常生活62.3%→旅行中26.2%、36.1ポイント差)」、「エアコンやヒーター等の温度調節や利用制限(同53.5%→同19.4%、34.1ポイント差)」、「レジ袋・包装紙等の辞退(同72.9%→同40.4%、32.5ポイント差)」、「節水への取り組み(同54.4%→同22.5%、31.9ポイント差)」でした。いずれも旅行中に実践しない理由は「旅行中は考えたくない/面倒くさい」が上位でした(図表13、14)。

また、旅行中に特化したSDGsに関わる行動を提示し、「実際に実践していること」と「今後実践したいこと」の両方について聞きました。「実際に実践していること」は上位から「歯ブラシ・ブラシ・化粧品を持参(36.5%)」、「混雑する場所・時間帯の訪問を避ける(35.5%)」、「旅行先の地域の農産物や工芸品の購入(30.4%)」となりました。「今後実践したいこと」として最も多かったのは「特に実践したいと思わない(38.7%)」、次いで「被災地など応援したい地域を旅行先として選択(16.4%)」、「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する(14.2%)」、「スリッパやパジャマはなるべく持参する(14.1%)」でした(図表15)。

 

(図表13)日常生活と旅行中におけるSDGsや環境保全に対する実践内容(上段:2022年、下段:2021年)(複数回答)

<2022年>

日常生活と旅行中におけるSDGsや環境保全に対する実践内容

 

<2021年>

日常生活と旅行中におけるSDGsや環境保全に対する実践内容

 

(図表14)実践できない理由(ランキング上位3つ)

実践できない理由

 

(図表15)旅行時特有のSDGsに配慮した行動に対する実践状況と今後の意向 (複数回答)

旅行時特有のSDGsに配慮した行動に対する実践状況と今後の意向

 
 

8.【持続可能な取り組みを重視した旅行商品やツアーの価格が高くなった場合の購入意向】

価格が高くても購入意向が高いのは、「訪問地の産品の使用(地産地消)(32.1%)」「食品ロスの削減、再生可能素材の利用などによるゴミの削減活動(29.6%)」「環境に配慮している施設の利用(28.3%)」。ただし、「10%程度」が大半

 現在、地域や旅行会社などはSDGsを推進する商品やサービスの企画にも力を入れていますが、取り組みを重要視した旅行商品やツアーは従来型のものよりも料金が高くなるケースも少なくありません。また昨年の海外比較の調査から、日本人の旅行中や観光地に対する持続可能性への関心は、スウェーデンやドイツに比べかなり低いことが分かっています。そこで、回答者に持続可能な取り組みを重視した旅行商品やツアーに関する具体的な内容を提示し、価格が高くなっても購入意向があるかどうかについて聞きました。

 購入意向が最も高かったのは「訪問地の産品の使用(地産地消)」で、32.1%が高くても購入すると答えました。内訳は、「10%程度高くても購入」が22.6%、「20%程度高くても」が4.7%、「30%以上高くても」が4.8%でした。次いで「食品ロスの削減、再生可能素材の利用などによるゴミの削減活動(29.6%)」、「環境に配慮している施設(宿泊施設等)の利用(28.3%)」、「ペットボトルやプラスチックの利用削減(28.1%)」、「地域の伝統文化や伝統芸能の鑑賞や体験(28.1%)」と続きました(図表16)。 

 

(図表16)持続可能性を重視した旅行商品やツアーの購入意向 (単一回答)

持続可能性を重視した旅行商品やツアーの購入意向

 
 

9.【SDGsを意識した観光を実践するために、地域・商品サービス提供者に希望すること、各事業者取り組みイメージ】

観光事業者のSDGsへの取り組みイメージは、航空や鉄道には「エネルギーの節約や環境負荷の削減」、宿泊や飲食には「ゴミの削減やリサイクルの活用」「食品ロスの削減」、旅行会社には「労働環境の整備」が最も高い

 コロナ禍前に問題視されていた「観光公害(オーバーツーリズム)」や地球温暖化問題、ここ数年のSDGsへの関心の高まりを踏まえ、昨年に引き続き、旅行者の立場から「旅行に行く際にもっと持続可能性を意識するようになるには、地域や旅行商品・サービスの提供側がどんな情報発信や推進活動をするといいと思うか」について聞きました。

 まず、旅行者が旅行中にSDGsを意識するために、地域や商品サービスの提供側に希望するものとしては、「個人が意識しなくとも、その地域の行動が自動的にSDGs推進になるしくみができている」が28.8%で最も高く、次いで「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサステナビリティについての取り組みが分かる(25.4%)」、「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる(24.1%)」でした。前年と比較すると、上位3項目の順位は変わらない一方で、「利用する交通機関のCO2排出量が検索できる(鉄道、航空機、船舶など)」「旅行(移動)により発生するSDGsのマイナス面と旅行先での行動や消費が与えるプラス面が説明されている」は前年よりも希望割合が高く、SDGsの具体的な効果への関心が高まっている様子がうかがえます(図表17)。

 最後に、日本国内の移動や観光にかかわる代表的な事業者に対し、旅行者が抱くSDGsの取り組みについての現状と将来へのイメージについて項目別に聞きました。「現在積極的に取り組むイメージがある」が15.0%以上あったのは、飲食業界では「提供する料理や食品から発生する食品ロスの削減(24.6%)」および「ゴミの削減やリサイクルの活用(21.3%)」、航空業界では「エネルギーの節約や環境負荷が少ないエネルギーの利用(19.4%)」および「ゴミの削減やリサイクルの活用(15.2%)」、鉄道業界では「エネルギーの節約や環境負荷が少ないエネルギーの利用(19.0%)」、宿泊業界では「ゴミの削減やリサイクルの活用(17.0%)」および「提供する料理や食品から発生する食品ロスの削減(16.1%)」でした。これらは「今後、さらに積極的に取り組むべきだと思う」も同様に高く、項目自体に関心と期待が高まっていることが分かります。

 旅行会社については、旅行中に旅行者に対して実際にサービスを提供する機会が少ない現状もあり、全体的に選択率が低い結果となりました。しかしながら、今後さらに積極的に取り組むべきものとして、「SDGsの取り組みに関する情報発信(13.3%)」および「労務管理や適正な給与形態、人材育成など労働環境の整備(10.5%)」は他の業界よりも高い結果となりました。なお、前述の5項では、SDGsを重視した商品を高くても購入するポイントで「提供する企業の取り組む姿勢やイメージの良さ」と「提供過程での適正な賃金・労働環境の整備や公正な価格での取引」が1位、2位でした。実際取り組んでも認知されていないことを意識したうえで、取り組みが伝わるような分かりやすい発信が必要といえそうです(図表18)。

 

(図表17)旅行中でのSDGsを意識するために、地域や商品サービスの提供側に希望するもの (複数回答)

旅行中でのSDGsを意識するために、地域や商品サービスの提供側に希望するもの

 

(図表18)日本国内の各観光事業者のSDGsの取り組みについてのイメージ (複数回答 N=2,000)

日本国内の各観光事業者のSDGsの取り組みについてのイメージ

 
 

〇まとめ

 本調査は昨年に引き続き2度目の調査となりました。その間、私たちを取り巻く環境も変化が見られ、コロナ禍は依然続いていますが、移動制限が課せられることはなくなり、国際交流がようやく再開した一方で、ウクライナ情勢をはじめとする国際情勢に不安が広がるとともに物価高が進み、生活への影響が出ています。また、今年は世界各地で異常気象が見られ、日本も多くの地域が豪雨により被災しました。このような中、今回の調査でSDGsの認知度と重要性の認識が前回から良化した背景には、身近に降りかかる問題として個人の意識が高まった結果と考えられます。

 各人のSDGsのゴールに結びつく日々の行動も実践率があがっていましたが、旅行者の日常と旅行中の行動を比較すると、旅行中の実践率は前年より改善されたものの、昨年実施したSDGsに係る取組の実践を先進的に行っているドイツやスウェーデンに比べると低い数値に留まりました。旅行者にとってSDGsが推進されている状況とは、大別すると、①行政や企業の対応により仕組みが整備され、旅行者が意識的に行動しなくても、自動的に推進される、②旅行者が日常生活の延長として旅行先でも同じように、自発的にゴミの削減や資源の節約に向けた行動を行う状態、③旅行者がSDGsに配慮した商品やサービスを多少価格が高くても積極的に選択し、購入する状態、が考えられます。観光関係者の多くが③を目指していると思われますが、③の高いドイツは、②の旅行者による自発的な行動も高い結果がでています。まずは「旅行中くらいは考えたくない/面倒くさい」と思われないような地域、事業者をあげた取り組みと丁寧な説明を、そして「あらかじめ提供されていることが決まっている」、「食事などの量が多い」というできない理由に対して、改めて、時代感覚に合ったおもてなしを見直すことも大切と思われます。

<お問い合わせ>
(株)JTB 総合研究所 企画調査部
03‐6260‐1211
contact@tourism.jp
<調査分析および執筆>
波潟、牧野、中尾
www.tourism.jp

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