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「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2022年8月)」
~第7波の中での生活者の意識とこれからの旅行~

(生活者全体からみた意識)

■「今後1年間に国内旅行を予定・検討している人」は41.1%、前回(3月調査)から1.9P増加

・意向が高いのは男女20代(51.1%、55.0%)、これまで高かった男性60歳以上は5.7P減少

・景況感はさらに厳しく「趣味や旅行など必要性の低い消費機会を減らしている」+6.1P22.0

・「感染対策に関する情報は必要だが、国が細かく決めるよりも自分の意志や判断で行動したい」33.9

 

1年以内に旅行を予定・検討している人の意識)

■ 夏休みを前に47.3%が「予約済」。そのうち85.7%の人が「予約した内容で実施予定」

 「北海道」「関東」「中部」「関西」「中国・四国」で域内の旅行が再び増加傾向に

・「旅行の予約・検討時に感染対策を意識する」は85.0%で前回より6.2P増加

・宿泊施設・外食店に感染防止対策を望む姿勢は前回より低くなる一方、個室・貸切のニーズ高まる

 

現在の外出や移動に関する考え方は、依然として慎重な姿勢

・三密回避は今も徹底するべきだと思う(36.6%)」、「ワクチンの接種率が上がっても、移動や外出に対する不安はある(27.9%)

・一都三県居住者は、他の地域の居住者に比べ、地方部への移動を控える傾向


 株式会社JTB総合研究所(東京都品川区 代表取締役 社長執行役員 風間 欣人)は、「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2022年8月)」の調査結果をまとめました。

 当社は新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下新型コロナ)の世界的流行が始まった2020年2月から定点で意識調査を実施し、感染拡大や緊急事態宣言などの対応に揺れ動く人々の意識や行動、そして旅行消費について追ってきました。今回で12回目の調査となります。当社は変化の著しい現代社会における生活者の価値観や行動、旅行に関する調査研究を多様な視点で継続的に行っています。

 本調査は、オミクロン株の派生型ウイルスによる感染拡大が「第7波」に入った7月19日~24日に実施しました。1日当たりの新規感染者数が20万人を超え、各地で新規感染者数が過去最多を更新し続けていますが、現在のところ、移動や外出制限の要請はなく、個人の意思に委ねられています。一方、円安や原油価格・物価の高騰、実質賃金の減少など景況感は厳しい状況が続いています。3年ぶりの行動制限がない今夏、人々はどのような意識をもって行動しているのでしょうか。生活者の今の気持ち・旅行意向を読み解きます。

【調査概要】

調査手法:インターネット調査会社が保有しているパネルに対して、インターネットでの予備調査を実施、対象者を抽出後に本調査を実施

 

【調査結果】

<予備調査から市場全体をみる> 

  最初に予備調査(全国20歳以上の男女対象)で生活者全般の意識や旅行意向について俯瞰しました。参考までに、コロナ禍前までは国内旅行に行った人の割合(年間)は約6割程度で推移していました。

 

1.今後約1年間(237月まで)の国内旅行の実施意向は全体で1%、前回調査から1.9ポイント増加

男女20代(男性51.1%、女性55.0%)の意向は伸び続けているが、男性60歳以上は5.7ポイント減少

海外旅行の1年以内の意向は全体で11.2%、意向が高いのは男女20代(男性22.5%、女性25.8%)

 市場全体の把握のため、今後およそ1年以内の旅行実施意向について聞きました。国内旅行では全体で41.1%の人が「予定・検討している」と回答しました。前回調査(2022年3月実施)のオミクロン株によるまん延防止等重点措置の解除直後の39.2%から1.9ポイント増加しました。3月調査の結果は、さらにその前の調査(2021年10月実施)の35.8%から3.4ポイント増加していたことから、伸び率は緩やかになったものの、全体としては旅行に対する意欲は引き続き上向いているといえます。性年代別では、男性60歳以上および女性40代を除く全ての層で、1年以内に旅行を「予定・検討している」は増えました。最も意向が高かったのは男女20代(男性51.1%、女性55.0%)で、前回からの伸び率もそれぞれ4.6ポイント、4.8ポイントと高くなりました。これまでの調査で男女20代に次いで意向が高かった男性60歳以上は38.7%で、前回から5.7ポイントと大幅な減少となりました。再び拡大している新型コロナの現状に加え、重症化リスクの高い高齢者らへの移動自粛要請などから、旅行に対して慎重な姿勢が強くなっていることが読み取れます(図1、2)。

海外旅行に関しては、今後1年以内に「予定・検討している人」は全体で11.2%と、前回より0.6ポイント増加しました。性年代別で1年以内の実施意向が高いのは、国内と同じく男女20代で、男性は22.5%(前回+1.7ポイント)、女性は25.8%(同+4.7ポイント)となりました。2019年の20代女性の出国率はすべての性年代別で最も高く、海外旅行を牽引していたので、引き続き期待できる層といえそうです(図3)。

 

(図1)今後予定・検討している国内旅行の時期(性年代別)                                               (単数回答)


(図2)今後1年以内に国内旅行を予定・検討している割合(2110月、223月・7月調査比較)(単数回答)


(図3)今後予定・検討している海外旅行の時期(性年代別)    (単数回答)


2.
生活者の景況感は、節約意向がさらに高まるが、好きなことには消費を惜しまない人も一部で増加

「趣味や旅行など、必要性の低い消費をする機会を減らしている(22.0)」は6.1ポイント増加の一方、

「普段の生活は切り詰めるが、趣味や旅行など好きなことにはお金を惜しまない(11.9%)」は1.8ポイント増加

景況感について聞いたところ、最も高い「家計に余裕はない(44.7%)」は前回調査から5.0ポイント増加しました。「将来が不安なので、貯蓄や資産運用を増やしている(33.5%)」、「趣味や旅行など、必要性の低い消費をする機会を減らしている(22.0%)」は共に前回より6.1ポイント増加し、「現在の景気は自分の生活には影響ない(8.4%)は1.6ポイント減少と、前回調査よりも引き締めの意向がさらに高くなっています。その一方で「普段の生活は切り詰めるが、趣味や旅行など自分の好きなことにはお金を惜しまない(11.9%)」が1.8ポイント増加し、好きなことにはお金を惜しまない層が一定程度いることが分かります(図4)。この項目を性年代別にみると、20代女性が15.9%と最も高く、最も低いのは20代男性(8.2%)でした。同じ20代でも、消費に対する考え方は異なる結果となりました(図表省略)。

 

(図4)景況感について                                                           (複数回答)

<本調査から具体的な旅行意向を知る>

 以下からは本調査で、今後約1年以内(23年7月まで)に国内旅行を予定・検討している人を対象に、今現在の旅行意向について具体的に聞きました。

 

3.直近の国内旅行の実施時期については、202289月に考えている人は52.7%、1012月は32.9
夏休み前に、47.3%の人が旅行を「予約済」。そのうち85.7%が「予約した内容で実施予定」
旅行先は、域内の旅行が「北海道」「関東」「中部」「関西」「中国・四国」で再び増加傾向に

 1年以内(23年7月まで)に予定している直近の国内旅行の内容については以下のとおりです。

予定・検討している直近の国内旅行の出発時期全体では夏休み期間の2022年8~9月が52.7%、10~12月は32.9%、2023年1~3月は9.4%となりました。性年代別でみると、8~9月の割合が最も高いのは女性40代(72.5%)、次いで女性50代(62.4%)、男性40代(61.4%)となり、子育て世代が夏休みや9月の連休を利用して旅行を予定・検討していると考えられます(図5)。

予約の有無:「予約済」の割合は全体で47.3%でした。調査時期が夏休み直前だった影響もあると考えられます。性年代別でみると、「予約済」は全体的に女性の割合が高く、また若い年代ほど高くなる傾向となりました。ただし、男性20代は「予約済」が64.5%と抜きん出て高い結果でした(図6)。今夏は第6波を上回る感染者数ですが、予約した人の85.7%が変更やキャンセルをせずに予定通りに出発すると回答しました(図は省略)。「予約はまだしていない・計画している段階」の理由については、「新型コロナの感染の不安(37.4%)」が最も多く、次いで「具体的な旅行内容がまだ決まっていない(33.1%)」、「これから先の具体的な予定がわからない(24.1%)」の順となりました(図7)。

旅行先:今後予定している旅行の行き先は、上位から「関東(26.0%)」、「中部(16.1%)」、「関西(13.8%)」、となりました。前回と比べて増加した地域は「中部(+3.5ポイント)」、「関東(+1.1ポイント)」、「中国・四国(+0.3ポイント)」、「九州(+0.1ポイント)」でした。居住地別では、域内の旅行が「北海道」「関東」「中部」「関西」「中国・四国」の地域で増加しました。前回調査では東北以外のすべての地域で域内旅行が減少していましたが、今回、域内の旅行が再び増えた背景には、一部の道府県で行われている観光需要喚起策(県民割、ブロック割など)の効果に加え、新型コロナが再拡大したことによる旅行の近距離化傾向が考えられます(図8)。

同行者:上位から「子ども連れ(中学生までの子どもがいる)の家族旅行(24.2%、+3.3ポイント)」、「夫婦のみ(22.7%、-2.6ポイント)」、「友人・知人(14.3%、-0.4ポイント)」、「自分ひとりで(11.9%、-2.1ポイント)「その他の形態の家族旅行(8.6%、+1.5ポイント)」となりました。夏休みの旅行が多いことから、子ども連れの家族旅行が高くなったと考えられます(図9)。

 

(図5)今後1年間に予定・検討している国内旅行の出発時期(性年代別)       (単数回答)


(図6)今後1年間に予定・検討している国内旅行の予約状況(性年代別)     (単数回答)


(図7)今後1年間に予定・検討している国内旅行の予約をしていない理由     (複数回答)

(図8)今後1年間に予定・検討している国内旅行の行き先(地域別)                  (単数回答)


(図9)今後1年間に予定・検討している国内旅行の同行者        (単数回答)


. 旅行を予約・検討する際、85.0%が感染防止を「意識した/意識している」。前回より6.2ポイント増加
感染対策は「少人数や身近な人だけの旅行にする」「土日祝日など、混みあう時間帯や日にちを避ける」
宿泊施設・外食店に感染防止対策を望む姿勢は前回より低いが、個室・貸切など一部のニーズは高まる

  今後予定している直近の旅行の予約・検討時における新型コロナの感染防止対策への意識や、国内の宿泊施設と外食店を選ぶ際に重視することについて聞いたところ、結果は以下のとおりとなりました。

新型コロナの感染防止対策の有無と内容:旅行の検討・予約時に、新型コロナの感染防止対策を「意識した/意識している」割合は85.0%でした。また感染防止対策の具体的な内容としては「少人数や身近な人だけの旅行にする(41.1%)」「土日祝日など、混みあう時間帯や日にちは避ける(34.4%)」、「都市部よりも人の少ない自然が多い場所を選ぶ(33.4%)」が上位となり、この項目はいずれも前回から増加しました(図10)。

国内の宿泊施設を選ぶ際に重視すること:前回と同じ「消毒やマスク着用などの衛生管理が徹底されていること(32.2%、前回-2.6ポイント)」が最も高く、「個室で食事ができること(21.5%、同+0.3ポイント)」、「館内(ロビーや脱衣所など)で三密を避ける取り組みを徹底していること(21.2%、同-1.7ポイント)」、「感染症などによるキャンセルの場合、キャンセル料がかからないこと(20.7%、同-2.0ポイント)」が続きました。全体的には前回調査より多くの項目で選択率が下がりました。一方で、「個室で食事ができること」、「露天風呂付客室や貸切風呂が利用できる施設であること(14.9%、前回+0.5ポイント)」、「一棟貸しの施設であること(7.1%、同+1.4ポイント)」は増加しました。感染症対策として広がった個室や貸切の利用ニーズは、今後も定着していく可能性があります。また2022年6月に約2年2カ月ぶりとなる外国人観光客の受け入れが条件付きで再開されましたが、「海外からの団体客を受け入れていない施設であること(12.4%)」も1.2ポイントの増加となりました(図11)。

外食店の選択に重視すること:最も高かった項目は、前回と同じく「座席数を減らすなど、他の客との距離が十分とられている(32.3%、前回-2.1ポイント)」で、「混雑していないエリアにある(31.1%、同+2.7ポイント)」、「個室を利用できる(27.9%、同+0.1ポイント)」、「店員の感染防止対策への意識が高い(マスクの正しい着用、店員同士の会話を控えている等)(26.5%、同-3.1ポイント)」が続きました。外食についても多くの項目で前回を下回りましたが、「混雑していないエリアにある」、「個室を利用できる」、「テラス席を利用できる(12.8%、同+0.6ポイント)」は増加しました。宿泊施設同様、コロナ禍をきっかけに広がった「混雑していない」、「個室を利用できる」といったニーズの一部は、今後も定着することが考えられます(図12)。

(図10)旅行の予約・検討時の新型コロナの感染対策の意識と対策の具体的な内容  (単数回答/複数回答)

(図11)国内の宿泊施設を選ぶ際により重視するようになったこと               (複数回答)

(図12)外食の店を選ぶ際に気にする感染防止対策                          (複数回答)


. 外出や移動に関する考え方は、依然として慎重な姿勢がみられる

「三密回避は今も徹底するべきだと思う(36.6%)」、「ワクチンの接種率が上がっても、移動や外出に対する不安はある(27.9%)
 全体では「都市部への移動はしばらく控える」が、一都三県居住者は「地方部への移動を控える」傾向も

 感染力の強いオミクロン株の派生型ウイルスによる感染拡大を踏まえ、外出や移動に関する考え方を聞きました。三密回避については、「今も徹底するべきだと思う」が36.6%で、「以前より意識しなくてよいと思う(9.6%)」に比べて3倍以上高くなりました。ワクチン接種率が上がっている状況での移動や外出についても、「不安はある(27.9%)」が、「自由に移動する/してよいと思う(9.4%)」を大きく上回り、緊急事態宣言などの行動制限がない状態であっても、移動や外出に対して依然として慎重な姿勢がみられました。

 「都市部への移動はしばらく控える」が全体で20.9%となり、「気にせずする(9.6%)」と11.3ポイント差がつきました。「都市部への移動はしばらく控える」を居住地別にみると、一都三県(東京都/神奈川県/千葉県/埼玉県)の居住者は14.5%、一都三県以外の居住者は25.5%でした。一方で「地方部への移動はしばらく控える」は全体で9.9%でしたが、一都三県居住者は12.6%で、それ以外の人(8.1%)に比べて高くなる傾向がみられました。移動制限はないものの、都市部への移動をしばらく控える人が気にせず旅行する人より多く、逆に都市部が占める一都三県の人が地方部への移動を控える人も一定程度いる様子が分かりました(図13)。

(図13)新型コロナ感染 第7波における外出や移動に対する考え方       (複数回答)


. 今後行きたい海外旅行先は「ハワイ(19.9)」、「ヨーロッパ(15.6)」、「台湾(11.3)

行き先を選んだ理由は「その場所が好きだから」、「日本人が訪問しやすい国・地域だから」

どんな状況なら海外旅行をしたいかは、「旅行先の新型コロナの感染状況が落ち着けば(23.3%)」

「円高が進めば(20.4%)」「帰国時の新型コロナの検査等(72時間前検査)がなくなれば(19.1%)」

 今年のゴールデンウィーク頃から、旅行会社の海外企画旅行商品が再び販売開始となりました。入国制限を緩和する国も増加しつつありますが、日本人の海外旅行への意向は現在どのようになっているのでしょうか。本調査対象の今後1年以内に国内旅行を予定・検討している人1,017人のうち、今後時期を問わず海外旅行を予定・検討している372人に対して旅行の詳細を聞きました。

   行き先は、「ハワイ」が19.9%で最も高く、次いで「ヨーロッパ(15.6%)」、「台湾(11.3%)」となりました。「行き先はまだ決めていない(7.8%)」は、具体的な旅行の行き先は決めていないものの、海外旅行をしたいという人も一定程度存在することが分かります(図14)。行き先の上位5カ国・地域について、選んだ理由をみると、「その場所が好きだから」はハワイ、ヨーロッパで最も高く、「日本人が訪問しやすい国・地域だから」は、ハワイ、台湾、オーストラリア・ニュージーランドで高い傾向となりました。その他の特徴としては、ハワイは「自分が行き慣れている国・地域だから」、ヨーロッパは「家族・知人訪問だから」が他と比べて高くなりました(表1)。

  また、海外旅行の予定がない人を含めた本調査対象者全員に、どんな状況だったら海外旅行をしたいかを聞いたところ、「今は海外旅行に行くことは考えられない、分からない」が29.2%と最も多かったものの、「旅行先の新型コロナの感染状況が落ち着けば(23.3%)」、「円高が進めば(20.4%)」、「帰国時の新型コロナの検査等(72時間前検査)がなくなれば(19.1%)」など、条件次第で海外旅行に行きたいと考える人も相応にみられました(図15)。海外旅行意向の高い20代・30代は「旅行会社が企画するパッケージツアーの品ぞろえが増えたら(全体8.1%、20代10.1%、30代11.5%)」、「現地サポートのあるパッケージツアーがあれば(全体7.1%、20代10.6%、30代11.0%)」など、具体的なツアー商品・サービスに関する項目が他の世代に比べて高くなりました。なお、「今は海外旅行に行くことは考えられない・分からない」は年代が高いほど高くなり、50代が37.8%、60歳以上は42.7%となっています(図表省略)。

 

(図14)今後予定・検討している海外旅行の行き先                          (単数回答)

(表1)今後予定・検討している海外旅行先を選んだ理由 上位5位(行き先別)   (複数回答)


(図15)今後、どんな状況なら海外旅行をしたいか                        (複数回答)


<予備調査から生活や消費に対する意識をみる>

  長引くコロナ禍で「ニューノーマル」な生活や旅行が浸透しましたが、生活者は今、どんな意識で暮らしているのでしょうか。予備調査において、設問ごとに5段階評価(Aに近い、どちらかといえばAに近い、どちらともいえない、どちらかといえばBに近い、Bに近い)で選んでもらいました。

 

.「感染対策に関する情報は必要だが、国が細かく決めるよりも自分の意志や判断で行動したい」33.9%、
「これからは、貧困や少子高齢化などの社会課題を優先していくべきだ」41.0
「日本の未来に希望を持っている」18.4%。「持てない」は46.3%で、女性30代、男女40代は5割以上 

 

コロナ禍における行動の判断は「自分の意思で判断したい」:「(A)感染対策は、自由が制限されても、国が細かく決めてくれた方が行動しやすい(「Aに近い」と「どちらかというとAに近い」の合計値30.7%)」よりも「(B)感染対策に関する情報は必要だが、国が細かく決めるよりも自分の意志や判断で行動したい(「Bに近い」と「どちらかというとBに近い」の合計値33.9%)」が高くなりました。全体では両者の意識にあまり差は見られず、また、性別では女性の方が男性に比べて「自分の意思で判断したい」がやや多い傾向でした。

これからは貧困や少子高齢化などの「社会問題を優先すべきだ」:「(A)これからは、貧困や少子高齢化などの社会問題を優先していくべきだ(同:41.0%)」が「(B)社会課題よりも、まだ新型コロナの感染対策を優先にするべきだ(同:20.9%)」よりも大幅に高い結果となりました。性年代別では、「社会課題を優先すべきだ」は男性40代以上と女性20代、30代で高く、いずれも4割を超えました。一方で女性20代、30代は「新型コロナの感染対策を優先すべきだ」も他の性年代に比べると高く、また男性20代も男性の中では最も高い結果となりました。若い年代ほどコロナ禍の生活への不満が高いのかもしれません。

「地方で暮らす」か「都会で暮らすか」は全体では同程度:コロナ禍によって地方への移住意向が高まったといわれていますが、「(A)地元かどうかに関わらず、都会で暮らしたい・働きたい(同:30.1%)」と「(B)地元かどうかに関わらず、地方で暮らしたい・働きたい(同:29.6%)」は同程度でした。性年代別では、男性で「地方で暮らしたい」が全体平均より高く、かつ「都会で暮らしたい」より高いのは男性40代以上で、特に男性60歳以上は35.7%と最も高くなりました。女性で「地方で暮らしたい」が全体平均より高く、かつ「都会で暮らしたい」より高いのは、女性20代および30代で、それぞれ31.4%、32.0%でした。

日本の未来に「希望をもっている」は「もてない」よりかなり少ない:「(A)日本の未来に希望をもっている」は18.4%、「(B)日本の未来に希望をもてない」は46.3%と、「希望をもてない」が圧倒的に高い結果でした。全ての性年代で「希望をもてない」が高くなりましたが、男女60歳以上は「希望をもっている(男性27.4%、女性24.6%)」が全体平均より大幅に高くなりました。「希望がもてない」が高いのは、女性30代、男女40代で、いずれも半数を超えました。

「今の生活は充実している」は「虚しさがある」よりやや低い:「(A)自分にとって、今の生活は充実している(同:30.4%)」は「(B)自分にとって、今の生活には虚しさがある(同:31.7%)」よりやや低い結果でした。しかし、男女60歳以上に関しては「今の生活は充実している(男性:39.4%、女性:35.3%)」が「今の生活には虚しさがある(男性:25.5%、女性:25.2%)」より大幅に高い結果となり、シニア層の生活の充実ぶりがうかがえました。一方、「今の生活に虚しさがある」が最も高い層は男女40代(男性:33.4%、女性:35.2%)で、「日本の未来に希望はもてない」が最も高い層と一致しました。(図16、表2)

 

(図16)今の社会や暮らしに対する気持ち                             (単数回答)


(表2)今の社会や暮らしに対する気持ち(抜粋/性年代別)                  (単数回答)


.まとめ

 約2年半続くコロナ禍を振り返ると、感染拡大当初は新型コロナについて情報が少なく、マスクなどの不足や医療体制の逼迫が起き、ワクチン接種も進まず、緊急事態制限やまん延防止等重点措置の発令が人々の行動の基準になっていたと考えられます。現在の第7波では行動制限の要請はなく、本人の意思に行動は委ねられますが、こういった状況は初めてであり、本調査ではこれまでの生活から人はどんな意識や考えで行動するのか注目していました。

旅行意向については、3年振りの行動制限のない夏休みを控えていましたが、前回調査から1.9ポイントの増加に留まり、これまで常に旅行に積極的だった男性60歳以上の意欲が低下しました。旅行を予約・検討する際、感染防止を「意識した/意識している」人は前回より増加し85.0%にのぼり、三密回避の継続に加え、前回減少した域内の旅行も再度増加しました。一方で、宿泊施設や外食先の選択の際に気にする項目の多くが減少し、前節の生活意識にもあるように、感染力の強いオミクロン株の派生型ウイルスの不安はあるものの、対策は取りながら自分の意思で行動を決めたい、というウィズコロナの生活スタイルが定着しつつあると感じられます。 

 景況感については、これまでは外出関連消費が抑えられ、リベンジ消費が期待されていましたが、コロナ禍が長引くうちに円安ドル高が進み、輸入原価の上昇により物価上昇が家計に影響を与え始めています。今夏の足元の消費は比較的意欲的な面もありましたが、今回の調査では、感染不安だけではなく、景況感も前回より低下する結果となりました。物価高で宿泊料や飲食費、ガソリン代等の上昇も想定され、今後の旅行消費への影響が懸念されます。

 以上のような状況下での人々の意識ですが、同じ項目でも性年代で違いが見られました。「これからは、貧困や少子高齢化などの社会課題を優先していくべきだ」と「社会課題よりも、新型コロナの感染対策を優先にするべきだ」という両者の考え方については、総じて「社会課題を優先すべきだ」が多かったものの、20代は「新型コロナの感染対策を優先すべきだ」が他より高くなりました。限られた時間の中で過ごす学生時代に受ける新型コロナの影響はとても大きいと察します。「今の生活に虚しさがある」や「日本の未来に希望をもてない」が高かったのは働き盛りであり、子育て世代でもある男女40代でした。コロナ禍が長期化することで、社会構造的な課題が顕在化しています。感染防止対策に留意しながら、正常な経済活動と心豊かな暮らしの両立が求められます。

(株)JTB 総合研究所 企画調査部
03-6260-1211
contact@tourism.jp
<調査分析および執筆>
岡野 千帆、中尾 有希、波潟 郁代
www.tourism.jp

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