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「新型コロナウイルス感染拡大による、
暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2022年4月)」
~オミクロン株の猛威が人々の意識に与えた影響とこれからの旅行~

(生活者全体からみた意識)

■「今後1年間に国内旅行を予定・検討している人」は39.2%、前回(10月調査)から3.4P上昇

・感染への不安に加え、景況感はさらに下降傾向だが、旅行への意欲は前回に引き続き上昇

・意欲が高いのは、男女20代(46.5%、50.2%)、低いのは女性50代・60歳以上(31.0%、31.5%)

・旅行者を受け入れる住民としての意識は、前回からさらに寛容さがみられる

 

1年以内に旅行を予定・検討している人の意識)

202246月までに旅行をしたい人は50.5%、79月は30.1

・78.8%が旅行に新型コロナの感染防止対策を意識。特に男女20代、女性60歳以上は8割以上にのぼる

・感染防止で意識するのは「少人数や身近な人だけの旅行にする(40.7%)」「短期間にする(32.0%)」

・宿泊施設の選択に重視する感染防止対策は、今回調査で減少がみられたが、選択率は依然高い

 

「個人の感染対策はこれからも必要」は45.7%、「今後も感染症の出現は避けられない」41.4

・若者中心に貧困など社会課題や経済、国際情勢への対策にシフトを望む意見も明らかに




 株式会社JTB総合研究所(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 風間 欣人)は、「新型コロナウイルス感染拡大による、暮らしや心の変化と旅行に関する意識調査(2022年4月)」の調査結果をまとめました。

 

 当社は新型コロナウイルス感染症(COVID-19/以下新型コロナ)の世界的流行が顕著になり始めた2020年2月から定点で意識調査を実施し、感染拡大や緊急事態宣言などの対応に揺れ動く人々の意識や行動、そして旅行消費について追ってきました。本調査は11回目となり、オミクロン株の感染拡大によるまん延防止等重点措置の解除後の3月25日に実施しました。

 2022年の1月から日本国内でもオミクロン株による感染者数が急増し、36都道府県にまん延防止等重点措置が発出されました。感染ピークの2月には、1日あたりの新規感染者数が10万人以上と、8月のデルタ株の2万5千人をはるかに上回る事態となりました。ワクチン接種が進み重症化リスクは減ったものの、自宅待機や学級閉鎖が増え、社会、経済活動が正常に回らなくなる問題も浮き彫りになりました。現在は再び変異株が確認され、感染拡大の懸念はあるものの、3年ぶりに緊急事態宣言などが発出されないゴールデンウィークを控えています。今回は、オミクロン株の猛威を経た人々の意識と旅行を読み説きます。

 

  当社は変化の著しい現代社会における生活者の価値観や行動、旅行に関する調査研究を多様な視点で継続的に行っています。

【調査概要】

調査手法:インターネット調査会社が保有しているパネルに対して、インターネットでの予備調査を実施、
対象者を抽出後に本調査を実施

【調査結果】

<予備調査から市場全体をみる> 

最初に予備調査(全国20歳以上の男女対象)で生活者全般の意識や旅行意向について俯瞰しました。参考までに、コロナ禍前までは1年間で国内旅行に行った人の割合は概ね6割程度で推移していましたが、コロナ禍の2021年に国内旅行をした人は4割以下と試算しています。

 

1.今後約1年間(233月まで)の国内旅行の実施意向は全体で39.2%、前回調査から3.4ポイント増加

意向が高いのは男女20代(46.5%、50.2%)と男性60歳以上(44.4%)、女性60歳以上は31.5%と低い

海外旅行の1年以内の意向は10.6%、意向が高いのは男女20代(20.8%、21.1%)

 市場全体の把握のため、今後およそ1年以内の旅行実施意向について聞きました。国内旅行では全体で39.2%の人が「予定・検討している」と回答し、前回(2021年10月実施)のデルタ株による緊急事態宣言などの解除後の調査結果から3.4ポイント増加しました。10月調査の意向は35.8%で7月調査から1.5ポイント改善しており、旅行に対する気持ちがさらに上向いているといえそうです。性年代別で意向が高かったのは、男女20代(男性46.5%、女性50.2%)、男性40代(同42.4%)、男性60歳以上(44.4%)でした。すべての層で1年以内に旅行を「予定・検討している」は増えています。女性は回復傾向ですが、男性に比べると低く、女性50代(31.0% 前年+3.9ポイント)、女性60歳以上(31.5% 前年+0.1ポイント)は全体を大幅に下回りました。女性50代は前回から上昇したものの、「分からない」が多く、女性60歳以上は前回とほぼ横ばいです。女性60歳以上は「2023年4月以降に予定・検討している」が6.3%(前年+1.4ポイント)、「以前はこの旅行をしていたが、今後はしないと思う」が9.1%(同+0.8ポイント)と前年から上昇し、慎重な姿勢になっていることが読み取れます(図1,2)。

 海外旅行に関しては、全体では今後1年以内に「予定・検討している人」は10.6%、「2023年4月以降」と1年以上先と考えている人は6.6%で、あまり前回と変わりませんでした。1年以内の意向が高いのは、国内と同じく、男女20代(男性20.8%、女性21.1%)で、次に男女30代(18.4%、13.3%)が続きました。男女60歳以上(同6.2%、同3.5%)は各年代の中で1番低く、「以前はこの旅行をしていたが、今後はしないと思う」がそれぞれ11.5%、13.2%ありました(図3)。本調査の後に、旅行会社各社がハワイのパッケージツアーの販売を再開していますので、今後の意向割合の上昇が期待できそうです。

 

(図1)今後予定・検討している国内旅行の時期(性年代別)                            (単数回答)



(図2)今後1年以内に国内旅行を予定・検討している割合(217月・10月、223月調査比較)(単数回答)


(図3)今後予定・検討している海外旅行の時期(性年代別)                          (単数回答)


2.生活者の景況感は、余裕のなさが前回より明らかになる一方で、好きなことに関する消費意欲は維持傾向

「将来が不安なので貯蓄や資産運用を増やしている(27.4%)」は1.3ポイント上昇、

「現在の景気は自分の生活に影響はない(10.0%)」は2.5ポイント減少と余裕がなくなる傾向になる

「普段の生活は切り詰めるが、趣味や旅行など好きなことにはお金を惜しまない(10.1%)」は上昇傾向

 景況感について聞いたところ「家計に余裕はない(39.7%)」は前回調査から0.2ポイント減少しましたが、依然高水準が続きます。「将来が不安なので貯蓄や資産運用を増やしている(27.4%)」は前回より1.3ポイント上昇、「普段の生活も、趣味や旅行も費用を節約している(17.4%)」は0.7ポイント上昇、「現在の景気は自分の生活に影響はない(10.0%)」が2.5ポイント減少と、前回調査より生活に余裕がなくなったと感じる割合が高くなっています。一方で「将来のことは分からないので今の生活を楽しみたいと思う(20.2%)」は前回から0.7ポイント上昇、「普段の生活は切り詰めるが、趣味や旅行など自分の好きなことにはお金を惜しまない(10.1%)」は0.4ポイント上昇、「普段の生活も、趣味や旅行も特に節約はしていない(10.6%)」は0.2ポイント上昇と、家計は厳しくてもコロナ禍が長引き、好きなことに消費をしたいという気持ちがうかがい知れます(図4)。

 

(図4)景況感について                                                              (複数回答)

3.旅行者を受け入れる住民としての意識は、前回に引き続き寛容になっている

「自分が住んでいない大都市圏(首都圏・関西圏など)からの旅行者」は49.9%が来てほしい(8.4P増)、

「海外からの旅行者」の場合、35.1%が来てほしい(6.8P増)といずれも伸び率が前回より上昇

 これまで自分が住んでいる地域に旅行者が来訪することへの意識を定点で聞いてきました。コロナ禍で外から訪問者が来ることに対し、住民として否定的な意識が強い傾向にありましたが、前回の調査では緊急事態宣言などの解除に加え、ワクチン接種が進んだことから寛容になる傾向がみられました。今回の調査ではさらに寛容さが進み、「歓迎したい」と「来てほしいが、不安はある」の合算値を「来てほしい」とすると、「自分が住んでいない大都市圏(首都圏・関西圏など)からの旅行者」は49.9%ととなり、2021年10月調査から8.4ポイント上昇しました。「自分が住んでいない大都市圏(首都圏・関西圏など)からの旅行者で、その旅行者がワクチン接種済の場合」は56.6%で6.2ポイント上昇しました。

 ワクチン接種の条件の有無による差は、今回の調査では6.7ポイント差(ワクチン接種条件なし49.9%、条件あり56.6%)で、前回の8.9ポイント差(同41.5%、同50.4%)より2.2ポイント少なくなりました。海外からの旅行者で、ワクチン接種の条件の有無による違いは、今回は10.0ポイント差(ワクチン接種条件なし35.1%、条件あり45.1%)で、前回の11.4ポイント差(同28.3%、同39.7%)から1.4ポイント少なくなりました(図5)。ワクチン接種の条件の有無による意識の違いはまだあるといえます。



(図5)旅行者を受け入れることについて                                        (単数回答)

<本調査から具体的な旅行意向を知る>

 以下の本調査で、今後約1年以内(233月まで)に国内旅行をする予定・検討の人を対象に、新型コロナの収束がみえない中での旅行に対する意識について、具体的に聞きました。

 

4.1年以内に旅行意向のある人のうち、202246月までに旅行をしたい人は50.5%、79月は30.1

直近の旅行の申し込み状況は、58.5%が「予約はまだしていない・計画している段階」、

一方で、「2022321日のまん延防止等重点措置の解除以前に予約済み」は28.0

 1年以内(23年3月まで)に、予定している直近の旅行の内容については以下のとおりです。

予定・検討している直近の国内旅行の出発時期:4~6月までが50.5%、7~9月は30.1%、10~12月は15.7%となりました。性年代別でみると、男女とも年代が高くなるほど、4~6月に予定・検討する割合が高くなりました。若い年代は意欲が高くても、4~6月は学校や職場のスケジュールが優先され、旅行のための休みがとりにくい時期と考えられます(図6)。

国内旅行の申し込み状況:全体では「予約済(まん延防止等重点措置が解除となる2022年3月21日より前に予約)」の割合は28.0%。「予約済(2022年3月22日以降に予約)」が13.5%、「予約はまだしていない・計画している段階」が58.5%でした。性年代別でみると、20代男女はまん延防止等重点措置が解除される前に予約をしている割合が高く(男性42.3%、女性42.0%)、まだ先の旅行でも予約のアクションが早いことがうかがえます。一方、男女50代、男性60歳以上はほぼ7割が「予約はまだしていない・計画している段階」となり、4~6月の旅行予定の割合が高いものの、予約に至っていない人が多い状況がうかがえます(図7)。

地域:今後予定している旅行の行き先は、上位から「関東(24.9%)」、「関西(16.3%)」、「北海道(13.1%)」となりました。前回と比べて上昇した地域は「北海道(+1.9ポイント)」、「東北(+0.8ポイント)」、「関西(+2.1ポイント)」、「中国・四国(+0.7ポイント)」でした。居住地別では、域内の旅行が東北以外すべての地域で減少しました。商圏の大きな居住地域でみると、関東からは北海道、関西が前回調査から上昇し、中部からは関東、関西、中国・四国が、近畿からは関東、中国・四国が上昇しました(図8)。

同行者:上位から「夫婦のみ(25.3%、+3.2ポイント)」、「子供連れ(中学生までの子供がいる)の家族旅行(20.9%、+1.5ポイント)」、「友人・知人(14.7%、+0.4ポイント)」、「自分ひとりで(14.0%、+0.2ポイント)となり、いずれも前回より上昇しました。「友人・知人」は増加したものの、全体では前回からあまり同行者の範囲や人数が広がったとはいえず、近しい関係の少人数での旅行は維持されると考えられます(図9)。

 


(図6)今後1年間に予定・検討している国内旅行の出発時期                  (単数回答)


(図7)国内旅行の申し込み状況                                                   (単数回答)


(図8)今後1年間に予定・検討している国内旅行の行き先                              (単数回答)


(図9)予定・検討している国内旅行の同行者                                  (単数回答)


. 今後直近の旅行を予約・検討する際の、新型コロナへの感染防止対策は

78.8%が感染防止を「意識した/意識している」。特に男女20代、男性30代、女性60歳以上は8割以上

感染防止対策の具体的な内容は、「少人数や身近な人だけの旅行(40.7%)」「短期間の旅行(32.0%)」

 今後予定している直近の旅行の新型コロナの感染防止対策については以下の通りとなりました。

新型コロナの感染防止対策の有無:旅行の検討・予約時に新型コロナの感染防止対策は、「意識した/意識している」は78.8%、「特に意識しなかった/意識していない」は21.2%でした。性年代別でみると、感染防止意識が高いのは「男女20代(男性81.7%、女性85.0%)」、「男性30代(84.2%)」、「女性60歳以上(89.1%)」でした(図10)。

感染防止対策の具体的な内容:「少人数や身近な人だけの旅行にする(40.7%)」、「短期間の旅行にする(32.0%)」、「宿泊施設のタイプや設備を配慮する(31.3%)」が上位となりました(図11)。前述の感染防止対策を行う層(男女20代、男性30代、女性60代)に共通してみられた特徴としては、「感染者数がいずれも少ない地域を選ぶ」、「短期間の旅行にする」の割合が高い。また、男女20代、男性30代は「実家や友人宅には宿泊しない/宿泊するのを避ける」が他より高い結果となりました。女性60歳以上は「少人数や身近な人だけの旅にする」が高い結果になりました(図は省略)。


(図10)旅行の検討・予約時に新型コロナの感染対策を意識するか(性年代別)               (単数回答)


(図11)感染防止対策の具体的な内容                                                    (複数回答)


6.宿泊施設も外食店にも感染防止対策を望む姿勢は全体的に前回より低くなるが、選択率は依然高い

 前回調査に引き続き、国内の宿泊施設と外食の店を選ぶ際に重視することを同じ内容で聞きました。結果は宿泊施設、外食店とも、すべての項目で前回より低い結果となりましたが、選択率自体は依然高い結果でした。

 国内の宿泊施設を選ぶ際に重視することは、前回と同じ「消毒やマスク着用などの衛生管理が徹底されていること(34.8%)」が最も高く、「館内(ロビーや脱衣所など)で3密を避ける取り組みを徹底していること(22.9%)」、「利用者に対しても、施設が定めた感染対策の徹底を求めていること(22.8%)」、「感染症などによるキャンセルの場合、キャンセル料がかからないこと(22.7%)」が続きました。すべての項目で前回より選択率が下がったのですが、最も高い「消毒やマスク着用などの衛生管理が徹底されていること」は前回から2.3ポイントの減少に留まり、引き続き旅行者は施設の衛生管理の徹底を望んでいるといえます。今回最もポイントを下げた項目が「露天風呂付客室や貸切風呂が利用できる施設があること(14.4%)」で前回から6.2ポイント下がりました(図12)。

 外食の店の選択に重視することで最も高かった項目は、前回と同じく「座席数を減らすなど、他の客との距離が十分とられている(34.4%)」で、「店員の感染防止対策への意識が高い(マスクの正しい着用、店員同士の会話を控えている(29.6%))「混雑していないエリアにある(28.4%)」が続きました。外食もすべての項目で前回を下回る結果となり、最も下がったのは「自治体等のルールに従った営業がされている(酒類の提供時間)(20.3%)」で8.0ポイント減となりました。最も高い項目の「座席数を減らすなど、他の客との距離が十分とられている(34.4%)」は前回から5.7ポイント減少しました(図13)。

 

(図12)国内の宿泊施設を選ぶ際により重視するようになったこと                           (複数回答)


(図13)外食の店を選ぶ際に気にする感染防止対策                                    (複数回答)


. まん延防止等重点措置の解除後でも、外出や移動に関する考え方は、「消極的・慎重」さが浮き彫りになる

「いっきに旅行者や外出者が急増するのは不安(29.4%)」「ワクチン接種率があがっても移動や外出に不安」

 感染力の強いオミクロン株の感染拡大に対処したまん延防止等重点措置の解除を踏まえ、外出や移動に関する考え方に当てはまる項目を選んでもらい、「積極的・前向き」と「消極的・慎重」に分類してみました。結果は「消局的・慎重」な項目の方が「積極的・前向き」より高い傾向になりました。前回調査から項目を変えているため、単純比較はできませんが、前回10月のデルタ株の感染拡大に対する緊急事態宣言等の解除の時は、「積極的・前向き」の方が高い傾向でした。2月のピークより新規感染者数は減少したものの、依然多くの新規感染者が出ている現状に、不安を拭い取ることはまだ難しいようです(図14,15)。

 

(図14)まん延防止等重点措置解除後の外出や移動に対する考え方                         (複数回答)


(図15)【参考:2110月調査結果】緊急事態宣言解除後の外出や移動に対する考え方     (複数回答)


. オミクロン株の猛威による過去にはない感染急拡大を経験した後の意識について

「個人の感染症対策はこれからもずっと必要だと思う」45.7%、「依然感染への不安は大きい」31.5

「これからは、貧困などの社会問題、経済、国際情勢への対策にシフトしていくべきだと思う」18.7

社会問題などへの対策シフトは 男性20代・30代の若者が特に高く、それぞれ24.0%、25.7

 2022年早々から、私たちはオミクロン株の猛威による感染拡大を経験しましたが、これを踏まえた意識について、当てはまる項目を回答者に選んでもらいました。結果は、「個人の感染対策はこれからもずっと必要だと思う(45.7%)」と「今後も新しいコロナ変異株や新種の感染症の出現は避けられないと思う(41.4%)」の2項目が他より大幅に高く、コロナ禍初期の意識と比べて感染症と共存の認識が感じ取られました。いずれの項目も年代が上るほど意識が高くなる傾向がみられました。

 感染への不安については「まだ感染者数が多いので依然感染への不安が大きい」が31.5%ありましたが、逆に「社会全体で感染者数が多くなったので感染した場合の不安が逆に減った」が10.2%、「重症者数は多くなかったので不安が減った」が15.7%と不安が減ったと感じる人も一定数ありました。性年代別でみると違いが明らかで、20代男女は「まだ感染者数が多いので依然感染への不安が大きい」がそれぞれ21.2%、19.0%と平均より10ポイントほど低く、特に20代女性は「重症者数は多くなかったので不安が減った」が20.0%と「不安が減った」の方が高くなりました。

 「新型コロナに関しての感染者が増加の場合の緊急事態宣言の発令に対する要望」については、「今後も緊急事態宣言を発令してほしい」は20.2%、「感染者が増加しても、今後は緊急事態宣言を発令しないでほしい」は17.2%と3ポイントの僅差でした。性年代別でみると、男性20代は「発令しないでほしい(26.0%)」が「発令してほしい(17.3%)」を逆転する結果となり(差は8.8ポイント)、また女性40代も「発令しないでほしい(22.4%)」が「発令してほしい(14.3%)」を上回りました(差は8.1ポイント)。

 「これからは貧困などの社会問題、経済、国際情勢への対策にシフトしていくべきだと思う」は18.7%で、特に男性20代・30代がそれぞれ24.0%、25.7%と高い結果となりました。

 

(図16)オミクロン株の感染急拡大を経た意識や行動の変化                               (複数回答)


(表1)オミクロン株の感染急拡大を経た意識や行動の変化(性年齢別)                   (複数回答)



.まとめ

 コロナ禍も3年目に入りました。昨年10月の緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が全面解除になった時に実施した調査では、1年以内の旅行意欲はデルタ株の感染拡大による緊急事態宣言下だった7月調査と比べて1.5ポイントしか改善されませんでした。今回の調査では、感染力の強いオミクロン株の猛威と現在も続く感染への不安、国際情勢の悪化などで景況感がさらに低下している状況にもかかわらず、旅行意向は前回から3.4ポイント上昇しました。今まで男性に比べて消極的だった女性の意欲も女性60歳以上以外は上昇しています。

 旅行の内容については10月調査では、同行者は少人数を基本に、「ひとり」や「夫婦のみ」がやや減少し、「三世代」や「家族および友人知人」が増え、コロナ禍で会えなかった人と会う旅行、そして居住地に近い域内旅行がさらに強まる傾向が見られました。今回の調査では、少人数であることには変わりなく、再び「ひとり」や「夫婦のみ」が増え、身近な人と旅行を予定・検討している傾向が表れました。しかし、域内旅行はすべての地域で減少していることから、感染防止対策は行いながらも、今後旅行の活動範囲は広がることが期待できそうです。

 オミクロン株の猛威に対する不安は大きいですが、今回の調査結果から、新規感染者数の爆発的な増加を経験し、新型コロナとの共存への覚悟のような意識が定着しつつあることも感じられました。ワクチン接種や感染防止対策などの情報も増え、住民の意識も寛容さが増しています。海外旅行も再開し、旅行の選択肢は広がりますが、旅行者、住民の相互の信頼関係を落とさないよう旅行ができる環境づくりに努めることがますます重要になりそうです。

<お問い合わせ先>
(株)JTB 総合研究所 企画調査部
03-6260-1211
contact@tourism.jp
<調査分析および執筆>
岡野 千帆、波潟 郁代
www.tourism.jp

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