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SDGsに対する生活者の意識と旅行についての調査(2022)
~その2 旅行者の意識と旅行行動~


●旅行者の認知度、重要性の認識、日常生活での意識した行動は、生活者と比べて高い傾向に

●SDGsの取り組みを重視した商品(自動車、電化製品、食品、日用雑貨、衣料品、旅行)の購入の際の意識は旅行者は全品目で「SDGsへの取り組みを強化した商品であれば価格が高くても買う」が生活者より高い
・「価格が高くても買う」のは、電化製品(40.7%)、食品(40.2%)、日用雑貨(39.9%)で、旅行は35.4
●これまでの旅行経験から旅行・観光分野で最も重要と考える17のゴールは、「気候変動に具体的な対策を(12.2%)」「安全な水とトイレを世界に(9.6%)」、日常生活で最重要と考えるゴールも「気候変動(17.3%)」が上位
・旅行・観光で17のゴールは「どれも重要とは感じない」は13.5%、日常生活は6.5%と旅行へのSDGsの関心は希薄
●日常生活に率先して実践できている行動が旅行中は大幅に減少
・「レジ袋・包装紙の辞退(日常71.3旅行36.7%)」「食品ロス削減(日常70.5→40.5%)」
・旅行中に出来ない理由は「旅行中は考えたくない/面倒」「あらかじめ用意されているから」「特にない」
●旅行中の行動で実践していることは、「混雑する場所・時間帯の訪問を避ける」「歯ブラシ・ブラシ・化粧品を持参」
・今後実践したいことは、「レンタカーはEVやハイブリッドで」「被災地など応援したい地域へ行く」
●地域や商品・サービスの提供側が旅行者にSDGsを意識させるために望むことは「個人が意識しなくても、行動自体が自動的にSDGsを推進するしくみができている(26.9%)」「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサスティナビリティの取り組みが分かる(26.5%)」「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる(24.1%)」「特にない(34.9%)」



 (株)JTB総合研究所(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 野澤 肇)は、「SDGsに対する生活者の意識と旅行(2022) その2」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な視点で継続的に行っています。

 SDGs(持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。現在、国をはじめ自治体や企業が積極的に取り組み、多くのメディアが取り上げ、社会の関心が高まっています。当社は、観光の持続可能性について、地域と旅行者がどのような関係性を築いていくべきかを検討するために、SDGsに対する生活者の意識および旅行時の意識や行動の把握を行うこととしました。本稿「その2」では旅行者の意識と行動についてまとめました。なお、「その1」は生活者全体についての調査結果をまとめており、「その3」はスウェーデン、ドイツ、日本の旅行者の比較を行い、2月に発表を予定しています。

【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査

対象者 :

事前調査…全国に居住する1879歳の男女10,001人を対象、人口分布に応じて割り付け実施

本調査 …過去3年間(201812月以降202111月まで)に1泊以上の国内旅行をした3,000人を対象

調査時期:20211217日~1221

 本調査では、旅行者(過去3年間の旅行経験者)に焦点を当て、観光および観光地の持続可能性について旅行者の意識や行動を把握しました。対象期間の旅行は、新型コロナ感染症拡大の前までは一部地域での観光公害が話題になり、SDGsや観光地の持続可能性について広く議論されるようになった時期であり、またコロナ禍では移動制限が要請され、感染防止対策を徹底したうえで、近しい人と近い場所で短期間の旅行(新常態での安近短旅行)が増えた時期にあたります。

【旅行者(過去3年間の旅行経験者)のSDGsの認知度と社会的な重要性の認識、日常生活での行動】

1.旅行者の認知度、重要性の認識、日常生活での意識した行動は、生活者と比べて高い傾向に

認知度は「詳しく知っている(旅行者11.2% 生活者6.8%)」「17のゴールは知っている(同23.5% 同18.3%)」

重要性の認識は「とても重要(旅行者21.0% 生活者17.7%)」「まあまあ重要(同46.5% 同41.0%)」

実践度は「常に意識して実践(旅行者4.7% 生活者3.2%)」「それなりに意識して実践(同30.4% 同24.2%)」

 旅行者のSDGsの認知度、重要性の認識、そして日常生活での実践度は、すべてにおいて、旅行しない人を含む生活者より高くなりました。
 認知度については、「詳しく知っている(旅行者11.2% 生活者6.8%)」、「17のゴールは知っている(同23.5% 同18.3%)」では旅行者が生活者より高くなり、「言葉を聞いたことがある程度(同57.1% 同59.2%)」および「知らない(同8.2% 同15.7%)」では旅行者の方が低くなりました。性年代別の傾向は生活者の傾向と変わらず、男性の方が、また若い年代ほど認知度が高いことが分かりました。特に男性29歳以下と30代の認知度は他の年代よりも高く、「詳しく知っている」と「17のゴールは知っている」の合計が共に4割を超えました。また、これらの性年代は「知らない・聞いたことがない」の割合が生活者より大幅に低く(男性29歳以下生活者19.9旅行者7.5%、男性30代生活者18.2旅行者7.3%)、二極化の解消が見られました。また女性29歳以下も「知らない・聞いたことがない」が生活者と比べ21.0%から12.0%と大幅に低くなりました(図表1)
 SDGsに対する重要性の認識は、「とても重要(旅行者21.0% 生活者17.7%)」、「まあまあ重要(同46.5% 同41.0%)」では旅行者が高い結果となりました。「分からない・関心がない(同9.8% 同17.5%)」では生活者の方が高くなり、旅行者は、SDGsは重要だと考える割合が生活者より高いことが分かります。性年代別では重要だと考える割合は男女とも60代、70代が高く、また男女とも40代の旅行者が低い結果となりました(図表2)。
 日常生活におけるSDGsを意識した行動については、「常に意識して実践(旅行者4.7% 生活者3.2%)」、「それなりに意識して実践(同30.4% 同24.2%)」で旅行者が高い結果となりました。「たまにしか意識を持って実践していない(同34.2% 同31.2%)」も旅行者が高くなりましたが、「まったく意識して実践していない(旅行者20.5% 生活者23.0%)、「どちらとも言えない/分からない(同10.2% 同17.5%)」では生活者が高くなり、旅行者の方がより高い意識をもって行動しているといえます。性年代別の傾向をみると、「常に意識して実践している」が高かったのは男性では若い年代でした。「それなりに意識を持って実践している」が平均以上だったのは男性60代以上と女性50代以上の上の年代で、男性40代・50代は男性の中で最も低く、この年代は「たまにしか意識を持って実践していない」が高くなりました。「まったく意識して実践していない」は男性50代以下、女性40代と29歳以下が平均より高くなりました(図表3)。

(図表1)SDGsの認知度(理念、ゴール、ターゲットなど) 性年代別   (単一回答) 

(図表2)SDGsに対する重要性についての意識 性年代別  (単一回答)

(図表3)  日常生活におけるSDGsを意識した行動 旅行者性年代別  (単一回答)


SDGsの取り組みを重視した商品・サービスに対する購買意向と価格について】

2.SDGsの取り組みを重視した商品(自動車、電化製品、食品、日用雑貨、衣料品、旅行)の購入の際の意識は、全品目で旅行者の方がSDGsへの取り組みを強化した商品であれば「価格が高くても買う」が生活者より高い

「価格が高くても買う」のは電化製品(40.7%)、食品(40.2%)、日用雑貨(39.9%)で、旅行は35.4

 前項では、旅行者は生活者に比べてSDGsの認知度、重要性の認識、実践度が高いことが明確となりましたが、SDGsの取り組みを重視した商品の購入意識はどのくらい高いのか、事前調査による生活者と比較しました。その結果、全品目でSDGsへの取り組みを強化した商品であれば「価格が高くても買う」が旅行者の方が生活者より高くなりました。一方、「価格差があるなら選ばない」と答えた人は旅行者の方が生活者より約2ポイント高くなりましたが、生活者は「分からない」の比率が高く、この影響を除けば旅行者は810ポイント生活者より少なくなります。この「分からない」の差が旅行者の「価格が高くても買う」の割合を高くしたと考えられます(図表4、5)。
 「価格が高くても買う」が高い品目は、電化製品(40.7%)、食品(40.2%)、日用雑貨(39.9%)で、最も低いのは家・マンション(32.4%)となり、旅行は35.4%でした。この点については「その1」で説明しています。

(図表4)SDGsの取り組みを重視した商品やサービスの価格についての意識(旅行者)  (単一回答)

(図表5)SDGsへの取り組みを重視した商品やサービスの価格についての意識(生活者)  (単一回答)

【旅行者が日常で重要だと考えるSDGs17のゴールと、自らの旅行経験から考える旅行・観光に重要なゴールの違い】

3.日常で最重要だと考えるゴールは「気候変動に具体的な対策を(17.3%)」「すべての人に健康と福祉を(13.0%)」

旅行・観光に最重要だと思うゴールは、「気候変動に具体的な対策を(12.2%)」「安全な水とトイレを世界中に(9.6%)」

 SDGsの17のゴールのうち、日常生活の中で重要だと感じるゴールを最大5つまで選んでもらい、そのうち最重要だと考えるゴールを1つ選んでもらいました。選択率の高かったゴールは「すべての人に健康と福祉を(42.2%)」「貧困をなくそう(40.2%)」「気候変動に具体的な対策を(36.4%)」の順でした。最重要と考えるゴール(1つだけ)は上位から「気候変動に具体的な対策を(17.3%)」「すべての人に健康と福祉を(13.0%)」「貧困をなくそう(11.1%)」となりました。「どれも重要とは思わない」は6.5%でした。
 次に、これまでの旅行経験から、旅行や観光分野で重要と思う項目を最大5つまで選んでもらい、最重要と考えるゴールを1つ選択してもらいました。選択率の高かったゴールは、上位から「海の豊かさを守ろう(35.0%)」「安全な水とトイレを世界中に(34.2%)」「陸の豊かさを守ろう(29.7%)」「気候変動に具体的な対策を(28.0%)」の順でした。最重要と考えるゴールは「気候変動に具体的な対策を(12.2%)」「安全な水とトイレを世界中に(9.6%)」「貧困をなくそう(8.8%)」でした。また「どれも重要と感じない」は13.5%ありました。「気候変動に具体的な対策を」は日常でも旅行・観光でも常に最上位となり、関心の高さがうかがえました。一方で、「どれも重要と思わない」は旅行・観光では13.5%と日常での6.5%の倍以上の差がつきました(図表6)。
 旅行・観光分野で「最も重要だと思うゴール」を性年代別でみてみると、違いが大きく表れました。全体で最も割合が高かった「気候変動(12.2%)」については、上の年代になるほど高くなる一方、若い年代は低く、男女29歳以下(男性3.0%、女性3.6%)および男女30代(同7.3%、同6.0%)では10%を切る結果となりました。若い年代の支持が高かったのは「貧困をなくそう」、「安全な水とトイレを世界中に」「住み続けられるまちづくりを」でした(図表7)。

(図表6) SDGsの17のゴールで、重要と思う項目と最も重要な項目  日常生活と旅行・観光分野別 
(重要と思う項目は最大5つまで複数回答、最も重要な項目は単一回答) 

(図表7) 旅行・観光分野のSDGsの17のゴールのうち、重要と思う項目と最も重要な項目 性年代別 (複数回答)


SDGsのゴールにつながる具体的な行動の実践状況(日常生活及び旅行中に対する自己評価)】

4.日常生活に率先して実践できていることは「レジ袋・包装紙等の辞退(71.3%)」「食品ロス削減(70.5%)」

旅行中で実践できていることは日常より大幅に減少し、「レジ袋・包装紙等の辞退(36.7%)」「食品ロス削減(40.5%)」

旅行中に出来ない理由は項目別に多様だが、「特に理由はない」「旅行中は考えたくない/面倒」が共通して高い
 次に、SDGsのゴールにつながりそうな具体的な行動をいくつか例示し、日常生活と旅行中での実践状況を自己評価してもらいました。結果は、日常生活で7割実施できているような行動も、旅行中では著しく低くなることが分かりました。実践率が日常と旅行で大きな差が出たのは、順に「レジ袋・包装紙等の辞退(日常71.3旅先36.7% ▲34.6P)」「テレビ・照明等のこまめな消灯(同57.523.1% ▲34.4P)」「エアコンやヒーター等の温度調節や利用制限(同50.718.0% ▲32.7P)」「ゴミの分別・リサイクルや持ち帰り(同60.429.7% ▲30.7P)」でした。図表は省略しますが、特徴として、女性50代以上のような日常生活で出来ていると答えた割合が高い性年代ほど旅行中では大きくポイントを下げる傾向が見られ、性年代別の差は旅行中では日常生活より小さくなる傾向が見られました。また「あてはまるものがない」と答えた人は、日常生活では11.5%だったのに対し、旅行中では23.6%と大きくなりました(図表8)。
 日常生活で実践できているのに、旅行中では実践しない理由を聞いたところ、すべての行動において「特に理由はない」が最高となり、特に意識していない様子がうかがえます。項目別の理由をみると、「レジ袋・包装紙等の辞退」は「旅行中くらいは考えたくない(23.1%)」「あらかじめ用意されているので準備が不要だから(19.7%)」が、「テレビ・照明等のこまめな消灯」は「旅行中くらいは考えたくない(27.4%)」「あらかじめ料金を支払っているので、支払額に変化がない(12.5%)」が、「ゴミの分別・リサイクルや持ち帰り」は「旅行中くらいは考えたくない(21.9%)」「あらかじめ用意されているので準備が不要だから(14.3%)」「地域や施設から協力を求められていない/情報が届かない(11.2%)」が多くなりました。旅行になると、SDGsにつながる具体的行動は多くの人において希薄になるといえそうです(図表9)。

(図表8) 日常生活と旅行中における、SDGsや環境保全に対する実践内容(一部抜粋)  (複数回答) 

(図表9)実践できない理由(ランキング上位3つ)


【旅行中のSDGsに関わる行動で、意識的に実践していること、今後実践したいこと】

5.実践していることは、「混雑する場所・時間帯の訪問を避ける(33.4%)」「歯ブラシ・ブラシ・化粧品を持参(32.5%)」「特になし(31.7%)」
今後実践したいことは、「レンタカーはEVやハイブリッドで(16.3%)」「被災地など応援したい地域へ行く(16.1%)」「特になし(39.4%)」

 旅行中のSDGsに関わる行動を例示し、「実際に実践していること」と「今後実践したいこと」の両方について聞きました。
 その結果、「実際に実践していること」としては、上位から「混雑する施設や場所への訪問は避ける、混まない時間に訪れる(33.4%)」、「歯ブラシ、ブラシ、化粧品はなるべく持参する(32.5%)」、「旅行先の地域の農産品や工芸品の購入(27.5%)」となりました。「特に実践していない」も31.7%あり、性年代別で内訳をみると、男性4050代、29歳以下は40%を超えていました。また、ほとんどの項目で女性、上の年代で実践率が高い傾向が見られました。しかしながら、「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する」は全体8.7%に対して男性30代・29歳以下ともに14.1%と高く、また「旅行先の地域住民との積極的な交流や体験プログラムの参加」も全体5.9%に対して男性30代(10.3%)および男性29歳以下(10.1%)は高い結果となりました。
 「今後実践したいこと」としては、上位から「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する(16.3%)」「被災地など応援したい地域を旅行先として選択(16.1%)」「SDGsや環境保全(カーボンオフセットを含む)に取り組む宿泊施設や観光施設等を利用する旅行ツアーの選択(14.1%)」となりました。他方、「特に実践したいと思わない」は39.4%であり、「実際に実践していること」と同じ設問に比べて7.7ポイント高く、今後への関心は高くないといえそうです。「特に実践したいと思わない」を性年代別でみると、実施率と同様にやはり男性4050代、29歳以下が高い結果でした。実施率が男性29歳以下、男性30代で高かった「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する」は、今後の意向では上の年代が高くなっていました。また「旅行先の地域の農産品や工芸品の購入」については、男女29歳以下、男女30代が他の年代と比べて実施率は低いものの、今後の意向は高い傾向にありました(図表10)。

(図表10) 旅行中におけるSDGsに関わる行動に対する実践度合いと今後の意向  (複数回答)

【旅行でSDGsを意識するために、地域や商品・サービスの提供側が行うべき情報発信や推進活動】

6. 最も多いのは「個人が意識しなくても、行動自体が自動的にSDGsを推進するしくみができている(26.9%)」、「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサスティナビリティの取り組みが分かる(26.5%)」、 「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる(24.1%)」、「特にない(34.9%)」

 最後に、コロナ禍前の「観光公害」の問題からここ何年かのSDGsへの関心の高まりを踏まえて、旅行者の立場として「旅行に行く際にSDGsを意識するようになるためには、地域や旅行商品・サービスの提供側がどんな情報発信や推進活動をするといいか」について聞きました。最も多かったのは「特にない(34.9%)」で、他の設問同様、旅行・観光のSDGsへの関心のなさが伺えます。それ以外では、「個人が意識しなくとも、その地域の行動が自動的にSDGs推進になるしくみができている(例:センサー利用で自動的に電気が消える、ペットボトルの自販機撤去とタンブラーの貸出など)(26.9%)」「宿泊施設の予約サイトを通じて、施設のサスティナビリティ(持続可能)についての取り組みが分かる(26.5%)」「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる(24.1%)」「世界的な認定機関から「持続可能な観光を推進する旅行先」としての認証がある(20.3%)」となりました。
 性年代別では意向が分かれ、「特にない」は男性40代、男性50代、女性29歳以下が高く4割近くとなりました。また、「個人が意識しなくとも、その地域の行動が自動的にSDGs推進になるしくみができている」は女性、上の年代ほど意向が高く、女性50代以上は30%を超えました。一方で男性29歳以下(14.1%)および男女30代(男性20.6% 女性22.6%)は低い結果でした。男女とも若い年代は「SDGsに関わる消費によりポイントがたまる(全体24.1% 男性29歳以下24.1%、男性3029.4%、女性29歳以下31.7%、女性3032.7%)」が高い結果となりました。また男性29歳以下は「利用する交通機関のCO2排出量が検索できる(鉄道、航空機、高速道路、船舶など)(全体18.5% 男性29歳以下23.6%)」が男性の他の年代より高くなりました(図表11)。

(図表11) 旅行中でのSDGsを意識するために、地域や商品サービスの提供側に希望するもの  (複数回答)

【旅行者のSDGsに対する意識と行動のまとめ】
 総合的なまとめは「その3」のスウェーデン、ドイツの旅行者の比較の後になりますが、日本人の旅行者について集計・分析しながら注目したポイントを記します。

旅行者(過去3年で旅行経験のある人)は旅行しない人を含む生活者と比べると、SDGsの認知度、重要性の認識、日常生活での意識した行動をする割合は高い

  旅行することそのものが、事前の観光情報の取得や現地での日常とは異なる生活、文化、情報に触れる機会となるなど情報感度が高まる行為と考えられます。SDGsの取り組みを重視した商品やサービスの購入についても、調査対象とした全品目において「価格が高くても買う」意向が旅行者は生活者より高い結果となりました。ただし、旅行は自動車、電化製品、食品、衣料品に比べ低い結果でした。原因が品目の特性によるものなのか、情報の差によるものなのかは検証が必要と思われます。

●旅行者のSDGsに対する意識や行動は、旅行中になると日常より大幅に下がる
 旅行経験のある人は日常生活でのSDGsに対する意識や行動は高いものの、旅行という環境の変化が発生すると大幅に低下することが明らかになりました。その心理として、「旅先中くらい考えたくない/面倒くさい」が圧倒的に多く、SDGsというものをどう捉えているのか問いかけたくなります。一方、「あらかじめ用意されているので準備が不要だから」も高い理由となりました。地域側がおもてなしの一環で「なんでも対応する」ことは負荷を増すケースもあり、地域の取り組みとして検証の余地がありそうです。
 17のゴールについても、「どれも重要だと感じない」と考える割合は日常では6.5%だったのが、旅行になると13.5%と倍以上に高くなりました。旅は別物(非日常)という意識が強いように見受けられます。

●コロナ禍の影響や今後のSDGs推進が旅行者の意識変化につながる可能性も
 冒頭で述べましたが、調査対象者の旅行期間は過去3年です。その期間は新型コロナ感染症拡大の前までは旅行消費が活発で、国内も一部地域での観光公害が話題になり、SDGsや観光地の持続可能性について広く議論されるようになった時期であり、またコロナ禍では移動制限が要請され、感染防止対策を徹底したうえで、近しい人と近い場所で短期間の旅行(新常態での安近短旅行)が増えた時期にあたります。旅行は現時点では「リラックス」に対するニーズが高くなっていますが、今後は安全・安心への対応やSDGsの推進などにより意識が変化してくる可能性があります。これを前提に、今後も定点調査を通してSDGsに対する意識と行動の変化を明らかにしていきたいと思います。

<お問い合わせ>
(株)JTB 総合研究所 企画調査部
03‐6260‐1211
contact@tourism.jp
<調査分析および執筆>
波潟、牧野、中尾
www.tourism.jp

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