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JTB総合研究所アメリカ人旅行者の日本旅行に関する志向調査 その2

【3 年以内に日本旅行を考えているアメリカ人の海外旅行や日本旅行についての意識】
インターネット・アンケート回答者の属性:

対象者(3 年以内に日本への観光旅行をしたいと考えている人)の属性は以下の通りです(図 1~6)。

・居住地の割合は、「東海岸」、「西海岸」それぞれ 26.0%、その他「北部中央、南部、山間部」で 48%

・性年齢別には全体でほぼ均等になるように調査を実施しているが、地域別にみるとやや「北部中央、南部、 山間部」で 29 歳以下の割合が高い。

・東海岸は「経営者・役員、公務員・会社員」、西海岸・ハワイは「経営者・役員、自営・自由業」の割合が高い傾

・10   万ドル以上の世帯年収割合は全体で   36%。アメリカ国勢調査結果の   29%と比較すると、富裕層の割合は高い。

「北部中央、南部、山間部」ではやや5万ドル未満の割合が高いが、10万ドル以上の割合はどの地域も大差 がない。

・海外旅行頻度は、「北部中央、南部、山間部」で、「年に1回より少ない」が多い傾向。

 

*居住地については、サンプル数、および、回答の傾向を鑑み、本文中では「北部中央、山間部、南部」を まとめ、 3 地域での分析としています。

 

 

 

 

1.   3年以内に日本旅行を希望している人のうち、訪日経験者は約 3 割
これから初めて日本旅行をしたいと考えている人には、29 歳以下の若い世代、特に女性の割合が高めの傾向

調査対象である「3    年以内に日本旅行をしたいと考えている人」に、過去に日本を訪問したことがあるかどうかを聞いたところ、   31.6%が訪問経験ありと回答しました。訪日経験別での男女比をみると、訪日経験者にはやや男性が多くなりましたが、あまり大きな差ではありませんでした。訪日経験回数については、観光旅行、ビジネス旅行共に 1~2回で 8割近くを占めていますが、   10   回以上の割合もそれぞれ   8%を超え、複数回訪れている人も少なくないようです(図 7、8)。訪日経験別に居住地と性年齢の割合をみると、西海岸、ハワイに居住している人の割合が 34%と、訪日経験なしの人より  12ポイント高くなりました。性年齢別には、訪日経験ありの人では、50歳以上の割合が高く、経験なしの人では、29  歳以下の女性の割合が高くなりました(図  9、10) 。

次に、日本を含め、海外旅行については、どのように考えているのかを聞きました。考えている旅行先として、日本以外にあがったのは、全体では「アイルランド(47.3%)」や「ドイツ(46.7%)」などの欧州や「中南 米(43.2%)」などでした。アメリカ総人口の10数%がアイルランド系を自認しているとも言われ、自身のルーツとしてのつながりも大きいと考えられます。訪日経験別でみると、訪日経験ありの人は、より欧州を検討する割合が高い傾向でした。一方、訪日経験がない人では「日本」の割合が高くなりました(図 11)。

次に行きたい国を一つだけあげてもらったところ、訪日経験ありの人は、訪日経験なしの人と比べ、「中南米」や「タイ」、「ベトナム」などの割合が高い結果でした。居住地別には、西海岸で「アイルランドや欧州」、東海岸では「カリブ海やカナダ・メキシコ、アジア」の割合も比較的高くなりました。寒い地方の人は暖かい場所を志向するといった面もあるのかもしれません(図1213)。

 

 

 

2.    日本旅行の主な目的は「日本文化体験」。訪日旅行経験者は次回は、より日本人の生活文化に近い体験を志向
東海岸の居住者は古都や神社仏閣など歴史的な文化、西海岸は美術館や観光列車など現代的な文化を好む傾向

日本旅行の主な目的としては、全体で「日本文化の体験(47.9%)」、「古都や歴史的な街を歩く(42.8%) 」、「カジュアルな日本料理を食べる(38.1%)」が上位です。買い物やイベントなどに関わる目的は相対的にあまり高くなかった(20%以下)ことから、日本では日本らしい文化や歴史に触れる旅を志向していると考えられます。

訪日経験別では、訪日経験ありの人とない人の差が大きく開いたのは、「カジュアルな日本料理を食べる(訪日経験あり  45.1%、なし 34.9%)」、「話題のお店やスポットを回る(訪日経験あり 43.8%、なし 31.4%)」、「旅館に宿泊する(訪日経験あり31.5%、なし 18.9%)」でした。最初の日本旅行ではホテルに宿泊し、高級和食を食べる、といった定番の旅行を楽しみつつ、日本国内での様々な情報に触れた結果、再訪の際には、日本人の生活文化により近いことを体験したくなるのかもしれません。一方、訪日経験がない人は、「島を訪れる(24.6%)」、「古墳をみる(24.3%)」、「お城をみる(21.4%)」といった項目も高い傾向がみられました。旅行情報メディアやSNSなどがきっかけとなり、よりニッチな場所が対象となってきていることも考えられます。性別では、全般的に女性の方が選択率が高くなりましたが、男性で比較的高い項目としては、「美術館や国際芸術祭などを訪れる」、「高級和牛を食べる」、「半日~1 日程度のアウトドア体験」などでした。居住地別には、東海岸の居住者はより日本の歴史文化に関心が高く、西海岸の居住者は同じ日本文化でも、美術館や観光列車など、やや現代的な文化に関心が高い傾向がみられました(図 14~16)。

具体的にどんな日本文化を体験したいか、内訳を聞いた結果では、「茶道や華道、盆栽作りなど(52.2%)」が最も高く、「日本料理づくり(36.7%)」、「伝統工芸品の工場見学や製作体験(31.8%)」が続きまし た。埼玉県にある盆栽美術館や各地で開催されるオープンファクトリーのイベントなどに訪れる海外の人が増えて いるのも頷ける結果と言えるでしょう。男女別では、「酒蔵や醸造所めぐり(34.0%)」で、男性の意向が大きく女性を上回りました(図 17)。訪日経験別には、あまり顕著な差は出ませんでしたが、訪日経験者はやや男性が多いこともあり、酒蔵や醸造所めぐりはやや訪日経験者で高い傾向となりました。

 

 

【意識下と無意識下における画像の好み:ニューロマーケティングとアンケート調査の結果から】

3.    アンケート(意識下の評価)で最も好きな画像は「棚田」、「海と岸壁(七ツ釜)」。海のない中央部の居住者は、より「海と   岸壁」を好むなど、普段の生活にはない風景に魅かれる

佐賀県の主な観光地に関する画像    18    枚の中で、どのような画像を好ましいと感じるのか、まずアンケー トの結果から見てみます。最も好ましい評価が多かった画像は、「棚田(水田)(8.4%)」、「海と岸壁( 七ツ釜)(8.4%)」など自然風景の画像でした。回答者の居住地別では、最も評価が高かった画像はそれ ぞれ異なり、東海岸は「棚田」、北部中央は「海と岸壁(七ツ釜)」、南部、山間部は「旅館飯」、西海岸は「温泉」でした(図    18、19)。大都市や古い街並みを残す都市がある東海岸は田園風景、海のない内陸部は海の画像など、日常にはない光景を好むのかもしれません。(ここでは「北部中央」に特徴的な結果が出たため、4 地域にわけています。)

それぞれの画像について、感じたことを自由に記載してもらった結果をみると、特に自然景観については、「海と岸壁の風景に歴史や文化的な価値を感じる」など、画像の背景にある意味を読み取ろうとしていることが感じとれます(表   2)。また、表では割愛しましたが、意外なところでは、おにぎりの画像に対して、「寿司が好き」、「寿司を食べたい」といった意見が多く、おにぎり(海苔)=寿司と認識する人が少なくないことがわかりました。

 

<お問い合わせ>
(株)JTB総合研究所
調査分析担当:早野陽子
広報担当:早野・三ツ橋・波潟
03-6722-0759
www.tourism.jp

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