2018年/2019年 年末年始(2018年12月23日~2019年1月3日)の旅行動向
株式会社JTB
JTBは、年末年始に出発日基準で 12 月 23 日(祝) ~ 1 月 3 日(木)に1泊以上の旅行に出かける人の旅行動向の見通しをまとめました。
この調査は、旅行動向アンケート、経済動向、業界動向や航空会社の予約状況、JTBグループの販売状況などから推計したもので、1969 年に調査を開始して以来、今年で 50 回目となります。
調査結果は以下の通りです。
(表1)2018 年/2019 年 年末年始旅行動向推計数値
*旅行人数は延べ人数。平均費用は一人 1 回あたりの費用
*国内旅行人数は宿泊を伴う旅行者の人数(観光および帰省目的の旅行に限る)
*海外旅行人数は出国者数(業務目的の旅行を含む)
*国内旅行平均費用は、交通費・宿泊費・土産代・食費等の旅行中の諸費用を含む
*海外旅行平均費用は、燃油サーチャージ、旅行先での交通費・宿泊費・食費を含む
*対前年比は小数点第二位以下を四捨五入
<社会経済環境と旅行をとりまく環境>
1.社会経済環境
年末年始の旅行に影響する今冬のボーナスは、前年比 3.5%増加し、2 年ぶりに前年を上回り、過去最高が見込まれています(11 月 16 日、日本経済団体連合会発表)。また、上場企業の 9 月中間決算は、過去最高を更新する企業が相次ぎました。しかしながら、米中貿易摩擦への懸念などから、2019 年 3 月期の業績については慎重な見通しが目立っています。豪雨や地震の影響で、7~9 月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比 0.3%減少し、2 四半期ぶりにマイナスとなりましたが、11 月の内閣府「景気ウォッチャー調査」によれば、10 月の現状判断DI(注1)は、前月差 0.9 ポイント上昇の 49.5 で、景気ウォッチャーによる見方は「緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、コストの上昇、通商問題の動向等に対する懸念もある一方、年末商戦等への期待がみられる。」となっています。ここ 1 か月の株価は、概ね 22,000 円前後で推移し、為替レートは、対ドル、対ユーロについては年初以来小幅に変動しています(図1、2)。
(注1)タクシー運転手、小売店の店長など景気に敏感な人への調査結果を指数(DI)化したもの
(図1) 日経平均株価の推移(2018 年 11 月 1 日~30 日)
(図2)為替レート(対ドル、対ユーロ)の推移(2018 年1 月~11 月)
2.今年の年末年始の旅行を取り巻く環境と生活者の旅行意向
今年の年末年始の休暇は、暦通りならば、12 月 29 日(土)から 1 月 3 日(木)の 6 日間ですが、1 月 4 日(金)を休めば 9 連休が可能です。メーカーなどでは 1 月 4 日(金)を休みにする企業もあり、例年より長い休暇が旅行喚起につながりそうです。さらに今年は12 月22 日(土)~12 月24 日(振)のクリスマス 3 連休もあり、この時期に旅行をする人も増えると考えられます。
JTBが毎年実施している年末年始の旅行に関するアンケートで「昨年と今年の年末年始の違い」を聞いたところ、「昨年より長く休みがとれそうだ」は、10.4%(昨年差+6.2 ポイント)と前年より増加し、「昨年より休みが取れそうにない」は、2.2%(同▲2.0 ポイント)でした。収入に関しては、「昨年より収入が増えた」は 13.7%(同+1.7 ポイント)で、「昨年より収入が減った」は 8.7%(同+0.3 ポイント)でした。一方、「昨年よりお金をかけずに質素に過ごす予定」は 5.5%(同▲1.1 ポイント)で、「昨年よりお金をかけて豪華に過ごす予定」は、4.9%(同▲5.3 ポイント)で、「豪華に過ごす」は大きく減少しています(表2)。今後一年間の旅行支出に対する意向を聞いたところ、「支出を増やしたい(15.1%)」は前年より 1.9 ポイント増加し、「支出を減らしたい(24.1%)」は、3.8 ポイント減少しました。「同程度(55.6%)」(「単価を減らし回数を増やす(8.8%)」「単価を増やし回数を減らす(5.4%)」「単価も回数も同程度(41.4%)」の合算)は前年より 1.7 ポイント増加しています(表3)。
今年の年末年始の旅行については、足元の景気は改善され、為替や株価も比較的安定し、日並びもよく、旅行に行きやすい環境と考えられます。またアンケートからも、収入は増え、支出に対する意向も前向きとであると見られます。
(表2) 昨年と今年の年末年始の違い(複数回答)
(表3)今後 1 年間の旅行の支出に対する意向(調査月ベース) ( )は前回との差 *アンケート結果は無回答があるため単一回答でも合計 100%にはなりません。
<2018 年~2019 年 年末年始旅行動向予測>
1.海外旅行人数は 73.4 万人(前年比+4.3%)、海外旅行平均費用は 214,000 円(前年比+3.9%)出発日のピークは、12 月 29 日(土)、30 日(日)
今年の年末年始の海外旅行人数は 73.4 万人で、過去最高になると予測します。2017 年の海外旅行者数は1,789 万人と過去2 番目の数字となりました。今年1 月~10 月までの累計も対前年比5.2% 増の 1,565 万人で推移しており(日本政府観光局 11 月発表)、年末にかけても好調に推移すると見られ、このまま行けば過去最高だった 2012 年の 1,849 万人を超える可能性も考えられます(図3)。燃油サーチャージは、2017 年 2 月に復活し、2018 年 8 月に値上がりしていますが、12 月~1 月の発券については据え置きとなっています。8 月以降も海外旅行者数に影響が出ていないことから年末年始の旅行についても影響は少ないとみられます。為替レートはほぼ前年並で推移しています(表4、表5)。海外旅行平均費用については、燃油サーチャージの上昇と、長い休みを利用してヨーロッパなどの遠距離の旅行に行く人も多いと思われることから、214,000 円(前年比+3.9%)と予測します。
出発日のピークは、12 月 29 日(土)、30 日(日)となりますが、近場のアジアを中心に年始の 1 月 2 日(水)、3 日(木)の出発も多くなっています。方面別の旅行人数予測では、サイパンへの減便が続きグアム・サイパンが減少、韓国や香港、欧州が前年より 5 ポイント以上増加となっています(表6)。
JTB の海外パッケージツアー「ルック JTB」の予約状況を見ると、ハワイや韓国などでは、年末の出発に加えて、1 月 2 日(水)以降の出発も多く、料金の下がる時期を選んで旅行する人も多そうです。ヨーロッパ方面は引き続き好調で特に北欧などが人気です。アジア方面では、香港・マカオやベトナムが人気となっています。香港・マカオは、10 月に香港・マカオ間を陸路でつなぐ「港珠澳大橋」が完成したこともあって注目度が高く、ベトナムは、ベトナム航空が 10 月から関西空港からリゾート地ダナンへ就航し、福岡空港~ハノイ線が週 4 便から毎日運航になるなど新しい旅行先への就航や運航便数の増加が続いています。
(図3) 日本人の出国者数と前年からの伸び率出典:日本政府観光局発表データを基にJTB総合研究所作成
(表4) 燃油サーチャージ (日本航空の場合、往復、単位:円)
(表5)各年 11 月 25 日の為替レート(単位:円)(東京外国為替相場/T.T.S 三菱東京UFJ銀行)
2.国内旅行人数は 2,989.4 万人(前年比+1.1%) 国内旅行平均費用は 33,000 円(前年比+3.4%)出発日のピークは、帰省を中心に 12 月 29 日(土)、30 日(日)、年始の出発も多い
宿泊旅行統計調査によれば、今年の 1 月~9 月の日本人の述べ宿泊者数は、6 月末からの豪雨や地震の影響もあり、前年より 3%減少していますが、9 月単月の速報値では、3,649 万人泊となり、前年同月比 0.7%増と回復の兆しが見えています。今年の年末年始は、全体としては休みがとりやすく、ボーナスも増加傾向にあることから、年内や正月明けに旅行したり少し長めの旅行をしたりする人も増えそうです。この間の国内旅行人数は 2,989.4 万人(前年比+1.1%)、国内旅行平均費用は 33,000 円(前年比+3.4%)と予測します。
同アンケートによると、旅行日数は、昨年より「2 泊 3 日」が減少し、「3 泊 4 日」や「5 泊 6 日」が増加し、長めの旅行をする人が増えそうです(表 12)。利用宿泊施設では、「夫や妻の実家」が減少する一方、「ホテル」が 30.6%(昨年差+2.2 ポイント)、「旅館」が 15.6%(同+0.4 ポイント) と増加し、今年は実家以外に泊まる旅行も多そうです(表7)。利用交通機関については、「乗用車」は 65.9%と最も多いですが、ガソリンの価格が昨年と比較して上昇しているため、昨年から 3.1 ポイント減少しています。「高速/長距離バス」は 7.5%(同+4.3 ポイント)、「格安航空会社(LCC)」は 1.7%(同+0.5 ポイント)です。また鉄道は、「高速/長距離バス」に続いて「JR新幹線」が19.1%(同+2.6 ポイント)と増加しています(図4)、(表8)。旅行先では、「近畿」「北海道」と回答した人が昨年より増えています(表 10)。
JTB の宿泊や国内企画商品の予約状況をみると、クリスマス 3 連休や年内の平日では、沖縄のビーチリゾートや東京ディズニーリゾート®、軽井沢などが人気です。関東近辺の温泉では料金の下がる 1 月 4 日以降の予約も多くなっています。JTB 総合研究所が行ったインターネット調査で、今年の年末年始に出かける場所としてどのような場所が気になっているかを聞いてみました。すべての年代で、「食をメインにしたイベント」が最も多くなりました。「温泉」は比較的年齢の高い層に多く、「テーマパーク」は若者が多くなっています。
(図4)過去一年間のレギュラーガソリン小売価格の推移出典:経済産業省「石油製品価格調査」よりJTB 総合研究所作成
<参考>インターネット調査より
「今年の年末年始に出かける場所として気になっているところ」 (複数回答)
<生活者アンケート調査方法> |
(表6) 年末年始(2018/12/23~2019/1/3)海外旅行人数 推計
<アンケート結果 (表7)~(表 14)>
* アンケート結果(表7)~(表 14)は無回答や小数点以下の端数処理のため単一回答でも合計100%にはなりません。
(表 15) 2000 年~2018 年 年末年始(12/23~1/3)発表数値の推移
* 調査開始は 1969 年
JTB広報室 03-5796-5833