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海外観光旅行の現状2018(1)

2018 年第 5 号
2018.7.4

海外観光旅行の現状 2018

要約

<好調な日本人の海外旅行と旅行者の姿>

〇2017 年の日本人海外旅行者数は過去2番目、18 年 5 月累計も 3.9%増で推移。20 代男女の出国率が伸長、東アジアへのシフトがさらに進む。シニア世代の伸びは低い(法務省出入国管理統計)

海外旅行に年1回、主体的に出かける"海外旅行コア層"の割合が減り、"準コア層"、"ライト層"が増加
"準コア層"、"ライト層"は周囲の誘いやライフステージの節目で動く
直近の旅行形態は FIT(個人手配旅行)が 43.9%と前年から減少、ツアーの割合が増える

〇今後海外旅行に行かないのは、団塊世代、キネマ世代で体調不良や体力の衰えに起因
プレゆとりは出産、子育てなど家族のサポートに起因。海外旅行の世代交代も進む

〇旅行会社の店舗で購入・申込みは"若い世代が主流"が定着。若い世代は候補となる商品を店舗で紹介されて知ることも多い。旅行会社のウェブサイトは 60 代以上男女、50 代女性の利用が多い


<旅行商品の選択を左右するもの、商品ブランドと会社名への意識>

〇候補となる旅行商品を見つける場所は、各種ウェブサイト(航空会社、OTA、旅行会社)、価格比較サイトが 多い。テレビコマーシャルやウェブ広告(インターネット・リスティング広告)は、30 代以下の若い男性に多い

〇旅行商品の選択理由は最多が「価格が一番安かったので」。ただし、60 代以上男女は価格よりも「長年利用している会社・商品ブランドだから」が最も多い。次世代以降は会社・商品ブランドへの意識は急に下がる

〇旅行商品の購入に「商品ブランドも会社名も意識する」は 39.8%、「会社名は意識するが商品ブランドは意識して選んでいない」が 27.7%。ただし、40 代男女は「会社名も商品ブランドも意識していない」、20 代以下の女性は「会社名は意識するが商品ブランドは意識しない」が最も多く、意識の違いは「旅行形態」や「購入先」、「候補となる商品を見つけるところ」とも関連する

〇商品ブランド名に会社名がついているところは認知度が高く、また各商品ブランドが主要ター ットとする層

には認知度が高くなっている(例、TRAPICSの認知度は 20 代以下女性 9.7%、60 代以上女性 60.2%)


<これからの海外旅行をけん引する旅行者像>

〇ポストミレニアル世代の海外旅行者から、初めての海外旅行は家族旅行、学校の旅行が急増

〇経済や時間といった制約がなければ行きたい国は、ハワイ、イタリア、フランス、北欧、オーストラリア、スインの順で多い。若い世代もハワ やヨーロッパ旅行への希望は他世代に負けず高い

 (株)JTB 総合研究所(東京都港区 代表取締役社長 野澤 肇)は、「海外観光旅行の現状2018」の調 査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な視点で継続的に行っています。


 今、日本人の海外旅行が好調です。2017 年の海外旅行者数は 1,789 万人と過去2番目の数字となりました。今年にはいってからも、1月~5月の累計で 736 万人と前年比 3.9%増で推移し、このまま行けば過去最高の2012 年の 1,849 万人に限りなく迫ると考えられます。2012 年当時を振り返ってみると、海外旅行消費にプラスに働く超円高であったものの(2012 年 6 月末1USD=80.31 円、2018 年 6 月末1USD=111.54 円 三菱U FJ銀行)、リーマンショックや東日本大震災で景気自体は低迷し、また国際関係の影響で中国、韓国への旅行者が大幅に減少し始めていました。現在は円安に転じてはいるものの、多くの企業の業績は好調で夏の賞与も伸び、失業率も改善していることから、海外旅行の意欲にはマイナスに働いていないと考えられます。また中国とのビジネス拡大に伴う交流人口の増大、そして第三次韓流ブームの影響と、両国への旅行者数も回復基調です。アジアと日本の各都市を結ぶLCCの就航もインバウンドのみならず日本人旅行者の利用機会を増やし、海外旅行を取り巻く環境は好転しているといえそうです。

 その一方で、これまで海外旅行をけん引してきた団塊世代の多くが 70 代にはいってきたこと、物心ついた時からスマートフォンに慣れ親しみ、価値観や消費に影響力を持つと世界的に注目されているミレニアル世代の台頭、さらに次の世代(ポストミレニアル世代)が成人にさしかかり、また、海外旅行者の顔ぶれはここ数年で大きく変わりつつあります。テクノロジーの進化は流通システムを大きく変えるとともに新しいビジネスモデルを生み、旅行分野で業種を超えた競争は激化しています。多くの旅行者が利用していた旅行会社のパッケージツアー(旅行商品ブランド)に加え、海外のOTAが日本市場に広がり、旅行の内容も予約方法も多様化が進んでいます。

 本調査研究では、旅行者の姿をより詳細に可視化するために、これまで積み重ねてきた世代の行動や価値観を踏まえた分析を行うとともに、ネット上の旅行予約の手段が多様化する中、従来の旅行会社のパッケージツアー(旅行商品ブランド)に対する旅行者の意識や商品情報の接点に変化がないのかを検証し、2,000 万人に向けた海外旅行者の拡大に必要なことは何かをひも解いていきます。



【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査
スクリーニング調査対象者:全国に居住する 1879 歳の男女 30,000 人へのインターネットアンケート調査本調査対象者:スクリーニング調査対象者の中で、2017 1 月以降 2018 6 月までに海外観光旅行(ビジネス旅行を除く)をした人 2,060

調査期間:2018 年 6 月 27 日~6 月 30 日



【はじめに ~近年の海外旅行者の現状について~】

1.2017 年の日本人実質海外旅行者数 1,137 万人(延べ 1,789 万人)、実質出国率は 9.1% (延べ 14.4%)と過去最高

 最初に、2000 年以降の海外旅行者の動きの把握するために、実際に海外旅行に出かけた人数(実質海外旅行 者数)の推移と、1年間の海外旅行経験者一人当たりの平均旅行回数(ビジネス含む)の推移を当社の「海外旅 行実態調査」より算出しました。その結果、2000 年から 14 年まで 1.7 回/人、2015 年以降は 1.6 回/人と、海外旅行に実際行った人の平均回数は大きく変わらず推移していることが分りました(図 1)。これを受け、2017年の実質海外旅行者数は 1,137 万人(延べ出国者数 1,789 万人)、実質出国率は 9.1%(延べ出国率 14.4%)と推計しました。この数字は、過去最高の出国者数を記録した 2012 年の実質海外旅行者数 1,124 万人、実質出国率の 8.8%を超え、過去最高となるものです。日本の人口は 2010 年のピークに減少に転じているため全体の旅行市場は小さくはなっていますが、短期でみれば、17 年は海外旅行の市場は人口減にも関わらず若干広がったということがいえるでしょう。人口減で多少左右しますが、海外旅行者数 2,000 万人の達成は、現状の旅行者一人あたりの旅行回数ならば実質出国率を 10.0%に、現状の実質出国率なら旅行者一人あたりの回数を 1.8 回までにあげる、あるいは旅行者一人あたりの回数を 2014 年並の 1.7 回に引き上げ、かつ実質出国率を 9.4%に上げられれば現実味を帯びてきます(図2)。



2.海外旅行市場の回復と共に、"海外旅行コア層"から"海外旅行ライト層"へとシフト
2017 年以降に海外旅行をした理由は「家族や友人の誘いがあったから」。ライト層が海外旅行をしなかった理由は経済的な理由とともに「パスポートが切れて申請が面倒」、「旅行の準備や計画がなんとなく億劫」など気分的なこと

 海外旅行に定期的に出かける「コア層」と何かのきっかけがあったときだけ行く「ライト層」の割合を、2017年と 2018 年の調査で比較したところ、2018 年の調査では、海外旅行コア層の割合が減少し、海外旅行準コア層と海外旅行ライト層の割合が増加していました(図3)。増加した海外旅行準コア層とライト層が旅行をした理由で最も高かったのは、「家族や友人からの誘いがあった」でした。また、ライフスタイルや旅行の考え方を基にした価値観グループ(TLS5)の割合を比較すると、2018 年調査では流行に敏感な「共感型」やフォロワーである「メリハリ消費」、「合理派」の割合が増加していました(図4)。2017 年の調査で仮説を立てたように、海外旅行者数が回復する際には、まずは感度の高い海外旅行コア層が動き、その後、ライト層が誘われたり、巷の話題に魅かれたりしたことがきっかけとなって海外に出かけるという構図が垣間見られます。2017 年以降海外旅行に出かけた理由について、海外旅行コア層は「海外旅行に毎年行っている」が 7 割に上っていることから、自らの意思で海外旅行に行こうと思っている層であるといえ、逆にライト層は周囲の誘いやライフステージの節目がないと行かない層といっていいでしょう。

 一方、スクリーニング調査で 2017 年 1 月以降に海外旅行へ行かなかった人に対して「行かなかった理由」を聞いたところ、海外旅行コア層は「経済的な余裕がなかった」、「仕事や子育てなどで手が離せなかった」、「家族などの世話で家が空けにくかった」「健康上の理由」などが比較的多くなりましたが、海外旅行ライト層は、経済的な理由と共に、「パスポートが切れて申請が面倒くさかった」、「一緒に行く人がいなかった」、「旅行の準備や計画がなんとなく億劫」などの心理的な理由がコア層と比べて多い傾向がみられました。ライト層の海外旅行は、精神的な"旅行気分"に左右される部分が大きいようです(図5)。

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