地域交流ビジネス
交流文化事業のコンテンツとして、新たな地域戦略を展開

従来の旅行は、例えば東京から北海道にお客様を送り出すことが主流で、マーケティングは出発地(発地)ベースで行われてきました。しかし、お客様のニーズが多様化・高度化する中では、今後は地域別に地域の観光資源を発掘し磨いていくことで、魅力的な観光サービスを生み出していくことが求められています。旅行先(着地)で体験や交流を生み出すために、新たな地域戦略を考えていくときが来ています。

2006年4月の地域事業会社化は、そのファーストステップです。地域の良さや伝統文化は、その地域の人、つまり地元の社員がより詳しいと言えます。分社化後の新体制では、JTBグループ各地域会社の社長を含む社員全員がその地域に入り込み、地域の魅力的な資源を生かした新商品・新サービスづくりへシフトを進めています。地域との連携を深め、着地での商品・サービス開発、コンサルティング、プロモーション、イベント、人財教育など、様々なお手伝いをしながら、それを事業化していくこと、それが「地域交流ビジネス」となるのです。

地域交流ビジネスの概念
地域交流ビジネスの概念
JTBグループにおける地域交流ビジネスのコアコンピタンス

観光を主体とした地域活性化に、国・行政も注目しています。2006年12月には、従来の観光基本法に代わる観光立国推進基本法が制定され、2008年10月には観光庁が発足しました。また、2010年6月には国の新成長戦略として「観光・地域活性化」が掲げられ、観光の経済波及効果、雇用創出効果に期待が寄せられています。JTBグループが山形県で行った調査研究によると、県外から10万人が1泊すると、その経済効果は約33億円にのぼり、2000名の定住人口に相当します。山形県知事は、年間30万人のお客様をご案内するJTBグループは、6000名の人口を持つ村の村長であると言って下さっております。
地域が元気にならなければ、私たちも事業を継続することができません。地域交流ビジネスにおけるコアコンピタンスは、各地における交流人口の増大を「観光を基軸として」実現させることです。観光庁のVJC(ビジットジャパンキャンペーン)に連動し、マーケットはグローバルかつ多角的な広がりを見せています。狭義の旅行も含めて多様化・高度化するマーケットニーズに対応し、着地から情報発信をしていかなければなりません。そのために、JTBグループの各地域会社では、地域に深く入り込み、地域の方々と共に、地域固有の魅力の発見に努めています。その結果、自治体からは旅行以外の様々な地域の課題解決に対するソリューションもJTBグループに求められてきています。

地域交流ビジネスは、JTBグループの社員だけで行うことはできません。地域の観光事業者だけでなく、行政やNPO、一次・二次・三次の各産業、そして市民の方々と協力し合い、(1)魅力あるまちづくり事業(2)新しい観光開発に携わる地域プロデューサー型の人財育成(3)地域ブランディングによる新しい物産の創造や個性豊かなお土産づくり(4)着地型商品の開発等を行っています。さらにこれに派生して、コンサルティング事業やプロモーション事業、MICE※など新たな事業が発生しています。
一方、発地では、着地の魅力的な観光資源に関する情報を得て、魅力的な旅行商品の造成・販売、マーケットへのプロモーション、ブランド発信などを行っています。地域の人の「こころ」を動かし、発地から「ひと」を動かすことが、JTBグループのコアコンピタンスと考えているのです。

地域交流ビジネスの事業概要
地域交流ビジネスの事業概要

※MICE=Meeting, Incentive, Convention, Event

目に見えるビジネスモデル構築が命題 〜ビール会社とのタイアップ事例紹介〜

地域活性化事業は中長期的な取組みとなるため簡単なことではありませんが、国・行政の観光に対する期待は大きく、各省庁が観光に対する予算を増やしていることはプラスの要因です。観光庁がとりまとめる平成23年度の中央各省庁、地方自治体の観光関連予算は1,832億円規模にのぼります。当然ですが、国や行政から事業を受託するためには、地元の課題を解決するためのビジネスモデルを構築しなければなりません。これに関してJTBグループでは、地域マネジメント事業と地域マーケティング事業をPDCAサイクルを通じて地域で実施することにより、持続的な地域活性化に寄与するコンサルテーションをビジネスモデルとしています。
一例として、愛媛県の松山市の事例を紹介します。松山市では小説『坂の上の雲』をテーマにした観光客受入態勢の整備と、新たな観光プロモーションの手法を提案し、市の観光客数拡大に向けて取り組んでいます。これに対してJTBグループでは平成21年秋からスタートしたNHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』の放映に合わせて、松山ブランドの更なる育成に向けたまちづくりとプロモーション戦略を策定しました。そして、魅力的な滞在型観光地を目指し、明治の時代背景・歴史・文化を生かした「人との交流」および「食」をキーワードとした「まちあるき」などの観光プログラムを開発するとともに、これらのテーマに興味を抱くピンポイントのターゲットに対する情報発信を行いました。また、事業費についても、経済産業省の公募事業の活用を提案し、認定されることによって事業実施に至ることとなりました。結果、こうした活動により観光客が楽しめるまちへと進化すると同時に、地元の方々にまちあるきガイドとして参加していただくことで、市民レベルでのまちづくりの意識が高まっています。この事業はまちぐるみで地域活性化を進める取組みとして現在進行形で進められている事業ですが、最終的にはドラマ終了後も松山市にお客様が訪れるための持続的な仕組みを構築することを目指し取組みを進めております。
このほか、外国人旅行者の利便性向上のためのICTを活用した観光情報サービスの提案や、海外映画のロケ地としての誘致活動、農商工連携による地域物産品の開発、地域における旅行会社の設立による教育旅行の誘致など様々な地域活性化の取組み事例が全国で創出されています。

地域交流ビジネスソリューション
地域交流ビジネスのソリューション
地域交流ビジネスによって、旅行業を変えていく

交流文化事業は、JTBグループ100年の歴史においてまだ緒についたばかりの事業といっても過言ではありません。これからの課題として、地域交流ビジネスを包括した交流文化事業のコンセプトを観光・旅行業界に根付かせ、観光・旅行業をもう一段上の産業に進化させていきたいと考えています。我々は観光事業を6次産業であると考えています。1次、2次、3次産業は、足しても掛けても6になります。観光産業はこれらを掛け合わせた存在であり、人間が五感をフルに活動させる機会が旅行だと思います。その結果として、第6感を働かせ感動を生む産業が6次産業としての観光産業であり、JTBグループの交流文化事業だと言えると思います。私たちJTBグループは、交流文化事業がひとつのビジネスドメインとして認知され、様々な感動の場を創っていきたいと考えています。 地域に対しては、様々な活性化の取組みを進め、地域が何か課題を抱えたときに、最初に相談できるのがJTBグループであるという地域づくりのパートナーとしての立場を目指していきたいと思います。同時に、国・行政との交流によって情報収集し、マクロの視点で観光に取り組むことも重要です。現在、中央省庁や関連団体とのつながりを深め、地域と中央をつなげる民間事業者としての新たな役割を担っていきたいと考えています。